語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~

2014年06月13日 | 震災・原発事故
 (1)「東電:10月から全国で電力販売」
 「乱戦 電力小売り」
 ・・・・など、新聞各紙に電力自由化に関する派手な見出しが躍っている。
 しかし、疑問な点がいくつかある。
 
 (2)確かに、今国会で審議されている電気事業法改正案の柱は「2016年からの消費者向け電力販売自由化」だ。自由化されれば、競争になり、料金は下がるかもしれない。
 しかし、小売り以外の大口需要家向けの電力販売はとっくの昔に自由化されているのに、大手電力会社間での競争はまったく生じなかった。
 原発依存度が異常に高かった関西電力は、原発停止で供給力に不安が生じ、さらに電力料金も値上げした。本来なら、供給力に余裕のある北陸電力などが。関電管内で事業者向けに電力販売の営業攻勢をかけそうだが、そうはなっていない。自由化は競争を必ずしも意味しないのだ。
 
 (3)今回は、関電や中部電が東電管内で発電や小売りに参入するとか、東電も全国で小売りを始めると報じられるが、そこにも疑問がある。
 東電以外の大手電力会社と東電との間の競争は起きるのに、東電以外の電力会社の間(<例>関電と北陸電)の競争は起きない。
 さらに、東電は、福島第一原発の事故処理を自分ではできず、国民の税金が投入されている。それなのに、なぜ発電所を作ったり、他の地域に出かけていく余裕があるのか。
 
 (4)(2)や(3)の疑問に答えるカギが、「電気事業連合会」と「経済産業省」の微妙な癒着にある。
 電事連は、大手電力会社が集まって自分たちの利権を守ろうとする団体だ。先進国ではありえない独占企業の連合体だが、任意団体なので経理内容や会議内容は秘密だ。
 しかし、ヒントはいくつかある。
 国会事故調査委員会報告書のp.510以降によれば、福島原発事故以前に電事連が談合して、耐震設計審査指針を骨抜きにしようとしていた。また、日経新聞によれば、原子力規制委員会が、各電力会社に対して個別の原発ごとに地震想定を大幅に引き上げるように指示したのに、電力会社は「談合」して見直しに応じないという態度を続けていた。
 つまり、電事連の談合組織としての機能は、今日も続いている。

 (5)実は、大手電力会社が東電抜きの会議を頻繁に開いている。
 何故か。
 東電は、国の出資を受けて経産省の子会社となり、役員に経産省の役人もいる。電事連の会議で談合の打ち合わせをやったら、東電から経産省に筒抜けになる。そこで、危ない話をするときには東電を外さざるを得ない。電事連は、事実上、東電抜きの談合組織になったのだ。
 以上のように考えれば、今起きていることは非常にわかりやすい。
 東電は、他の電力会社にとってはもはや仲間ではない。そこで、中部電や関電は東電管内で競争を仕掛ける。一方、経産省は、自分の子会社である東電に税金を投入し、他の電力会社管内でもビジネスを拡大しようとする。

 (6)むろん、(5)の構図では東電以外の電力会社間の競争は進まない。経産省は、他の電力会社に天下りを送っているから、東電の営業攻勢もほどほどのものになるだろう。 
 東電以外の大手電力会社は、談合で事実上地域独占を温存して利益を確保し、余裕をもって競争できる。
 東電は、何兆円もの税金を投入してもらって、経産省と二人三脚で暴れる。
 これでは大手電力会社と競争する新電力会社は大きな勢力になりにくい。
 消費者が、安くてサービスのよい電力会社を自由に選べる時代が本当に来るのか。
 そのためには、電事連解体と、経産省から規制権限を剥奪できるかどうかがカギになる。」

□古賀茂明「電力会社の歪んだ「競争」 ~官々愕々第112回~」(「週刊現代」2014年6月21日号)
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 【参考】
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~


【81】05正義と権力

2014年06月13日 | ●アランの言葉
 法は監獄や絞首台や銃殺をほしがる、ここからはてしない不幸が生じる、最大の不幸はおそろらく正義は権力によってできあがるというところにある【注】。
 
 【注】力なき正義は無効であり、正義なき力は圧制である。力なき正義は反抗を招く。正義なき力は弾劾される。【ブレーズ・パスカル】

□アラン(小林秀雄・訳)『精神と情熱に関する八十一章』(創元ライブラリ、1997)の【05-11】
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 【参考】
【81】04非常にむずかしい問題でも
【81】03論争
【81】02情熱や情熱の危機
【81】01精神と情熱に関する八十一章

    薔薇(シャーロット)