(1)概要
(a)マスコミ倫理懇談会第55回全国大会・・・・2011年9月29~30日、於名古屋市。
(b)メーンテーマ・・・・震災・原発 検証メディアの責務。
(c)分科会・・・・「福島原発事故 取材の壁・報道の揺れ」など7つ。現場の記者らが体験と課題を報告。
(2)「取材の壁・報道の揺れ」分科会
発生直後の報道機関の対応に疑問が突きつけられた。
メーカーの技術者やOBに意見を求めず、過酷事故の分析や予測が得意といえない推進派の学者を起用した。専門知識の欠如やパニックを恐れた踏み込み不足の報道が目についた。【田中三彦・サイエンスライター】
東電が事故原因者でありデータ保有者であり発表者だったことから、初期には一次情報の取得が質量ともに難しく、結果的に不正確、不十分な報道があった。矛盾を含んだ膨大な情報から、これが真実だろうと伝えてきた。【柴田文隆・読売新聞科学部長】
戦後の科学界では「核エネルギーの善用」という主張が支配的で、メディアも推進側に立った。60年代の公害問題を機に、技術リスクとして放射能を警戒する声も出てきたが、世の中の流れをつかまえられず、原子力への批判が出てきたのは80年代以降だった。【尾関章・朝日新聞編集委員】
(3)「原発災害をいかに伝えるか」分科会
情報が不足し、その位置づけも難しいなかで住民の不安にどう応えたか、が話し合われた。
生涯で100ミリシーベルト以下の被曝をした場合について、大丈夫という専門家の見解と、不安視する住民の心情に溝ができた点が指摘された。
「安全」とも「危険」とも決めなかった。【藤間寿朗・テレビユー福島報道部長】
政府発表はどんな根拠に基づくのか、という言及が必要だ。【会場】
今回の事故では、福島第一原発から約5kmにある災害時の指揮所で、取材拠点にもなるオフサイトセンターが停電で機能せず、自治体向け避難情報が混乱した。メディアも情報把握に手間取り、住民には「情報隠し」の疑念も広がった。
同様の事態が起こりうる。【原発立地地域の地元紙】
政府や電力会社が把握したデータを速やかに提供し共有できるように、自治体とメディアが国に働きかけていくという認識で一致した。
(4)新聞10紙の報道分析
藤森研・専修大教授は、新聞10紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京、河北新報、岩手日報、福島民報、福島民友)の震災から3カ月間の報道について、時間的な変化や各社の傾向を分析した。うち、原発報道については・・・・
(a)報道内容について、「地元紙は津波被災を手厚く報じ、全国紙は原発と放射能ばかりだった」という批判がある。しかし各紙とも地震・津波と原発事故をほぼ同程度に扱い、バランスのとれた報道になっていた。
(b)原発事故の報道では、国民にパニックを起こさせないようにという配慮が、読者の意識とのずれを生んだ可能性はある。また政府の指示に従い、主体的に原発事故の現場に入域する判断を怠った点は批判されても仕方がない。福島原発の事故原因と初期対応の全容を明らかにすることは日本のメディアの責任だ。また今後の議論の前提として、1950年代からの原子力報道の自己検証も行うべきだ。
以上、五十嵐大介/川本裕司(編集委員)/澄川卓也/羽賀和紀「未曽有の大災害、どう報道 マスコミ倫理懇談会「震災・原発 検証メディアの責務」」(2011年10月14日付け朝日新聞)に拠る。
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(a)マスコミ倫理懇談会第55回全国大会・・・・2011年9月29~30日、於名古屋市。
(b)メーンテーマ・・・・震災・原発 検証メディアの責務。
(c)分科会・・・・「福島原発事故 取材の壁・報道の揺れ」など7つ。現場の記者らが体験と課題を報告。
(2)「取材の壁・報道の揺れ」分科会
発生直後の報道機関の対応に疑問が突きつけられた。
メーカーの技術者やOBに意見を求めず、過酷事故の分析や予測が得意といえない推進派の学者を起用した。専門知識の欠如やパニックを恐れた踏み込み不足の報道が目についた。【田中三彦・サイエンスライター】
東電が事故原因者でありデータ保有者であり発表者だったことから、初期には一次情報の取得が質量ともに難しく、結果的に不正確、不十分な報道があった。矛盾を含んだ膨大な情報から、これが真実だろうと伝えてきた。【柴田文隆・読売新聞科学部長】
戦後の科学界では「核エネルギーの善用」という主張が支配的で、メディアも推進側に立った。60年代の公害問題を機に、技術リスクとして放射能を警戒する声も出てきたが、世の中の流れをつかまえられず、原子力への批判が出てきたのは80年代以降だった。【尾関章・朝日新聞編集委員】
(3)「原発災害をいかに伝えるか」分科会
情報が不足し、その位置づけも難しいなかで住民の不安にどう応えたか、が話し合われた。
生涯で100ミリシーベルト以下の被曝をした場合について、大丈夫という専門家の見解と、不安視する住民の心情に溝ができた点が指摘された。
「安全」とも「危険」とも決めなかった。【藤間寿朗・テレビユー福島報道部長】
政府発表はどんな根拠に基づくのか、という言及が必要だ。【会場】
今回の事故では、福島第一原発から約5kmにある災害時の指揮所で、取材拠点にもなるオフサイトセンターが停電で機能せず、自治体向け避難情報が混乱した。メディアも情報把握に手間取り、住民には「情報隠し」の疑念も広がった。
同様の事態が起こりうる。【原発立地地域の地元紙】
政府や電力会社が把握したデータを速やかに提供し共有できるように、自治体とメディアが国に働きかけていくという認識で一致した。
(4)新聞10紙の報道分析
藤森研・専修大教授は、新聞10紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京、河北新報、岩手日報、福島民報、福島民友)の震災から3カ月間の報道について、時間的な変化や各社の傾向を分析した。うち、原発報道については・・・・
(a)報道内容について、「地元紙は津波被災を手厚く報じ、全国紙は原発と放射能ばかりだった」という批判がある。しかし各紙とも地震・津波と原発事故をほぼ同程度に扱い、バランスのとれた報道になっていた。
(b)原発事故の報道では、国民にパニックを起こさせないようにという配慮が、読者の意識とのずれを生んだ可能性はある。また政府の指示に従い、主体的に原発事故の現場に入域する判断を怠った点は批判されても仕方がない。福島原発の事故原因と初期対応の全容を明らかにすることは日本のメディアの責任だ。また今後の議論の前提として、1950年代からの原子力報道の自己検証も行うべきだ。
以上、五十嵐大介/川本裕司(編集委員)/澄川卓也/羽賀和紀「未曽有の大災害、どう報道 マスコミ倫理懇談会「震災・原発 検証メディアの責務」」(2011年10月14日付け朝日新聞)に拠る。
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