たまには、爽やかな話をしよう。
マー君こと田中将大(楽天)の今季の成績は、勝利数19、勝率.792、防御率1.27で、いずれも1位だ。
防御率は、稲尾和久の1.06に次ぐパ・リーグ歴代2位、両リーグを通じても歴代5位だ。1970年より後、初の歴代10傑入りだ。「考えられんな」と星野仙一・楽天監督は絶句した。
2007年の入団以来、投手タイトルとは無縁だった。それがなぜ今季、こんな好成績を残せたのか。
(1)モチヴェーション
昨年8月29日の西武戦で、右大胸筋を部分断裂した。全治3週間。これと共に、楽天のクライマックスシリーズ進出のわざかな望みは潰えた。
再開にあえぐチームを自宅のテレビで見守るだけの日々。俺は何をしているんだろう、というもどかしさで悔しい思いをした。ふがいない・・・・この時の思いが「1年間投げ抜く」決意、「誰よりもいい投手になる」という強いモチヴェーションにつながった。
(2)フォームの無駄を矯正
キャンプで追求したのは、力のロスのない投球フォーム、効率的なフォームだ。ポイントは左足の踏ん張りだ。軸足にためた力を逃さないこと。そして、右肘を高く保って、球をできるだけ前で放すこと。「よい形で投げることで体への負担が減り、結果的にいい球が行くはずだ」
207球の投げ込みなど、過去にない練習量をこなした。荒々しかったフォームは、日ごとに磨かれ、しなやかさと美しさを帯びていった。
それが、226回3分の1で27四球というずば抜けた制球力につながった。
右肘の位置が定まったことで、スプリット・フィンガード・ファストボールの落ちが鋭くなった。元々の決め球だったスライダーも、統一球効果で曲がりが大きくなった。キレが増した。
最速155kmの直球の数字に大きな変化はない。しかし、球を打者寄りで放すことで、昨季までにはなかったノビが生じた。
(3)効果
かくて、2球で追い込み、3球目で三振を奪う「3球勝負」が可能になった。
早いカウントからの勝負を続けるうちに、勝負勘も養われた。危険(打者の打ち気)を察知する嗅覚が鋭敏になった。「押すところは押し、引くところは引く。それができている」
1個のアウトにかける球数が減ったことが、27試合で14完投の離れ業につながっている。
四球の減少が見逃せない。27四球は、8.4イニングに1個のペース。昨季は4.8イニングに1個だから格段によくなった。
そして、奪三振率の向上。奪三振は241で、ダルビッシュに次ぐ2位だ。奪三振率も、9.58で、昨季の6.90とは比較にならない。
ピンチでは狙って三振を奪い、決定打を許さない。完投、完封が当たり前になった所以だ。
先発ローテを1年間守る、という目標はあっさり達成された。「今季は例年のようなしんどさはなかった」
(4)チーム一丸となって
野球は、一人でやるゲームではない。単純に相手を抑えても、味方の援護がなければ白星につながらない。
しかも、楽天は、12球団で一、二を争う貧打だ。
だが、田中が投げるときは、別のチームのように打った。9月以降は、平均で6点近い援護をもらい、6勝を上乗せした。
ふだんは同僚にちょっかいを出したり、「AKB48」に夢中になる若者が、マウンドに立つと鬼の形相に変わった。
マウンドでの、田中のあの勝利への気迫。あいつのために打ってやる、っていう気になるんだ。【山崎武司・(前)楽天選手】
(5)向上心
「今年は球が(統一球に)変わりましたからね」
「この成績が1年だけでは意味がない。来年も続けることが大事だと思う」
以上、渡辺祟(朝日新聞スポーツ部)「祝・三冠 勝利数、勝率、防御率 楽天・マー君「凄さの秘密」」(「週刊朝日」2011年月日号)
↓クリック、プリーズ。↓
マー君こと田中将大(楽天)の今季の成績は、勝利数19、勝率.792、防御率1.27で、いずれも1位だ。
防御率は、稲尾和久の1.06に次ぐパ・リーグ歴代2位、両リーグを通じても歴代5位だ。1970年より後、初の歴代10傑入りだ。「考えられんな」と星野仙一・楽天監督は絶句した。
2007年の入団以来、投手タイトルとは無縁だった。それがなぜ今季、こんな好成績を残せたのか。
(1)モチヴェーション
昨年8月29日の西武戦で、右大胸筋を部分断裂した。全治3週間。これと共に、楽天のクライマックスシリーズ進出のわざかな望みは潰えた。
再開にあえぐチームを自宅のテレビで見守るだけの日々。俺は何をしているんだろう、というもどかしさで悔しい思いをした。ふがいない・・・・この時の思いが「1年間投げ抜く」決意、「誰よりもいい投手になる」という強いモチヴェーションにつながった。
(2)フォームの無駄を矯正
キャンプで追求したのは、力のロスのない投球フォーム、効率的なフォームだ。ポイントは左足の踏ん張りだ。軸足にためた力を逃さないこと。そして、右肘を高く保って、球をできるだけ前で放すこと。「よい形で投げることで体への負担が減り、結果的にいい球が行くはずだ」
207球の投げ込みなど、過去にない練習量をこなした。荒々しかったフォームは、日ごとに磨かれ、しなやかさと美しさを帯びていった。
それが、226回3分の1で27四球というずば抜けた制球力につながった。
右肘の位置が定まったことで、スプリット・フィンガード・ファストボールの落ちが鋭くなった。元々の決め球だったスライダーも、統一球効果で曲がりが大きくなった。キレが増した。
最速155kmの直球の数字に大きな変化はない。しかし、球を打者寄りで放すことで、昨季までにはなかったノビが生じた。
(3)効果
かくて、2球で追い込み、3球目で三振を奪う「3球勝負」が可能になった。
早いカウントからの勝負を続けるうちに、勝負勘も養われた。危険(打者の打ち気)を察知する嗅覚が鋭敏になった。「押すところは押し、引くところは引く。それができている」
1個のアウトにかける球数が減ったことが、27試合で14完投の離れ業につながっている。
四球の減少が見逃せない。27四球は、8.4イニングに1個のペース。昨季は4.8イニングに1個だから格段によくなった。
そして、奪三振率の向上。奪三振は241で、ダルビッシュに次ぐ2位だ。奪三振率も、9.58で、昨季の6.90とは比較にならない。
ピンチでは狙って三振を奪い、決定打を許さない。完投、完封が当たり前になった所以だ。
先発ローテを1年間守る、という目標はあっさり達成された。「今季は例年のようなしんどさはなかった」
(4)チーム一丸となって
野球は、一人でやるゲームではない。単純に相手を抑えても、味方の援護がなければ白星につながらない。
しかも、楽天は、12球団で一、二を争う貧打だ。
だが、田中が投げるときは、別のチームのように打った。9月以降は、平均で6点近い援護をもらい、6勝を上乗せした。
ふだんは同僚にちょっかいを出したり、「AKB48」に夢中になる若者が、マウンドに立つと鬼の形相に変わった。
マウンドでの、田中のあの勝利への気迫。あいつのために打ってやる、っていう気になるんだ。【山崎武司・(前)楽天選手】
(5)向上心
「今年は球が(統一球に)変わりましたからね」
「この成績が1年だけでは意味がない。来年も続けることが大事だと思う」
以上、渡辺祟(朝日新聞スポーツ部)「祝・三冠 勝利数、勝率、防御率 楽天・マー君「凄さの秘密」」(「週刊朝日」2011年月日号)
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