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アイヌ遺骨:返還でガイドライン

2014-05-15 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2014年5月15日(木)
 北海道大など全国12大学が研究目的で収集したアイヌ遺骨の返還問題で政府は14日、アイヌ政策推進会議作業部会で、返還に向けたガイドラインを提示した。返還対象は保管されているアイヌ遺骨1636体のうち、個人が特定できた23体。
 ガイドラインは、個人が特定できた遺骨の性別や元の埋葬場所など、返還先の手がかりとなる情報を各大学が公開するとしている。返還を希望する遺... 続きを読む
http://mainichi.jp/shimen/news/m20140515ddm012040122000c.html

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イナウとアイヌ民族(上)  北原次郎太

2014-05-15 | アイヌ民族関連
朝日新聞 2014年05月13日
●北原次郎太 北海道大アイヌ・先住民研究センター准教授
■カムイに感謝伝え平安願う
 アイヌ民族の伝統的な暮らしでは、春と秋に大きな祭祀(さいし)「カムイノミ」を行い、祭壇には白木を削った美しい房飾りのようなものが立ち並ぶ。これをイナウと呼ぶ。つい先日も鶴居村と白老町で開かれた祭祀に参列したが、微風に揺れる真新しいイナウの姿にはペケレ(レは小文字)「清い」という言葉がふさわしく、完成した祭壇を見ていると、空気までが神聖なものに変わっていくように感じる。イナウは祭祀のたびに新しく作られ、神酒とともに神々に奉納される。根底には、神々との結びつきを強め、日々の暮らしを安心で豊かなものにしたいという思いが流れている。
   ◇  ◇  ◇
 アイヌ民族の世界観には、個性豊かな数多くのカムイ「神」が存在する。人間が暮らす環境を形成する多様な動植物や水、鉱物、天体や自然現象などは全て内に生命を宿し、人間と同じような精神活動をしながら生きている、と考えられてきた。それらの生命に、敬いを込めて語りかけるとき、カムイという名で呼ぶ。
 川にも岩にも風にも命がある、ましてそれらに「心」があるという教えは、現代のアイヌから見てもとっぴに思えるが、こうした思想自体は日本人にも元々あったものだから、理解はしやすいだろう。自然を擬人的にとらえる信仰は、不安と欲望をコントロールする効果を持つ。人間の暮らしは狩猟や漁労、採集、農耕などいずれの形態をとるにせよ、自然環境に大きく左右される。人間がどれだけ思考を重ねても、将来がどうなるかを推し量ることはできない。ならば、人知を超えたことを不安の種として抱えておかず、人に出来るだけのことはして、あとは神に委ねてしまうのも不安をコントロールする一つの方法である。
 また、自然の中に人格を認めるとすれば、人は自然を見るだけでなく、自然から見られる立場にもなる。つまり、おのずから人間自身を相対化することになる。アイヌ文学には、動植物が、見どころありと感じた人間を助ける話が数多くあり、いっぽう、山菜を採り尽くした女や、狐(きつね)に魚を分け与えなかった男が罰せられた、人々が感謝の心を忘れたときに世界が滅びかけた、というストーリーも多い。これらに通底する「自然から与えられたものに満足し、感謝せよ」という思想は、欲望を抑え、資源利用をセーブすることと、心の平安を両立させてきた。
 イナウは、カムイへの感謝の印として奉納するのだが、実はこれとよく似た民具は、ボルネオ島から日本列島(サハリン島を含む)にかけての東アジアと、ユーラシア西部にも見られる。アイヌ民族のイナウに限っても、形状や大きさは様々である。概して大きく複雑な形状の物ほどカムイが喜ぶとされる。イナウの面白い所は、贈り物であると同時にメッセンジャーでもあるという点である。イナウを探求することはアイヌ文化の内と外の双方に目を向けることにつながる。
   ◇  ◇  ◇
 意外に思われるかも知れないが、昨今のカムイノミには大学などの研究機関と共同で行われるものも多い。道内や本州の主な博物館には、およそ1500点のイナウが収蔵されており、日本人研究者もアイヌの宗教に強い関心を向けてきたことがわかる。近年では北大植物園や国立民族学博物館などの研究機関が文化復興を担う人々と情報共有を進めており、あるいはアイヌ民族博物館や道立アイヌ民族文化研究センター、札幌大学などのように、アイヌと日本人の双方が参画する組織を模索し、宗教を含むアイヌ文化全体の研究と教育を行っているケースもある。イナウを研究し、作り、祈る場を取り巻いて、民族を超えた共同が試みられている。
     ◇
 1976年、東京都生まれ。専門は文化人類学。『アイヌの祭具 イナウの研究』(北海道大学出版会)を今年2月に刊行。
http://www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW20140513011190001.html

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