問題 □に漢字を入れてください。
(1)恩師の死を□む
(2)屋根が□む
(3)足が□む
「いたむ」の語源は「イタ」で、程度のはなはだしいさまをいい、「イタ-む」は「イタ(程度のはなはだしいさま)+む(動詞化)」で、イタを動詞化した言葉。同じ語源に「イタ-く」(連用形)「イタ-い」(形容詞)などがある。
「いたむ」は、①程度はなはだしく感じる意から、②身体が苦痛を感じる、③心が苦しいさま。④さらに転じて、器具が破損するさま、⑤食物が腐敗するさま、などにも使われる。
古代の日本人は、「いたむ」という言葉で、上記の内容を含む表現をしていたと思われるが、漢字が伝来してから「イタむ」という概念を漢字によって区別するようになった。漢和辞典で「いたむ」を引くと、20以上の漢字があるが、今回は代表的な3つに限定して紹介します。
痛 ツウ・いたい・いたむ・いためる 疒部
解字 「疒(やまいだれ=病気)+甬(=通ツウとおる)」の会意形声。身体の中を突き通るような激しいいたみの意。中国語の辞書には「いたみ」という日本語はありませんから、痛の字の意味を「疾病・創傷等が引き起こす受け入れ難い感覚」と説明しています。つまり「いたい」のです。「イタむ」では②身体が苦痛を感じる意になります。また、中国語でも意味③の心が苦しいさまの意でも使います。さらに、「イタむ」の原義である①程度はなはだしく感じる意から、痛快・痛烈の意ともなります。
意味 (1)いたい(痛い)。いたむ(痛む)。いためる(痛める)。「痛風ツウフウ」「腰痛ヨウツウ」「痛手いたで」(①重い手傷。②ひどい打撃・損害) (2)(心が)いたむ(痛む)。なやむ。「痛恨ツウコン」「心痛シンツウ」 (3)いたく。はげしく。「痛快ツウカイ」「痛烈ツウレツ」
傷 ショウ・きず・いたむ・いためる イ部
解字 これは難解な字。この字のどこを見ても「きず」の意味は出てこない。私は「六書通」にある異体字から説明している。篆文第一字は「六書通」にある異体字で、「矢+人の変形+昜(あがる)」の会意形声。昜ヨウは太陽があがる意で陽の原字。下からあがってきた矢にあたり人がキズつくこと。𥏻は正字ではないが、傷の成り立ちを探るうえで手掛かりとなる字。第二字は正字で、矢の代わりに人が付いて人がきずつく意とする。現代字は、「イ(人)+𠂉(ひと)+昜(あがる)」の傷になった。
意味 (1)きず(傷)。けが。「傷病ショウビョウ」「重傷ジュウショウ」「深傷ふかで」(重傷。深手) (2)きずつく。きずつける。「傷害ショウガイ」「中傷チュウショウ」(悪口を言って人を傷つける) (3)いたむ(傷む)。いためる(傷める)。かなしむ。「傷心ショウシン」「感傷カンショウ」(感じて心をいためる) (4)[国]器物・建物などをそこなう。「屋根が傷(いた)む」
悼 トウ・いたむ 忄部
解字 「忄(心)+卓(=掉トウ。振り動かす)」の会意形声。心が振り動かされる状態をいい、おそれる、かなしむこと。かなしむ意から人の死をいたむ意となる。
意味 (1)おそれる。悲しむ。「悼懼トウク」(悲しみおそれる) (2)いたむ(悼む)。人の死を悲しみ嘆く。「哀悼アイトウ」「追悼ツイトウ」「悼惜トウセキ」(人の死をいたみ、おしむ)
問題と正解
(1)恩師の死を□む
(2)屋根が□む
(3)足が□む
(1)人の死を「いたむ」場合は、悼むを用います。この字は人の死を悼む場合の専用に使われます。中国から悼という漢字が伝来し、この字の意味を知ってから人の死を「いたむ」という言い方をしたのではないでしょうか。万葉集の挽歌(哀傷歌)では大伴家持が、妹(妻)の死を「いたき(痛き)心」という表現を使っています。
(2)屋根が「いたむ」の場合、身体的ないたみでなく、器具や家屋などのいたみとなります。痛の場合は、身体的ないたみ以外に、心の痛み・程度のはげしい意味はありますが、器具や家屋が「いたむ」言い方はありません。ここでは「きず」の意味の傷を器具や家屋が「いたむ」意味で用います。
(3)足が「いたむ」のですから身体的な「いたみ」です。身体的ないたみは痛ツウと傷ショウの2字がありますが、身体の「いたみ」は痛を用いるのが慣例です。傷ショウは「きず」という訓がありますので、これを第一としています。なお、「足が傷む」と書いても間違いではありません。しかし、今回のように3つの選択肢がある場合は痛が正解となります。
追加の問題
(4)食品が□む。
正解
(4)食品が傷む。痛は身体や心のいたみに使いますので、食品のいたみは傷を用いるのが一般的なようです。「食品に傷がつく」という言い方からの使用でしょうか。果物が傷むという言い方もあります。
(1)恩師の死を□む
(2)屋根が□む
(3)足が□む
「いたむ」の語源は「イタ」で、程度のはなはだしいさまをいい、「イタ-む」は「イタ(程度のはなはだしいさま)+む(動詞化)」で、イタを動詞化した言葉。同じ語源に「イタ-く」(連用形)「イタ-い」(形容詞)などがある。
「いたむ」は、①程度はなはだしく感じる意から、②身体が苦痛を感じる、③心が苦しいさま。④さらに転じて、器具が破損するさま、⑤食物が腐敗するさま、などにも使われる。
古代の日本人は、「いたむ」という言葉で、上記の内容を含む表現をしていたと思われるが、漢字が伝来してから「イタむ」という概念を漢字によって区別するようになった。漢和辞典で「いたむ」を引くと、20以上の漢字があるが、今回は代表的な3つに限定して紹介します。
痛 ツウ・いたい・いたむ・いためる 疒部
解字 「疒(やまいだれ=病気)+甬(=通ツウとおる)」の会意形声。身体の中を突き通るような激しいいたみの意。中国語の辞書には「いたみ」という日本語はありませんから、痛の字の意味を「疾病・創傷等が引き起こす受け入れ難い感覚」と説明しています。つまり「いたい」のです。「イタむ」では②身体が苦痛を感じる意になります。また、中国語でも意味③の心が苦しいさまの意でも使います。さらに、「イタむ」の原義である①程度はなはだしく感じる意から、痛快・痛烈の意ともなります。
意味 (1)いたい(痛い)。いたむ(痛む)。いためる(痛める)。「痛風ツウフウ」「腰痛ヨウツウ」「痛手いたで」(①重い手傷。②ひどい打撃・損害) (2)(心が)いたむ(痛む)。なやむ。「痛恨ツウコン」「心痛シンツウ」 (3)いたく。はげしく。「痛快ツウカイ」「痛烈ツウレツ」
傷 ショウ・きず・いたむ・いためる イ部
解字 これは難解な字。この字のどこを見ても「きず」の意味は出てこない。私は「六書通」にある異体字から説明している。篆文第一字は「六書通」にある異体字で、「矢+人の変形+昜(あがる)」の会意形声。昜ヨウは太陽があがる意で陽の原字。下からあがってきた矢にあたり人がキズつくこと。𥏻は正字ではないが、傷の成り立ちを探るうえで手掛かりとなる字。第二字は正字で、矢の代わりに人が付いて人がきずつく意とする。現代字は、「イ(人)+𠂉(ひと)+昜(あがる)」の傷になった。
意味 (1)きず(傷)。けが。「傷病ショウビョウ」「重傷ジュウショウ」「深傷ふかで」(重傷。深手) (2)きずつく。きずつける。「傷害ショウガイ」「中傷チュウショウ」(悪口を言って人を傷つける) (3)いたむ(傷む)。いためる(傷める)。かなしむ。「傷心ショウシン」「感傷カンショウ」(感じて心をいためる) (4)[国]器物・建物などをそこなう。「屋根が傷(いた)む」
悼 トウ・いたむ 忄部
解字 「忄(心)+卓(=掉トウ。振り動かす)」の会意形声。心が振り動かされる状態をいい、おそれる、かなしむこと。かなしむ意から人の死をいたむ意となる。
意味 (1)おそれる。悲しむ。「悼懼トウク」(悲しみおそれる) (2)いたむ(悼む)。人の死を悲しみ嘆く。「哀悼アイトウ」「追悼ツイトウ」「悼惜トウセキ」(人の死をいたみ、おしむ)
問題と正解
(1)恩師の死を□む
(2)屋根が□む
(3)足が□む
(1)人の死を「いたむ」場合は、悼むを用います。この字は人の死を悼む場合の専用に使われます。中国から悼という漢字が伝来し、この字の意味を知ってから人の死を「いたむ」という言い方をしたのではないでしょうか。万葉集の挽歌(哀傷歌)では大伴家持が、妹(妻)の死を「いたき(痛き)心」という表現を使っています。
(2)屋根が「いたむ」の場合、身体的ないたみでなく、器具や家屋などのいたみとなります。痛の場合は、身体的ないたみ以外に、心の痛み・程度のはげしい意味はありますが、器具や家屋が「いたむ」言い方はありません。ここでは「きず」の意味の傷を器具や家屋が「いたむ」意味で用います。
(3)足が「いたむ」のですから身体的な「いたみ」です。身体的ないたみは痛ツウと傷ショウの2字がありますが、身体の「いたみ」は痛を用いるのが慣例です。傷ショウは「きず」という訓がありますので、これを第一としています。なお、「足が傷む」と書いても間違いではありません。しかし、今回のように3つの選択肢がある場合は痛が正解となります。
追加の問題
(4)食品が□む。
正解
(4)食品が傷む。痛は身体や心のいたみに使いますので、食品のいたみは傷を用いるのが一般的なようです。「食品に傷がつく」という言い方からの使用でしょうか。果物が傷むという言い方もあります。
日本語(大和言葉)の(比較上の)特徴は、このような概念分離を徹底追及しないです。これにはメリットもデメリットもあると思います。なお、文字で書く場合には、このように漢語を用い、概念分離が可能です。