朝日新聞 2011年9月30日11時26分
HIV(エイズウイルス)やエイズについて考える「AIDS文化フォーラムin京都」が10月1、2両日、京都市下京区七条通大宮東入大工町の龍谷大学大宮学舎で開かれる。「エイズを知ろう、エイズで学ぼう」をテーマに、HIV陽性者や支援者、医療関係者らが性の多様性、予防啓発の取り組み、学校教育での実践例などを発表する。10月1日は12時半、2日は10時にスタート。1日13~15時にはHIV抗体検査もある。
◇
■「ともに生きる」社会を―京都市の高畑吉博さんに聞く
フォーラムで、「HIV陽性者の日常~私たちはこんな感じで生きてます」と題して発表する高畑吉博さん(55)=京都市=に、思いを聞いた。
発表の目的は、「僕たちは、あたり前の生活をしている人」という実感を来場者に持ってもらうことです。1人のHIV陽性者であり、1人のゲイ。でもそれは僕の一部分でしかない。あたり前に仕事をし、遊び、生活しているんだとわかってもらうことです。ふだんの生活の中で意識するのは、1日2回、薬を飲むときぐらいかな。副作用もありますが、そうしたことを含めて「日常」です。
HIV陽性者だからと歯科医院で診療を拒否されるなど、理不尽なことはまだまだあります。いま自分が安心して治療を受けられるのは、先行く人が闘ってくれたおかげ。その人たちが作ってくれた道を歩いてきた僕は、後から来る人が少しでも歩きやすくしたい。
告知は2001年。性交渉が原因です。冷静に聞いたつもりですが、自分だけが全然違う世界に入り込んだ気分でした。今は様々な情報を得られますが、当時は、ほかのHIV陽性者と出会うこと自体が難しかった。ずっと、自分はなぜゲイなんだという罪の意識がありました。感染告知は、自分が持っていたエイズや性にまつわる偏見と向き合う体験でした。
調べるうちに、1冊の本と出会いました。米紙の記者が書いた「そしてエイズは蔓延(まんえん)した」。エイズと闘うゲイの姿が描かれていました。インターネットを通じてHIV陽性者と知り合い、僕よりもしんどい状況でがんばっている人がいると知りました。
そういう体験が積み重なって自分がHIV陽性者であること、ゲイであることを受け入れられるようになりました。いまは隠していません。言いふらしてもいませんが。
「ともに生きる」という言葉が好きです。いろんな違いがある。けれども一緒に生きる。そんな社会ならば、HIV陽性者として、ゲイとして生きることはそんなに難しいことではないと思います。ところが今の日本社会はみんなと違う人を受け入れない。ハンセン病、在日、アイヌ、外国人……。感染を告知されて、今まで見えにくかったマイノリティーの姿が見えてきました。
もちろん、HIVに感染しない方がいいけれど、告知されていなかったら、大切な人たちの存在に気づかないままの、もっと傲慢(ごうまん)な人間になっていたのではないかと思います。 (聞き手・下地毅)
◇
〈HIVとエイズ〉 HIVがリンパ球を破壊し、体の免疫力が低下した結果、ささいな細菌やカビによる肺炎やがんを発症した場合にエイズと診断される。ウイルスの増殖を抑えつつ、副作用の少ない治療薬の開発も進んでいる。
http://www.asahi.com/edu/news/OSK201109300030.html
HIV(エイズウイルス)やエイズについて考える「AIDS文化フォーラムin京都」が10月1、2両日、京都市下京区七条通大宮東入大工町の龍谷大学大宮学舎で開かれる。「エイズを知ろう、エイズで学ぼう」をテーマに、HIV陽性者や支援者、医療関係者らが性の多様性、予防啓発の取り組み、学校教育での実践例などを発表する。10月1日は12時半、2日は10時にスタート。1日13~15時にはHIV抗体検査もある。
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■「ともに生きる」社会を―京都市の高畑吉博さんに聞く
フォーラムで、「HIV陽性者の日常~私たちはこんな感じで生きてます」と題して発表する高畑吉博さん(55)=京都市=に、思いを聞いた。
発表の目的は、「僕たちは、あたり前の生活をしている人」という実感を来場者に持ってもらうことです。1人のHIV陽性者であり、1人のゲイ。でもそれは僕の一部分でしかない。あたり前に仕事をし、遊び、生活しているんだとわかってもらうことです。ふだんの生活の中で意識するのは、1日2回、薬を飲むときぐらいかな。副作用もありますが、そうしたことを含めて「日常」です。
HIV陽性者だからと歯科医院で診療を拒否されるなど、理不尽なことはまだまだあります。いま自分が安心して治療を受けられるのは、先行く人が闘ってくれたおかげ。その人たちが作ってくれた道を歩いてきた僕は、後から来る人が少しでも歩きやすくしたい。
告知は2001年。性交渉が原因です。冷静に聞いたつもりですが、自分だけが全然違う世界に入り込んだ気分でした。今は様々な情報を得られますが、当時は、ほかのHIV陽性者と出会うこと自体が難しかった。ずっと、自分はなぜゲイなんだという罪の意識がありました。感染告知は、自分が持っていたエイズや性にまつわる偏見と向き合う体験でした。
調べるうちに、1冊の本と出会いました。米紙の記者が書いた「そしてエイズは蔓延(まんえん)した」。エイズと闘うゲイの姿が描かれていました。インターネットを通じてHIV陽性者と知り合い、僕よりもしんどい状況でがんばっている人がいると知りました。
そういう体験が積み重なって自分がHIV陽性者であること、ゲイであることを受け入れられるようになりました。いまは隠していません。言いふらしてもいませんが。
「ともに生きる」という言葉が好きです。いろんな違いがある。けれども一緒に生きる。そんな社会ならば、HIV陽性者として、ゲイとして生きることはそんなに難しいことではないと思います。ところが今の日本社会はみんなと違う人を受け入れない。ハンセン病、在日、アイヌ、外国人……。感染を告知されて、今まで見えにくかったマイノリティーの姿が見えてきました。
もちろん、HIVに感染しない方がいいけれど、告知されていなかったら、大切な人たちの存在に気づかないままの、もっと傲慢(ごうまん)な人間になっていたのではないかと思います。 (聞き手・下地毅)
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〈HIVとエイズ〉 HIVがリンパ球を破壊し、体の免疫力が低下した結果、ささいな細菌やカビによる肺炎やがんを発症した場合にエイズと診断される。ウイルスの増殖を抑えつつ、副作用の少ない治療薬の開発も進んでいる。
http://www.asahi.com/edu/news/OSK201109300030.html