学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

水戸芸術館「大竹伸朗 ビル景」展

2019-08-30 19:49:37 | 展覧会感想
私の職場である美術館には、毎日のように全国各地で開催される展覧会の案内が届きます。そのなかに変わった印刷物を見かけたのは1ヶ月程前でした。それはA4のチラシで、真ん中から左右見開きになる仕立て。変わったデザインなのはすぐにわかりましたが、なんとそれだけではない。文字に凹凸があって、おそらくは活版印刷で刷られたもののよう。とても洒落ている!

このチラシを作った美術館は、茨城県水戸市にある水戸芸術館。現代美術の作家大竹伸朗さんの展覧会ということもあり、先日見に出かけました。「ビル景」という展覧会の主題だけあって、会場にはずらりとビルを描いた作品が並びます。それらは必ずしも実景というわけではなく、いろいろな街のビルの姿が重なり合っているそうで、心象風景と捉えていいのでしょうか。ビル、という1つのテーマながら、それを油彩やエッチング、さらには立体など様々な方法を用いて表現しているところに驚かされます。ときおり、社会性を帯びている作品も見かけ、ビルの上空に飛行機が有るものは制作された時期から言ってもアメリカの9.11、つまり同時多発テロなのでしょう。無機質な箱であり、人が集まるところでもあり、経済の小さな中心でもあり、現代文明の象徴でもあり、飛行機の標的にもなるビル。大竹さんの作品を見ていると、「ビル」という物体ひとつで、いろいろな角度からの切り取り方が有ることに気づかされました。

私は定期的に現代美術を見るようにしています。なぜなら、ふだんの日常で凝り固まった頭脳が新鮮になるから。既成概念を乗り越えて創造される作品は、とてもポジティブな印象を受けます。そうした作品の力が、頭のなかをやわらかく、やわらかくしてくれるのでしょう。チラシに引かれて美術館詣で。とても充実した1日を過ごすことができました。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿