「東京電力に関する経営・財務調査委員会」は、10月3日に報告書全文170ページ及び付属資料50ページを提出した【注1】。
(1)でたらめな経理
(a)東電グループ会社取引はほとんどが随意契約で、十分競争環境が確保されていない。9.6%も単価が割高で、これを改めれば165億円ものコスト削減が可能だ。主要関係会社の大半は、東電向け取引の営業利益率が外部取引の営業取引率よりも高く、中には外部取引の赤字を東電向け取引で補填した形になっているケースも多数見られた。
(b)発電所などの年間修繕費4,000億円のうち、3割はメーカーの代理店が介在していた。メーカーに直接発注すれば済むはずで、代理店介在は無駄だ。また、東電が発電工事を発注するとき、必ずグループ会社が一次下請に入る慣行も、問題だ。
(c)電気料金改訂時に東電が届けた料金原価となる固定費は、実はそんなにかからないことが判明した。固定費の届け出時の料金原価と実績の料金原価の乖離は、直近の10年間累計で5,624億円になる。これに燃料費など可変費を加えると、10年間の累計額は6,180億円に拡大する。この乖離は、そもそも届け出時の料金原価が「適性な原価」ではなかったからだ。
(2)コスト削減の粉飾
(1)で浮かびあがるのは、経費を湯水のように使い、実際に使っただけではなく水増しもして、高くふっかけた料金を電力消費者からむしり取る独占企業の弊害だ。
経理においてズサンな東電は、コスト削減も誤魔化す。
原発事故後に5,034億円のコスト削減を公約したが、前年度対比の削減額ではなく、東電があらかじめ今年度に立てていた予算対比の削減額にすぎなかった。福島第一原発と第二原発を止めたことによる出費の減少1,103億円。震災前に策定した予算の取りやめ1,096億円。修繕費の次年度以降への繰り越し968億円・・・・。これが東電の「合理化」の実態だ。東電のコスト削減は「粉飾」なのだ。
ちなみに、調査委は、東電の10年間に合計1兆1,853億円を削減する計画を2倍にし、さらに1兆2,267億円を追加削減するべく要求した。
(3)電気料金は値上げされるか
原子力損害賠償支援機構が決めることになるが、報告書には、東電の今後10年間のシミュレーションが載っている。
(a)電気料金の値上げ幅 なし
(b)電気料金の値上げ幅 5%
(c)電気料金の値上げ幅10%
の3パターンに分け、①柏崎刈羽原発を再稼働しない/②柏崎刈羽原発を再稼働する・・・・を組み合わせると6種類の折れ線グラフができる。これによると、(c)-②の場合、東電は黒字続きで20年度に5兆5,867億円の純資産を有するに至る。しかし、(a)-①の場合、20年度の東電の純資産はマイナス1兆6,353億円と、慢性的な赤字状態になる【注2】。
【注1】「【震災】原発>東京電力に関する経営・財務調査委員会 ~10月3日に報告書発表~」
【注2】(a)-①の場合、「8兆6千億円の資金不足が生じる」。【福田直之「「東電リストラで3兆円捻出」 第三者委、値上げ示唆」(2011年10月3日付け朝日新聞)】
以上、大鹿靖明(編集部)「東電「改造」計画全文入手 値上げと原発で黒字」(「AERA」2011年10月10日号)に拠る。
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(1)でたらめな経理
(a)東電グループ会社取引はほとんどが随意契約で、十分競争環境が確保されていない。9.6%も単価が割高で、これを改めれば165億円ものコスト削減が可能だ。主要関係会社の大半は、東電向け取引の営業利益率が外部取引の営業取引率よりも高く、中には外部取引の赤字を東電向け取引で補填した形になっているケースも多数見られた。
(b)発電所などの年間修繕費4,000億円のうち、3割はメーカーの代理店が介在していた。メーカーに直接発注すれば済むはずで、代理店介在は無駄だ。また、東電が発電工事を発注するとき、必ずグループ会社が一次下請に入る慣行も、問題だ。
(c)電気料金改訂時に東電が届けた料金原価となる固定費は、実はそんなにかからないことが判明した。固定費の届け出時の料金原価と実績の料金原価の乖離は、直近の10年間累計で5,624億円になる。これに燃料費など可変費を加えると、10年間の累計額は6,180億円に拡大する。この乖離は、そもそも届け出時の料金原価が「適性な原価」ではなかったからだ。
(2)コスト削減の粉飾
(1)で浮かびあがるのは、経費を湯水のように使い、実際に使っただけではなく水増しもして、高くふっかけた料金を電力消費者からむしり取る独占企業の弊害だ。
経理においてズサンな東電は、コスト削減も誤魔化す。
原発事故後に5,034億円のコスト削減を公約したが、前年度対比の削減額ではなく、東電があらかじめ今年度に立てていた予算対比の削減額にすぎなかった。福島第一原発と第二原発を止めたことによる出費の減少1,103億円。震災前に策定した予算の取りやめ1,096億円。修繕費の次年度以降への繰り越し968億円・・・・。これが東電の「合理化」の実態だ。東電のコスト削減は「粉飾」なのだ。
ちなみに、調査委は、東電の10年間に合計1兆1,853億円を削減する計画を2倍にし、さらに1兆2,267億円を追加削減するべく要求した。
(3)電気料金は値上げされるか
原子力損害賠償支援機構が決めることになるが、報告書には、東電の今後10年間のシミュレーションが載っている。
(a)電気料金の値上げ幅 なし
(b)電気料金の値上げ幅 5%
(c)電気料金の値上げ幅10%
の3パターンに分け、①柏崎刈羽原発を再稼働しない/②柏崎刈羽原発を再稼働する・・・・を組み合わせると6種類の折れ線グラフができる。これによると、(c)-②の場合、東電は黒字続きで20年度に5兆5,867億円の純資産を有するに至る。しかし、(a)-①の場合、20年度の東電の純資産はマイナス1兆6,353億円と、慢性的な赤字状態になる【注2】。
【注1】「【震災】原発>東京電力に関する経営・財務調査委員会 ~10月3日に報告書発表~」
【注2】(a)-①の場合、「8兆6千億円の資金不足が生じる」。【福田直之「「東電リストラで3兆円捻出」 第三者委、値上げ示唆」(2011年10月3日付け朝日新聞)】
以上、大鹿靖明(編集部)「東電「改造」計画全文入手 値上げと原発で黒字」(「AERA」2011年10月10日号)に拠る。
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