徒然なるままに…建築家のボヤキ。。。

I・N設計スタジオ ブログ

小さな隠れ家パン屋さん開業計画-5

2016-08-03 08:47:05 | 建築家と酒田・鶴岡・庄内地方に家を建てる
 サンドウィッチ型の小さな隠れ家パン屋さん案が完成した。図面と模型と工事概算見積書を引っさげて意気揚々とプレゼンに臨んだ。

 早速サンドウィッチ型の案を説明すると、自分でも気持ちが高揚しているのが分かる。客観的に見れば、かなり喋り捲っていたのだろう。

 クライアントの反応は上々、気に入ってくれたと直感した。家族と相談するということで返事は後日となる。

 

 後日、クライアントである彼女が事務所を訪れてくれた。

 案に対する印象は非常によかったと第一声。家族全員、サンドウィッチ案を気に入ってくれたらしい。さしづめ、お母さんがすごく気に入ってくれて、この案でやろうと背中を押してくれたと言う。

 しかしながら、独立起業する身のクライアント。工事金額、設計料等々資金面がネックとなったのだ。

 パン屋さんに必要な厨房機器類は中古品でも一通りそろえると400~500万円にも上る。だからといって厨房器具を削るという選択肢はない。その行為はパン屋さんとしての武器を捨てることを意味する。

 何度となく家族と相談したクライアントであったが、サンドウィッチ案ではどうしても資金計画がショートするということで、この案をあきらめ資金計画の範囲でお願いできるところに依頼したいと。

 残念ながら、自分でも面白い案ができたと納得していたが、こうして契約には至らずサンドウィッチ案は日の目を浴びることなくボツ案となった。

 

 数ヵ月後、お店づくりを他の工務店に依頼したクライアントから連絡があった。

 事務所にパンの試作品を持って来てくれたのだ。そのパンを食べて意見を聞きたいと。それから数回、彼女は事務所に試作品を作っては持って来てくれた。

 私の仕事には結びつかなかったものの、こうした関係が続いていることは喜ばしい。私自身も独立起業した立場。同じ境遇の人を応援したくなるのは同じ穴の狢とでも言うべきなのか…。

 このシリーズを書いている先日、彼女のパン屋さんにお昼を買いに行った。すると、彼女とお母さんがお店を切り盛りしていて温かい言葉を投げかけられた。

 「ボヤキに私たち登場してますね。」笑顔でそう言ってくれた彼女に、ありがとうと返した。


 ~終わり~

 
コメント
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