漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「瀕ヒン」<川を歩いて渡ろうとする人>と「頻ヒン」「顰ヒン」

2023年04月22日 | 漢字の音符
 常用漢字の頻ヒンは覚えにくい字ですが、瀕ヒンと一緒に覚えると分かりやすい字です。
 ヒン・みぎわ  氵部

解字  頻と瀕はもと同字で、瀕で表された。瀕の金文は「川(かわ)+步(あるく。字は上下に分かれる)+頁(あたまを大きく描いた人)」 で、川のほとりに来た人が歩いて川を渡るかたち。篆文は、步の上下のあいだに川を横に描いた形。意味は、(1)川を渡ろうと「川のほとり」にいる。(2)川を渡るのは(橋がないので)「たびたびある」の二つがある。現在はこれらの意味を、瀕・頻が分担する。瀕は、このうち「川のほとり・ちかづく」意で使われ、「たびたび」の意は頻が受け持つ。
意味 (1)みぎわ(瀕)。ほとり。「瀕海ヒンカイ」(海辺)「水瀕スイヒン」(みぎわ) (2)せまる。ちかづく。ひんする。「瀕死ヒンシ」(今にも死にそうなこと)

イメージ  
 「ほとり」(瀕・蘋)
  川を渡るのは「たびたび」(頻・顰)
音の変化  ヒン:頻・蘋・瀕・顰

ほとり
 ヒン・ビン・うきくさ  艸部
解字 「艸(くさ)+頻(=瀕。みぎわ)」 の会意形声。みぎわの草から転じて、水面に浮かび生えるうきぐさの意。
意味 (1)うきくさ。水面に浮かぶ草の総称。「蘋萍ヒンペイ」(うきくさ。蘋も萍も、うきくさの意)「蘋風ヒンプウ」(浮草を吹き揺るがせる風)「藻蘋ソウヒン」(水草) (2)デンジソウ(田字草)科の多年草。かたばみも。水田・沼などに生える。 (3)「蘋果ヒンカ」とは、リンゴの意。蘋píng は、梵語で蘋婆píngpó・ピンバとよばれる皮の赤い木の実を指した。のち、元の時代に外来種のリンゴが伝わった時、これを蘋果と名付けた。現在は同音の苹果píngguǒ・ピングオ(ヘイカ)が主に使われる。「蘋果ヒンカ日報」(リンゴ日報、Apple Daily、アップルデイリー)は、1995年に香港で創刊された繁体字中国語・広東語の日刊新聞。中国が香港の支配力を強める中で、2021年6月24日付を最後に廃刊。

たびたび
 ヒン・ビン・しきりに  頁部おおがい
解字 旧字は「頁(あたまを大きく描いた人)+步(=渉の略体。わたる)」 で、瀕ヒンと同じ意味を表す字。意味は、瀕の意味(2)の川をたびたび渉る意から「たびたび」の意で用いられる。新字体のため、步⇒歩に変化。
意味 (1)しきりに(頻りに)。しきる。たびたび。「頻繁ヒンパン」「頻度ヒンド」「頻発ヒンパツ」「頻々ヒンピン」 (2)みぎわ。水辺。
覚え方 瀕ヒンは氵(水)があるので水のほとり、頻ヒンは歩があるので、たびたび歩く、と覚えます。
 ヒン・ビン・ひそめる・しかめる・ひそみ  頁部
解字 「卑の旧字(いやしい)+頻の旧字(しきりに・たびたび)」 の会意形声。卑しいことがたびたび起きること。そのため、顔をしかめたり、眉をひそめる意となる。
意味 しかめる(顰める)。顔をしかめる。ひそめる(顰める)。ひそみ(顰み)。眉をひそめる。「顰蹙ヒンシュク」(顔をしかめること。眉をひそめること)「顰蹙を買う」(不快感を与え嫌われる)「顰(ひそ)みに倣(なら)う」(美女が眉を顰めたのを見て美しいと思い他の女が真似をしたが、それを見た人は気味悪がったことから、いたずらに人の真似をして物笑いになること)
<紫色は常用漢字>

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