語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【加計学園疑惑】安倍首相答弁にウソ ~獣医師会が反論~

2017年06月08日 | 社会
 <学校法人「加計学園」(岡山市)が愛媛県今治市で獣医学部を新設する計画を巡り、安倍晋三首相の国会答弁と関係者の説明に矛盾が出ている。広域的に獣医学部が存在しない地域(空白地域)に限って新設を認めるとする政府の規制緩和について、首相は「(日本)獣医師会の意見に配慮した」と説明したが、獣医師会は「事実に反する」と反論。実際、四国に新設する計画を疑問視する資料を国に提出しており、首相の強弁ぶりが目立つ。
 「加計学園のために1校に絞ろうとしていたわけではなく、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限る、1校に限るという要件は、獣医師会等の慎重な意見に配慮した。獣医師会から要請があった」。5日の衆院決算行政監視委員会。この首相の答弁に、日本獣医師会顧問の北村直人元自民党衆院議員は、毎日新聞の取材に「獣医師会として空白地域に限るというお願いをした事実はない」と語った。
 獣医学部の新設に対し、獣医師会は2014年に「教員の争奪を激化させ、獣医学教育改善の努力に逆行する」などとして反対を決議。16年10月には「四国地域に設置しても、獣医師不足の解決にはつながらない」とする資料を松野博一文部科学相に提出。全国的には獣医師が偏在し不足している地域があることを指摘しつつ、「総数は不足していない。教育修了者への処遇改善等が必要」との見解を文書で示した。(後略)>

□「安倍首相答弁、目立つ矛盾 獣医師会反論も」(毎日新聞 2017年6月7日)から引用
安倍首相答弁、目立つ矛盾 獣医師会反論も
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 【参考】
【加計学園疑惑】プロセスの再考と公正を迫る前川前次官証言
【加計学園疑惑】前川前次官の告発が見事にあぶり出した「メディアの真贋」
【加計学園疑惑】説明責任は首相にある ~朝日紙社説・抄~
【加計学園疑惑】獣医学部新設に日本獣医師会が「反対」する理由
【加計学園疑惑】愛媛県・今治市も「共犯」か ~地元の発言・文書も示す加計学園「総理のご意向」~
【神保太郎】首相の妻(安倍昭恵)、日本の公教育を否定
【後藤謙次】【加計学園疑惑】沈黙していた政官双方から異論 ~加計学園問題が招く想定外反応~
【加計学園疑惑】と官邸 ~「総理の意向」隠蔽か~
【加計学園疑惑】「忖度」ではなく首相の直接指示か ~首相主導の“官製談合”~
【後藤謙次】共謀罪に加計学園問題まで炎上 ~予想以上に高い「6月の壁」~


【英国】の地政学的優位性がBrexitで喪失 ~領内で高まる独立気運~

2017年06月08日 | 社会
 (1)スコットランドの英国からの独立で最も大きな障害となっていたのは、独立後にEUへの加盟が阻止されることだった。
 阻止の動きの陣頭に立っていたのは、欧州内の独立運動に対して過敏になっていたスペインだった。カタルーニャ地方の分離独立派に頭を痛めるスペイン政府としては、欧州内のいかなる地域独立運動も容認しない姿勢を崩さなかった。

 (2)しかし、Brexit【注】決定後、スペインの態度は一変した。
 スコットランド独立の際にはEU加盟を妨害するようなことはしない、と明言し、英国へ揺さぶりをかけた。これには、300年もの間、スペインが領有権を主張し続けたジブラルタルの問題が絡んでいる。
 イベリア半島最南端の地中海への入口にあるジブラルタルは、軍事上重要な拠点だ。英国が1713年にスペインから統治権を勝ち取った。金融・観光業で栄える人口3万人の欧州最後の「植民地」に、毎日1万人のスペイン人が国境を越えて仕事にやってくる。
 しかし、スペインは、フランコ独裁時代の1969年にスペインとジブラルタルの境界閉鎖に踏み切り、EC加盟(1986年)の前年にやっと開放した経緯がある。
 今回もBrexit決定の翌日に、スペインはジブラルタルの返還を求めた。

 (3)この微妙な問題に関して、EUは英国とスペイン双方に対して中立の立場を長い間とってきた。
 しかし、Brexit決定後、EUはスペイン寄りの姿勢を鮮明にし始めた。

 (4)ピカルド・ジブラルタル自治政府首相は、Brexitの過程においてジブラルタルが取引材料にされるべきではない、と論じたが、EUはジブラルタルの地位を今後の英国との交渉を有利に進めるために利用するだろう。
 また、ジブラルタルの国民のうち96%がEU残留を望んでいた点も、EU側としては強い交渉材料だ。

 (5)北アイルランドでも国境問題が発生する可能性がある。英国がEUに加盟していたときは、英国領の北アイルランドとアイルランドとの間に国境はなかったが、Brexitによって様相が変わる。月に100万人もの人が両国を行き来しており、仮に国境ができたらそのダメージは計りしれない。
 北アイルランドもジブラルタル同様、EU残留を望んでいた。
 血で血を洗うようなテロ活動を展開したアイルランド共和国軍の目的は、北アイルランドを英国から分離し、全アイルランドを統一することにあった。1998年に停戦合意したのは、英国とアイルランドが共にEUに加盟していたことが大きかった。Brexitでまた紛争が再開する、と心配する向きも多い。
 EUは、北アイルランドが英国から独立し、アイルランドに統合された際はEUへの加盟を歓迎する、とまで言い切っている。時期尚早だという意見もあるが、北アイルランドでも、英国からの独立、そしてアイルランドとの併合を問う選挙を行う気運が高まるだろう。

 (6)さらに、アルゼンチンも、1982年に英国と武力紛争にまで至ったフォークランド諸島の領有権を主張し始めている。

 (7)地政学的なアプローチは英国が最も得意としてきた分野だ。
 しかし、Brexitの選択は、大英帝国時代に築いた地政学的優位性を揺るがしている。

 【注】Brexit:Britainとexitを合わせたかばん語(混成語)。イギリスが欧州連合から脱退すること。

□竹下誠二郎(静岡県立大学経営情報学部教授)「欧州/領内で高まる独立気運 Brexitで失われる英国の地政学的優位性」(「週刊ダイヤモンド」2017年6月10日号)
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【加計学園疑惑】プロセスの再考と公正を迫る前川前次官証言

2017年06月08日 | 社会
 「クビと引き換えに義務教育が守れるなら本望である」。2005年冬、文科省の初等中等教育企画課長がブログに記した文章をネットで読み進めると、一官僚の挑戦的な言説にまず驚かされる◆
 「奇兵隊、前へ!」と題されたブログの筆者は「加計文書」の存在を証言した同省前事務次官の前川喜平氏。当時の小泉政権による義務教育費国庫負担の削減方針を痛烈批判した。立場を心配する周囲の助言への回答が冒頭のくだりである◆
 義務教育費国庫負担とは教職員給与の一部を国が賄う制度。削減は、代わりに国から地方に税源を移して自治体の財政運営の裁量を広げるという税財政改革の一環だった。だが「それでは義務教育を保障できない」と前川氏は反旗を翻した◆
 この問題で政権と対峙(たいじ)した政治家の急先鋒(せんぽう)が前鳥取県知事の片山善博氏だった。人件費である国庫負担分の税源を移譲されても裁量は増えない。陳情や国会議員の圧力で獲得する公共事業の補助金こそ削減すべきと論陣を張り、県議会も国庫負担の堅持を求める意見書を可決した◆
 国庫負担の割合は結局2分の1から3分の1に削減されたが、両氏の確信に満ちた言葉は政や官の議論の過程が守られていた証しだ。結論を急ぐばかりの安倍政権に、プロセスの再考と公正を迫る前川証言の意味は大きい。(圭)

[海潮音](日本海新聞 2017年6月7日)を引用。ただし、読み易さを考慮し、段落ごとに改行した。
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 【参考】
【加計学園疑惑】前川前次官の告発が見事にあぶり出した「メディアの真贋」
【加計学園疑惑】説明責任は首相にある ~朝日紙社説・抄~
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【神保太郎】首相の妻(安倍昭恵)、日本の公教育を否定
【後藤謙次】【加計学園疑惑】沈黙していた政官双方から異論 ~加計学園問題が招く想定外反応~
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