語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【官僚】結局はただの看板の書き換え ~「農地バンク」~

2014年11月23日 | 社会
 農地の大規模化を促すため、政府が農地を借り受けて、これをやる気のある農家などに貸し出す・・・・そんな「農地中間管理機構」(農地バンク)構想に暗雲が垂れ込めてきた。
 農地バンクが今年8月までに集めた農地は、来年3月までに集める目標値の0.4%にしか達していない。【11月6日付け朝日紙】
 農水省は「農地の貸し借りはコメの収穫後の冬に本格化する。これから大きく増えていくと考えている」と話しているが、そう旨くはいかないだろう。

 農地バンクは、安倍政権の農業改革の目玉の一つだ。
 こうした政策を農水省が持ち出すときは、ポチのマスコミを集めて、特ダネだとリーク、懇切丁寧に説明する。
 農水省担当のマスコミも、日頃から他の経済官庁に比べていいネタが少ないから、ここぞとばかりに飛びつく。
 両者の関係は、とにかく目玉政策をうまくプレイアップすることで、協力関係になっている。マスコミに、政策を批判的に取り上げる気持ちは、まったくない。
 してみれば、過去にすでに実施されていて、手垢まみれになった政策も、新たなネーミングを付されて、素晴らしく、これまでにない画期的なものに見せかけることは、容易に可能だ。

 実は、農地バンクと同様の政策は、これまでに何度もあった。
 (1)農地保有合理化事業・・・・離農農家や規模縮小農家などから農地を買い入れ、または借り入れ、農地の売り渡しまたは貸し付けを行う事業だ。農地バンクと同様の農地保有合理化法人が47都道府県に設置されている。それらを束ねる親玉の「全国農地保有合理化協会」は、農水事務次官の天下り先だ。
 天下り機関のようなところが農地の仲介をするのは無理があったらしく、さしたる実績を上げられなかった。

 (2)農地利用集積円滑事業・・・・5年ほど前に開始。仲介するのは「農地利用集積円滑化団体」で、市町村、農業公社、農協などがこれになることができる。この仲介実績も、今回の農地バンクの目標よりはるかに少ない。

 (3)農地バンク・・・・今回の。屋上に屋、その上に屋を架したようなものだ。

 なぜ、これまでたいした実績もないのに、農地バンクのような公的な仲介機関を作ればうまくいくと思うのか、摩訶不思議だ。そんな機関は、重要な貢献をできないまま、役人の天下り先になってしまうのがオチだ。
 しかも、仲介しようとしても、肝心の情報を持っていない。国からの指令で何か組織を作れば、仲介情報が天から降ってくるわけではない。
 さらに、農地の固定資産税はほぼタダだ。これでは、所有者も農地を貸し出して何とかしようなどとは思わない。

 もっと農業法人の新規参入を自由にして、その際、農地取得や貸借も自由にしたほうが、よりよい結果になるはずだ。
 さらに、農地の固定資産税を少し高くする。その代わりに、農地の転用にかかっている制限を自由化する。

 この20年間で、耕作放棄地は40万ヘクタールと倍増した。滋賀県全体とほぼ同じ規模だ。担い手のいない農地が、全農地の5割と異常になっている。
 過去の失敗政策の看板を書き換えて、これを打開できるほど甘いものではない。
 TPP参加で、農業予算の増加が予想される。農地バンクは、その予算獲得のために画策されたのではないか。

□ドクターZ「「農地バンク」結局はただの看板の書き換え ~ドクターZは知っている~」(「週刊現代」2014年11月29日号)
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