漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「郷キョウ」<向かい合う> と 「響キョウ」「饗キョウ」「卿ケイ」

2023年04月01日 | 漢字の音符
 追加訂正しました。
[鄕] キョウ・ゴウ・さと  阝部おおざと
   
解字 甲骨文と金文は、ご馳走の入った器を中心にして左右の人が向かい合ってすわり、ご馳走の席につく形。篆文は、向かい合う人⇒邑(むら)に変化し、向かい合う邑の人々が真ん中に盛られたご馳走の席につく形。近隣の村々が交流する意味を表し、さと・ふるさとの意となる。旧字は左辺が乡(邑:むら)に変化した鄕となり、現代字は郷に簡略化された。
意味 さと(郷)。ごう(郷)。ふるさと。「故郷コキョウ」「郷土キョウド」「近郷キンゴウ」 (2)ところ。場所。「異郷イキョウ」「理想郷リソウキョウ」 (3)行政区画の単位。周代で12,500戸ある地。「郷県キョウケン」(郷および県。県は郷より小さい)

イメージ 
 向かい会ってすわり「交流する」(郷・饗・響)
 「向かい会ってすわる」(卿・嚮)
音の変化  キョウ:郷・饗・響・嚮  ケイ・キョウ:卿

交流する
 キョウ・あえ・もてなす  食部
解字 「食(たべる)+鄕(交流する)」の会意形声。人々が向かい合って食事をして交流する事。転じて、もてなす意ともなる。鄕⇒郷になった簡略体もある(ネットに出ない)。
意味 (1)あえ(饗)。人々が集まって宴会をすること。ごちそう。もてなし。「饗膳キョウゼン」(もてなしのご馳走) (2)もてなす(饗す)。ごちそうする。「饗応キョウオウ」(ご馳走してもてなす。=供応) (3)「饗庭あえば・あいば」(姓)
 キョウ・ひびく  音部
解字 「音(おと)+郷(交流する)」の会意形声。音が互いに交流するようにひびき合うこと。
意味 (1)ひびく(響く)。ひびき。「音響オンキョウ」「反響ハンキョウ」「響動(どよめ)く」「交響曲コウキョウキョク」(管弦楽のための大規模な楽曲。シンフォニー(symphony)の訳語) (2)他に変化をもたらす。「影響エイキョウ」(他に変化が及んで反応が現れること)

向かい会ってすわる
 ケイ・キョウ・きみ  卩部   

解字 甲骨文と金文は郷と同じ形で、左右に向かい合ってすわった人がご馳走の席につく形。篆文で左右の人が立ち姿に近い形になり、隷書(漢代)で卯ボウ(同じものが向きあう形)に近くなり楷書で卿になった。真ん中の「ご馳走」は、郷の旧字「鄕」がそのまま使われている。右半分が即になった簡略体もある(ネットに出ない)。郷が向かい合う村がご馳走の席で交流する意味であるのに対し、卿はご馳走の席に参列した村の代表をいい、のちに高官の意味になった。
意味 (1)政治を行う高官。大臣。きみ(卿)。「公卿クギョウ・くげ」(朝廷に仕えた高位の貴族)「卿相ケイショウ」(天皇を補佐して政治を行う大臣)「卿士ケイシ」(卿・太・武士の総称) (2)人に対する尊称。「卿子ケイシ」(尊称)
 キョウ・むかう・むく・さきに・ひびく  ロ部
解字 「向(むく・むかう)+鄕(むかいあう)」 の会意形声。向かい合う意を向(むく)を付けて強調した字。また同音の響キョウに通じ、ひびく意もある。
意味 (1)むかう(嚮かう)・むく「嚮往キョウオウ」(①向かってゆく。②慕う・崇拝する)「北嚮戸ホクキョウコ」(北向きの窓から日が差し込む家。北回帰線以南の家。夏至に太陽が真上にくる北回帰線・北緯23度5分より以南では、北の窓から日が差しこむ。中国では広東省広州市などが線上にある) (2)さきに(嚮に)。まえに。「嚮後キョウゴ」(今から後、将来)「嚮導キョウドウ」(先に立って導く)「嚮日キョウジツ」(さきのひ。さきごろ)  (3)ひびく(=響)「嚮然キョウゼン」(ひびくさま)
<紫色は常用漢字>


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