中日新聞 2011年10月23日
<大地よ 重たかったか 痛かったか… 多くの民が あなたの 重さや痛みとともに 波に消えて そして 大地にかえっていった>。アイヌ民族の詩人宇梶静江さんが、震災の後に書いた「大地よ」の一節だ
▼自然の痛みを自らに重ねるアイヌの世界観がにじむ。この詩に曲をつけて、歌っているのがジャズ歌手の熊谷たみ子さん(59)だ。この夏、自主制作したCDの売り上げのうち一枚につき五百円を震災で親を亡くした子どもたちの支援に送るつもりだ
▼集団就職した先の東京でスカウトされ歌手デビュー。若いころは鳴かず飛ばずだったが、ジャズに魅了されライブ活動をしてきた。二年前の春に大腸がんが再発、「余命一年」を告げられた。それを機にアイヌという自らのルーツを隠さなくなった
▼抗がん剤治療だけではなく、民間療法も積極的に取り入れ、心に希望を灯(とも)してきた。余命を告げられてから二年半になるが、今もステージに立ち続ける
▼おとといの夜、熊谷さんのライブに行った。赤いドレスにスポットライトが当たる。情感のこもった「大地よ」とアイヌ語の「アメイジング・グレイス」には涙が出てきた
▼艶やかな声でジャズのスタンダードを熱唱する姿は「余命」を意識している人には見えないが、実は痛み止めの薬を飲みながらのステージだったという。笑顔の裏には壮絶な闘いがあった。
http://www.chunichi.co.jp/article/column/syunju/CK2011102302000013.html
<大地よ 重たかったか 痛かったか… 多くの民が あなたの 重さや痛みとともに 波に消えて そして 大地にかえっていった>。アイヌ民族の詩人宇梶静江さんが、震災の後に書いた「大地よ」の一節だ
▼自然の痛みを自らに重ねるアイヌの世界観がにじむ。この詩に曲をつけて、歌っているのがジャズ歌手の熊谷たみ子さん(59)だ。この夏、自主制作したCDの売り上げのうち一枚につき五百円を震災で親を亡くした子どもたちの支援に送るつもりだ
▼集団就職した先の東京でスカウトされ歌手デビュー。若いころは鳴かず飛ばずだったが、ジャズに魅了されライブ活動をしてきた。二年前の春に大腸がんが再発、「余命一年」を告げられた。それを機にアイヌという自らのルーツを隠さなくなった
▼抗がん剤治療だけではなく、民間療法も積極的に取り入れ、心に希望を灯(とも)してきた。余命を告げられてから二年半になるが、今もステージに立ち続ける
▼おとといの夜、熊谷さんのライブに行った。赤いドレスにスポットライトが当たる。情感のこもった「大地よ」とアイヌ語の「アメイジング・グレイス」には涙が出てきた
▼艶やかな声でジャズのスタンダードを熱唱する姿は「余命」を意識している人には見えないが、実は痛み止めの薬を飲みながらのステージだったという。笑顔の裏には壮絶な闘いがあった。
http://www.chunichi.co.jp/article/column/syunju/CK2011102302000013.html