学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

『雑器の美』を読む①

2008-11-13 09:24:10 | 読書感想
今日は休みです。それなのに、朝4時に目を覚ましたっきり、寝付けなくなりまして、傍らにあった『民藝四十年』を読んでいました。読んでいくうちに、ふと何か書けないかと思い、筆を取った次第です。

同文章は、大正15年、民藝の提唱者柳宗悦が37歳のときに著したものです。民藝とは「民衆的工藝」の意で、「著名な個人ではなく、無名の職人たち」の手仕事によって生まれた郷土色豊かな工藝のことです。例えば…、私の故郷東北を見てみますと、青森県の津軽こぎん、岩手県の南部鉄器、秋田県の樺細工、宮城県堤焼、山形県平清水焼、福島県会津塗などが挙げられます(便宜上、県単位で紹介しました。県内の至る所で作られているわけではありません)

『雑器の美』を読んでいきますと、気がつくことがあります。まずは、人の道と申しますか、人がどのように生きるべきなのか柳流の哲学がひしひしと感じられること、2つめは柳の読者を諭すような文章力です。民藝の考えを人々の間に広めたいとの想いと、宗教への深い見識(布教もわかりやすく伝えることが必須だと思いますので)などの要因が加わって、このような文章になったのではないかと思います。わかりにくい言葉は一切使わず、文章をなるべく短く切っているのが特徴です。とかく新しい主義主張を述べようとすると人間は、言葉を次々に浴びせかけるきらいがありますが(確かにインパクトはありますよね)、柳はまったくその逆で、落ち着いていて、静かな印象、しかし、しっかりとした主張を述べているように感ぜられます。読み終えて、内容云々の前にそうしたことを思いました。

次回は『雑器の美』に著された肝心の内容についてご紹介したいと思います。