(18)憲法9条に関しては、3つの要素がある。
(a)法理上の議論・・・・憲法9条の枠内では自衛隊を持てない、国防軍を持てない。
(b)国際宣言としての性格・・・・憲法9条は、日本は一方的に戦争を放棄するとした国際宣言だ。
(c)日本の国柄に関する議論・・・・憲法9条に表されたところの平和国家としての日本を特徴づける。
(19)(1)-(a)~(c)がごちゃごちゃに議論されているが、(1)-(b)が最も興味深い。
日本国憲法は、次の4つの国際的合意がなされたプロセスにおける国際的な宣言だ。
(a)1945年7月26日にポツダム宣言を受諾して、
(b)同年9月2日にミズーリ号の上で敗戦文書に調印した。
(c)1946年1月に日本国憲法の草案が発表され、憲法が採択されて発効した。
(c)1952年、サンフランシスコ平和条約。
国際的な宣言だということをどう捉えるか、という感覚が、安倍政権には希薄だ。危惧される。
(20)「押し付け憲法論」という議論がある。主体であるところの日本国民を無視して外国が憲法を押し付けた、という議論だ。
では、大日本帝国憲法はどうなのか。
日本国憲法は占領下にあるとはいえ、一応議会の審査を経て採択された憲法だ。ところが、大日本帝国憲法は、帝国議会を通していない。一方的に官僚が作った、空から降ってきたものだ。民意を全然反映していない。押し付け以外の何物でもない。一方、外圧はかかっていて、作成には外国人が関与している。
そもそも、大日本帝国憲法を作る動機は、関税自主権を回復することで、そのためには治外法権撤廃あ必要だ、そのためには近代法がなければいけないと言われて、諸外国の圧力により作った憲法だ。
(21)要するに、「押し付け憲法論」の主張の一番のポイントは、GHQが作ったからけしからん、ということだ。つまり、あの戦争に負けた、という事実に対しておもしろくない、という心情から来ている。それは、(1)-(c)の日本人の心情や国柄、あるいは国体をどう表すか、という議論につながる。そこを整理して議論する必要がある。
特に安部総理の場合、(1)-(c)の要素が強く、(1)-(a)の法理的解釈にはあまり踏み込まず、(1)-(b)の国際的宣言の要素を完全に無視している。その点で、憲法9条は今触るべきでない。9条改正などという行き先が分からない憲法改正はいけない。
(22)ただし、憲法改正は必要だ。沖縄問題があるからだ。沖縄を日本の中にとどめるためには、連邦制への転換をしないと無理だ。
護憲論というものが結局は数の上での民主主義にすぎないのだとしたら、沖縄はこのまま永続的に基地負担を担うのか。沖縄はしかし、もはやそれに耐えることをしない、自主決定権の行使を始める、というところまで来ている。
国家統合論からすると、沖縄は日本の中にあったほうがいい。その観点からすると、憲法改正を視野に入れながら連邦制を考えないと、日本の国家体制を維持できない。
ただ、その話をするには時期尚早だ。現時点では憲法をいじる必要はないし、集団的自衛権に踏み込む必要もない。国内と国外で違う説明をするのも止めたほうがいい。
□佐藤優「反射し連動する世界を読み解く ウクライナからスコットランド、そして沖縄へ」(「世界」2014年7月号)
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 」
「【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~」
「【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 」
「【佐藤優】独裁者の「再選」が放置される理由 ~バッシャール・アル=アサド~」
「【佐藤優】経済と政治を行き来する新大統領の過去 ~ペトロ・ポロシェンコ~」
「【佐藤優】安倍首相とイスラエル首相「声明」の意味 ~ベンヤミン・ネタニヤフ~」
「【佐藤優】ロシアが送り込んだ「曲者」の正体 ~ウラジーミル・ルキン~」
「【佐藤優】ロシアは日本をどう見ているか ~日本外相の訪露延期~」
「【佐藤優】ウクライナ衝突の「伏線」 ~オレクサンドル・トゥルチノフ~」
「【ウクライナ】危機の深層(2) ~ブラック経済~」
「【ウクライナ】危機の深層(1) ~天然ガス~」
「【ウクライナ】エネルギー・集団的自衛権・尖閣問題 ~日本外交のジレンマ(3)~」
「【ウクライナ】米国の迷走とロシアの急成長 ~日本外交のジレンマ(2)~」
「【ウクライナ】と日本との歴史的関係 ~日本外交のジレンマ(1)~」
「【佐藤優】ウクライナ危機と米国が陥った「恐露病」」
「【佐藤優】プーチン政権がついに発した「シグナル」の意味 ~ロシア外交~」
「【佐藤優】プーチンは「世界のルール」を変えるつもりだ ~クリミア併合~」
「【ウクライナ】暫定政権の中枢を掌握するネオナチ ~クリミア併合の背景~」
「【佐藤優】北方領土返還のルールが変化 ~ロシアのクリミア併合~」
「【佐藤優】ロシアが危惧するのは軍産技術の米流出 ~ウクライナ~」
「【佐藤優】新冷戦ではなく帝国主義的抗争 ~ウクライナ~~」
「【佐藤優】クリミアで衝突する二大「帝国主義」 ~戦争の可能性~」
「【佐藤優】「動乱の半島」クリミアの三つ巴の対立 ~セルゲイ・アクショーノフ~」
「【佐藤優】ウクライナにおける対立の核心 ~ユリア・ティモシェンコ~」
「【ウクライナ】とEU間の、難航する協定締結に尽力するリトアニア」
「【佐藤優】ロシアとEUに引き裂かれる国 ~ウクライナ~」
(a)法理上の議論・・・・憲法9条の枠内では自衛隊を持てない、国防軍を持てない。
(b)国際宣言としての性格・・・・憲法9条は、日本は一方的に戦争を放棄するとした国際宣言だ。
(c)日本の国柄に関する議論・・・・憲法9条に表されたところの平和国家としての日本を特徴づける。
(19)(1)-(a)~(c)がごちゃごちゃに議論されているが、(1)-(b)が最も興味深い。
日本国憲法は、次の4つの国際的合意がなされたプロセスにおける国際的な宣言だ。
(a)1945年7月26日にポツダム宣言を受諾して、
(b)同年9月2日にミズーリ号の上で敗戦文書に調印した。
(c)1946年1月に日本国憲法の草案が発表され、憲法が採択されて発効した。
(c)1952年、サンフランシスコ平和条約。
国際的な宣言だということをどう捉えるか、という感覚が、安倍政権には希薄だ。危惧される。
(20)「押し付け憲法論」という議論がある。主体であるところの日本国民を無視して外国が憲法を押し付けた、という議論だ。
では、大日本帝国憲法はどうなのか。
日本国憲法は占領下にあるとはいえ、一応議会の審査を経て採択された憲法だ。ところが、大日本帝国憲法は、帝国議会を通していない。一方的に官僚が作った、空から降ってきたものだ。民意を全然反映していない。押し付け以外の何物でもない。一方、外圧はかかっていて、作成には外国人が関与している。
そもそも、大日本帝国憲法を作る動機は、関税自主権を回復することで、そのためには治外法権撤廃あ必要だ、そのためには近代法がなければいけないと言われて、諸外国の圧力により作った憲法だ。
(21)要するに、「押し付け憲法論」の主張の一番のポイントは、GHQが作ったからけしからん、ということだ。つまり、あの戦争に負けた、という事実に対しておもしろくない、という心情から来ている。それは、(1)-(c)の日本人の心情や国柄、あるいは国体をどう表すか、という議論につながる。そこを整理して議論する必要がある。
特に安部総理の場合、(1)-(c)の要素が強く、(1)-(a)の法理的解釈にはあまり踏み込まず、(1)-(b)の国際的宣言の要素を完全に無視している。その点で、憲法9条は今触るべきでない。9条改正などという行き先が分からない憲法改正はいけない。
(22)ただし、憲法改正は必要だ。沖縄問題があるからだ。沖縄を日本の中にとどめるためには、連邦制への転換をしないと無理だ。
護憲論というものが結局は数の上での民主主義にすぎないのだとしたら、沖縄はこのまま永続的に基地負担を担うのか。沖縄はしかし、もはやそれに耐えることをしない、自主決定権の行使を始める、というところまで来ている。
国家統合論からすると、沖縄は日本の中にあったほうがいい。その観点からすると、憲法改正を視野に入れながら連邦制を考えないと、日本の国家体制を維持できない。
ただ、その話をするには時期尚早だ。現時点では憲法をいじる必要はないし、集団的自衛権に踏み込む必要もない。国内と国外で違う説明をするのも止めたほうがいい。
□佐藤優「反射し連動する世界を読み解く ウクライナからスコットランド、そして沖縄へ」(「世界」2014年7月号)
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【参考】
「【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 」
「【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~」
「【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 」
「【佐藤優】独裁者の「再選」が放置される理由 ~バッシャール・アル=アサド~」
「【佐藤優】経済と政治を行き来する新大統領の過去 ~ペトロ・ポロシェンコ~」
「【佐藤優】安倍首相とイスラエル首相「声明」の意味 ~ベンヤミン・ネタニヤフ~」
「【佐藤優】ロシアが送り込んだ「曲者」の正体 ~ウラジーミル・ルキン~」
「【佐藤優】ロシアは日本をどう見ているか ~日本外相の訪露延期~」
「【佐藤優】ウクライナ衝突の「伏線」 ~オレクサンドル・トゥルチノフ~」
「【ウクライナ】危機の深層(2) ~ブラック経済~」
「【ウクライナ】危機の深層(1) ~天然ガス~」
「【ウクライナ】エネルギー・集団的自衛権・尖閣問題 ~日本外交のジレンマ(3)~」
「【ウクライナ】米国の迷走とロシアの急成長 ~日本外交のジレンマ(2)~」
「【ウクライナ】と日本との歴史的関係 ~日本外交のジレンマ(1)~」
「【佐藤優】ウクライナ危機と米国が陥った「恐露病」」
「【佐藤優】プーチン政権がついに発した「シグナル」の意味 ~ロシア外交~」
「【佐藤優】プーチンは「世界のルール」を変えるつもりだ ~クリミア併合~」
「【ウクライナ】暫定政権の中枢を掌握するネオナチ ~クリミア併合の背景~」
「【佐藤優】北方領土返還のルールが変化 ~ロシアのクリミア併合~」
「【佐藤優】ロシアが危惧するのは軍産技術の米流出 ~ウクライナ~」
「【佐藤優】新冷戦ではなく帝国主義的抗争 ~ウクライナ~~」
「【佐藤優】クリミアで衝突する二大「帝国主義」 ~戦争の可能性~」
「【佐藤優】「動乱の半島」クリミアの三つ巴の対立 ~セルゲイ・アクショーノフ~」
「【佐藤優】ウクライナにおける対立の核心 ~ユリア・ティモシェンコ~」
「【ウクライナ】とEU間の、難航する協定締結に尽力するリトアニア」
「【佐藤優】ロシアとEUに引き裂かれる国 ~ウクライナ~」