学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

オチのあるはなし

2014-12-24 19:55:54 | 読書感想
初めに申しあげておきますと、今日のブログの文章にオチがあるのではありません(笑)

オチのある話は痛快です。例えば落語。私はそれほど落語を見聞するわけではありませんが、あっと驚くオチの上手さには思わずうなります。さて、文章ではどうか。

私がベッドで眠る前に読んでいる本。それは薄田泣菫の『茶話』です。薄田泣菫といえば詩集『白羊宮』が著名なのだそうですが、私は読んだことはありません。薄田泣菫は、人生の前半を詩人として、後半はコラムニストとして仕事をこなしました。私が知っているのは、後半の人生のみで、それが『茶話』なのです。

『茶話』は新聞紙上で掲載された小話で、紙上というからには短文。その限られた行を使って、日本から欧米まで古今東西の著名な人物たちの隠れたエピソードを紹介して、そこから得られる教訓めいた薄田泣菫のオチが付くという話。岩波文庫の『茶話』には、ぜんぶで154編の物語がつめられています。どのエピソードもとても面白く、薄田泣菫の人間に対する温かいまなざしが感じられますし、人生をこよなく愛していたことがうかがい知れます。

昨今の新聞のコラム、ときどき面白いものがあるけれど、そうそうぶつからない。昨年だったか、今年だったか、日経新聞に作家の片岡義男さんがコラムを掲載していましたが、さすがに文章のプロだけあって、楽しみにしていた覚えがあります。

さて、実は岩波文庫版の『茶話』。薄田泣菫の短文もさることながら、坪内祐三さんの筆による解説もすこぶる面白い。岩波文庫の解説なのに違う文庫の心配話や、岩波の編集に対して『茶話』の話のセレクトや登場人物のイニシャルに注文をつけるなど、ざっくばらんな解説は痛快です。こんな面白い文庫の解説はそうそうないでしょう。2つの楽しみがある珍しい書籍です(笑)

今宵はクリスマス…、特にどうとしたこともない私の読書感想でした。