(1)ビットコイン取引所「マウント・ゴックス」の経営破綻が、予想外の展開を見せている。
3月14日、破綻したマウント社に対し、被害者の投資家たちがカナダで損害賠償の集団訴訟を提訴。その賠償請求先がマウント社のみならず、みずほ銀行にまで向けられた。日本の金融界は騒然となった。
加えて、同日、すでに取引所を訴えていた米国の投資家も新たにみずほを提訴した。グレゴリー・グリーン(イリノイ州在住の投資家)は、マウント社を相手取っていち早く25,000ドルの損害賠償を請求していたが、みずほ相手の訴状を提出し直した。その追加の提訴理由は次のとおり。
「みずほが、マウント社の不正を知りながらサービスを提供して利益を得ていた」
(2)なぜこんな羽目になったのか。
そもそも銀行は、マウント・ゴックスの口座を開設し、ビットコインの投資家たちの振り込みや配当などの送金手続きをするだけ。といっても、何千万単位の巨額の出し入れが頻繁にあったため、大きな手数料収入が見込める。だから、おいしい口座でもあって、一時は他の銀行にも口座があった。
しかし、当然のごとく仮想通貨の取引上のトラブルが頻発。
それで、投資家から銀行に苦情が寄せられるようになった。仮想通貨はマネーロンダリングに利用されている疑いもあるという情報も上がってきた。で、他行は2年ほど前、口座そのものを解約してもらおうと、交渉を始めた。早いところでは1年半ほど前に口座を閉じていた。だが、みずほはその対応が遅かった。
(3)問題の放置はみずほのお家芸だ。
結果的にそれが裏目に出た。みずほ銀行がこんどの訴訟の対象になったのも、そのせいだ。
昨年半ばには、すでに米国土安全保障省が取引上口座の資産を差し押さえ、一時的に米ドルの引き出しがストップされたことがある。
ところが、みずほの対応は後手、後手。本格的な口座解約交渉は、今年1月、マルク・カルプレス・マウント社代表と担当者が話し合った。しかも、その日本語のやり取りの音声録音が、インターネット上に流出してしまったのだ。
「銀行としては御社の口座を閉鎖したいと考えていると。以前からお伝えしているとおり」
みずほの担当者がそう迫り、
「弁護士と話したところ、閉鎖する必要はないと言われたので、当社としてはそのまま維持したいと考えている」
とカルプレス(マウント社)が応じる音声がネットで広まった。
(4)みずほにしてみれば、昨年来の暴力団がらみの反社会取引発覚で金融庁から大目玉をくらったばかり。マネーロンダリングの疑いのあるマウント社を放っておくわけにはできず、それを理由に口座の閉鎖を強行しようとしたわけだ。
が、それは裏を返せば、これまで不正を知っていた証左にもなる。
で、カナダや米国の投資家たちから、そこを突っ込まれ、訴訟を起こされたのだ。
(5)みずほにしてみれば、とんだとばっちり、と言いたいところだろう。が、そうとも言い切れない部分がある。
暴力団との取引と同じく、実態に気がついたとき、いかに迅速に対応できるか、さらにどううまく取引を断るか、そこが肝心だ。
やり方次第では、問題がこじれる。
反社会的な相手とうすうす分かっていても、確証がないと名誉毀損や人権侵害で逆に訴えられる危険性もある。
マウント社の場合も、どうやればトラブルなく口座を閉鎖できるか、みずほはもっと素早く緻密にそこを検討すべきだった。甘かった、というほかはない。
□森功「音声データまで流出! みずほがまた「問題放置」で巨額賠償の危機 ~ジャーナリストの目第201回~」(「週刊現代」2014年4月12・19日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【野口悠紀雄】仮想通貨が財政ファイナンスを阻止 ~経済政策と金融政策~」
「【野口悠紀雄】ビットコインが持つ経済価値はどの程度か?」
「【野口悠紀雄】ビットコインは地球通貨の夢を見るか?」
「【野口悠紀雄】ビットコインに関して政府がなすべきこと」
「【野口悠紀雄】ビットコインに関する深刻な誤報と誤解」
「【野口悠紀雄】ビットコインは理想通貨か徒花か?」
「【仮想通貨】ビットコインは中国経済をどう変えるか?」
「【仮想通貨】ビットコインは円を駆逐するか?」
3月14日、破綻したマウント社に対し、被害者の投資家たちがカナダで損害賠償の集団訴訟を提訴。その賠償請求先がマウント社のみならず、みずほ銀行にまで向けられた。日本の金融界は騒然となった。
加えて、同日、すでに取引所を訴えていた米国の投資家も新たにみずほを提訴した。グレゴリー・グリーン(イリノイ州在住の投資家)は、マウント社を相手取っていち早く25,000ドルの損害賠償を請求していたが、みずほ相手の訴状を提出し直した。その追加の提訴理由は次のとおり。
「みずほが、マウント社の不正を知りながらサービスを提供して利益を得ていた」
(2)なぜこんな羽目になったのか。
そもそも銀行は、マウント・ゴックスの口座を開設し、ビットコインの投資家たちの振り込みや配当などの送金手続きをするだけ。といっても、何千万単位の巨額の出し入れが頻繁にあったため、大きな手数料収入が見込める。だから、おいしい口座でもあって、一時は他の銀行にも口座があった。
しかし、当然のごとく仮想通貨の取引上のトラブルが頻発。
それで、投資家から銀行に苦情が寄せられるようになった。仮想通貨はマネーロンダリングに利用されている疑いもあるという情報も上がってきた。で、他行は2年ほど前、口座そのものを解約してもらおうと、交渉を始めた。早いところでは1年半ほど前に口座を閉じていた。だが、みずほはその対応が遅かった。
(3)問題の放置はみずほのお家芸だ。
結果的にそれが裏目に出た。みずほ銀行がこんどの訴訟の対象になったのも、そのせいだ。
昨年半ばには、すでに米国土安全保障省が取引上口座の資産を差し押さえ、一時的に米ドルの引き出しがストップされたことがある。
ところが、みずほの対応は後手、後手。本格的な口座解約交渉は、今年1月、マルク・カルプレス・マウント社代表と担当者が話し合った。しかも、その日本語のやり取りの音声録音が、インターネット上に流出してしまったのだ。
「銀行としては御社の口座を閉鎖したいと考えていると。以前からお伝えしているとおり」
みずほの担当者がそう迫り、
「弁護士と話したところ、閉鎖する必要はないと言われたので、当社としてはそのまま維持したいと考えている」
とカルプレス(マウント社)が応じる音声がネットで広まった。
(4)みずほにしてみれば、昨年来の暴力団がらみの反社会取引発覚で金融庁から大目玉をくらったばかり。マネーロンダリングの疑いのあるマウント社を放っておくわけにはできず、それを理由に口座の閉鎖を強行しようとしたわけだ。
が、それは裏を返せば、これまで不正を知っていた証左にもなる。
で、カナダや米国の投資家たちから、そこを突っ込まれ、訴訟を起こされたのだ。
(5)みずほにしてみれば、とんだとばっちり、と言いたいところだろう。が、そうとも言い切れない部分がある。
暴力団との取引と同じく、実態に気がついたとき、いかに迅速に対応できるか、さらにどううまく取引を断るか、そこが肝心だ。
やり方次第では、問題がこじれる。
反社会的な相手とうすうす分かっていても、確証がないと名誉毀損や人権侵害で逆に訴えられる危険性もある。
マウント社の場合も、どうやればトラブルなく口座を閉鎖できるか、みずほはもっと素早く緻密にそこを検討すべきだった。甘かった、というほかはない。
□森功「音声データまで流出! みずほがまた「問題放置」で巨額賠償の危機 ~ジャーナリストの目第201回~」(「週刊現代」2014年4月12・19日号)
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【参考】
「【野口悠紀雄】仮想通貨が財政ファイナンスを阻止 ~経済政策と金融政策~」
「【野口悠紀雄】ビットコインが持つ経済価値はどの程度か?」
「【野口悠紀雄】ビットコインは地球通貨の夢を見るか?」
「【野口悠紀雄】ビットコインに関して政府がなすべきこと」
「【野口悠紀雄】ビットコインに関する深刻な誤報と誤解」
「【野口悠紀雄】ビットコインは理想通貨か徒花か?」
「【仮想通貨】ビットコインは中国経済をどう変えるか?」
「【仮想通貨】ビットコインは円を駆逐するか?」