語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】ポテトチップスで癌になる ~食品安全委員会が警告~

2014年11月08日 | 医療・保健・福祉・介護
 ポテトチップスを食べると癌になる。
 今年10月、内閣府・食品安全委員会が正式に公表した。「ポテトチップスなどに含まれる化学物質アクリルアミドは遺伝毒性を有する発癌物質である」
 同委員会は、2011年からポテトチップス、フライドポテトに含まれるアクリルアミドについて調査していた。研究資料は、すでに農林水産省、厚生労働省に提出済み。来年度には結果が出る。今後は、さらに消費者やメーカーにアクリルアミドの危険性を警告していく。
 ちなみに、遺伝毒性とは子孫に伝わるという意味ではなく、染色体やDNAに直接悪影響を及ぼし、細胞が突然変異を起こして癌化する恐れがあるという意味だ。すでに動物実験では、アクリルアミドを摂取し続けたラットに高確率で甲状腺癌や精巣癌が発生することが確認されている。

 これまでにも「ポテトチップスは体に良くない」とする意見はあったが、その主な観点は「塩分」と「肥満」だった。
 今回の食品安全委員会の発表は次元が異なる。
 消費者にとってインパクトの大きな話だが、メーカー側は上を下への騒ぎだ。消費者からの問い合わせが急増し、売り上げに影響が出始めている。

 アクリルアミドは、本来は地下工事の際に使われる土の凝固剤、ガラス繊維などの接着剤、アクリル系塗料の原料などに使用される化学物質だ(「劇物」指定)。
 アクリルアミドが食品に含まれていることが判明したのは2002年だ。スウェーデン政府が、ストックホルム大学と共同で行った研究の結果、「ジャガイモなどの炭水化物を多く含む食品を高温で揚げたり焼いたりすると、その際にアクリルアミドが生成される」と発表し、世界を震駭させた。
 もともとジャガイモにはアクリルアミドは含まれていない。しかし、120℃以上の高温で加熱すると、ジャガイモに含まれているアスパラギン(アミノ酸)がブドウ糖などと反応して、アクリルアミドに変化する。普通に加熱調理しているだけで有害物質が生成されてしまう。【高橋久仁子・群馬大学名誉教授/『食べものの落とし穴』の著者】

 日本では食品安全委員会の警告がまだ周知徹底されていない。
 しかし、世界では2002年の発表以来、すでに大問題になっている。
 「食品中のアクリルアミドは、神経への影響や発癌のリスクを高めるなど、健康上の問題となり得る。よって、食品のアクリルアミドを減らす努力を続ける必要がある」【国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)、2005年】
 これにより、ヨーロッパではポテトチップスの売り上げが激減した。

 日本でも、遅まきながら、その危険性をハッキリ認めたのが、今回の食品安全委員会発表だった。
 いま、アクリルアミドは国際癌研究機関(IARC)の5段階評価の中で2A(上から2番目/「人に対して恐らく発癌性がある」)に分類されている。1A(「人に対して発癌性がある」)に分類されているアスベスト、コールタール、タバコの次に発癌性があり得る危険な物質、という位置づけだ。

 アクリルアミドは、120℃以上の高熱で調理された他の食品(クッキー、かりんとう、パン、コーヒー、ほうじ茶など)にも多かれ少なかれ発生している。
 その中でも特にポテトチップスが危険な理由は何か。
 ポテトチップスは180℃以上の高温で揚げないと、あの食感、旨味が出ない。アクリルアミドは高熱であればあるほど生成されやすい。しかも、薄くスライスしたジャガイモを揚げることで、中心部まで熱が入り、アクリルアミドの含有量が多くなってしまう。【高橋名誉教授】 
 ちなみに、食品1kg中に含まれているアクリルアミドの数値は、厚生労働省によると、
  ・ビスケット・・・・53~302μg
  ・コーヒーパウダー・・・・151~231μg
  ・フレンチフライ・・・・512~784μg
  ・ポテトチップス・・・・467~3,544μg
 
 ポテトチップスは日本人の食生活に深く浸透している。
 カルビーがポテトチップスの原料として使用するジャガイモの量は24万トン(日本全体のジャガイモ消費量の7%)。
 上位3社のメーカー(カルビー、湖池屋、山芳製菓)だけでも、80種類以上の商品が市場に流通している。

 メーカー側は、今回の食品安全委員会発表をどう受けとめているのか。
 (a)カルビー広報部・・・・国内シェア6割強
  2002年の発表以来、自社ホームページでもアクリルアミドに係る情報を発信し、濃度低減に努めている。ただ、当社としては商品を買ってもらえなければ事業として成り立たない。客には真摯に安全性を訴えていくしかない。
  濃度低減の具体策は、①フライする時間を短くする。②フライする温度を低くする。③フライ直後に風をあて冷却する。④フライする前に、湯通ししてアスパラギンを低減する。⑤アスパラギンの少ない原料ジャガイモの研究・開発。・・・・当社は2002年の発表時からアクリルアミドの低減対策には相当の費用をかけて取り組んでいる。以前よりかなり低減できるようになっている。

 (b)湖池屋広報部、山芳製菓広報部・・・・カルビーにつぐシェア
  取材対応は業界団体「日本スナック・シリアルフーズ協会」に任せている、と両者とも回答。
  「日本スナック・シリアルフーズ協会」担当者によれば、2002年から、こうした騒ぎがあるたびに各メーカーは自社で設備投資をして対策を講じてきた。その一方で、低減措置をやり過ぎると味や風味が落ちてしまい、商品が売れなくなるという問題もメーカー側は抱えている。  

 カルビー幹部社員も認めているように、根本的な対策は「販売を止める」しかない。
 だが、ポテトチップスはカルビーの売り上げの34%を占める。その存続は、企業にとって死活問題だ。
 他方、消費者にとって命を失うかどうかの問題だ。

□記事「内閣府食品安全委員会が警告 ポテトチップスで「がん」になる!」(「週刊現代」2014年11月15日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする