学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

那珂川町馬頭広重美術館「浮世絵に描かれた動物たち展」

2009-09-04 19:00:41 | 展覧会感想
このブログで展覧会感想を書くのはいつ以来でしょうか。とにかく久しぶりであることには間違いない(苦笑)

現在、栃木県那珂川町馬頭広重美術館で開催中の「浮世絵に描かれた動物たち展 -珍獣・猛獣・いやしのペット-」を見学してきました。

展示されている一点一点にそれぞれ意味があり、それが全体として非常によく調和している、展覧会のお手本のような展覧会でした。単に動物の描いてある作品だけを展示するのではなく、たとえば着物のデザインに取り上げられている生き物に注目してみたり、あるいは歌舞伎役者を亀に見立てた歌川国芳《亀喜妙々》の作品もテーマのなかに選ばれていて、大変面白い内容になっています。

私は歌川国芳《賎ヶ峯合戦之図》の笹に吊るされた生首(これが笑っているようにも見えてかなり怖い…)に背筋がぞっとして、長澤芦雪・曾道怡《花鳥蟲獣図巻》の犬の瞳(あれは散歩をねだる時の目です)にまいらされ、小林清親《猫と提灯》、《獅子図》に目を見張りました。

展覧会後半は「尽くし」もの。つまり、あるテーマのものを列挙していることですが、例えば「宝尽くし」という言葉がありますね。あれは縁起の良いものというテーマのものを列挙しているわけです。展示されているのは「尽くし」ものの浮世絵版で擬人がした鼠、猫、狸、あるいは影絵、玩具などの「尽くし」絵が展示されています。日本人は昔から「尽くし」が好きなのですね。

とても良い展覧会を見させていただきました。私も学芸員の一人として、学ぶべきところが多く、今後の仕事を進める上でも勉強になりました。

参考までに…日本人の「尽くし」について、もっとお知りになりたい方は下記の本がオススメです。小島孝之氏、田中優子氏、丸谷才一氏、高階秀爾氏の4名による「尽くしの宴」という対談集です。美術や文学の視点から、日本人の「尽くし」の意識を考察したもので、とても興味深い内容です。

●『日本の美を語る』高階秀爾編著 青土社 2004年