語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【神保太郎】首相の妻(安倍昭恵)、日本の公教育を否定

2017年06月04日 | 批評・思想
 <日本の政治・社会の行方を考えると、まだまだ森友問題に対する徹底した追求が必要ではないか。そう思っていた矢先、作家・中島京子氏の毎日新聞への寄稿(4月2日朝刊・コラム「時代の風」)を読み、裨益するところ、大きなものがあった。
 「子どもたちが「教育勅語」を唱和する姿は、まさに『洗脳』という言葉を思わせて背筋が凍った」。「事件に関連して名前の挙がった人たちは、みなこの塚本幼稚園の教育を知って・・・・賛同していたという。昭恵氏は(そこでの)講演で、この幼稚園で培われた芯が、公立の小学校へ行って損なわれてしまう危険がある、だから「瑞穂の國記念小学校」が必要だという旨の発言をしていた。首相の妻が、日本の公教育を否定しているわけで、私は、100万円を寄付するより深刻だと思っている」。「私たちが「昭恵氏は私人か公人か」などというさまつなことにとらわれているうちに、気がつくと日本国中が森友学園みたいな学校だらけになっているのではないかと想像して、私は怖い。森友問題が重要なのは、その危険を私たちに教える事件だったからなのだ」>

 【注】中島京子(作家)「森友問題の本質 ~時代の風~」(毎日新聞 2017年4月2日 東京朝刊)
森友問題の本質 ~時代の風~
 <(前略)もう一つ、戦時中よく使われた言葉を紹介したい。「暴支膺懲(ぼうしようちょう)」というもので、「暴れる支那を懲らしめる」という意味だ。日本が戦争を始める理由として使ったのがこの言葉だった。塚本幼稚園の園児宣誓と似ている。
 私が恐ろしいのは、戦時中の思想に帰ろうとする政治運動に賛同している人たちが、日本の教育を変えようとしている事実、そのものだ。関与が取りざたされた政治家の誰一人として、「教育勅語」を否定しなかった。それどころか擁護発言が相次いだ。園児たちのヘイトスピーチを批判する発言も、なかった。籠池泰典氏がしつこいとかうそつきとかいう話は出たし、森友学園の経営や設置認可をめぐる強引さにも批判が集中したが、教育方針を批判した発言は、渦中の政治家からは出なかった。
 政権の中枢にある政治家、官僚、民間企業(学校法人)が、ある偏ったイデオロギーに染まり、国民の共有財産の使い方を勝手に決めて、「彼ら」の信奉するイデオロギー教育を実践する施設を作ろうとしていた。そういう事件に私には見える。かつて、「教育勅語」を掲げ、「暴支膺懲」を叫び、戦争に突き進んだ過去を持つこの国で。(後略)>

□神保太郎「メディア批評 第114回」(「世界」2017年月号)の「(1)「森友問題」・共謀罪--本質見抜き、社会を守れ」から引用
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 【参考】
【神保太郎】「見たいもの」だけ報じるメディア ~パラリンピック、首相とともに海をわたる「記者クラブ」~
【メディア】批評by神保太郎 ~参院選後--メディアは国民をどこに誘うのか~
【メディア】日本国憲法の国際性 ~人権無法国家ニッポンの落日(2)~
【メディア】人権無法国家ニッポンの落日
【メディア】現場主義が薄情な安倍政治をストップ ~「日本死ね!!!」(2)~
【メディア】「日本死ね!!!」という立憲・民主主義 ~ネットの力~
【メディア】安倍政権による行政指導の誤り ~放送電波停止発言~
【メディア】官邸癒着メディアと「機敏な反撃」(2) ~新聞と原子力ムラ~
【メディア】官邸癒着メディアと「機敏な反撃」(1) ~新聞と官邸~
【メディア】“愚者の砦”と化したNHK(2) ~かすかな希望~
【メディア】“愚者の砦”と化したNHK(1) ~強行採決を中継しない不作為~
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(4) ~読売・NHKは?~
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(3) ~新聞はどう報じたか~

【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(2) ~違憲が争点に~
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(1) ~SNS上の痛烈な批判~
【メディア】集票キャンペーンの検証が課題 ~橋下劇場の終幕~
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【テレビ】に対する政権の圧力(2) ~テレ朝問題(9)~
【テレビ】に対する政権の圧力(1) ~テレ朝問題(8)~
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【NHK】「クローズアップ現代」事件 ~メディア・スキャンダル~
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【NHK】が危ない! ~組織に漂う負の雰囲気~
【政治】「第三の矢」の実態 ~アベノミクスの末路~
【集団的自衛権】とイラク情勢
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【NHK】呆れた新会長会見、幼稚で傲慢な偏向報道
【新聞】経営者の関心は秘密保護法より軽減税率
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【政治】選挙目当ての「所得倍増計画」 ~検証が必要~
【政治】見えてきた安部政権自壊のシナリオ ~生放送の威力~

【後藤謙次】【加計学園疑惑】沈黙していた政官双方から異論 ~加計学園問題が招く想定外反応~

2017年06月04日 | 社会
 (1)終盤に入って安倍晋三・首相が守りに回る場面が目立つ。学校法人加計学園の獣医学部新設をめぐる安倍によるトップダウンの決定に「異議申し立て」が続くからだ【注】。
 加計孝太郎・加計学園理事長とは安倍自身が「腹心の友」と呼ぶ間柄。その加計が目指していた獣医学部新設(於愛媛県)が52年ぶりに認められた。「李下に冠を正さず」の故事を引用するまでもなく、安倍に不信の目が向けられても仕方がない。
 むろん、安倍は繰り返し反論する。「いずれのプロセスも関係法令に基づき適切に実施しており、圧力が働いたことあ一切ない」うんぬん、グチグチ。

 (2)ところが、実際に決定プロセスに関わった当事者である前川喜平・全文部科学事務次官が記者会見をして首相官邸に叛旗を翻した。
 「薄弱な根拠で行政の在り方がゆがめられた」
 発端は5月17日付け「朝日新聞」朝刊が報じた「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と題する8枚の文科省の内部文書だ。文書の1枚目は次のような記述で始まる。
 「設定の時期については、今治市の区域指定時より『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている」
 この「総理のご意向」の真偽が獣医学部新設問題の核心だ。
 この文書について、前川は繰り返し「本物」と強調した。対して菅義偉・官房長官は「怪文書」と決めつけ、文科省の調査では「確認できなかった」と松野博一・文科相は及び腰の対応をした。
 安倍1強の「政と官」の関係でいえば、初の官の反乱といえる。

 (3)5月30日には、和泉洋人・首相補佐官から学部新設を急ぐよう求められたことを明らかにした。
 「総理は自分の口から言えないから、私が代わりに言う」
 前川は連日のようにメディアを使い分けながら、加計学園問題の“告発”を続ける。5月31日の共同通信のインタビューでは政治の機微に触れる問題にも言及した。
 「昨年9月に入ってから内閣府の姿勢が強硬になった」
 2016年9月といえば、内閣改造で地方創生担当相が石破茂から現職の山本幸三にバトンタッチされた直後だ。
 石破は、獣医学部新設について「獣医師の需要動向の考慮」など、いわゆる「石破4条件」を提示し、高いハードルを設けていた。

 (4)石破と衆院初当選同期で、かつて同じ旧竹下派に籍を置いた北村直人・日本獣医師政治連盟委員長も前川が本物と断じた文科省文書に登場する。日付は2016年10月19日。文科省職員の聞き取り調査の記録と目されるが、北村の発言が残る。
 「4条件がきちんと守られるようウォッチする。(新設の)お金がどうなるかを心配している」
 北村はメディアの取材に対して、2007年に初めて加計と都内の料亭で会ったことを認めている。その際、加計に親しい政治家の名前を尋ねたところ、即座に「安倍晋三」と答えた、と語っている。
 安倍は当時、第1次政権を担う首相だった。北村が聞いた資金計画に対して加計は、「20億円から30億円」と答え、北村は「500億円ぐらい掛かる」とアドバイスした、という。
 北村は、「要請というよりは挨拶に来ることに意味があったのではないか」と振り返る。
 こうした動きを意識しているのだろう。安倍は、参院本会議の答弁の中で強い口調で言い切った。「岩盤規制にドリルで穴をあけるため抵抗勢力に屈することはない」
 安倍はその後も「抵抗勢力」の言葉を繰りかえす。安倍は、前川を筆頭にした文科省と共通の立ち位置に石破もある、と思い込んでいる節がある。

 (5)前川が霞が関からの初めての「物言い」だとすれば、自民党議員で家計問題に声を上げたのも、石破派に属していた若狭勝・衆院議員だった。
 5月29日に自民党に進退伺いを提出した。その際の記者会見で家計問題に触れた。菅が、文科省文書を「出所不明」としていることにクレームをつけたのだった。
 「ごまかしだ。政治が劣化するという危惧を感じている」
 若狭は、小池百合子・東京都知事の側近中の側近。2016年の都知事選以来の菅と小池の不協和音は政界の常識だ。都議選告示を目前にして、若狭が仕掛けた菅への揺さぶりとみて間違いない。若狭はその後、自民党に離党届を出した。
 政治路線の違いで離党した自民党議員は、第2次安倍政権発足後では初。
 さらに、小池自身も地域政党「都民ファーストの会」の代表に就任。都議選を軸に自民党との全面対決の構えに入った。

 (6)森友、加計という二つの問題をきっかけに、沈黙を続けていた政官相応から異を唱える声が出始めた意味は小さくない。安倍も権力闘争を意味する「政局」を口にした。

 (7)こうした中、福田康夫・元首相も現政権に厳しい注文をつけた。公文書管理の運用に関する福田の憤りといっていい。
 福田は、2007年の「消えた年金記録」の反省から、首相に就任すると公文書管理法の制定を主導した。福田は、公文書管理について厳格な考えを貫く。
 「民主主義は国民に正しい情報を提供し、事実を伝えることが基本」
 しかし、防衛省による南スーダンのPKO派遣部隊の日報隠蔽に始まり、森友学園をめぐる国有地払い下げ問題での財務省による関係文書の破棄、そして加計学園問題での文科省文書など、公文書管理法の趣旨に逆行する事態に対する福田の危機意識の強さは尋常ではない。

 (8)今のところ、霞が関は通常国会閉幕後の幹部人事を控え、自民党内も内閣改造・党役員人事、加えて1年半以内には必ずある衆院選の公認権を差配する安倍の前に沈黙を守るが、不満のガスが溜まり始めているのは間違いない。
 この水泡が渦となるのかどうか。想定外の化学反応を起こすかもしれない。
  
 【注】加計学園疑惑
【加計学園疑惑】と官邸 ~「総理の意向」隠蔽か~
【加計学園疑惑】「忖度」ではなく首相の直接指示か ~首相主導の“官製談合”~
【後藤謙次】共謀罪に加計学園問題まで炎上 ~予想以上に高い「6月の壁」~

□後藤謙次「沈黙していた政官双方から異論/加計学園問題が招く想定外反応 ~永田町ライブ!No.342」(「週刊ダイヤモンド」2017年6月10日号)
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 【参考】
【後藤謙次】共謀罪に加計学園問題まで炎上 ~予想以上に高い「6月の壁」~
【後藤謙次】安倍1強時代を揺るがすリスク ~森友学園問題で一躍「渦中の人」~
【後藤謙次】北朝鮮、金正男氏殺害の深層 ~日本政府内に異なる二つの見方~
【後藤謙次】政府与党内の二つの見方 ~北方領土交渉は頓挫?~
【後藤謙次】トランプの地滑り的勝利で始まった未知なる対米外交
【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク
【後藤謙次】幹事長の入院が人事に波及、「ポスト安倍」めぐり早くも火花
【後藤謙次】参院選大勝も激戦12県で大敗 ~劣る「勝利の質」~
【後藤謙次】都知事選で与党分裂の理由 ~自民党内の反安倍勢力~
【後藤謙次】日本が直面する「ABCリスク」 ~英EU離脱で顕在化~
【後藤謙次】甘利大臣辞任をめぐる二つのなぜ ~後任人事と直後のマイナス金利~
【政治】不可解な時期に石破派が発足 ~その行方は内閣改造で~
【政治】震災後2度目の統一地方選 ~異例なほど注力する自民党本部~
【政治】安倍が描いた解散戦略の全内幕 ~周到な準備~
【政治】安部政権の危機管理能力の低さ ~土砂災害・火山噴火~
【政治】「地方創生」が実現する条件 ~石破-河村ラインの役割分担~
【政治】露骨な安倍政権へのすり寄り ~経団連が献金再開~
【政治】石原発言から透ける政権の慢心 ~制止役不在の危うさ~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【政治】「新党」結成目前の小沢一郎の前にたちはだかる難問
【政治】小沢一郎、妻からの「離縁状」の波紋 ~古い自民党の復活~
【政治】国会議員はヤジの質も落ちた

【南雲つぐみ】歯と口の健康週間 ~6月4日から~

2017年06月04日 | 医療・保健・福祉・介護
 6月4日は、6(む)4(し)の語呂合わせで、「むし歯予防デー」。この日から1週間は「歯と口の健康週間」でもある。
 厚生労働省が6年ごとに行う「歯科疾患実態調査」(2011年)では、20本以上歯がある糸の割合は、調査開始以来増えているという。例えば、70代前半で20本以上歯のある人は、1987年は15.2%だったが、2011年には52.3%と3倍近くになった。80代以上では7.0%(1987年)から28.9%(2011年80~84歳)と、4倍に増加している。
 厚労省と日本歯科医師会は、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という「8020運動」を展開してきた。20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができるとされているそうだ。
 なお。同調査では「口を大きく開閉した時、あごの音がするか、痛みがある」と回答した人は女性に多い、という結果が出ている。あごの動きや口の渇きなども口の健康には重要な要素。心配事があれば歯科医や口腔(こうくう)外科に相談しよう。

□南雲つぐみ(医学ライター)「歯と口の健康週間 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年6月4日)を引用
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