語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【税】「個人課税」から「世帯課税」 ~税制「改悪」~

2014年04月01日 | 社会
 (1)政府が所得税改革の検討を始める、という。次のような改革だが、その方向は正しいか。
  (a)「個人課税」から「世帯課税」への移行。
  (b)配偶者控除の廃止・縮小

 (2)世界を見ると、経済協力開発機構(OECD)の主要24か国において、
  (a)個人課税・・・・日本、英国、カナダ、スウェーデン、オランダなど15か国。
  (b)個人・世帯選択・・・・米国、独国など5か国。
  (c)世帯課税・・・・仏国、ルクセンブルクなど4か国。
 70年代以降の制度移行の状況を見ると、
   ①「世帯課税」から「個人課税」へ・・・・9か国。
   ②「世帯課税」から「選択」へ・・・・2か国。
   ③「選択」から「世帯課税」へ・・・・1か国。
というように、次のように趨勢は「個人課税」へだ。その理由は、「個人課税」のほうが課税の中立性があるからだ。
 <例1>専業主婦が働こうとすると、「世帯課税」では累進税率が効いて不利になるが、「個人課税」では中立的。
 <例2>結婚についても、フランス式の「世帯課税」は有利(結婚ボーナス)に働くが、「個人課税」では中立的。

 (3)経済政策としては、税制ですべてに対応するのではなく、ほかの政策で対応し、税制はできるだけ中立性をもたらせるのが「常識」だ。仮に税制対応するときも、各種控除で対応するほうが簡素になるので望ましい。
 かかる理由から、個人課税を基本とし、必要な時には控除措置で対応するのが世界の常識になっている。
 つまり、(1)の政府案は世界の常識にまったく反している。

 (4)(1)の改革は、女性の社会進出を促進させることが一つの狙いとされている。
 しかし、本当に女性の社会進出促進を実現させたいならば、政府方針とは逆に、
  (a)所得税の基本は中立的である「個人課税」のまま、
  (b)配偶者控除を拡充すればよい。
 (b)により多少は税収が落ちるが、女性に働いてもらってその所得に課税して税収を増やすという「損して得とれ」方式で対応すればよい。
 にも拘わらず、目先のことしか考えられない財務官僚は、とにかく配偶者控除をなくして増税したい一心だ。それだけでは増税がミエミエなので、世帯課税にして少しばかりの減税を大きく見せたいのだ。
 
 (5)しかし、(1)のような所得税改革案ができると、結局増税になって、女性の社会親巣津を「後ろからスカートを踏む」形になってしまう。狡猾な財務官僚は、安倍政権の取り巻きが右寄りで、そうした人たちは個人課税より家族課税のほうがいいと信じていることをうまく利用して、「個人課税から世帯課税へ」を吹き込んでいるのだろう。
 世界の趨勢は、そうしたイデオロギーより税制の中立性を選んでいるので、この点でも日本は逆行している。 
 いずれにせよ、女性の社会進出という目的は達成できずに、最終的には増税になるような所得税「改悪」だ。
 そして、世帯課税の国では、所得税の持つ累進課税の効果が薄れて、所得格差に対応できなくなっていることを忘れてはいけない。

 (6)消費税に関しても、世界の国では消費税=一般財源なのだが、日本では社会保障目的税にする、という世界で例を見ない「改悪」を平気で行い、デフレ脱却前に消費増税を強行して、景気を中折れさせようとしている財務官僚だ。

□「財務官僚が狙っている所得税「改悪」 ~ドクターZは知っている~」(「週刊現代」2014年3月29日号)
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