学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

090928.東京Ⅰ

2009-09-28 20:18:58 | 展覧会感想
お知り合いの作家さんから、公募展と個展のご案内をいただきましたので、久しぶりに東京へ行ってきました。

まずは国立新美術館の「新制作展」へ。「新制作協会」は1936年(昭和11)に結成された、反アカデミック芸術の精神を持って「独自の芸術的行動の自覚」を掲げたグループです。毎年見させていただいていますが、展覧会場はいつも大きなエネルギーに満ちていて、自分がアートに圧倒されてしまうような感覚を覚えます。私はアートを前にして、心に何かひっかかるものがあると、その感覚と作品、作者についてメモを取ります。そうして、昨年のメモを元に今回の作品を比べて様々な思いをめぐらすのです。これはとても楽しいことです。

ぐるりと歩いて、ご案内を頂いた作家さんの絵の前まで来ました。手を合わせた男性(キリスト教の信者なのでしょう)の像が倒れていて、顔には涙があります。でもどうして泣いているのか?倒れた男性に大して、右側から何者かの大きな手が差し伸べられています。作家さんが何を主張したいのか、を考えるよりも、私と目の前の絵との関係について考えてみる。

ここからはかなり個人的な意見ですので悪しからず…(笑)倒れた男性は、もうどうにもならなかった昨年の私。でも、大変だったとき、色々な人(これがつまり大きな手になるわけですね)に支えて、助けてもらって、現在の自分が居る。ああ、私はみんなに助けてもらったんだなあ、と強く実感して、感謝する。この絵に、私は自分の過去を見ているような気持ちになりました。

もちろん、作者さんは昨年の私なんて知りませんし、これはあくまで私の勝手な妄想にすぎないのです(笑)でも、自分と目の前のアートとの関係について考えることは、自分自身を見つめなおす機会にもなると思うのです。絵に決まった見方はなく、自由に、誰にも邪魔されずに、様々な想いを巡らせてみるのは楽しいことです。

私の案内状を下さった作家さんにお会いすることは出来ませんでしたが、作家さんの絵と心のなかで会話をして、とても充実した時間を過ごすことができました!

明日は同じく国立新美術館の『THE ハプスブルク』展の感想を書きます。