語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~

2014年04月14日 | 社会
 (1)アベノミクスの三本の矢は、
  (a)金融緩和 → 昨年の初め、株高と円安が進み、一気に景気浮揚への期待が高まった。
  (b)機動的財政出動・・・・借金頼みの公共事業のバラマキ → 建設分野ではバブルが起きるほどの好況。
  (c)成長戦略
 成長戦略は、効果が出るまでに時間がかかる。本来は第一の矢として最初に放つべきだった。安部総理最初のチャレンジは政権発足後半年の昨年6月、鳴り物入りで発表した。が、中身がなくて、発表の最中に株価大暴落という大失態となった。安部総理の成長戦略への期待がガタ落ちになった瞬間だった。
 これが一度目の挑戦であり、その失敗だ。

 (2)慌てた官僚は、「実はこの成長戦略は本物ではない。本物は秋に出す」と言い訳し、秋の臨時国会は「成長戦略国会」と銘打った。
 しかし、二度目の挑戦も何も出てこないまま終わった。

 (3)今年の通常国会は、安倍政権によって「好循環実現国会」と名付けられた。「『成長戦略』が不十分なわけではない。成長への好循環につなげるための最後の一押しが足りないだけだ。それを今国会でやる」という言い訳のための命名だ。
 しかし、2013年度補正と2014年度本予算は、ただのバラマキばかり。三度目の挑戦の目玉となる「国家戦略特区」も中途半端なもので終わった。これで日本の成長率が上がる、という識者はいない。

 (4)(1)-(c)に期待できなければ、(a)と(b)しかない。
 しかし、カネをジャブジャブにして、国の借金をどんどん増やしても、人手不足で公共事業の消化もままならない。
 企業も、投資する資金はあっても、付加価値を高めるイノベーションがないので、結局コストカットへと再び向かう。
 公共事業のためにも民間企業のためにも安い労働力が必要ということになり、建設分野への外国人労働者活用の拡大が決まった。

 (5)人々の生活を高めるために最も重要なのは、高い給料をもらえる職場の創出だ。
 その意味では、付加価値の低い分野で、人手不足という理由だけで外国人を多数流入させるのは、本筋を離れた一時しのぎにでしかない。このままでは、昔のように公共事業に頼る経済に逆戻りするだけだ。

 (6)で、新たな対策・・・・ということなのか、ここへきて武器輸出と原発輸出の動きが加速している。
 武器輸出三原則の廃止で、武器輸出が原則禁止から原則解禁になった。水面下の動きが一気に表面化してきた。
 米国だけではない。英、仏、豪、印、フィリピン、ベトナム、トルコなどいたるところで企業間、政府間で武器や武器技術輸出の相談が始まっている。
 今や、(1)-(c)の三本柱は、次のものになった感すらある。
   ①武器
   ②原発
   ③外国人
 一頃三本柱といわれた「医療・農業・電力」の3分野はどうなったか。利権にまみれた自民党族議員と官僚たちは、引き続き、本丸は死守するつもりだ。

 (7)安部総理いわく、「岩盤規制を打ち破るドリルの刃になる」。
 これまで三度失敗した成長戦略。
 四度目の挑戦は6月に出る。
 しかし、「武器・原発・外国人」の成長戦略をあなた方は信じることができるか?
 
□古賀茂明「成長戦略は「武器・原発・外国人」 ~官々愕々第105回~」(「週刊現代」2014年4月26日号)
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 【参考】
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
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