漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「参サン 」<まいる・くわわる>と「惨サン」「驂サン」「滲シン」「鰺あじ」

2023年08月09日 | 漢字の音符
[參] サン・シン・まいる  ム部

解字 金文は丸い三本のかんざしを髪に挿した人が、ひざまずいている形。人が中腰のように見えるが、ひざまずく形である。ここに発音を表す彡サンがつく。金文では三の代わりの字(大字)として用いられることが多い。篆文は[説文解字]が、日が三つの「晶(澄んだ光)+㐱」の形に解釈したため、星座の参宿サンシュク(からすきぼし)の意味が加わった。なお説文解字は参の音符字では、第二字の「〇三つ」の参を用いている。字形は隷書(漢代)で上部がムにちかい形三つになり、旧字で「厽+㐱」の參になり、現在の新字体は「ム+大+彡」の参となった。
 意味は6世紀の字書[玉篇]は「相謁ソウエツ(身分の高い人にむかいあう)也」。発音字典の[広韻]は「覲(まみえる)也」としており、かんざしを挿した礼装で貴人とまみえる意とする。また、貴人とまみえるために邸宅に参る。貴人宅の催しに参加する意となる。
 また[字統]は「髪飾りを整った形に並べた斉セイに対し、三本のかんざしの左右がそろわず「参差シンシ不斉フセイ(ととのわず)」となるので、参差シンシ(ふぞろい。いりまじる。ちぐはぐ)の意になる」とする。
意味 (1)まいる(参る)。目上の人の所へゆく。宮中などへ行く。「参内サンダイ」「見参ケンザン」 (2)神仏を祭る寺社などに詣でる。「参詣サンケイ」「参拝サンパイ」 (3)加わる。集まる。「参加サンカ」「参集サンシュウ」 (4)くらべる。しらべる。「参考サンコウ」「参照サンショウ」 (5)ふぞろいのさま。「参差シンサ」(いりまじる。ふぞろい。ちぐはぐ) (5)星座の名前。「参宿サンシュク」(からすきぼし) (6)「三」の代用字。「参万円」 (7)人蔘ニンジンの代用字。「人参ニンジン」 

イメージ 
 「まいる・くわわる」
(参・驂)
 「形声字」(惨・滲・蔘) 
 「その他」(鰺)
音の変化  サン:参・驂・惨  シン:滲・蔘  ソウ:鰺

まいる・くわわる
 サン  馬部
解字 「馬(うま)+參(くわわる)」の会意形声。馬車で、主となる馬のそばに補助としてくわわる馬。
意味 (1)そえうま。4頭立ての馬車で、補助となる外側の二頭の馬。また、補助となる馬が加わった3頭立ての馬車。「驂御サンギョ」(御者。驂サンの馬車の御者) (2)そえのり。護衛として貴人の車に同乗すること。「驂乗サンジョウ

形声字
 サン・ザン・みじめ  忄部
解字 旧字は慘で「忄(心)+參(サン)」の形声。発音字典の[正韻]は「痛む也」とし、心が痛む意とする。[詩経・小雅]は「憂える心慘慘サンサン」とし、心が憂える状況とする。みじめ・いたましい意、さらに転じて、むごい意となる。新字体は惨に変化。
意味 (1)みじめ(惨め)。いたましい。いたむ(惨む)。「悲惨ヒサン」「惨敗ザンパイ」 (2)むごい(惨い)。「惨事サンジ」「惨酷サンコク」「凄惨セイサン」(むごたらしい様子)
 シン・にじむ  氵部
解字 「氵(みず)+參(シン)」の形声。シンは浸シン(しみる)に通じ、水がしみこむこと。北宋の字書[類篇]は「音は侵シン。浸と同じ」とし発音はシンで意味は浸と同じとする。[説文解字]は「下に漉(したたる)也」とする。
意味 にじむ(滲む)。しみる(滲みる)。「滲出シンシュツ」(にじみ出る)「滲透シントウ」(しみとおる。=浸透)「滲漏シンロウ」(①にじみ漏れる。②手ぬかり)
 シン・サン  艸部

ニンジン(左)と朝鮮人参(右)(「高麗人参の豆知識」より)
解字 「艸(くさ)+參(シン)」の形声。シンは浸シン(しみこむ)に通じ、根が浸みこむように地中に入り込む草である朝鮮人蔘(高麗人蔘)をいう。根が人が立つ形に似ていることから「人蔘」の名称がついた。現在は「人参」で代用する。なお、日本でニンジンとよばれる赤いニンジンはセリ科の植物で別種の野菜。
意味 (1)にんじん(人蔘)。朝鮮人参(高麗人参)。漢方薬に用いるウコギ科の多年草。薄い黄色の根で人間が立っている形に似ている。現在は「人参」で代用する。 (2)にんじん(人参)。畑で作る二年草の野菜。根は黄赤色で太く長い。

その他
鰺[鯵] ソウ・あじ  魚部
解字 正字(篆文)は鱢ソウで、「魚+喿(ソウ)」の形声。ソウという名の魚。[字通]によると、魏の武帝(曹操)の名を避けて、喿ソウを參と改め鰺の字形になったという。本来は魚の臭いをいう字であった。日本でアジの意となる。現在の中国ではshēnの発音で日本のあじ(鰺)と同じ意味で用いている。鯵は俗字だが、よく使われる。
意味 (1)あじ(鰺)。スズキ目アジ亜科の海魚。マアジ・ムロアジ・シマアジなど。温帯から熱帯の沿岸域に広く分布する。「鰺刺あじさし」(カモメ科の鳥。水中に突入して魚を捕食する)(2)アジの語源。[大言海]には「和訓栞、あぢ。新撰字鏡に鰺を訓ぜり。萬葉集に「味」と書けり、味の佳なるを称するなるべし」とする。 (3)覚え方。味(アジ)くらべ加はばかり
<紫色は常用漢字>

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