語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【復興】支援を東大と京大が削減 ~これに続く他大学~

2014年04月16日 | 社会
 (1)東日本大震災からの復興のため、政府は、2012年度から2年間、臨時特例として公務員給与を平均7.8%返上させ、復興資金とすることにした。
 政府は、国立大学法人(4大学共同利用機関法人を含む90法人)に対しても、同率の給与の返上を要請した。その基盤となる経費は、今も年間総額が1兆円を超える運営費交付によって賄われているからだ。
 しかし、その要請にしぶしぶながらも応じた大学は9割程度にとどまった。

 (2)「世界のリーディング大学」を自任する東大と京大は、本来の研究や教育によって「社会に貢献する」ことの重要さを文書で表明し、返上比率を独自に縮小した。
 その結果、政府が想定しなかった事態が惹起した。
 政府のもうひとつの重要方針である公的機関の「総人件費削減」計画に支障が生じたのだ。
 この方針は、「『小さくて効率的な政府』への道筋を確かなものとするため」、国立大学法人や独立行政法人などの役職員の給与を、国家公務員と同程度になるよう見直しを義務づけたもの。ところが、東大や京大では、復興資金協力のための給与の削減率をとりわけ低く抑えたため、国会公務員の給与比率(対国家公務員ラスパイレス指数)を上回ってしまったのだ。

 (3)本来なら文部科学大臣は、両大学に対して、
  (a)復興への協力が十分ではなく、
  (b)しかも政府への「行革方針」に従っていない、
として、是正を勧告するのが筋だ。
 ところが、両大学の「給与水準」に対するコメント(「主務大臣の検証結果」)は、いずれも「適正」または「概ね適正」となっている。政府方針への二重の違反に対し、目をつぶるどころか、違反を是認する奇妙なコメントを出している。

 (4)(3)の背景に、文科省と国立大学の癒着がある。
 国立大学は文科省にとっての天下り先の一つだ。幹部職員を出向させることで本省の人事ローテーションを調整したり、人件費を浮かすこともできる重要な職場だ。だから、この程度のお目こぼしは当然、というわけだ。
 馴れ合い関係の下での文科省の弱腰を目の当たりにすれば、他の国立大学でも、政府方針に従うのは無意味と考えることになる、当然。かくて、
  (a)臨時特例の期間中に給与の返上を撤廃・・・・北海道教育大学、徳島大学、山形大学、東京農工大学、福岡教育大学。
  (b)削減された給与の全部または一部を賞与に当たる勤勉手当で教職員に返還・・・・埼玉大学、東京学芸大学、名古屋大学、九州大学。
  (c)一時金や地域手当の名目で返還・・・・島根大学、山口大学、岡山大学。

 (5)政府が求める国家公務員並みの給与削減を拒否したところで、何のお咎めもないのだから、この種の動きに同調する国立大学が、今後さらに、雪崩を打って続出する可能性が高い。
 2011年度の全国の国立大学法人の人件費の総額は、1兆3,966億円だった。その8割に当たる1兆741億円は、税金によって補填されている。
 大学人は、税金によって禄を食みながら、自らの身を削ってまで復興に協力する意思はない。天下の東大、京大がその事実を率先して明らかにしている。

□岩瀬達哉「東大と京大がリードする「復興支援の削減」に他大学も追随しはじめた ~ジャーナリストの目第202回~」(「週刊現代」2014年4月26日号)
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