漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

同訓異字「しめる」 占める・閉める・締める・絞める

2020年09月07日 | 同訓異字
問題 に上の漢字を入れてください。
(1)首をめる
(2)店をめる
(3)帯をめる
(4)土地を買いめる

 「シメ-る」の語源「シメ」は二つあり、ひとつは「シメ(締)」で、まわりから強い圧力をくわえて、ものの隙間やゆるみをなくす意です。もうひとつは「シメ(標)」で、土地の領有を示し、また場所を守るために杭などを立てたり、縄を張る(しめ縄)などして標(しるし)とするものです。なお、この他に「しみ-る(染みる・浸みる)」の他動詞形である「シメ-る(湿る)」がありますが、ここでは省略させていただきます。

 古代の日本人は、「しめ-る」という言葉で、上記の内容を含む表現をしていたと思われますが、漢字が伝来してその意味を知ることにより、漢字を用いてより明確な意味で用いるようになりました。
 今回は一つ目のシメ(締)の意味から二つの漢字。二つ目のシメ(標)の意味から二つの漢字を紹介します。

 テイ・むすぶ・しめる  糸部
音符の解字 締の音符は帝テイ

解字 甲骨文字で分かるように、三本脚の祭卓の脚をH印でしばった形の安定した大きな祭壇をいう。金文から祭卓に供物(-印)をのせる。最も尊い神を祀るときの祭卓で、その祭祀の対象となるものも帝とよんだ[字統ほか]。帝には、祭卓の脚部を「むすぶ」イメージがある。
テイの解字
解字 「糸(ひも)+帝(むすぶ)」の会意形声。糸(ひも)でしっかりと結ぶこと。むすぶ、転じてとりきめる意。日本では、ゆるみのないようにしめる意で用いる。
意味 (1)むすぶ(締ぶ)。とりきめる。「締結テイケツ」「締約テイヤク」 (2)しめる(締める)。しまる(締まる)。しめくくる。「帯を締める」「締め込み」(力士のふんどし)「ネジを締める」「心を引き締める」「締め切り」

 コウ・しめる・しぼる  糸部
音符の解字 絞コウの音符は交コウ

解字 人が脚を交差させた姿の象形。X型に交わる意味をしめす。
コウの解字
解字 「糸(ひも)+交(交差させる)」の会意形声。糸(ひも)を交差させてしめること。ひもを人の首(くび)にかけ交差させて両端をひっぱり「くびる」意である「しめる」として用いられることが多い。日本では、「しぼる」(ねじる)意でも用いられる。
意味 (1)しめる(絞める)。「絞殺コウサツ」(絞め殺す)「絞首コウシュ」(首を絞める)「絞罪コウザイ」(絞首刑に相当する罪) (2)[国]しぼる(絞る)。「絞り染め」

 セン・うらなう・しめる  ト部

解字 甲骨文第1字は、肩甲骨の象形の中に卜(うらない)と祭祀を象徴する口サイを描いた形で、甲骨占卜センボク(うらない)を表現した会意文字。第2字は肩甲骨を省いたかたち。意味は甲骨の卜兆(ひびわれ)を見て将来を判断すること[甲骨文字辞典]。春秋戦国以降、現在まで第2字の形が続いている。なお、この字は占う意のほかに「占める」意がある。この意味は甲骨の上に占う文字をきざみ連ねて、文字が甲骨の上を「占める」からとされる。この意味から占の音符を含む字は「場所をしめる」イメージを持つ。
意味 (1)うらなう(占う)。うらない(占)。「占卜センボク」(うらない。占も卜も、うらなう意) (2)しめる(占める)。「占有センユウ」「占拠センキョ」(場所を占めて他人をよせつけない)「独占ドクセン

 ヘイ・とじる・とざす・しめる  門部
音符の解字 閉の音符は才サイ

解字 杭などの先に目印をつけ境界などをしるしたもの。しるし(標し)・標識。甲骨文字は在ザイの原字として「ある」意味で使われている。金文でも「正月に才(あ)り」など在の意味で用いられているが、財ザイ(たから・価値あるもの)の意でも使われる例があり、意味が「ある」から「価値あるもの」へと変化していった。のちに「才能ある」「生まれつきの素質」などの意味になった。。
ヘイの解字
解字 「門(もん)+才(しるし・標識)」の会意。門の前にしるし(標識)が立てられたかたち。このしるしは境界を表し、門を入ることを禁ずる意。すなわち、門をとじる・しめる意となる。
意味 (1)とじる(閉じる)。とざす(閉ざす)。しめる(閉める)。「閉鎖ヘイサ」「閉門ヘイモン」 (2)とじこもる。とじこめる。「閉塞ヘイソク」 (3)おわる。「閉会ヘイカイ
<紫色は常用漢字>

問題と正解
(1)首をめる
(2)店をめる
(3)帯をめる
(4)土地を買いめる
正解
(1)首を「しめる」は、首に紐をかけ交差させて「しめる」ことですので、正解は音符・交コウが入った絞です。
(2)店を「しめる」は、店を閉ざす意味ですから閉が正解です。
(3)帯を「しめる」は、帯をゆるみやすきまのないように「しめる」意ですから、締が正解です。なお、「締める」は「気を引き締める」のように人の気持ちや心を「しめる」意でも使います。
(4)土地を買い「しめる」は、場所の領有を示すことですから占が正解です。

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