(1)問題の手口1:マイナス情報非公表の欺瞞的募集。
(a)セブン-イレブンの説明会では、オーナーの月間所得を質問すると、「日販50、60万円なら、それが“最終利益”になります」と回答がある。それが月の所得か、という確認的問いに対しては、「いや、まぁ、利益です」と誤魔化す。利益と所得は違う、と追求すると、「うーん」と返事しない。質問にまともに答えず、「売上総利益分配方式」の説明に移る。そこに出てくるのは、あくまで店の利益額だ。いくら訊いても所得額は出てこない。だから、大半のオーナー希望者は、提示された「日販50、60万円」という数字が月収(夫妻の収入)かと勘違いしてしまう。第一のワナだ。「不明朗な利益分配」と「脱サラ初体験の甘さ」だ。
(b)「ほっともっと」(プレナス=本社福岡市、持ち帰り弁当の大手FC本部)のフランチャイズ募集のポスターには、月20万円とか30万円とか、所得を保証すると、「所得」とちゃんと書いてある。しかし、セブン-イレブンは、巧みに所得を言わない。脱サラの人は目安でいいから所得を知りたいのだが、絶対に言わない。(a)の募集説明には犯罪性がある。そこにみなが引っかかるのだから。
(c)現実には、賞味期限直前のおにぎり・弁当・サンドイッチ類を値引きして売る「見切り販売」をしてやっと生活できる状態だ。見切りに踏み切らなければ、退職金をつぎ込み、保険を解約し、借金をしなければやっていけない。
(2)問題の手口2:“にわか脱サラ”の弱みを狙う。
(a)セブン-イレブンは、1998年ごろから脱サラをターゲットにした大キャンペーンを展開してきた。当時、鈴木敏文・会長が「1年で新店を1,000店出せ!」と大号令をかけていた。バブル崩壊後、会社からリストラされた大量の「にわか脱サラ」をターゲットにしたのだ。「総額約400万円の開業資金で、セブン-イレブンが始められます」などと。
(b)2005年いっぱいで、「アントレ」誌上での大キャンペーンはピタッと終わった。この年の2月、ロスチャージ裁判で東京高裁が、「原告オーナーはセブン-イレブン会計を理解しておらず、契約は無効」と断じた(オーナー側の逆転勝訴)ことが影響している(推定)。
(c)東京タワーの隣の説明会場では、大音量の音楽をガンガン流し、「全世界で何万店の」などとPRビデオを流す。集団心理でモノを買わせる催眠商法に似ている。オーナー希望夫妻は、これから人生を賭けた大決断をする。冷静で慎重な判断力を求められるのだが、ディスコ会場のようなPRの世界に呑まれ、足が地につかなくなる。
(d)上場企業だから、まさか、と騙されてしまう。セブン-イレブンも持ち株会社セブン&アイ・ホールディングスも、東京証券取引所に上場した超優良企業だ。国内で15,000店も「成功店」があり、毎日テレビで見慣れている。そんな天下の大企業が、まさか違法、悪質なことなどしないだろう。
(e)鈴木会長が「セブンの顔」として新聞・雑誌・テレビに出まくり、「小売業は変化対応業だ」「セブン店は小売業の成功パッケージだ」「コンビニは永久に進化する」などと自画自賛を繰り返す。オーナー希望者たちは、この“カリスマ”の言葉を信じてしまうのだ。第二のワナである。「ブランドの魔力」に魅入らされ、「大企業だから安心」と疑問を持たなくなる。
(3)問題の手口3:経営委託期間の“アリバイづくり”。
(a)セブン商法の最大の問題は、どういう手口で契約書にハンコを押させているかだ。
(b)本当は契約書ですべてが確認できなければならない。利益分配もわからなければならない。ところが、セブン-イレブンは違う。セブン-イレブンの契約で問題なのは、利益分配が契約書に書かれていないことだ。その定義(売上総利益をもとにした利益分配)を解読するには、「付属説明書」の中の文脈から読み取らなくてはいけない。しかも、これだけでは不十分で、契約が済んだ後で渡される「システムマニュアル」に書いてある売上総利益の定義と付き合わせて初めて解読できる。それがセブン-イレブンのやり方だ。
(c)「付属説明書」も「システムマニュアル」も店舗経営の手引書にすぎない。しかも中身が膨大で、かつ、法的に効力のある契約書ではない。会社員を辞めたばかりの素人に、こんな手の込んだやり方で、契約文の裏まで理解しろ、と要求するのは、一種の騙しの手口だ。
(d)店舗オープン後3か月は、「経営委託」という試行期間だ。むろん、この時点では店舗オーナーたちは会社を辞め、加盟金や研修費も払っている。後戻りはできない。この期間中、セブン-イレブン側から契約書の説明や利益分配の解説はない。そこがミソだ。この期間中、契約書はないし、利益分配もない(固定給が支払われる)。店の経営に慣れたころに、本契約の運びとなり、そこで初めて契約書、付属明細書、システムマニュアルが揃う。利益分配にこのついては、契約書の第40条(「セブン-イレブン・チャージ」)に書いてある。付属明細書を引っ張り出さないと解読できない。この点をロスチャージ裁判で、最高裁が厳しく叩いていた。
(e)利益分配のマジックは、契約の後に起こる。委託経営が終わって、契約書にハンコを押す前、セブン-イレブンは普通の「原価方式」(一般の企業が採用する会計方式)の説明を行う。契約が済んだら、今度は「販売方式」(セブン-イレブンの取り分が高い「セブン-イレブン会計」)になる。すると、いきなり本部のチャージ(指導料)が高くなって、本部に有利になる。・・・・契約前には一切契約書の開示がない。企業秘密だと言う。
(f)この交渉は、店舗オーナー夫妻とセブン-イレブン社員との、密室でのやり取りになって、裁判になっても「言った、言わない」の水掛け論になる。
(g)現在、セブン-イレブン商法を規制するのは独占禁止法(不公正取引の防止)と中小小売商業振興法(重要情報の開示・説明の義務)しかない。だが、セブン-イレブン本部と店舗オーナーでは、カネと情報量において比較すべくもない。裁判の証拠集めでも、セブン-イレブン本部が圧倒的に有利で、オーナー側は手も足もでない。ここに最大のワナがある。
(h)複雑でわかりにくい「裏契約書」をセブン-イレブンが作る理由は何か。
①契約書だと簡単に変更できないが、システムマニュアルなら本部側の意向で随時変更でき、オーナー支配と利益搾取の道具に利用できるからだ。
②最大の機密であり、後ろめたい高額チャージ搾取の仕組みを隠蔽したいからだ。創業期のオーナーたちに契約書を手渡ししなかったのは、これがバレてしまうとオーナーになる人間がいなくなるからだ。いったんハンコを押せば、5年、10年と、24時間営業に追いまくられる。
□渡部仁「セブン-イレブン“鈴木帝国の落日” 詐欺まがい契約の実態を暴く」(「週刊金曜日」2014年4月11日号)
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【参考】
「【セブン-イレブン】詐欺まがい契約の実態 ~鈴木帝国の落日~」
(a)セブン-イレブンの説明会では、オーナーの月間所得を質問すると、「日販50、60万円なら、それが“最終利益”になります」と回答がある。それが月の所得か、という確認的問いに対しては、「いや、まぁ、利益です」と誤魔化す。利益と所得は違う、と追求すると、「うーん」と返事しない。質問にまともに答えず、「売上総利益分配方式」の説明に移る。そこに出てくるのは、あくまで店の利益額だ。いくら訊いても所得額は出てこない。だから、大半のオーナー希望者は、提示された「日販50、60万円」という数字が月収(夫妻の収入)かと勘違いしてしまう。第一のワナだ。「不明朗な利益分配」と「脱サラ初体験の甘さ」だ。
(b)「ほっともっと」(プレナス=本社福岡市、持ち帰り弁当の大手FC本部)のフランチャイズ募集のポスターには、月20万円とか30万円とか、所得を保証すると、「所得」とちゃんと書いてある。しかし、セブン-イレブンは、巧みに所得を言わない。脱サラの人は目安でいいから所得を知りたいのだが、絶対に言わない。(a)の募集説明には犯罪性がある。そこにみなが引っかかるのだから。
(c)現実には、賞味期限直前のおにぎり・弁当・サンドイッチ類を値引きして売る「見切り販売」をしてやっと生活できる状態だ。見切りに踏み切らなければ、退職金をつぎ込み、保険を解約し、借金をしなければやっていけない。
(2)問題の手口2:“にわか脱サラ”の弱みを狙う。
(a)セブン-イレブンは、1998年ごろから脱サラをターゲットにした大キャンペーンを展開してきた。当時、鈴木敏文・会長が「1年で新店を1,000店出せ!」と大号令をかけていた。バブル崩壊後、会社からリストラされた大量の「にわか脱サラ」をターゲットにしたのだ。「総額約400万円の開業資金で、セブン-イレブンが始められます」などと。
(b)2005年いっぱいで、「アントレ」誌上での大キャンペーンはピタッと終わった。この年の2月、ロスチャージ裁判で東京高裁が、「原告オーナーはセブン-イレブン会計を理解しておらず、契約は無効」と断じた(オーナー側の逆転勝訴)ことが影響している(推定)。
(c)東京タワーの隣の説明会場では、大音量の音楽をガンガン流し、「全世界で何万店の」などとPRビデオを流す。集団心理でモノを買わせる催眠商法に似ている。オーナー希望夫妻は、これから人生を賭けた大決断をする。冷静で慎重な判断力を求められるのだが、ディスコ会場のようなPRの世界に呑まれ、足が地につかなくなる。
(d)上場企業だから、まさか、と騙されてしまう。セブン-イレブンも持ち株会社セブン&アイ・ホールディングスも、東京証券取引所に上場した超優良企業だ。国内で15,000店も「成功店」があり、毎日テレビで見慣れている。そんな天下の大企業が、まさか違法、悪質なことなどしないだろう。
(e)鈴木会長が「セブンの顔」として新聞・雑誌・テレビに出まくり、「小売業は変化対応業だ」「セブン店は小売業の成功パッケージだ」「コンビニは永久に進化する」などと自画自賛を繰り返す。オーナー希望者たちは、この“カリスマ”の言葉を信じてしまうのだ。第二のワナである。「ブランドの魔力」に魅入らされ、「大企業だから安心」と疑問を持たなくなる。
(3)問題の手口3:経営委託期間の“アリバイづくり”。
(a)セブン商法の最大の問題は、どういう手口で契約書にハンコを押させているかだ。
(b)本当は契約書ですべてが確認できなければならない。利益分配もわからなければならない。ところが、セブン-イレブンは違う。セブン-イレブンの契約で問題なのは、利益分配が契約書に書かれていないことだ。その定義(売上総利益をもとにした利益分配)を解読するには、「付属説明書」の中の文脈から読み取らなくてはいけない。しかも、これだけでは不十分で、契約が済んだ後で渡される「システムマニュアル」に書いてある売上総利益の定義と付き合わせて初めて解読できる。それがセブン-イレブンのやり方だ。
(c)「付属説明書」も「システムマニュアル」も店舗経営の手引書にすぎない。しかも中身が膨大で、かつ、法的に効力のある契約書ではない。会社員を辞めたばかりの素人に、こんな手の込んだやり方で、契約文の裏まで理解しろ、と要求するのは、一種の騙しの手口だ。
(d)店舗オープン後3か月は、「経営委託」という試行期間だ。むろん、この時点では店舗オーナーたちは会社を辞め、加盟金や研修費も払っている。後戻りはできない。この期間中、セブン-イレブン側から契約書の説明や利益分配の解説はない。そこがミソだ。この期間中、契約書はないし、利益分配もない(固定給が支払われる)。店の経営に慣れたころに、本契約の運びとなり、そこで初めて契約書、付属明細書、システムマニュアルが揃う。利益分配にこのついては、契約書の第40条(「セブン-イレブン・チャージ」)に書いてある。付属明細書を引っ張り出さないと解読できない。この点をロスチャージ裁判で、最高裁が厳しく叩いていた。
(e)利益分配のマジックは、契約の後に起こる。委託経営が終わって、契約書にハンコを押す前、セブン-イレブンは普通の「原価方式」(一般の企業が採用する会計方式)の説明を行う。契約が済んだら、今度は「販売方式」(セブン-イレブンの取り分が高い「セブン-イレブン会計」)になる。すると、いきなり本部のチャージ(指導料)が高くなって、本部に有利になる。・・・・契約前には一切契約書の開示がない。企業秘密だと言う。
(f)この交渉は、店舗オーナー夫妻とセブン-イレブン社員との、密室でのやり取りになって、裁判になっても「言った、言わない」の水掛け論になる。
(g)現在、セブン-イレブン商法を規制するのは独占禁止法(不公正取引の防止)と中小小売商業振興法(重要情報の開示・説明の義務)しかない。だが、セブン-イレブン本部と店舗オーナーでは、カネと情報量において比較すべくもない。裁判の証拠集めでも、セブン-イレブン本部が圧倒的に有利で、オーナー側は手も足もでない。ここに最大のワナがある。
(h)複雑でわかりにくい「裏契約書」をセブン-イレブンが作る理由は何か。
①契約書だと簡単に変更できないが、システムマニュアルなら本部側の意向で随時変更でき、オーナー支配と利益搾取の道具に利用できるからだ。
②最大の機密であり、後ろめたい高額チャージ搾取の仕組みを隠蔽したいからだ。創業期のオーナーたちに契約書を手渡ししなかったのは、これがバレてしまうとオーナーになる人間がいなくなるからだ。いったんハンコを押せば、5年、10年と、24時間営業に追いまくられる。
□渡部仁「セブン-イレブン“鈴木帝国の落日” 詐欺まがい契約の実態を暴く」(「週刊金曜日」2014年4月11日号)
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【参考】
「【セブン-イレブン】詐欺まがい契約の実態 ~鈴木帝国の落日~」