2014年10月31日、日本銀行は追加金融緩和政策を発表した。
・市場への資金供給量は年間60兆~70兆円から80兆円へと拡大。
・長期国債買い入れ額は年間50兆円から80兆円へと増額。
・ETF買い入れ額は年1兆から3兆円へと増額。
市場は驚愕。ニューヨークでは外資・証券関係者が、お祭り騒ぎとなった。
日経平均株価は一時800円以上も上昇した。株高が進めば消費増税への追い風となる。
だが、「これで日本の実体経済はますます苦しくなるだろう」【NYのあるトレーダー】。
事実、8月の実質賃金(9月に発表)を見ると、地方の大半は大幅に下落している。
今回、同時期に発表された米国連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和終了で、①円安、②物価上昇、③消費増税・・・・が今後進む。
この3つが、地方の賃金低下にいっそうの拍車をかける。この実質賃金低下と、②物価上昇とが、国民生活をますます苦しくさせる。
いま政府とマスコミは、雇用率の上昇を繰り返し謳う。
だが、雇用人口5,613万人(7月)のうち、正規社員は前月より17万人減っている。その一方、非正規社員が増えている。
日本は、米国と同様の非正規雇用大国と化しつつある。
オバマ民主党政は、中間選挙前に雇用回復をアピールしたが、じつは米国は非正規雇用大国なのだ。
米国は、インフレ推進政策と大企業優遇政策によって、実質賃金が1970年代以下の水準まで下落。リーマンショック以降、上位1%の所得が31%増える一方、99%の国民の所得の伸びはわずか0.4%に過ぎない。
あらゆる分野が民営化され、アカデミズムにまで非正規化の波が迫る。福利厚生のない使い捨て職種を掛け持ちする中間層が増える一方で、投資家と株主の所得だけが順調に上昇している。
こういう政治に対する不信の高まりが、今回の米国中間選挙で顕著に示された。
ほぼ全州の有権者が、現職の再選を望まず、議会支持率は10%に過ぎなかった。
政治不信の主因は、猛スピードで広がる経済格差を両党とも推進しているからに他ならない。
そんな米国の後を、日本政府はまっしぐらに追っている。それは、安倍政権がパッケージで導入する政策に明らかだ。
「派遣法」改正・・・・あらゆる職種について無期限に派遣社員を雇用し続けることを可能にする。
「戦略特区法」改正案の閣議決定・・・・特区内で家事代行サービス会社雇用を通じて移民を拡大する。
安部は、施政方針演説で「世界一企業がビジネスをしやすい国にする」と宣言した。その宣言からちっともぶれずに驀進している。
しかし、このまま進めば、非正規社員が移民と低賃金労働職を奪い合う社会になる。貧困大国アメリカと同様に。
米国追随の流れを強化するように、GPIFの年金株式運用比率拡大が、今回の日銀追加緩和と同時発表された。
これまで年金基金は国債(低リスク運用)を中心にしてきた。ところが政府は、今夏から、年金基金の株式運用比率拡大を今夏から進めている。いったい誰のために、130兆円(世界最大規模の年金基金)の株式運用比率を拡大するのだ?
新たにアクティブ運用委託先に選ばれた外資らは、損益に拘わらず毎年1兆円の手数料を受け取る。株安となって年金基金が失われた時にツケを払わされるのは、ほかでもない日本国民だ。
この点を細野豪志・議員(民主党)が10月30日に衆議院予算委員会で質問した。しかし、一連の質疑応答はテレビからカットされた。国民は、知らぬが仏の闇の中に置かれている。
知らぬが仏はまだある。社会保障審議会年金部会で、現行60歳までの「国民年金保険料納付期間」を65歳まで延長する方針が決定された。来年の通常国会に改正案が提出される。
かくして年金は、ますます国民から縁薄くなり、彼方へと遠ざかっていく。
安倍政権下、あらゆることが「閣議決定」やら各種審議会やらで、議会を通さずに猛スピードで決められていく。
かかる政治体制によって、「企業栄えて国滅ぶ」。その日は近い。
□堤未果「金融緩和と年金改革で格差大国アメリカの後追いをする日本 ~ジャーナリストの目 第228回~」(「週刊現代」2014年11月22日号)
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・市場への資金供給量は年間60兆~70兆円から80兆円へと拡大。
・長期国債買い入れ額は年間50兆円から80兆円へと増額。
・ETF買い入れ額は年1兆から3兆円へと増額。
市場は驚愕。ニューヨークでは外資・証券関係者が、お祭り騒ぎとなった。
日経平均株価は一時800円以上も上昇した。株高が進めば消費増税への追い風となる。
だが、「これで日本の実体経済はますます苦しくなるだろう」【NYのあるトレーダー】。
事実、8月の実質賃金(9月に発表)を見ると、地方の大半は大幅に下落している。
今回、同時期に発表された米国連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和終了で、①円安、②物価上昇、③消費増税・・・・が今後進む。
この3つが、地方の賃金低下にいっそうの拍車をかける。この実質賃金低下と、②物価上昇とが、国民生活をますます苦しくさせる。
いま政府とマスコミは、雇用率の上昇を繰り返し謳う。
だが、雇用人口5,613万人(7月)のうち、正規社員は前月より17万人減っている。その一方、非正規社員が増えている。
日本は、米国と同様の非正規雇用大国と化しつつある。
オバマ民主党政は、中間選挙前に雇用回復をアピールしたが、じつは米国は非正規雇用大国なのだ。
米国は、インフレ推進政策と大企業優遇政策によって、実質賃金が1970年代以下の水準まで下落。リーマンショック以降、上位1%の所得が31%増える一方、99%の国民の所得の伸びはわずか0.4%に過ぎない。
あらゆる分野が民営化され、アカデミズムにまで非正規化の波が迫る。福利厚生のない使い捨て職種を掛け持ちする中間層が増える一方で、投資家と株主の所得だけが順調に上昇している。
こういう政治に対する不信の高まりが、今回の米国中間選挙で顕著に示された。
ほぼ全州の有権者が、現職の再選を望まず、議会支持率は10%に過ぎなかった。
政治不信の主因は、猛スピードで広がる経済格差を両党とも推進しているからに他ならない。
そんな米国の後を、日本政府はまっしぐらに追っている。それは、安倍政権がパッケージで導入する政策に明らかだ。
「派遣法」改正・・・・あらゆる職種について無期限に派遣社員を雇用し続けることを可能にする。
「戦略特区法」改正案の閣議決定・・・・特区内で家事代行サービス会社雇用を通じて移民を拡大する。
安部は、施政方針演説で「世界一企業がビジネスをしやすい国にする」と宣言した。その宣言からちっともぶれずに驀進している。
しかし、このまま進めば、非正規社員が移民と低賃金労働職を奪い合う社会になる。貧困大国アメリカと同様に。
米国追随の流れを強化するように、GPIFの年金株式運用比率拡大が、今回の日銀追加緩和と同時発表された。
これまで年金基金は国債(低リスク運用)を中心にしてきた。ところが政府は、今夏から、年金基金の株式運用比率拡大を今夏から進めている。いったい誰のために、130兆円(世界最大規模の年金基金)の株式運用比率を拡大するのだ?
新たにアクティブ運用委託先に選ばれた外資らは、損益に拘わらず毎年1兆円の手数料を受け取る。株安となって年金基金が失われた時にツケを払わされるのは、ほかでもない日本国民だ。
この点を細野豪志・議員(民主党)が10月30日に衆議院予算委員会で質問した。しかし、一連の質疑応答はテレビからカットされた。国民は、知らぬが仏の闇の中に置かれている。
知らぬが仏はまだある。社会保障審議会年金部会で、現行60歳までの「国民年金保険料納付期間」を65歳まで延長する方針が決定された。来年の通常国会に改正案が提出される。
かくして年金は、ますます国民から縁薄くなり、彼方へと遠ざかっていく。
安倍政権下、あらゆることが「閣議決定」やら各種審議会やらで、議会を通さずに猛スピードで決められていく。
かかる政治体制によって、「企業栄えて国滅ぶ」。その日は近い。
□堤未果「金融緩和と年金改革で格差大国アメリカの後追いをする日本 ~ジャーナリストの目 第228回~」(「週刊現代」2014年11月22日号)
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