2011/1/7upわかる目次 |
映画「キック・アス」 |
すげー。
イッツ・クール。
ぶっ飛んだ。
あの年に一度味わうかどうかのしばらく立ち上がれない感覚。
今まで観た映画にこんなのはあったかな。
例えればニキータとレオンとマチェーテを足して混ぜて割らない。
帰りの車内で缶ビールを飲むおじさんも幸せそうだ。
おじさんの反対側に五歳くらいの女の子がおばあちゃんとお母さんにはさまれて座っている。
幼くても賢い子の会話はおもしろい。
母親が言う。
「もう降りるよ」
女の子はずり落ちるように座席から降りると、おばあちゃんに向き直って手を振る。
「ばいばい」
「またね」
「あといくつ、いくつ寝たら」
母親は娘の手を引いて急いでドアから出る。
祖母は立ち上がってドアまで母娘を送る。
「またね」
「ばいばい。ばいばい」
ばいばいと祖母はドアの中で、手を振り返す。
女の子は人ごみに混じりかけた母親を引き戻してドアの前に来る。
そして真っすぐ立って手を振る。
「ばいばい。ばいばい」
見なければいいのに、僕は窓越しに振り返ってしまう。
「ほらほら黄色の線の向こうまで行って」
女の子は足元を確かめながら後ずさりする。
そして真っすぐに立つ。手を振る。
「ばいばい。ばいばい」
やっとドアが閉まる。
僕はうつ向いて目をつぶる。
閉まって動き始めた車内にまだ女の子の声が届く。
ばいばいばいばい。
あとで気持ち悪くてのた打ち回るのはわかっているが今夜は一本あけてみることにする。
コルクの栓はもう抜いてある。