語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【加計学園疑惑】安倍官邸に巣くう加計学園人脈 ~忖度や謀略の裏で“お友達”優遇~

2017年06月09日 | 社会
 (1)加計学園問題は、もやは黙殺でいないレベルに達した。
 6月2日、政府が「確認できない」としてきた文科省の内部文書が省内の複数の担当者にメールのCCで共有されていたことを示す資料が発覚。
 同日、民進党の調査チームの会合では、文書の送信先に名前のあったF企画官らが呼ばれた。民進党の玉木雄一郎・議員らに、パソコンに今もメールが残っているか確認するよう要求されると、F企画官は会議室から出ていったが、そのまま戻ってこなかった。会場にいたK総務課長は、「(F企画官とは)連絡がとれない。松野博一・文科相とも連絡がとれないので、確認できない」と言い出す始末だった。

 (2)前川喜平・前文科省事務次官の証言では、昨秋に和泉洋人・首相補佐官に呼ばれ、「総理は言えないから私が言う」と獣医学部新設への早期対応を求められた。
 和泉氏は安倍晋三・首相より菅義偉・官房長官の懐刀。菅氏が横浜市議だった時代に知り合い、早くから信任を得ていた。発言に影響力があるのも、背後に菅氏がいることを霞が関では理解している。【国土省OB】
 和泉氏の発言の背後には安倍官邸の意向があるというのは、官僚の共通認識だった。

 (3)加計学園と“安倍人脈”の奇妙なまでの近さを見るとやはりただ事ではない。
  (a)最たるものが、木曽功・加計学園理事/系列の千葉科学大学学長だ。木曽氏は、内閣官房参与だった2016年8月、文科省の後輩である前川氏と面会し、「獣医学部の件でよろしく」と伝えてきた。内閣参与は、首相のブレーン。背後に首相の“威光”を感じないはずはない。
  (b)首相の側近中の側近である萩生田光一・官房副長官は、落選中(2009~2012年)に千葉科学大学の客員教授を務め、月約10万円の報酬を得ていたことを国会で認めた。現在は無給だが、名誉客員教授の肩書きを持っている。
  (c)ノンキャリアの官僚出身ながら、第1次安倍内閣で首相秘書官に抜擢された井上義行・参院議員も、2007年の安倍首相の辞任後、同大の客員教授を経験した。井上氏の事務所によれば、「危機管理学部で授業を持っていたが、2009年の衆院選に出馬する際に辞職した」。
  (d)安倍首相の地元・山口県下関市の元市長で「子飼い」として知られる江島潔・参院議員も、市長退任後の2010年から加計系列の倉敷芸術科学大学で客員教授を務めた。2013年には補選で参院に初当選。江島氏の事務所によれば、「客員教授は2015年10月に国交政務官に就任した際に辞職した」。
  (e)安倍首相自身が、衆院に初当選した1993年ごろから数年間、広島加計学園の監事として1年間に14万円の報酬を得ていたことを国会で認めた。つまり、安倍首相は加計孝太郎・加計学園理事長と40年来の親友であるばかりでなく、浅からぬ「借り」があるのだ。
  (f)2016年7月19日に最高裁判事に就任した木沢克之・弁護士は、2013年から加計学園の監事を務めていた。加計氏と同じ立教大学の同窓生で、立教卒の最高裁判事は史上初だ。加計氏らは、この2日後、安倍首相らと会食、翌日には山梨県でゴルフを楽しんでいる。加計氏の人脈は司法界にも及んでいることになる。

 (4)加計学園グループは、加計氏の父親の加計勉が創始者だ。1964年に開学した岡山理科大学(岡山市)を中心に拡大を続けてきた。
 孝太郎氏の実姉、美也子氏が運営する順正学園系列も合わせると、現在は大学、高校、小中学校、専門学校など全国で30校以上を運営する。西日本では有数の規模を誇る私学グループだ。
 加計孝太郎・理事長は、2001年に先代の跡を継いだ。安倍氏とは、20代の米国留学中に知り合って以来の「ゴルフ友達」であり、約40年間、家族ぐるみの親交を続けてきた。昭恵夫人は、自身のフェイスブックに<男たちの悪巧み」と題した飲み会写真(安倍首相、加計氏ら)を掲載している。

 (5)加計氏の思い入れが特に強いのは、理事長として2004年に自ら設立した千葉科学大学だという。開学時には薬学部のほか、日本で初めて危機管理学部を設置した。
 歴史のある岡山理科大学は、教授会組織の力が強く、好き勝手はできない。加計理事長からすれば、新設の千葉科学大学は自分の思いを実現できる場らしい。ただ、どんどん学科やコースを新設するので現場は大変だ。「どうして定員が集まらないのだ」とテレビ会議で怒鳴ったりするが、現場は加計理事長の思いつきに翻弄されている。【千葉科学大学関係者】


□小泉耕平・亀井洋志(本誌)「安倍官邸に巣くう加計学園人脈 忖度や謀略の裏で“お友達”優遇」(「週刊朝日」2017年6月16日号)
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 【参考】
【加計学園疑惑】安倍首相答弁にウソ ~獣医師会が反論~
【加計学園疑惑】プロセスの再考と公正を迫る前川前次官証言
【加計学園疑惑】前川前次官の告発が見事にあぶり出した「メディアの真贋」
【加計学園疑惑】説明責任は首相にある ~朝日紙社説・抄~
【加計学園疑惑】獣医学部新設に日本獣医師会が「反対」する理由
【加計学園疑惑】愛媛県・今治市も「共犯」か ~地元の発言・文書も示す加計学園「総理のご意向」~
【神保太郎】首相の妻(安倍昭恵)、日本の公教育を否定
【後藤謙次】【加計学園疑惑】沈黙していた政官双方から異論 ~加計学園問題が招く想定外反応~
【加計学園疑惑】と官邸 ~「総理の意向」隠蔽か~
【加計学園疑惑】「忖度」ではなく首相の直接指示か ~首相主導の“官製談合”~
【後藤謙次】共謀罪に加計学園問題まで炎上 ~予想以上に高い「6月の壁」~


【佐々木実】のれんに押しつぶされた東芝 ~企業買収で紡ぐ「成長物語」の陥穽~

2017年06月09日 | 批評・思想
 (1)日本郵政が初めて赤字に転落した。2017年3月期連結決算の純損失は289億円。2015年5月に買収した豪州の物流会社トール・ホールディングスの業績不振に伴い、4,003億円もの特別損失を計上したことが原因だ。

 (2)買収に失敗すると、なぜ損失が発生するのか。「のれん」という名の資産を減損処理しなければならないからだ。
  ①買収する企業
  ②買収される企業
とすると、通常、企業を買収する際、買収額は②の純資産より大きい。①は、この差額を「のれん代」としてバランスシート(貸借対照表)の資産の部に計上する。買収の失敗が明らかになると、「のれん代」を減額しなければならず、損失が発生するわけだ。
 「のれん」は「ブランド力」とか「超過収益力」などと説明されることも多いが、買収の失敗は「のれん」の過大評価から生じる。

 (3)日本郵政は、トールを約6,200億円で買収したが、あとで巨額損失を被ったのは「のれん代」が巨額だったからにほかならない。
 長門正貢・日本郵政社長は、4月下旬の会見で、巨額買収劇の背景について、「株式上場前に成長ストーリーを示したいという意図もあったのでは、と思う」と語った。買収当時、日本郵政は株式上場を控えていた。トールの買収は、弱点と見られていた郵便事業で「海外展開で成長」の「成長」を投資家にアピールするねらいがあった。法外な「のれん代」には、バラ色の成功物語の値段が上乗せされていたわけだ。

 (4)「シッポが犬を振り回す」というが、「のれん」はときに企業を振り回す。最悪の例が東芝だ。
 東芝は、2006年に米国の原子力会社ウェスティングハウス・エレクトリック(WH)を約6,400億円で買収した。WHの純資産は約2,400億円で、およそ約4,000億円を「のれん」に相当する無形資産として計上することになった(「のれん代」3,507億円とは別に「ブランド代(非償却無形資産)」として502億円を計上)。
 現在、東芝は上場廃止さえ懸念されているが、迷走の原点はWHの買収だ。福島原発の事故後、巨額にのぼるのれん代の減損処理が必至だったにもかかわらず、東芝は「のれん代の償却は必要ない」と強弁し続けた。のちの不正な会計や、不自然な企業買収を誘発する土壌をつくってしまった。
 「原子力ビジネスで成長」の夢から醒めたとたん、「のれん」に押しつぶされたのだ。

 (5)「のれん」は不思議だ。企業の将来にわたる総合的な評価を、現時点で現金に換算するのだから、必ず不確実性が伴う。未来を正確に予測できないように、「のれん」を正確に算定することなどできない。
 しかし、一方で、「のれん」は企業を膨張させる。ソフトバンクは2016年に英国のアーム・ホールディングスを約3兆3,000億円で買収した際、約3兆500億円もの「のれん」という見えない資産を手に入れた。まるで魔法の杖だ。
 結果的に買収が成功するか失敗するかにかかわらず、「のれん」には「物語」が潜む。資本主義の主役たる「企業」が商品として売り買いされるとき、資本主義に内在する幻想性が「のれん」となって姿を現す。
 そう解釈することもできるのではあるまいか。

□佐々木実「のれんに押しつぶされた東芝/企業買収で紡ぐ「成長物語」の陥穽」(「週刊金曜日」2017年5月26日号)
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 【参考】
【佐々木実】異次元緩和の本質は「確信犯的な無責任」 ~日銀の失敗~
【佐々木実】日銀を蚕食する“反知性主義” ~“異次元緩和”の落日~
【佐々木実】100年目に問う「絶版」の意味 ~河上肇『貧乏物語』~
【米国】大統領選の主役は「アウトサイダー」 ~トランプ=サンダース現象が生んだ亀裂~
【政治】新自由主義に鼓舞される復古主義 ~自民党改憲案の「第22条問題」~
【佐々木実】異次元緩和の戦線拡大で高まるリスク ~マイナス金利~
【言論】マッカーシズムの教訓 ~政治権力と言論~
【経済】国家戦略特区で起きた肝移植問題 ~神戸~
【東芝】「不正会計」の主役は安倍ブレーン ~産業競争力会議の犯罪者~
【企業】大赤字・無配でも社長は高額報酬 ~ソニー「経営改革」の蹉跌~
【ピケティ】現象を生んだ思想の空白 ~「格差」と経済学のゆくえ~
【安保】進む武器輸出 急接近する“戦争”と“ビジネス”
【経済】子どもに貧困を押しつける日本 ~再分配機能の不全~
【経済】宇沢弘文の「自己を見返す力」 ~知識人とは何か~
【経済】日本銀行総裁の資質 ~“平成の鬼平”と“パペット”~
【経済】宇沢弘文が残したもの ~社会的共通資本の思想~


【南雲つぐみ】気になる汗の臭い

2017年06月09日 | 医療・保健・福祉・介護
 放出されたばかりの汗に臭いはほとんどないが、時間がたつにつれて「汗くさい」状態になる。これは、皮膚に存在する微生物が、汗に含まれるタンパク質や脂肪酸などを分解し、悪臭の原因になる雑菌を生み出すからだという。また、体から分泌された皮脂が空気に触れて酸化し、臭いのもとになるという。
 特に、脇の下や股間など、汗腺が密集している部分には、微生物がたくさん存在する。汗をかいても、エアコンの効いた部屋や車の中に入ると汗が引いてすっきりするが、微生物は繁殖し続ける。こうした微生物は臭いの原因だけでなく、あせもやしっしんなどにも関わるのだ。
 対策は汗をかいたらこまめに下着を替え、シャワーを浴びるなどして、汗を皮膚に残さないこと。臭いを予防するだけでなく肌の健康にも役立つ。シャワーや着替えができないときに、汗の上から消臭スプレーや制汗剤を使うと、においが混じり合うことがあるので、水をしみこませたコットンやおしぼりで汗を拭きとってから使いたい。

□南雲つぐみ(医学ライター)「気になる汗の臭い ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年6月7日)を引用
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