全国高校軟式野球選手権大会の決勝が今日行われ、栃木・作新学院が6年ぶりの優勝を収めた。
軟式野球部出身として、心からお祝い申し上げたい。
昨日行われた準決勝では、新たに導入されたタイブレークにより明暗が分かれた。
能代と上田西の一戦。1-1で迎えた延長14回表、タイブレークにより無死一・二塁から始まった能代の攻撃。
一人送って一死二・三塁で打者は投ゴロ。本塁でタッチプレーすべきところを捕手がフォースアウトと勘違いして三塁走者にタッチせず、勝ち越し点を許してしまったのだ。両チームとも条件は同じと言ってしまえばそれまでだが、去年の決勝戦の延長50回を踏まえ新たに導入された制度に馴染めなかった上田西が気の毒で仕方ない。
私は小3~高校卒業までの10年間、少年野球と部活で軟式野球をやっていた。
私のような低レベルの者はさておき、高いレベルで行われる軟式野球はとにかく点が入らないのだ。
理由はボールに尽きる。バットでジャストミートすればするほどボールが変形し、飛ばないため長打が期待出来ない。もちろんオーバーフェンスの本塁打もあるのだが、軟式の場合公式戦でも両翼90m・中堅120mみたいな球場でやる事は少ない。
飛ばないうえに、球が死んでほしい時に死なないのも難しいところだ。例えばバントは妙に球が弾み、死んでくれないため野手に捕られやすい。
内野手が浅いゴロをダッシュして捕る場合、硬式ならグラブだけで片手で捕りにいっても球は収まってくれる場合が多いのだが、軟式はまず弾んでしまうため、基本的に片手捕りは危険だ。投げる方の手でグラブをフタしてやらねばならない。
そのため、硬式野球の経験豊富な人がたまに軟式野球をやると、打球は飛ばないわエラーはするわバントは失敗するわで、エラい目に遭うという話をあちこちで聞く。ルールは同じだが、アタマの切り替えが必要なのだ。
話がそれたが、野球において特に試合後半になればなるほど先頭打者が重要になる。特に投手は、先頭打者を打ち取ればそのイニングの7割の仕事を果たした、とも云われるほどだ。
であるにもかかわらず、点が入りにくい軟式だからと云っていきなりタイブレークを持ち込まれるのは、特に投手経験者の私に云わせればやってられない。
上田西の捕手の肩を持つワケではないが、塁が埋まるまでにはストーリーがある。安打、四死球、失策…
仮に一死二・三塁の状況でも、それまでのストーリーがアタマに入っていれば捕手も間違わなかっただろう。いきなり作られたピンチであるがゆえに勘違いしたのは、容易に想像が付く。
引き分けで無理矢理決着を付ける最も身近な例は、サッカーのPKだ。しかしサッカーはそもそも時間制のスポーツであり、決着が付かない場合はPKをやる事がそもそも折り込み済みだ。だが野球は、イニングにつき3つアウトを取られるまではいくら時間をかけてもよい。
PKと同じノリでタイブレークを持ち込もうとした人の中には、その前述の「先発投手の役割」「塁が埋まるまでのストーリー」こそが野球だ、という気持ちをご理解いただけていないのではないか、と察してしまうのである…