(1)「アベノミクスの成果が確実に波及している」
5月20日、記者会見で、茂木敏充・経済産業大臣は胸を張り、東証一部上場企業の46.7%がベアを実施しした、という独自の「春闘中間集計」を発表した。
新聞、テレビはこぞってこの調査結果を報じた。ある報道盆組では、コメンテーターの学者が、「安部総理は企業に賃上げを働きかけてきた。企業が政府に協力した結果です」とヨイショした。
しかし、大多数のサラリーマンは眉にツバをつけている。とっくに、賃上げが夢物語だと知っているからだ。
それでもなお、政府は「サラリーマンの給料は上がっている」と世論操作を続けている。
(2)経産省の大嘘。
発表資料によれば、調査対象の東証一部上場企業は1,762社。そのうち回答したのは927社で、うち「ベアを行った」企業は399社(5月14日現在)だ。
「回答しなかった企業」がベアを実施したとは考えにくい。
してみると、1,762社中399社がベアを実施した(ベア実施は22%)と言うべきだ。
連合の集計(6月2日現在)でも、ベア実施で妥結したのは8,753組合中1,404組合(16%)にとどまる。
(3)奇妙なことに、経産省の資料には<平成26年度のベースアップ実施企業割合が46.7%>とはっきり書いてあるのに、それをヨイショする新聞は各紙ともベア実施企業の割合を「43%」と報じた。
食い違いの原因は何か。
理由は「分母」の違いだ。新聞は割合を計算する際、東証一部上場の全企業ではなく、「回答企業」(927社)を分母にしている。これで22%のはずが、「43%」に水増しされた。
ところが、経産省はそれでもまだ足りない、と考えたのか、回答企業数からわざわざ「賃上げしなかった企業」を除外し、「何らかの賃上げを行った企業」(855社)を分母にして「46.7%」という数字をひねり出した。
二重の水増しの結果、「大企業のほぼ半数がベアを実施した」という印象を国民に植え付けようとしたのだ。
(4)(3)だけにとどまらない。
経産省は399社というベア実施企業の数字辞退にもゲタを履かせている。
ベースアップは一時金(ボーナス)や手当ではなく、基本給そのものの引き上げのことだ。
ところが、経産省の「ベア実施企業」には、定期昇給や臨時手当を出しただけのケースまで含まれていた。
厳密に言えば、ベアは賃金表の改訂を伴うものだが、その手続きには手間がかかる。そのため、企業が「当社は手当として支給したが、実質的にはベアと同じ意味だ」と回答すれば、手当もベアに含めている。【調査を担当した同省経済産業政策局産業人材対策室の担当者】
定昇と一時金・手当を混同してベアとする経産省の「独自基準」を知ったら、労働基準局は目を剥いて驚くに違いない。「味噌もクソも一緒にする」とは、けだしかくのごときか。
(5)さらに経産省は、ベア実施企業のうち、引き上げ額1,000塩以上が8割に達し、「近年にない賃上げが実現した」と絶賛した。
実際は、中小企業全体を含めた勤労者全体で見ると、収入は大きく減っている。この事実は、政府の公式統計からも明らかだ。
総務省の家計調査報告によれば、「2人以上の勤労者世帯」の4月の実収入(世帯合計)は平均463,964円で、昨年同月より15,890円も減った。7.1%もの「近年にない大幅ダウン」なのだ。7か月連続マイナスだ。
どう誤魔化そうとしても、「アベのベア」は賃下げのことなのだ。
□記事「「ベア企業47%」経産省調査の詐術」(「週刊ポスト」2014年6月20日号)
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5月20日、記者会見で、茂木敏充・経済産業大臣は胸を張り、東証一部上場企業の46.7%がベアを実施しした、という独自の「春闘中間集計」を発表した。
新聞、テレビはこぞってこの調査結果を報じた。ある報道盆組では、コメンテーターの学者が、「安部総理は企業に賃上げを働きかけてきた。企業が政府に協力した結果です」とヨイショした。
しかし、大多数のサラリーマンは眉にツバをつけている。とっくに、賃上げが夢物語だと知っているからだ。
それでもなお、政府は「サラリーマンの給料は上がっている」と世論操作を続けている。
(2)経産省の大嘘。
発表資料によれば、調査対象の東証一部上場企業は1,762社。そのうち回答したのは927社で、うち「ベアを行った」企業は399社(5月14日現在)だ。
「回答しなかった企業」がベアを実施したとは考えにくい。
してみると、1,762社中399社がベアを実施した(ベア実施は22%)と言うべきだ。
連合の集計(6月2日現在)でも、ベア実施で妥結したのは8,753組合中1,404組合(16%)にとどまる。
(3)奇妙なことに、経産省の資料には<平成26年度のベースアップ実施企業割合が46.7%>とはっきり書いてあるのに、それをヨイショする新聞は各紙ともベア実施企業の割合を「43%」と報じた。
食い違いの原因は何か。
理由は「分母」の違いだ。新聞は割合を計算する際、東証一部上場の全企業ではなく、「回答企業」(927社)を分母にしている。これで22%のはずが、「43%」に水増しされた。
ところが、経産省はそれでもまだ足りない、と考えたのか、回答企業数からわざわざ「賃上げしなかった企業」を除外し、「何らかの賃上げを行った企業」(855社)を分母にして「46.7%」という数字をひねり出した。
二重の水増しの結果、「大企業のほぼ半数がベアを実施した」という印象を国民に植え付けようとしたのだ。
(4)(3)だけにとどまらない。
経産省は399社というベア実施企業の数字辞退にもゲタを履かせている。
ベースアップは一時金(ボーナス)や手当ではなく、基本給そのものの引き上げのことだ。
ところが、経産省の「ベア実施企業」には、定期昇給や臨時手当を出しただけのケースまで含まれていた。
厳密に言えば、ベアは賃金表の改訂を伴うものだが、その手続きには手間がかかる。そのため、企業が「当社は手当として支給したが、実質的にはベアと同じ意味だ」と回答すれば、手当もベアに含めている。【調査を担当した同省経済産業政策局産業人材対策室の担当者】
定昇と一時金・手当を混同してベアとする経産省の「独自基準」を知ったら、労働基準局は目を剥いて驚くに違いない。「味噌もクソも一緒にする」とは、けだしかくのごときか。
(5)さらに経産省は、ベア実施企業のうち、引き上げ額1,000塩以上が8割に達し、「近年にない賃上げが実現した」と絶賛した。
実際は、中小企業全体を含めた勤労者全体で見ると、収入は大きく減っている。この事実は、政府の公式統計からも明らかだ。
総務省の家計調査報告によれば、「2人以上の勤労者世帯」の4月の実収入(世帯合計)は平均463,964円で、昨年同月より15,890円も減った。7.1%もの「近年にない大幅ダウン」なのだ。7か月連続マイナスだ。
どう誤魔化そうとしても、「アベのベア」は賃下げのことなのだ。
□記事「「ベア企業47%」経産省調査の詐術」(「週刊ポスト」2014年6月20日号)
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