学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

ゴーゴリ『外套』

2009-09-10 21:32:58 | 読書感想
『外套』は『鼻』とともに、ゴーゴリの代表作です。

平凡で貧しい官吏アカーキイは、長年使い古しボロボロになった外套を取り替えようと(しかもなりゆきで)とします。ほぼ全財産を投げ打って仕立てた外套は、周りの人々もうらやむような出来でした。自慢の外套を着ると、周りの世界も違ったように見えて、得意になるアカーキイ。しだいに自分の命よりも外套が大切にさえ思えてきます。そして悲劇が…。

物語終盤に大きなアップダウンのある小説です。ちょっと予想だにつかないミステリアスな結末。暗い電球の元、一人で読んでいたら、ゾッとしてしまいました(苦笑)このまま終わったら面白くないな、とは思っていたのですが…。

「われわれは皆ゴーゴリの『外套』の中から生まれたのだ!」

ドストエフスキーがこの小説について、こう述べています。ドストエフスキーにここまでのインパクトを与えた『外套』。『鼻』ほどではないにしろ、不思議な内容の小説です。短編ですので、とても読みやすいです。みなさまもぜひ!


●『外套・鼻』ゴーゴリ作 平井肇訳 1938年 岩波文庫