語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>「年内に冷温停止」は虚構 ~地下ダムと石棺が必要~

2011年10月28日 | 震災・原発事故
 「冷温停止」とは、圧力容器の中の圧力が1気圧、かつ、炉心の温度が摂氏100度以下になった状態、水が蒸発しない状態だ【注1】。
 ところが、いま圧力容器の底が抜けてメルトダウンしているから、水は溜まらない【注2】。「冷温停止」もへったくれもない【注3】。
 東電はいま圧力容器に水を入れているが、底に穴が開いているから、水は格納容器へ落ちていく。格納容器の底には炉心が溶けてドロドロになった溶融体があり、2,800度を超す崩壊熱を出しているから、入れた水が蒸気になって噴き出す。蒸気は圧力抑制室の中へ流れるが、圧力抑制室は壊れているから、そこからまた外に出る。
 溶け落ちた炉心は格納容器を溶かし、原子炉建屋に落ち、建屋の地面にめりこんでいるかもしれない。その場合、地下水との接触を断たないかぎり、汚染が外へ広がる。
 一刻も早く遮水壁を作らねばならなかった。しかし、東電は株主総会の前には口をつぐんでいたし、総会が終わってもやらない。ただ、工程表には付け加わった。ただし、できるのは2年後だという。間に合わない。

(1)1号機
 5月12日、東電も国も1号機のメルトダウンを認めた。

(2)2~3号機
 いまだに原子炉建屋内に入ることすらできない。1号機と同様、水がない可能性が高い。その場合、2~3号機もメルトダウンしている。あるいは、原子炉水位計どおり炉心の半分まで水がある場合、下半分は残っていて、その上にグズグズに溶けた上半分がのっかっている。もし、その状態で水が減って炉心が水の上に出ると、炉心がいっぺんに溶けて100トンの重量のあるものが水の上に落ちて「水蒸気爆発」が起きる。圧力容器も格納容器も壊れる。放射能が外へ噴き出す。防ぎようはない。

(3)4号機
 プールが宙ぶらりんの状態になっている。膨大な量の使用済み燃料が地震などで落ちたら、もうおしまいだ。

 要するに、冷温停止とかのレベルではない。4月17日に東電が工程表を発表した時点では炉心はまだ形があると思われていたが、5月の時点では冷温停止という概念は使えなくなった。
 6ヵ月たった今も、4,000kW以上の崩壊熱が出ている。
 汚染水も溜まっている【注4】。原子炉建屋は、地震であちこち割れているはずだ。水は地下に向かってどんどん漏れている【注5】。

 土壌や下水道汚泥の放射性物質は、処理できない。どこかに集めるしかない。核の墓場を作るしかない。
 福島原発第一は、最終的に石棺になるしかない。

 【注1】「冷温停止」は、もともと原子力専門家の間でしか使わなかったテクニカルタームだ。【語り手:小出裕章/聞き手:明石昇二郎「「冷温停止」「除染」という言葉に誤魔化されてはいけません」(「別冊宝島 原発の深い闇2」、宝島社、2011)】
 【注2】そんな状態に「冷温停止」という専門用語を使うこと自体、フクシマで起きていることを理解していない証左だ。【前掲インタビュー】
 【注3】10月22日、原子力安全・保安院は福島第一原発の「冷温停止」実現後3年間の安全対策をまとめた東電の計画書について専門家に評価を聞く意見聴取会を開いた。出席者から、「冷温停止」の定義などについて疑問が呈された。<工藤和彦・九州大特任教授(原子炉工学)は「本来の『冷温停止』は、圧力容器を開けても放射性物質が放出されない状態を指すもので、第一原発に適用すべきではない」と指摘。東之弘・いわき明星大教授(熱力学)も「(冷温停止の目安の一つの)圧力容器底部の温度は、内部の溶融した燃料の位置によって異なる可能性がある。内部状況をできるだけ早く把握するとともに、温度測定方法も検討すべきだ」と注文を付けた。> 【記事「東日本大震災:福島第1原発事故 冷温停止、定義に疑問 保安院聴取会で専門家ら」(2011年10月23日 毎日jp)】
 【注4】<さんざん宣伝されている「浄化装置」にしても、汚染水が消えてなくなるわけではなく、水の中の放射能を別の場所に移しただけの話です。原子炉を冷やすために外から水を入れると、入れた分だけ汚染水が増えるので、循環させているわけです。でも、循環させても汚染水が増えなくなっただけで、減りはしない。なのに、あたかも汚染水の量がものすごく減るかのように宣伝されていますね。皆さん、東電に錯覚させられている。>【前掲インタビュー】
 【注5】<必ず「地下ダム」は造らなければいけません。ですから、東電のいわゆる「工程表」にもすでに入っている。ただ、東電の工程表だと2年後にやることになっていいて、私はそれではあまりにも遅すぎると言っているのだけれども、必ずやるしかないんです。/地下ダムと石棺以外に、たぶん為すことはないです。>【前掲インタビュー】

 以上、語り手:小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)/聞き手:渡辺妙子(編集部)「東電がやるべきことは汚染の全体像を明らかにすることだ」(「週刊金曜日」2011年10月21日号)に拠る。

 【参考】「【震災】原発>年内に冷温停止しない理由
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コメント (2)
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