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先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

全国からライダー集結 白老でBikeJIN祭りにぎわう

2016-09-07 | アイヌ民族関連
苫小牧民報  (2016年 9/6)
 今年で3回目となるバイクイベント「BikeJIN祭り@HOKKAIDO白老withバイク王」(BikeJIN編集部主催)が4日、白老町北吉原の日本航空学園白老滑空場で開かれ、全国各地から2輪1500台、4輪400台の総勢2700人が集まり、休日のイベントを楽しんだ。会場では最新型バイクや用品の展示販売、試乗会が行われたほか、白老町自慢の食材を使った料理も販売し、人気を集めた。
 午前10時の開会前から続々と2輪や4輪が来場。本州ナンバーの車両も多数駆け付け、駐輪場には開幕時点で500台超が集まるなど早々ににぎわいを見せた。
 開会式では、中村淳一編集長が「台風の影響が残る中での来場に感謝するとともに、大雨で被災した地域に対して1日も早い復興を願っています」とあいさつ。戸田安彦白老町長はアイヌ語の「こんにちは」を意味するイランカラプテの言葉で来場者を歓迎。「今年で3回目を迎えた。第1回目の時は町民も驚いていたが、今では白老の風物詩の一つとして盛り上がっている」と感謝の言葉を述べた。
 特設ステージではアイヌ民族博物館の職員が民族楽器ムックリ演奏で来場者を歓迎。会場ではバイクショップや用品メーカーなど出店したブースが人気を集め、レース専用車両や市販車両、バイクウエア、無線機、小型カメラなど各種用品も展示販売された。
 白老町の飲食店関係者などが出店した軽食コーナーも人気を集め、白老牛バーガーのテント前は開会前から長蛇の列ができるほど。白老観光協会や日本航空学園の学生21人もボランティアとして参加し、地域を挙げてイベントの盛り上げに一役買った。
 航空学園白老校の学生、楠澪音(みお)さん(19)は物販ブースを担当。「将来は接客業を目指しており、今回の体験から学ぶことが多かった」、脇坂恵理さん(18)は「コミュニケーション能力だけでなくいろいろな経験ができた」と笑顔で話した。
 千歳市から友人と2人で来場した森川広幸さん(62)は今回で2回目の参加。「駐輪場に停めているバイクを見るだけでも楽しい」と感想を語っていた。
http://www.tomamin.co.jp/20160942300

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滋賀の博物館・美術館巡り/66 豊会館 近江商人の心意気 /滋賀

2016-09-07 | アイヌ民族関連
毎日新聞2016年9月6日 地方版
藤野家の栄枯盛衰伝える
 藤野家は江戸時代中期から明治期にかけて、北海道松前貿易を繁栄させた近江商人で、天保年間に建てられたその邸宅と庭園が、現在「豊会館」として保存公開されています。1928年から56年にかけて一時村役場に使用されていたものの、その後荒れはててしまった本邸宅を68年、明治100年の記念事業として地元企業家らによる援助によって、藤野家の事業と近江商人の心意気を後世に伝える社会教育の場として整備したものです。
「天保の大飢饉」救う
 初代藤野喜兵衛喜昌は天明元(1780)年生まれ。12歳で北海道松前へ渡り、呉服商へ丁稚(でっち)見習いに入ります。20歳にして独立、呉服商を営む傍ら、松前の港に水揚げされる大量の海産物に目をつけました。そして、故郷・近江ではめずらしい魚介類を塩や搾りかすで保存することを工夫し、7隻の北前船の輸送力を駆使して関西圏にひろく輸送販売を始めます。
 また、持ち前の熱意で松前藩主に願い出て、東西蝦夷地の数カ所に漁場請負の許可をとりました。その海産物、また、アイヌの収穫物や産物を本州に運ぶ一方、アイヌや現地の必要物資も回送し、互いの利益になるこの「三方よし」の商いは、地元民の協力も得て大きく発展し、藤野家は北海道における確固たる地位を得たのです。しかし、彼は病により44歳の若さでこの世を去ってしまいます。
 2代目藤野四郎兵衛良久が父の遺業を継いだのはわずか13歳の時でした。彼は根室や色丹島、択捉島に進み漁場を開拓、根室一帯を差配するまでに成長します。ちょうどそのころ、天保の大飢饉(ききん)が日本を襲いました。蝦夷地においても主食が欠乏しますが、藤野家の北前船を使い遠く下関(山口県)から米を運び人々を救済します。
 また、地元近江でも飢饉の影響は大きく、この時に、お助け普請として建てられたのが、この邸宅なのです。郷里の寺院、仏堂も建立し、作業に従事したものに多額の労賃や食料を与えました。ですから、近江商人のものとしては大変豪華で、また、庭園は勝元鈍穴作庭の広く美しいもので、「松前の庭」と名付けられています。
「相手よし、世間よし」
 幕末・明治の混乱期、3代目は北海道開拓の新事業に鋭意し、4代目は船舶の近代化に着手、うまく舵とりを行います。とくに4代目は西洋の缶詰技術に着目し先進諸国を視察して製造を始めます。これは「あけぼの缶詰」のルーツとなる星印缶詰として国内はもとより輸出もされるまでになりました。
 遠く北海道と本州を東奔西走し、常に時代の先を読み「相手よし、世間よし」の精神を貫いた近江商人藤野家。その栄枯盛衰を見つめてきた大きな楠が、今も庭園の背後にそびえています。縁側に座り、庭園を眺めながらその大木とそっと対話をしていると、一瞬数百年の時を超えて活気のある人々の声が聞こえてくる気がします。(MIHO MUSEUM学芸員 桑原康郎)<協力・滋賀県博物館協議会>
所在地:豊郷町下枝56
電話番号:0749・35・2356
開館時間:9:00〜16:00
休館日:月、水、金曜日、年末年始
観覧料:大人200円、小人(小中生)100円
駐車場:7台
交通:近江鉄道「豊郷駅」下車、徒歩7分
http://mainichi.jp/articles/20160906/ddl/k25/040/594000c

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東京と北海道で暮らすアイヌ姉妹に密着したドキュメンタリーが公開

2016-09-07 | アイヌ民族関連
ナタリー-2016年9月6日 14:29

アイヌ民族の姉妹に密着したドキュメンタリー「kapiw(カピウ)とapappo(アパッポ)~アイヌの姉妹の物語~」が、11月19日から東京・ユーロスペースにて公開される。
本作は、東京で暮らしアイヌの歌や踊りを披露する姉・絵美と、故郷の北海道で家族とともにアイヌ料理店を営む富貴子の日々を切り取った記録映画。ときに衝突しながらも、初めての姉妹でのデュオライブを目指して奮闘する2人の姿を追う。監督を務めたのは、鈴木清順、黒木和雄、大林宣彦らの作品に助監督として参加してきた佐藤隆之。
現在YouTubeで公開中の予告編には、東京と北海道でのそれぞれの生活や、民族衣装を着て舞台に立つ姉妹の姿が収められている。
ドキュメンタリー「kapiw(カピウ)とapappo(アパッポ)~アイヌの姉妹の物語~」
https://youtu.be/yS3-5whkTZg
http://natalie.mu/eiga/news/200597

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「文化を知ってもらいたい」 台湾の木彫り職人、日台の芸術交流強化に期待

2016-09-07 | 先住民族関連
中央フォーカス台湾2016/09/06 17:12

(屏東 6日 中央社)屏東県来義郷に工房を構える木彫り職人の塗南峰さんが、日本との芸術交流の強化に期待を寄せている。台湾原住民(先住民)パイワン族の文化を多くの人に知ってもらいたい考え。
屏東県北大武山に暮らすパイワン族は、飲食や衣服、工芸などさまざまな面で独自の文化を持つ。もともと文字がなかったため、口承や木彫りの形で歴史を残してきた。塗さんは1999年~2008年には木彫りのコンテストで高評価を複数回得た実力の持ち主。桃園空港で作品が展示されたこともある。
そんな中、空港で塗さんの作品を目にした日本人男性が工房を訪れたことをきっかけに、日本との交流が始まった。この男性はすでに複数回塗さんを訪ね、来年の再訪も約束しているという。塗さんは会員制交流サイト上に写真を投稿し、原住民の木彫り工芸の素晴らしさを日本に伝えられたと喜びを語っている。
(編集:齊藤啓介)
http://japan.cna.com.tw/news/atra/201609060009.aspx

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「太陽の子」 家族と故郷の再生 熊本支援チャリティー、座間で13日2回上映 /神奈川

2016-09-07 | 先住民族関連
毎日新聞2016年9月6日 地方版
台湾の農村での実話基にした映画
 台湾の農村で持ち上がった実話を基に家族と故郷の再生を映画化した台湾映画「太陽の子」が13日、県内で初めて座間市緑ケ丘1のハーモニーホール座間で上映される。同市スポーツ・文化振興財団の主催で、入場料(500円、全席自由)はすべて熊本地震の被災地復興のために寄付される。
 作品の舞台は、台湾・花蓮の先住民族・アミ族が暮らす港口集落。主人公の女性パナイは、台北のテレビ局のジャーナリストだ。ある日、パナイの2人の子どもと古里で暮らす父親が病に倒れた。看病のために帰郷して目にしたものは、一面の荒れた棚田と、そこに持ち上がった大型ホテル建設計画だった。
 先祖伝来の土地を失うと心配する反対派と雇用創出や観光収入を期待する賛成派。開発と伝統を巡り、家族や故郷の人々は二つに割れてしまう。先住民族の誇りを取り戻そうと、パナイは自分の名前の由来(パナイ=稲穂)でもある伝統の米「海稲米」の復活に懸け、ふるさとに戻ることを決心する−−というストーリーだ。
 上映プロジェクトの主催者でジャーナリストの野嶋剛さんは「いま台湾でアミ族ら先住民の社会に何が起きているのか。台湾とはいったいどんな土地なのか。そんな問題に関心がある人は、この作品を見てほしい。きっと何かをみなさんの心に深く刻んでくれるはずだ」と話している。
 上映は午前11時からと午後1時半からの2回。同0時50分から会場で、主演女優のアミ族の歌手、アロ・カリティン・パチラルさんと野嶋さんのトークショーがある。問い合わせはハーモニーホール座間(046・255・1100)。【長真一】
http://mainichi.jp/articles/20160906/ddl/k14/040/370000c

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【激撮】国立公園と先住民居留地の境界線?

2016-09-07 | 先住民族関連
R25-2016.09.06 TUE

画像提供:ナショナル ジオグラフィック日本版(PHOTOGRAPH BY PETE MCBRIDE/National Geographic)
先住民のワラパイ族は、居留地に近接するコロラド川の流域でボートツアーを実施している。グランドキャニオン国立公園と先住民居留地は川で隔てられているが、その正確な境界線をめぐっては、国立公園局とワラパイ族の間で主張が対立している。
(ナショナル ジオグラフィック2016年9月号特集「自然と人間 傷つけられるグランドキャニオン」より)
http://r25.jp/topic/00052613/


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映画『太陽の子』と台湾の先住民問題

2016-09-07 | 先住民族関連
nippon.com-[2016.09.06]野嶋 剛 【Profile】

先住民に謝罪した蔡英文総統
8月15日、台湾総統の蔡英文は、台湾東部の離島、蘭嶼島(らんしょとう)を訪れた。蔡英文の目的は謝罪だった。そこにはタオ族の人々およそ4千人が暮らし
ている。蔡英文は、民族衣装姿の頭目に向き合い、トレードマークのおかっぱの髪の毛が下がって横顔が見えなくなってしまうほど深々と、頭を垂れた。
蔡英文の選挙前からの公約だった先住民に対する謝罪。それは、8月1日に総統府で正式に行われた。台湾に54万人、16部族いる先住民の代表たちを総統府に招いた形での謝罪が、同じ先住民の一部からは「皇帝の拝謁(はいえつ)のようで差別意識の表れだ」と厳しい批判を招いた。しかし、全ての部族を一人の総統が回ることなど物理的に不可能であり、いささか批判のための批判という印象が強かった。先住民の中にもいろいろなグループがあるようだ。だが、総統が客人として先住民を総統府に招き、謝る。その意味は大きかった。
蔡英文はその翌日から、時間を見つけては先住民地域をその足で訪れ、謝罪を行っている。特にこの日の蘭嶼島行きは象徴的な意味があった。なぜなら、蘭嶼島には、低レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設が置かれているからだ。その貯蔵施設の設置の経緯は非常に曖昧かつ怪しいもので、「缶詰工場を造る」と言って地元のタオ族をだました、という声もあるほどだ。真実は闇の中だが、もともと海洋廃棄のための「一時的」な貯蔵施設のはずが半永続化してしまったのは、先住民が「犠牲にされやすい人々」だったことと関係していないはずはない。そうした「先住民=犠牲にされる人々」という構図に対して、今後決別するという意思を示すための謝罪であり、台北から最も遠い離島の一つである蘭嶼島への訪問だったと考えられる。
こうした先住民への謝罪は、台湾では「移行期の正義」と呼ばれる。かつての政権が行ったさまざまな圧政や暴力を総括し、二度と起きないよう謝罪や責任の明確化を行うものである。例えば、民進党政権になって台湾の立法院は野党・国民党の巨額の党資産を解体するために条例を可決した。これも、国民党が戦後間もなく接収した台湾の日本資産を党資産にしてしまって政党間の正常な競争を阻害しているという問題意識から行っているもので、「失われた正義」を回復させるための措置であると理解されている。
「失われた正義」の回復と映画『太陽の子』
「失われた正義の回復」というと難しく聞こえるかもしれないが、日本においても水俣病被害者への賠償や、薬害エイズの責任追及など、いずれも類似の問題であると考えていい。ただ、台湾では、専制政治が長く続き、複雑な歴史もあるので、問題解決への道はより難しく、遠いところにある。
© 一期一會影像製作有限公司
そんな「失われた正義の回復」という意味から、じっくり見てほしい映画がある。台湾映画『太陽の子』(原題:太陽的孩子)である。台湾で2015年に上映され、多くの反響を呼んだ映画で、日本に紹介したいと考えた筆者らのグループがこのほど、日本上映プロジェクトを進めているものだ。9月にも東京や神奈川、静岡、福岡で上映会を予定している(詳細はこちらのサイトから 映画『太陽の子』)。
初めて本作を見たのは、台湾の映画館だった。いい映画だと思ったが、何が良かったのか、うまく自分の中で説明がつかなかった。だからもう一度、映画館に行った。1度目よりも深く感動した。そして、3度目、日本に帰国するエバー航空の機内上映でもう一回見てみた。泣き過ぎて、隣にいた台湾人の女性に「你沒事嗎?(あなた大丈夫)」と声をかけられてしまった。3度目でなんとか、この作品の「根」のところまで掘り下げられた気がした。
本作は、その良さをうまく一言ですっきりと説明するのが難しい映画である。ストーリーは、台湾のアミ族の村で、伝統の稲作が失われようとしている。それを阻止するため、人々は立ち上がった――。こうやって、あらすじを書いてみても、私自身がどうもあまりピンとこない。もっと違った言葉が、この映画にはふさわしいはずだ。そんな風にずっと考えていた。
なぜなら、この映画の魅力は、得体の知れない強烈なリアリティがスクリーンから迫ってくるところにあるからだ。実話に基づく作品だからというのはあるだろうが、それだけにとどまらない「何か」がある気がしてならなかった。
花蓮・港口集落を舞台に現実と物語が絡みあう
そんな気持ちを抱えながら、映画が撮影された舞台である台湾東部・花蓮県の港口集落を訪れた。花蓮の港口集落は、台湾で最も訪れにくい場所の一つと言っていいだろう。花蓮から台東に広がる長大な花東海岸線のちょうど中間点にあり、台北から花蓮に飛行機か台湾鉄道で入り、そこからバスで3時間、レンタカーでも2時間はかかる。台東からでもほぼ同じ距離にある。
港口は、花東地区第一の河である秀姑巒(しゅうこらん)溪の河口に位置するところからその名前がついた。古くから先住民のアミ族が暮らす土地であった。清朝の兵士によって港口の周辺に暮らしていたアミ族の人々が大量に殺される「大港口事件」と呼ばれる衝突が起きたことでも知られている。作品のなかで、「清兵が攻めてきた」という歴史について、主人公パナイの父親であるおじいさんが繰り返し言及しているのは、民族の記憶に刻まれた悲劇だからだ。
この村を舞台に映画が撮られたことは知っていたが、俳優たちのほとんども村の出身の素人だったことは訪れるまで知らなかった。そして、2人の監督のうちの1人であり、港口集落出身のレカル・スミ氏に案内されて集落を回っていると、映画の中で見かけた顔に次々と出くわしたのだった。
映画で、パナイの父としてアミ族の伝統を取り戻すべく、肺がんに冒されながら奮闘した前出のおじいさんを演じた許金財さんは、レカル・スミ監督の実際の祖父であり、現実でも港口集落の「頭目」を務めている。頭目は、村長のような行政職ではなく、それよりももっと高い地位にある精神的領袖のような存在である。
私がたまたま宿泊先に選んだ民宿で、朝、食事を運んできてくれた老女の顔をみて、ハッとさせられた。映画の最後に近いところで、稲田の破壊を防ぐために座り込みをしている村人の中で、一人の老女が同じアミ族出身と見られる若い警官に向かって「あなたの村はどこ(?)」と語り掛けるシーンがある。私が本作でいちばん好きなところの一つだ。その老女が、民宿を経営する家族の一人だったのだ。彼女から聞かされた話では、彼女の一族が持っている、民宿の真下に広がる稲田の土地は、およそ20年前から開発業者や行政の観光部門によって執拗に開発を持ちかけられた土地で、映画と同じように無理やり実力行使で奪われかけたこともあったという。
「あのシーンを演じながら、自分の土地が奪われかけたことを思い出していました」と老女は語っていた。民宿の窓から見える稲穂の土地、よく見れば、映画の中で、村人が体を張って守ろうとした稲田そのものだった。この映画では、このように現実と物語が、表裏一体となっているのである。
民族のアイデンティティーを取り戻したい
作品の主題は、時代の変化によって分断された地域や家族の再生であり、アミ族の誇りと伝統を取り戻す物語である。しかし、そこからもっと深く掘り下げたレベルで、漢民族や日本によって奪われた土地や伝統をいかに取り戻すか、つまり「移行期の正義」が問われているのだ。
そして、それは土地などの問題だけにとどまらず、個々人の最も根源的な価値に結びつく「名前」にも及んでいる。それは、私は何者か、あなたは何者か、という人間のアイデンティティーの本質に関わる問題である。
本作の出演者の中で、職業俳優であるのは、村出身の不動産屋を演じた徐詣帆だけ。また、主役のパナイを演じたアロ・カリティン・パチラルは、普段は歌手・DJとして活躍しているが、本格的な演技はこの作品が初めてである。彼女は港口集落の出身ではないが、同じアミ族であり、作品での演技が高く評価されて台湾の金馬奨最優秀新人賞にノミネートされた。彼女もまた、幼いころから中国語の名前で呼ばれ、標準的な中国語をしゃべる優等生だったが、アミ族としてのアイデンティティーが打ち消されることに悩み、成人後に名前をアミ族のものに変えたと筆者に明かしている。
映画のあるシーンで、パナイは自分がかつて漢民族の名前を名乗り、北京語でのスピーチを巧みにこなすことによって「アミ族でない振りをすることで“の光”などの賞をもらってきた」と告白する。しかし、それは本当の自分ではなかったとして、「のパナイ=稲穂」を取り戻したいと決意を語り、ホテル開発に抗して稲作の復活を目指して立ち上がるのである。
さらに、映画の中で、パナイが陸上競技の選考レースを控えた娘のナカウに「あなたは誰?」と問うシーンがある。ナカウを演じた呉燕姿も港口で育った少女であるが、「パンツァー(アミの子)」と叫んで、選考レースに向かう。この映画のキーポイントの一つであるこの叫びは、本作全体に通底する「私たちはアミ族だ」という叫びである。アミ族の別名は「太陽族」と言われ、この映画のタイトルの由来にもなっている。それは、名前を取り戻すことによって民族のアイデンティティーを取り戻したい、というアミ族の人々の強い願望につながっている。
本作においては、登場する出演者たちの大半が港口集落の人々だということで、登場人物たちの一人ひとりの人生がその演技に投影され、アマチュアやプロという区別を超えた迫力とリアリティをもたらしている。だからこそ、ちょっとした表情や言葉が見る者の心の琴線を強く揺らすのであろう。
交響曲のように全てが有機的に結びついた作品
台湾の先住民問題は、述べてきたように、清朝以来、日本、国民党などの「外来政権」の統治によって、時に隔離政策の下、時に同化政策の下、いずれもその決定権を、弱者の側である先住民が握ることはなかった。しかし、いま、総統の謝罪を受け、この映画に描かれるように、自らの未来を決める行動を先住民が取り始めていることは間違いない。それは国家や政党の利益よりも小さな集団や個人の利益を優先させるリベラルな民進党の政策にも合致しているだけではなく、現代社会そのものが歩んで行く方向でもある。
私は台湾映画好きが高じて本まで書いているが、いわゆる映画人や映画評論家ではない。しかしそれでも、自信を持って言えることがある。それは、この映画が、脚本、監督、プロデューサー、役者、裏方、音楽、技術など映画のもとになる種々のパーツが奇跡のように有機的に結びついた作品であるということだ。
映画は、いくら名監督が、膨大な予算をつぎ込んで、有名な役者を起用しても、無惨な駄作になることもある。その逆もまた然りで、何もないところから始まった小さな一つの作品が、永遠に人々の記憶に残る名作になったりする。名作のレシピがあるようでないところが映画の難しさであり、同時に、醍醐味(だいごみ)だと言えるだろう。
『太陽の子』にはそんな映画の醍醐味がしっかりと凝縮されており、見終わった後には、小さいけれど美しい交響曲を聴いた気分になる。村に生きる人々の願い、製作に関わった人たちの願い、そして、港口の自然と景色と歴史、そして、清らかに澄み切ったその空気までもが、アミ族の人々の「祖霊の加護」の下、全て見事に、この一作の中に編み込まれている。
野嶋 剛  NOJIMA Tsuyoshi[ 署名記事数: 5 最終更新日: 2016.09.06 ]
ジャーナリスト。1968年生まれ。上智大学新聞学科卒。在学中に、香港中文大学、台湾師範大学に留学する。1992年、朝日新聞入社。入社後は、中国アモイ大学に留学。シンガポール支局長、台北支局長、国際編集部次長等を歴任。「朝日新聞中文網」立ち上げ人兼元編集長。2016年4月からフリーに。現代中華圏に関する政治や文化に関する報道だけでなく、歴史問題での徹底した取材で知られる。著書に『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『故宮物語』(勉誠出版)等。オフィシャルウェブサイト:野嶋 剛
http://www.nippon.com/ja/column/g00380/

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