先住民族関連ニュース

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北海道の定番土産「まりもようかん」。見た目も楽しいスイーツを食べ比べ

2023-01-07 | アイヌ民族関連
カラふる2023/01/06
まりもようかんは北海道の定番お土産

 北海道の定番お土産・まりもようかんは「北海まりも製菓」さんの登録商品。そして最近はそちらと双頭をなす「阿寒シンプイ」なる商品もあるとか。今回はそんなまりもようかんと阿寒シンプイのセット、「トーラサンペ -湖の御霊-」なるものをお取り寄せしてみました。
 …今回、決してゴールデンカムイにハマってるからとか、推しが釧路のアイヌだからとかではありません! 純粋なまりもようかんへの興味です!! 信じてください!
 世迷い言はさておき届いた商品を開けてみると、まりもようかん1袋と阿寒シンプイが2つ。阿寒シンプイというのはまりもを模したリンゴゼリーのことなのでした。
 アイヌ語でまりもはトーラサンペ(湖の精霊)と呼ばれ、阿寒シンプイとは阿寒大自然の生まれる処を指す言葉だとか。
 そもそもまりもは淡水性の緑藻の一種。イメージされる緑の球体のことを指すわけではなく、あれを構成する細い繊維がまりもの個体なんだそうです。
 そしてとくに阿寒湖のまりもは美しい球体なため特別天然記念物に指定されていると。どこのまりもでもいいわけではないんですね。そりゃようかんにもなりますね。
まりもようかんと阿寒シンプイを食べ比べ
 さて開封していきます。まずはまりもようかんから。付属の楊枝(かわいい)がついており、プッチンする形式です。はいプッ…………チン、できない!! 固い!!
 思ったより頑丈でした。なんとか穴を開けるとツルンとつやつや緑色に輝くようかんが現れます。
 食感はプルッとした歯ごたえが強く、そんなにねっちり系のようかんではないですね。甘さも十分。うんうんおいしい。さてお次は阿寒シンプイこと、まりもゼリーです。
 味はごく普通においしいリンゴ味のゼリーなのですが、おっと思ったのはこの「まりも」部分がおそらく硬さの違うゼリーなのです。より歯ごたえがあるというか。
 というわけでまりもようかんと阿寒シンプイ(ゼリー)のセット、トーラサンペ。癖のない万人受けする味で、阿寒みやげの定番化したのも納得でした。息子(3歳)も「ようかん!」「ゼリー♪」と満面の笑みで食べていましたので、お子さんへのお土産にもバッチリじゃないでしょうか。
 釧路には旅行や出張で何度か訪れたことがあります。霧深く自然に囲まれた幻想的な風景で、とてもいい所です。当時2人ともOLだった友人と釧路へ旅行したときも大変に楽しく、ろばた焼きのイカを食らい日本酒でベロベロになり夜の釧路を歌い歩いたものですが(迷惑)、「楽しすぎたから」という理由で友人が帰宅後仕事を辞めたという思い出があります。
 誘った身としては責任を感じなくもなかったのですが、それはほら、まあ、釧路がそれくらい魅力的な土地だってことで、ひとつ。
https://hokkai-marimoseika.jimdofree.com/
「トーラサンペ-湖の御霊-」756円
日もち ★★★★☆
配りやすさ ★★★☆☆
万人受けするご当地感とおいしさ ★★★★★
※紹介した商品は、取材時に販売されていたものです。同じ商品がない場合や、すでに販売終了している可能性もありますので、ご了承ください。
―[ビビっとくる日本全国おみやげ日記/第53回]―
西園フミコ
漫画家。「コミックDAYS」で2018年から全国のおみやげをとりあげる『おみやげどうしよう?』を連載(全4巻)。
https://colorfuru.jp/gourmet/26633

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杉田水脈氏「そのような考え持っていない」 衆院山口4区補選の候補者応募否定

2023-01-07 | アイヌ民族関連
中國新聞1/6(金) 19:02配信
 差別的発言が問題視され、昨年末に総務政務官を更迭された杉田水脈氏(比例中国)は6日、山口県庁であった新年の記者会見で「私の中で差別するような意図はなかった。これからも説明を尽くし、機会を見て真意を伝えていきたい」と改めて見解を述べた。
 杉田氏は先月の参院予算委員会で過去にあった性的少数者は「生産性がない」とした月刊誌の記述、アイヌ民族を巡るブログの投稿を撤回し、謝罪している。
 杉田氏を巡っては次の衆院選での処遇も注目されている。2017年、21年に比例中国の単独候補で連続当選。次は比例単独処遇を原則2回までとする党の内規に抵触する。党山口県連は6日に山口4区の補欠選挙の候補者を公募で選ぶと決定。報道陣に応募する意思を問われ「今のところそのような考えは持っていない」と応じた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1f1a14f334a12e0c409d39477b1aa202861645d0

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厚真町の役場庁舎と周辺整備 3月にも基本設計発注

2023-01-07 | アイヌ民族関連
北海道建設新聞社2023年01月06日 16時40分
実施設計、建設はDB方式を計画
 厚真町は早ければ3月に、役場庁舎周辺等整備に関する基本設計を公募型プロポーザルで発注する。役場庁舎のほか、道路や公園、文化交流施設・広場を一括。予算9530万円を確保している。町は基本設計完了後、デザインビルド(DB)方式による設計・施工を計画している。
 役場庁舎や役場周辺にある施設の整備を検討してきたが、2018年の北海道胆振東部地震や新型コロナウイルス感染症の拡大など取り巻く情勢が大きく変わったことから、あらためて役場庁舎や周辺施設の機能、役割などを詰めた。
 新役場庁舎には商工会館の機能を盛り込み、青少年センター・町民ギャラリー、創作館、児童会館は文化交流施設として集約。総合福祉センターと総合ケアセンターゆくりは改修する。消防庁舎は建て替え、消防職員住宅と旧母子健康センターは老朽化しているため、解体することなどを決定した。
 庁舎周辺整備の計画素案によると、新役場庁舎は2、3階、延べ2900m²程度。文化交流施設は仮称アイヌ歴史文化センターを内包し、延べ約2300m²を想定する。
 役場庁舎は現庁舎南西側の駐車場や青少年センターがある場所に建て、文化交流施設は新役場庁舎に隣接。消防庁舎は道道を挟み、つたえり公園や土地改良区の南西側に建設する予定だ。
 現役場庁舎は改修して残す方針だったが、維持管理コストなどを踏まえて解体することを決めた。
 当初、全体事業費は66億3500万円を試算していたが、計画の見直しなどにより64億7770万円に圧縮。役場庁舎に20億7000万円、文化交流施設に16億4200万円、役場庁舎の解体などを含む外構に7億4500万円を見込んでいる。
 基本設計費の内訳は、役場庁舎が3560万円、道路が360万円、公園が580万円、文化交流施設・広場が5030万円。23年3月までを業務期間に、ドーコン・竹中工務店共同体が庁舎周辺等整備基本構想・基本計画をまとめている。業務完了後、基本設計は早ければ3月の発注を目指すが、4月にずれ込む可能性もある。
 基本設計期間は半年ほどを想定。実施設計と建設はDB方式での発注を予定しているが、施設ごとか、一括にするかは今後詳細を詰める。
 完成時期は役場庁舎が25年度、文化交流施設が26年度とそれぞれ公表しているが、スケジュールがずれ込んでいるため、町は完了時期の変更についても見直しを検討する。
https://e-kensin.net/news/154166.html

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編集余録「文学史」

2023-01-07 | アイヌ民族関連
十勝毎日新聞2023/01/06 14:00
 『釧路湿原の文学史』(盛厚三著)が出版された。釧路湿原と人の関わりを文学の視点からまとめた本。アイヌの伝説から始まり、河﨑秋子の『鯨の岬』まで、150年余に出版された本に注釈を付けて紹介している
▼著者の労力もさることながら、何より驚くのは巻末の来釧文学関係者の動向をまとめた2段組み50ページの年表。釧路にはこれを編むための基礎資料がある
▼「十勝は釧路より経済的に...
●この記事は会員限定です。
https://kachimai.jp/article/index.php?no=578190

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2023年注目カナダ人15人|特集「MY TORONTO 2023」

2023-01-07 | 先住民族関連
TORJA1月 6, 2023

2022年も政治からエンターテイメント、スポーツまであらゆる分野で日本・世界で話題となったカナダ。編集部では2023年とくに注目したい15人のカナダ人をピックアップ。国内のみならず世界で話題を振りまくであろうカナダの著名人をウォッチしていこう。
作家
Billy-Ray Belcourt
 先住民族の土地Driftpile First Nation出身の作家、詩人、学者。2018年には“This Wound is a World”でグリフィン詩賞を受賞。2022年の9月に『A Minor Chorus』を作家としてのデビュー作として発表した。CBCが選ぶ2022年のカナダのフィクション本ベスト20に選ばれた注目の一人。
インフルエンサー
Josh Richards
 20歳にしてTikTokでのフォロワー数が2500万人を超える大物インフルエンサー。アーティストや投資家としても活動している。若者を対象にしたプロダクション会社を立ち上げるなど、マルチに活躍する。Z世代を象徴する一人。
Allana Davison
 TikTokやInstagram、YouTubeを中心に、ライフスタイルや美容について発信するインフルエンサー。Blogger、Vloggerとしてヘアメイク動画やコーディネートについて発信し、カナダの美を率いる人物の一人。YouTubeでは70万人の登録者を持ち投稿頻度も高く、流行の最先端を取り入れられる。
Gigi Gorgeous
 モントリオール出身のYouTuber、女優、モデル。2013年にトランスジェンダーの女性であることをカミングアウトした。2019年にはLGBTQ+の権利活動家であるNats Gettyと結婚。ソーシャルメディアを通して多様な性の在り方を発信し、多くの人に勇気を与える。
Theland Kicknosway
 Walpole Island出身の若手インフルエンサー。TikTokでは40万人を超えるフォロワー数を抱え、髪型や服装など、先住民族の歴史や文化の重要性をわかりやすく若者に向け発信している。2017年には行方不明あるいは殺害された先住民女性への関心を集めるため130キロのマラソンを走破するした。カナダで問題視される先住民族への差別を解決するべく発信を行う、注目の若者。
俳優
Momona Tamada
 バンクーバー出身の若手女優。Netflix配信の映画“The Main Event”で知られる。2020年には“The Baby-Sitters Club”で注目を浴びた。ディズニープラスで配信される実写版の“The Spiderwick Chronicles”に出演予定。16歳にして数々の作品に抜擢される、2023年注目のカナダ人。
Shay Mitchell
 ミシサガ出身の33歳の女優、モデル。インスタグラムのフォロワー数は3500万にのぼる。TikTokやYouTubeでは母親としての姿も発信。2022年にアマゾンプライムで配信された映画“Something from Tiffany’s”に出演した。旅行用商品を手掛ける会社やその他2つのベンチャーを立ち上げるなど、経営者としても活躍する。
環境活動家
Paul Nicklen
 カナダの写真家、映画製作者、海洋生物学者。自然の姿を捉えた写真は世界的に高くされ、the BBC Wildlife Photographer of the Yearやthe prestigious World Press Photo for Photojournalismなど写真に関する権威のある数々の賞を受賞している。環境保護を行っていることでも知られ、ビクトリア大学で博士号も取得。2022年にはマイアミのビーチに無料展示会を開き、アートの観点から環境保護に努める。
政治
Steven Guilbeault
 2021年に就任した環境・気候変動大臣。1993年にケベック州最大の環境保護団体Equiterreを設立。Greenpeaceの幹部も務めていた。政府、NGO、業界をつなぐ政治家として、現政権が最優先事項とする気候問題の解決に挑む。
Pierre Poilievre
 下院野党第一党の党首。2022年の9月に激しい党首選を制し、トルドー首相率いる自由党と二大政党を張る保守党の党首となった。就任時から自由党を厳しく批判し、トルドー首相との対立姿勢をあらわにしている。Poilievre氏は高インフレと物価高騰に対する自由党の無策を批判。2025年に行われる連邦選挙に向け布石を打つ。
アーティスト
The Weeknd
 男性シンガーソングライター。2016年グラミー賞にて、「最優秀R&Bパフォーマンス」と「最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム」を2つ獲得したことで話題になった。また日本では、代表曲である“I Feel It Coming ft. Daft Punk”に女優・水原希子が出演し話題となった。2022年の1月に発売された“Sacrifice”はYouTubeでの再生回数が5000万回を超える。2022年12月に公開される“Avatar: The Way of Water”の主題歌を担当。
Sandeep Johal
 バンクーバー出身のビジュアルアーティスト。白黒で表現される人物や動物とカラフルな背景を組み合わせた作風が特徴。壁画や出版物のイラスト等幅広く手掛ける。2022年にはバンクーバーにオープンしたApple Storeで、その場でタブレットに描いたイラストを壁に投影するキュレーションイベントが話題になった。今後も生まれ育ったバンクーバーでの活躍が期待される。
スポーツ
Marie-Philip Poulin
 アイスホッケー選手。カナダ代表のキャプテンを務める。フォワードを担当し、2022年に行われた北京オリンピック、デンマークでの世界選手権の優勝に貢献した。1998年長野五輪で採用された女子アイスホッケーで、7大会中5回の優勝を果たし、圧倒的な強さを見せつけるカナダ女子。その中でもPoulin氏は2022年にカナダの年間最優秀アスリートに女性として初めて選出され、カナダを象徴する女性アスリートとして来季も注目が集まる。
Félix Auger-Aliassime
 モントリオール出身、現在22歳若手テニスプレイヤー。2022年までオーストラリアで開催されていたATPカップと呼ばれるテニスの国別対抗戦で、カナダのエースとして出場し、自国を優勝に導いた。テニスの4大大会の一つ、全豪オープン2022で自身初のベスト8入りを果たすなど、躍進を遂げる。2023年の活躍にも期待がかかる。

Antoni Porowski
 カナダのテレビパーソナリティ、料理人、俳優、モデル、作家。Netflixシリーズのアメリカのリアリティテレビショー“Queer Eye”に、料理とワインのプロフェッショナルとして出演したことで有名になったタレントとして活躍しながら、ペット向けの食事の会社を立ち上げるなど、食についても広く発信している。
https://torja.ca/2023-canadian-peoples/

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型破りのファーストレディ、ブラジル大統領就任式の服装が話題に

2023-01-07 | 先住民族関連
ニューズウィーク1/6(金) 17:17配信

UOL-YouTube
*この記事は、現地発の情報プラットフォーム「WorldVoice(2023年1月5日付)」の投稿を一部編集して転載しています。
2023年1月1日、ルーラ大統領の就任式。
接戦の末、僅差でボウソナロ前大統領を破ったルーラ新大統領は、当選後のスピーチで印象的だった「2つのブラジルは存在しない。自分に投票しなかった人々も含め、全てのブラジル国民のために最善を尽くす」という言葉を就任式でも繰り返した。【島田愛加(サンパウロ在住音楽家/ブロガー)】
就任後、大統領が最初に署名した法令はボウソナロ政権下に公布された法令の「失効」であった。
選挙の公約として掲げていた銃規制や、世界的にも注目されているアマゾン森林破壊に関係する法令だ。これによって2019年にストップされたドイツとノルウェーからのアマゾン支援基金が再開されることになる。
また新たに先住民省を設置し、アラリボイア先住民地区出身のソニア・グアジャジャラが大臣に就任することも注目されている。
<大統領綬は誰が渡すのか>
ルーラ氏の当選が正式に発表されてから話題になっていたのは、就任式に大統領綬(太いたすき)を誰が渡すのかということだった。
平和的な権力移行の象徴として前大統領からのたすきがけが行われてきたのだが、ボウソナロ氏は依然ルーラ氏の当選を認めておらず、就任式に欠席の意向を伝えていた。その通り、ボウソナロ夫妻は関係者と共に12月30日に米国フロリダへ出発。ボウソナロ政権の副大統領もその任務を拒否したため、ニュースでは政界の誰かがたすきを渡すのではと予想されていた。
就任式当日、大統領府にてたすきを渡す場面になるとブラジル市民代表たちが現れた。
どこかで見た事がある人だなと思えば、先住民の重要人物であるハオニ酋長だった。ルーラと腕を組み、他の市民と共にスロープをあがっていく。 たすきは市民たちの手を渡った後、アフリカ系ブラジル人女性のアリーニ・ソウザ氏によって新大統領にかけられた。
この際、音楽はブラジルを代表する作曲家エイトル・ヴィラ=ロボスの代表作ブラジル風バッハ第2番が使用された。
<たすきを渡したブラジル市民代表>
フランシスコ(10歳)
都市近郊の低所得者が暮らす地域出身、ジュニア水泳市内大会チャンピョン。
アリーニ・ソウザ(33歳)
14歳からウェストピッカー(再生資源回収者)として働く。ウェストピッカー組合の会長。
ハオニ・メトゥクチレ酋長(90歳)
アマゾンの先住民カイアポ族。先住民保護のため国際的に活躍する。
ウェズリー・ホーシャ(36歳)
冶金工場員。政府の教育プログラムで大学を卒業。DJとしても活躍。
ムリーロ・ジ・クアドロス(28歳)
ポルトガル語教師。コロンビアで教鞭をとっていた。現在はクリチバ在住。
ジュシマーラ・ドス・サントス(45歳)
ルーラ氏が収監されていた際、パンを差し入れしていた料理人。
イヴァン・バロン(24歳)
3 歳でウイルス性髄膜炎を患い脳性まひに。障がい者差別をなくすために活動するインフルエンサー。
フラビオ・ペレイラ(50歳)
職人。ルーラ氏収監時に釈放を求め徹夜集会に参加。
ヘジステンシア(?歳)
ジャンジャ夫人が保護し、夫妻が飼っている雑種の犬。
「感動した」「わざとらしい」など賛否両論はあったが、この大統領府のスロープを登るルーラ大統領と市民たちの写真はニューヨーク・タイムズの一面となった。
実はこの演出を考えたのはファーストレディとなったジャンジャ夫人。大統領選でも目立っていたジャンジャ氏は、アルゼンチンの雑誌で「ルーラの守護神」として表紙を飾り、「ブラジルのエビータ」とも呼ばれた。
エビータの愛称で親しまれたフアン・ペロン元大統領夫人のエバ・ペロンは夫以上に有名になった人物かもしれない。 ジャンジャとエビータの生い立ちはかなり異なるが、夫と共に闘う姿、そして目立ってしまう部分は似ているかもしれない。
<「ファーストレディのイメージを変える」>
ジャンジャことホザンジェラ・ルーラ・ダ・シルヴァはブラジル南部パラナ州生まれの社会学者。
パラナ連邦大学を卒業し、MBAを取得。州立大学で教鞭をとった後、ブラジルとパラグアイの重要な水力発電所であるイタイプダムで局長補佐を務めた経験もあるバリバリのキャリアウーマンである。
17歳からルーラの政党である労働者党(通称PT)に参加し、特にルーラが汚職疑惑で収監された際には釈放にむけて積極的に支持者をまとめあげ、ルーラの面会に通った。この頃に交際がスタートし、2019年に正式にルーラの恋人として紹介された。
ルーラは1969年に一度目の結婚をしたが2年後に妻が他界、1974年に二度目の結婚をし、妻のマリア・レチシアはルーラが第35代大統領を務めた際にファーストレディとして活躍したが2017年に亡くなっている。
ジャンジャとの結婚は三度目、歳の差は21歳である(余談だがボウソナロ元大統領と夫人は25歳差、ミシェル・テメル元大統領と夫人は43歳差)。
ジャンジャは昨年の大統領選挙でも非常に目立っていた。
Tシャツにジーンズ姿、選挙カーでは飛び跳ね、口を大きく開けてリアクションする姿は一般的な「政治家の妻」というイメージとはかけ離れている。 そして何よりその行動力には驚かされる。
彼女はルーラ派のアーティストらに積極的に連絡をとり、大統領選の応援だけでなく就任式の音楽フェスティバルまでコーディネートしてしまったのである。
このフェスティバルは「未来のフェスティバル」と称され、就任式と同時進行で開催された。
入場無料、フードトラックにはブラジル全土の郷土料理が出展された。LGBT+や障がいを持つ人が安心して参加できることを約束し、アクセシビリティの監修はイヴァン・バロンが行った。
ジャンジャは夫が参加する殆どの会議に同行し、「ファーストレディという役割に新しい意味をもたせたい」と、就任式前から意欲を語っていた通り、就任式で早速その存在感を示した。 彼女自身は特に女性の人権と動物保護に力を入れている。
<就任式の服装にこめたメッセージ>
就任式の演出と合わせてインターネット上で話題になったのは、ジャンジャの服装だった。
大統領夫人は就任式でドレス(ワンピース)を着るのが恒例となっていたが、ジャンジャはゴールドにも見えるベージュのパンツスーツで登場した。
カシューナッツとルバーブによる天然染めで、ブラジルの藁(わら)を使った刺繍が施されているシルクのスーツは、「ブラジル国産のファッションを守りたい、ブラジルを象徴する衣装で登場したい」というジャンジャの提案だった。
労働者党のカラーである赤色を選ばなかったのも、周りとの調和を大切にすることにしたからだそうだ。同じくルーラも党を象徴する赤色のネクタイを選ばなかった。普段のジャンジャはミディアムヘアに眼鏡がトレードマークだが、この日は髪をまとめ、眼鏡を外していた。
「お祝いというよりも、仕事モード」という印象と、ファーストレディが装飾的な立ち位置ではないことを主張しているようにも感じられる。
就任式後、音楽フェスティバルに合流した際は青色のイブニングドレスを着用していた。
<ジャンジャの服装に賛否両論>
これまでのジャンジャの行動を見てきて、私は彼女が就任式でドレスを着ないのではと予想していた。
予想通り就任式にパンツスーツで現れ、予想通り世論も分かれた。 多くの女性がジャンジャを支持しているようだが、否定しているのも女性というのが興味深い。
ついにはこの就任式のスーツに対する論争はリオデジャネイロのサンバ界にまで飛び火してしまった。
熱心なボウソナロ派と言われるインフルエンサーのアントニア・フォンチネリは就任式のテレビ中継を見ながら「ジャンジャの服装はインペラトリス(サンバチーム)の年長組が着るスーツみたい。なんでインペラトリスかって?なんの特徴もない退屈なチームだから」と自身のインスタグラムのストーリーに投稿。 それをみたサンバ関係者たちは激怒した。
サンバチームの年長組(ベーリャ・グアルダ)というのは、チームの繁栄に貢献してきた功労者で尊敬されるべき人たちである。
アントニアの発言はチームだけでなくサンバカーニバルの歴史を侮辱し、誤った印象を与えるとして、インペラトリスは公式文書でアントニアを否定、同時にジャンジャにチームのゴッドマザーとしてのパレード参加を正式オファーした。これに対して他のサンバチームもインペラトリスを支持している。
ジャンジャ否定は服装だけではない。
労働者党内でも、ジャンジャの目立った行動について否定的な意見を述べる年配組もいるようだ。
確かにカリスマ性あるルーラに引けを取らないほどジャンジャの存在は際立っており、ルーラもジャンジャの提案を受け入れているように思える(スピーチでは女性の人権と動物保護についても強調していた)。
大統領選挙中にボウソナロ前大統領であるミシェリ夫人が「妻は夫を"手伝う"」と発言した際、それに対してジャンジャは「私はルーラのお手伝いじゃない。一緒に"闘う"!」と言った通り、ファーストレディとなった今、彼女は更に意欲的に行動するだろう。
ルーラ大統領はブラジルを急成長に導いたクビシェッキ大統領のスローガン「50年の進歩を5年で」を引用し、「40年の進歩を4年で」と発言。今期限りで政界を引退することを決めている。
ルーラの後継ぎは長年可愛がっているハダッジ財務相と言われているが、ジャンジャの活躍によっては将来政界入りの可能性もあるかもしれない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f2e0bf4b4c09073377850b2426d374984a37bbc3

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「王様ペレ」のようにブラジル新大統領ルラは熱帯雨林保護を約束する

2023-01-07 | 先住民族関連
Forbes1/6(金) 10:00配信

Getty Images
貧しい家庭に育ち、後に国連地球サミットの親善大使となったブラジル人のサッカー界のスター、ペレの死を世界中が悲しんでいる。ペレはキャリア通算757得点を挙げ、ワールドカップで3回優勝し、数え切れないほどのブラジル人に感動を与えた。そして今、ブラジルに新たな労働者階級のヒーロー、先住民の誇りが誕生した。1月1日に大統領に就任したルラ・ダ・シルバだ。
大統領選でルラは現職だったボルソナーロを僅差で破った。ボルソナーロは伐採業者と農民に、ブラジルの広大な熱帯雨林と先住民の故郷を好き放題に扱わせた。その破壊は野生動物と自然生息地にとって致命的なものとなった。それは温室効果ガスの増加につながり、地球環境を洪水や干ばつが当たり前になる分岐点まで押し出すことになった。ルラはこの流れを変えることを誓っている。果たしてできるだろうか。
「大豆の生産は森林と農業の間に緊張関係を生み、先住民に悪影響を与え、さらに温室効果ガスを発生させる。市場の不完全性は、先住民が森を守り二酸化炭素(CO2)を貯蔵することに対して適正な補償を受けていないことにある」と2017~19年にパナマの環境大臣を務めたエミリオ・センプリスはインタビューで語っている。
センプリスはブラジルの農地はパナマの面積に匹敵すると指摘する。しかし、農家は大気中のCO2を吸収する木を伐採している。伐採や農業は短期的な利益を生む一方で、生物の多様性を損ない、地域住民の暮らしを妨害している。
「炭素は生態系全体の委任状だ」とセンプリスはいう。「大豆は短期的には経済的価値があるが、長期的にはブラジルと地域の環境に影響を及ぼす。ルラは先住民のコミュニティを支援するための全国的な財政計画を実施することで、物事を正す機会を手にしている」
ブラジル国立宇宙研究局によると、ボルソナーロ政権下でアマゾンの森林伐採が60%増えた。それが2021年の同国の温室効果ガス排出12.2%増につながり、過去20年で最多となったとブラジルの気候観測所は指摘している。正確には、アマゾンの森林破壊が2021年の二酸化炭素(CO2)排出量の77%を占めている。ブラジルの森林破壊は2022年に11億9000万トンのCO2を排出し、これは日本の排出量より多い。
英エクセター大学の気候科学者ピエール・フリードリングスタインは「各国政府がクリーンエネルギーへの投資を加速させ、伐採するのではなく植林するなどの措置を取れば、世界の排出量は急速に減少するだろう」という。排出されるCO2の半分は大気中に残り、残りの半分は森林や海洋に蓄えられる。
炭素クレジットは熱帯雨林を救えるか
■炭素クレジットは熱帯雨林を救えるか
森林伐採、気温の上昇、干ばつによって熱帯雨林がCO2を吸収する能力が制限されることが最大の懸念事項だ。土地所有者や先住民にインセンティブを与えて木を維持させることが不可欠なのはそのためだ。そうしたインセンティブは農業や伐採の経済的価値といった機会費用以上のものでなければならない。
ボルソナーロが2019年1月1日に政権を取る前、ブラジルは森林破壊を遅らせていた。国連気候変動枠組条約(UNFCC)は、各国政府が森林破壊を遅らせる目標を設定するREDD+プログラムの下でそれを認めた。UNFCCはその成果を評価し、排出削減を承認する。しかし、ボルソナーロはこの厳格なプロセスから手を引き、農民や開発業者が森林を切り開いて燃やすことを許した。これは迅速な資本回収だが、長期的には高くつく。
ルラはブラジルのREDD+プログラムを再び活性化させ、森林破壊に対抗するチャンスを国に与えるだろう。また、コンゴ民主共和国やインドネシアなど広大な熱帯雨林を持つ国々にも刺激を与えている。フリードリングスタインによると、この3カ国は世界の土地利用変化による排出量の58%を占めているという。
だが炭素クレジットの価格とその結果得られる報酬が代替案よりも高くなければならないという課題は残る。米イェール大学の経済学教授であるウィリアム・ノードハウスは、炭素の社会的コストは2015年には31ドル(約4100円)だったが、2030年には52ドル(約6900円)にまで増えると書いている。
熱帯雨林は年間76億トンのCO2を吸収している。REDD+の支払い制度によって生み出されるソブリン・クレジットは、この数字をさらに大きくするだろう。パリ協定では各国政府が「ソブリン・クレジット」を発行するため、価格が上昇し、森林保護やインフラ整備のための資金がより多く集まる。酒類メーカーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ、総合資源開発企業のヴァーレ、石油会社ペトロブラスがブラジルの炭素クレジット市場に参入する可能性がある。
「REDD+のような、UNFCCCが認めたグローバルな制度だけがアマゾンを救うことができる。そして、ブラジルが新大統領とともに再び森林破壊を遅らせることで創出されるCO2排出削減を企業や政府が買い始めるときだけだ。つまり、アマゾンの熱帯雨林を守りたいなら、REDD+のソブリン炭素クレジットを買えばいい」と熱帯雨林諸国連合のエグゼクティブディレクター、ケビン・コンラッドはいう。
現在のCO2排出水準が続けば、カーボンニュートラルの達成そして記録的な温暖化、大洪水、氷河の融解といった気候の崩壊を回避する望みはほとんどない。熱帯雨林は気候変動に対する自然の解決策であり、まだ計画段階にあるテクノロジーよりも安価なものだ。しかし、森林は存在し続けなければならない。ブラジルのルラ大統領は、絶望している人々に希望を与えた世界のロールモデル、ペレを彷彿とさせながら国を導くことを約束している。
Ken Silverstein
https://news.yahoo.co.jp/articles/a7fd7d1f3ed2c8ad948a5fcb82ddf925195ec9f8

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《ブラジル》マリーナが環境相就任=国家気候変動局を即時再設

2023-01-07 | 先住民族関連
ブラジル日報1/6(金) 6:52配信

就任式でのマリーナ氏(Valter Campanato/Agencia Brasil)
 【既報関連】連邦警察による安全確認を受け、大統領府(プラナルト宮殿)が予定より早く稼働し始め、4日にはマリーナ・シルヴァ環境相の就任式も開催されたと4~5日付現地紙、サイトが報じた。
 マリーナ氏の環境相就任式はブラジル銀行文化センターでの予定だったが、同センターの貴賓室は狭いため、大統領府で執り行われた。マリーナ氏には気候変動に焦点を絞った特別職にとの話があったが、この問題はより専門かつ技術的な立場の人物が相応しいとして特別職就任を拒んだため、環境相に就任する事となった。
 ただし、環境問題と気候変動は密接な関係があるため、環境省の名前は環境気候変動省と改名された(略号はMMAのまま)。
 マリーナ氏の就任式には新政権の閣僚、環境問題や気候変動に関する専門家なども集まり、国際社会での信用回復も含めた働きへの期待を示した。
 マリーナ氏は就任挨拶で四つの局新設と国家気候変動局の即時再設を宣言。同局では、海洋や沿岸の管理政策も扱う。同氏によれば、環境省内でも全国気候変動審議会を創設するが、気候変動に関しては3月までに大統領が主導し、他の省庁や州、市、社会団体なども取り込んだ国レベルの評議会が創設されるという。
 新設された局は、温室効果ガス排出の主要因を森林伐採ではなくすための森林破壊と領土秩序管理特別局、伝統的な部族とコミュニティ・持続可能な農業開発局、生物経済局、都市環境と環境の質管理局の四つだ。
 伝統的な部族とコミュニティ・持続可能な農業開発局は先住民省との協力も必要で、ソニア・グアジャジャラ先住民相と目配せをする場面も見られた。また、持続可能な農業実現に向けては、「神が望むなら」との言葉を添え、カルロス・ファヴァロ農務相と協力して行く可能性に言及した。
 気候変動に関する取り組みは第3期ルーラ政権の国際公約でもあり、外務省内にも気候変動や環境、科学技術に特化した局が新設される予定だ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/b6c3038c221ab00b9cc8c323889756b47e041b1d

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《ブラジル》注目のテベテが企画相に就任=「貧困層対策を第一優先」=財政管理との両立目指す

2023-01-07 | 先住民族関連
ブラジル日報1/7(土) 6:59配信

就任式でのテベテ氏(Marcelo Camargo/Agência Brasil)
 5日、ルーラ政権の入閣で最も注目されていた人物のひとりだったシモーネ・テベテ氏(民主運動・MDB)が、企画予算相に就任した。テベテ氏はフェルナンド・ハダジ財相(労働者党・PT)との間で経済に関する方針の違いがあることなどにも触れながら、「最優先すべきは貧困層」と語った。5、6日付現地紙、サイトが報じている。
 昨年の大統領選では3位で、ルーラ氏の決選投票での援護射撃となるキャンペーン協力で一躍注目されたテベテ氏の入閣は、ルーラ氏当選直後から注目されていた。本人はボルサ・ファミリアを管轄する社会開発相を希望していたが、それはPTの管轄となった。
 テベテ氏が就任した企画予算相は、昨年までの経済省から独立した大臣職だが、ボルソナロ政権以前は60年代から存在しており、主に国家予算を管理する役職として知られている。
 テベテ氏は当初、同職を断っていたが、就任挨拶でその理由を、「ルーラ政権の経済部門で最も重要な大臣はハダジ氏。私は彼とは経済理念が異なるし、アルキミン副大統領やエステル・ドウェック公共サービス管理革新相とも違っていた」としていた。
 一方、テベテ氏は受諾の決め手になったのは、「違うからいいんだ。なぜなら私は民主主義国家の大統領なのだから」というルーラ氏の口説き文句だったことも明かした。
 テベテ氏の同相就任への懸念の裏には、2026年の大統領選でハダジ氏と争う可能性があることが挙げられる。ハダジ氏は2018年の大統領選に収賄などの嫌疑で有罪・受刑となったルーラ氏の代理として出馬し、次点となるなど、ルーラ氏の後継者と目されている。
 テベテ氏は企画相としての抱負として「貧困層を助けること」を第一として、公的支出のコントロールと、社会的弱者の統合(インクルゾン)の両立は可能だと説いた。
 「国家予算には子供から高齢者、女性、黒人、先住民、LGBTも全て含まれている。これまで見え難かった部分を見えるようにするべき時がきている」「現状としては、貧しい人にはパン、家のない人には避難所、未来のためには子供たちにより質の良い科学技術やスポーツ、文化を提供する学校が必要だ」と語り、ルーラ政権としての理念の一致や、ボルソナロ政権との違いを強調した。
 テベテ氏は税制改革の必要性も説いた。前日の4日には、商工開発相を兼ねるアルキミン副大統領が税制改革案を連邦議会に提出したばかりだ。これに同調するように、テベテ氏も州ごとの経済格差是正や貧困対策のための地域プロジェクトの立ち上げを約束した。
 さらにテベテ氏は、9日に企画省の人事を発表することも約束した。テベテ氏は省内人事でも人種や性別、社会階層など、多様性に富んだ人選を行いたいと語っている。同氏は4日、これに関して、「黒人女性を選ぶことだけがどうしても難しかった」と語ったが、それを聞いたアニエレ・フランコ人種平等相がテベテ氏に役職を果たせるはずの黒人女性のリストを送って話題を呼んでいる。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e97b495f9547b9c53012c5a2bcd6edcf5e709aa3

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犬に話しかけてはいけない? マルチスピーシーズ民族誌から考える多種世界

2023-01-07 | 先住民族関連
フォーサイト2023年1月7日
マルチスピーシーズ民族誌という文化人類学の潮流が注目を集めている。従来の民族誌が地域の人々の生活を描くのに対し、マルチスピーシーズ民族誌は人々が動植物や細菌、精霊といった「多種(マルチスピーシーズ)」との絡まり合いの中で存在している様を描く。こうした視点は「人新世」の人間中心主義を乗り超えるヒントになる。
マルチスピーシーズ民族誌とは?
「人新世」という言葉を聞いたことはあるだろうか。その名の通り、「人間の時代」のことである。より正確には人類の活動が地球全体に大きな影響を与えるようになった時代のことを指し、まだ正式な地質時代としては認められていないが、第二次世界大戦が終結した1945年以降、もしくはイギリスで産業革命が始まった18世紀後半以降とする説が有力である。豪雨災害や猛暑などの異常気象が相次ぐ現在、気候変動に関連する事柄について見聞きすることも増えているが、私たちは今や「人新世」の渦中にいる。
 マルチスピーシーズ民族誌は、人新世という時代への応答として生まれた文化人類学の一潮流である。しかし、そもそも「マルチスピーシーズ民族誌」とは少し不思議な表現である。そのことから説明させてほしい。まず「民族誌」とは、文化人類学者が長期の現地調査で得た知見をもとにその地域の人々の生活について描く記録のことである。そのため、民族誌は、基本的にはその地域に住む人間の社会に焦点を当てたものとなる。他方で、マルチスピーシーズは「多種」とも訳される。ここでの「多種」は、動植物、細菌などの生物や、精霊、機械、土地のような存在まで含むものとして考えられている。これらの説明からもわかるように、マルチスピーシーズ民族誌は、人間だけでなく「多種」に焦点を当てた長期調査の記録ということになる。
 それでは、なぜ「多種」に焦点を当てた調査記録が人新世への応答になるのだろうか。人新世の解決策を探る文脈では、人為的に地球の気候を寒冷化させる気候工学のアイディアが議論されることがある。人新世は、人間が科学技術の力を通して地球環境を改変してしまった時代であるとすれば、その解決策を握るのも人間のはずであり、今度もまた科学技術の力を使って地球環境を元に戻せばよいのではないかという発想である。
 科学史家のダナ・ハラウェイは、このような気候工学的な発想を厳しく批判し、人新世という考え方自体が人間中心主義であると指摘する。ハラウェイは、「伴侶種」という言葉を提唱し、人間が独立して存在するのではなく、人間を含む多種が互いに互いをつくりあうような関係性を論じていた。マルチスピーシーズ民族誌は、伴侶種の思想と人間中心主義批判を引き継ぎ、人間を含む多種が絡まり合う世界を描く。人類学者のアナ・L・チンは、「人間の本性は種間の関係性である」と述べているが、人間が人間だけで独立して存在するのではなく、多種との関係性があって初めて「人間」が成り立つという視点がマルチスピーシーズ民族誌の基本姿勢である。
内陸アラスカでのフィールドワーク
 北米先住民の自然観・動物観に関心があった私は、高校生の頃に読んだ星野道夫の作品に触発されてアラスカ先住民社会でフィールドワークをすることを決めた。2012~2015年にかけて合計14カ月の現地調査を米国アラスカ州ニコライ村でおこなった。
 アラスカと言えば、一年中雪に閉ざされ、イヌイットがアザラシの生肉を食べている場所というイメージを持っている者もいるかもしれないが、内陸アラスカの場合、気温差が激しく、夏の日中には摂氏30℃まで気温が上がり、真冬には摂氏マイナス50℃になる日もある。
 アラスカ北部の沿岸地域にはカナダのイヌイットと近い言語を話すイヌピアットの人々が住んでいる。イヌイット、イヌピアットはともにエスキモー・アレウト語族に属する。他方で、私が通っている内陸アラスカでは、アサバスカンと呼ばれる人々が、ヘラジカやカリブー(野生トナカイ)の狩猟とサケなどの漁撈を伝統的な生業としてきた。アサバスカンの人々は、ナ=デネ語族という別の言語グループに属する。なお、アサバスカンというのは、あくまでも研究者が言語グループを一括して名づけるために考案した総称であり、私がフィールドワークでお世話になったニコライ村の人々は自分たちのことを「ディチナニク・フターナ」(木々の川の人々)と呼んでいる。
不思議なフツァニ(禁忌)との出会い

ボブ・イーサイ・シニアさん
 現地調査を始めたばかりの頃、ニコライ村の古老ボブ・イーサイ・シニアさんはあるフツァニについて教えてくれた。フツァニとは、現地の言葉で「禁忌」のことを指す。ボブさんによれば、昔は「犬に話しかけてはいけない」とされていた。
 このような言い伝えがある。
 ある者が犬に話しかけた後、犬は突然走り出してブッシュの中に消えてしまったが、しばらくして戻ってきて「いずれこの辺りは一面、野原になる」と予言した。すると実際、はやり病でその村はまもなく全滅してしまった。
 そのため、この言い伝えにあるように、犬に話しかけることは病の流行を招きかねない不吉なことだとかつては考えられていた、とボブさんは語る。
 20世紀前半以降、このフツァニは遵守されなくなる。だが、19世紀末から20世紀初頭にかけて犬ぞりの技術が外部から入ってきたばかりの時期には、犬に号令をかけるのではなく、人がそりの前を歩いて犬たちを先導していたとも言われている。
 ボブさんが教えてくれたもの以外にもいろいろなフツァニが知られている。フィリップ・イーサイさんが教えてくれたのは、「月を見つめすぎてはいけない」というものだ。すべての存在が人間であったはるか大昔の時代、月は兄弟を殺してしまった。月は兄弟の遺体を抱えて天に上り、現在の月になったとされる。月はその罪を恥じて、情緒不安定なので、誰かに長時間見つめられると怒り始めて洪水をもたらす。日本では月にウサギがいると言われているが、フィリップさんの物語は月の模様が死んだ兄弟を抱えている姿に見えたということを意味しているのかもしれない。
 このようにフツァニの中には人間が人間以外の存在と関わる際の注意点を述べているものがあるが、それらは犬や月のような人間以外の存在が人間の言葉や視線を理解して、それに応じた行動をとることができるという考え方に基づいている。
「残り鳥」を保護する人々
 ニコライ村では雪が降り始めると「残り鳥」が話題になる。内陸アラスカには多くの渡り鳥がやってくるが、その鳥たちの多くは夏にアラスカで子育てをして、秋になると南に渡ってしまう。ただ、渡りをするはずの種の中にも、何らかの理由で渡りを始められずにアラスカに居残ってしまう個体が見られる時がある。ニコライ村の人々は、そうした鳥たちが寒さと飢えに苦しむのを見かねて、冬の間保護し、春になると放鳥する。おもしろいことに、渡り鳥が自由に行動できる春や夏に捕獲して飼育するのは禁止されている一方、「残り鳥」になった渡り鳥を秋に捕獲するのは良いことだとされている。
 前述したフィリップさんと妻のドラさん夫妻は、「残り鳥」を保護するのを冬の間の楽しみとしていた。2014年にフィリップさんは亡くなった。その年の秋になると、夫に先立たれて悲しむドラさんのために親戚たちが気を利かせ、「残り鳥」を捕まえようとした。11月には、クロムクドリモドキの「残り鳥」が捕獲され、「チャガ」と名づけられた。チャガは、ドラさんの隣に住む彼女の孫が保護することとなり、テーブル上にこぼれたクラッカーやパンの切れ端をつまむ鳥になったが、2015年4月に死んでしまった。
「交感しすぎない/構いすぎない」という知恵
 この「残り鳥」の話は、ニコライ村の人々の「多種」との関係性を物語っている。
 現地調査を続けていく中で、ニコライ村の人々が「多種」と向き合う姿勢は、「交感しすぎないこと」と「構いすぎないこと」なのではないかと考えるようになった。
 一部のエコロジー思想の中で語られるネイティブ・アメリカンは、精霊や動物たちと言葉を交わし、深遠な儀礼で自然のリズムと同化し、そのような森羅万象のつながりの中で生きている人々とされる。
 私は幼少の頃に北米先住民チェロキーの少年が登場する物語を読み、北米先住民の文化や世界観に関心を持つようになった。その物語の中では、少年は祖父の教えを守り、グレートスピリット(世界を創造した精霊)に祈りを捧げ、自然の恵みに感謝して生きていた。そのような環境主義者としての先住民イメージがすべて間違っているとは言わないし、アサバスカンの人々にも当てはまる部分がないわけではない。実際、マルチスピーシーズ民族誌は人間を単独の存在ではなく多種との絡まり合いの観点から考える分野なので、ディープエコロジーやニューエイジの言説と近しいものを感じている人もいるかもしれない。
 しかし、私がフィールドで見たものは多種との「絡まり合い」の煩わしさのようなものであった。近年、マルチスピーシーズの考え方は、環境倫理学の文脈でも注目され始めているが、私はニコライ村の人々から学んだ多種倫理として「交感しすぎない/構いすぎない」という知恵を提案したい。
 フツァニの事例をよく考えてみるとどうだろうか。「犬に話しかけてはいけない」という禁忌は、犬に話しかけることが犬の返答(=恐ろしい予言)を招くため守る必要があるとかつて考えられていた。同じく、「月を見つめすぎてはいけない」という禁忌は、月が人間の視線を感知し、それに応じたふるまいを見せるという考えがあるから成立する。確かに、ニコライ村の人々は、「多種」と交感する世界に生きている。他方で、そのことは、多種との交感が必ずしも常に望ましいことであることを意味しない。これらの禁忌が示唆するのは、多種といとも簡単に交感してしまうからこそ、口を閉じ、目を背けなければならないということだ。交感しすぎることへの不安は、人間以外の存在が持つ力を真剣に受け取っている証拠である。
「残り鳥」を保護する話はどうだろうか。ニコライ村の人々は、内陸アラスカを訪れる鳥たちの生に関心を持ち、慈悲深い気持ちで接している。だが、その気持ちがあるからこそ、渡り鳥たちが自分たちの力で生きることができる春や夏には介入せず、秋以降に「残り鳥」として困窮している個体のみ飼育対象とする。構いすぎないことで、鳥も人も互いを束縛せず、みずからの生を謳歌することができる。
「交感しすぎない/構いすぎない」という一見消極的な彼らの身構えは、多種とのしがらみを生き抜く知恵である。彼らの身構えから考えていくと、冒頭で論じた気候工学のような手法は人間中心主義的な考え方に基づいて自然を改変していく「構いすぎる」あり方なのではないか。月の物語を語っていたフィリップさんは、アポロ11号の月面着陸というニュースを聞いて激怒したと言われている。遠くからの人間の視線にも辱めを感じてしまう情緒不安定な月はそっとしておくべき存在であるのに、「白人」たちはあろうことか月を足蹴にしてしまった。フィリップさんは、人類の月面着陸以降、世界がいつ大洪水に襲われるかわからない時代になったと周囲に語っていた。彼の懸念は、豪雨災害を始めとする異常気象に見舞われるようになった私たちにとって決して他人事ではない。マルチスピーシーズ民族誌が人新世の人間中心主義を超えて、多種世界をより豊かに描くためにはこの身構えを射程に収めることが有益なのではないかと考えている。
執筆者プロフィール
近藤祉秋
1986年、静岡県浜松市生まれ。文化人類学を専攻し、狩猟・漁撈や多種との関係性を軸に内陸アラスカ先住民社会を調査している。博士(文学)。著書に『犬に話しかけてはいけない――内陸アラスカのマルチスピーシーズ民族誌』(慶應義塾大学出版会、2022年)、共編著に『食う、食われる、食いあう マルチスピーシーズ民族誌の思考』(青土社、2021年)などがある。個人ホームページ:https://sites.google.com/view/shiaki-kondo/home
https://www.fsight.jp/articles/-/49413

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パドルボードで太平洋横断に出発 女性6人の挑戦

2023-01-07 | 先住民族関連
AFPBB News2023年1月6日 19時29分

【AFP=時事】南米ペルーのリマで4日、女性6人が、パドルボードでの太平洋横断8000キロの旅に出発した。スポーツによりがん患者の精神的苦痛を取り除く取り組みへの認識を高める目的がある。
 メンバーは、スペイン人1人とフランス人5人。ボード1そうとパドルだけで、リマから仏領ポリネシアのモーレア(Mo'orea)島を目指す。3月末に到着予定。
 メンバーのステファニー・ジェイエ・バルネックス(Stephanie Geyer Barneix)さん(47)は出発前、「私たちは、前例のない挑戦をする」「実現までに3年かかった。きょうがその最初の日だ」と抱負を語った。バルネックスさんは乳がんサバイバーだ。
 メンバーは1人が1時間、ボードの上に立ってこぐ。その間、残りの5人は随行する双胴船(カタマラン)で休息する。船には救急隊員も同乗している。1人当たり1日約4時間こぐことになる。バルネックスさんによると、1時間に進む距離は5~6キロ。
 6人は、22~47歳で、運動好き。沿岸警備隊の訓練も受けている。
 プロジェクトは、ノルウェーの探検家トール・ヘイエルダール(Thor Heyerdah)による1947年の「コンティキ(Kon-Tiki)号」の航海から発想を得た。
 南米先住民がポリネシアに渡る手段を持っていたことを証明する目的があった。ヘイエルダールは、数百年前に使われていたものと同じ材料と技術でいかだを作った。
 バルネックスさんは、「私たちは初め、メキシコから出発するのが最短ルートだと考えていた。しかし、コンティキ号の船員が6人だったと知り、私たちも6人なので、これだと思った」と語った。
 今回のプロジェクトは、がんと闘う人やがんサバイバーをスポーツを通じて支援する団体「ホープチーム・イースト(Hope Team East)」の資金調達を目的としている。
【翻訳編集】AFPBB News
https://news.livedoor.com/article/detail/23495326/

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1月7日、2023年最初の満月がやってくる!火星も近くにいるよ

2023-01-07 | 先住民族関連
カラパイア2023年01月06日(金)08:00

 番組の途中ですがカラパイア満月速報のお時間です。2023年、今年最初となる満月が1月7日にやってくるよ。
 先月、地球に最接近した火星も、赤っぽい輝きを放ちながら月と寄り添いながら夜空を彩ってくれている。
 毎月空を見上げるきっかけを与えてくれる満月。宇宙から発せられる神秘のパワーでリフレッシュタイムだ。
1月の満月はウルフムーン、今はなきニホンオオカミに思いを寄せて アメリカの先住民たちが作った「The Old Farmer’s Almanac」という農業暦によると、1月の満月は「ウルフムーン」と呼ばれている。
 当時はまだ、北米大陸にたくさんのオオカミたちがいた。寒さの厳しいこの時期、オオカミたちは群れからはぐれた仲間を呼び戻すため、頻繁に遠吠えをしていたそうだ。
 群れで社会的生活を送っていたオオカミには、人間と同じような感情があり、仲間を思う気持ちがある。一緒に狩りをし、寄り添って暖がとれるよう、遠吠えでコミュニケーションをとっているのだ。
 日本の固有種、ニホンオオカミは悲しいことに絶滅してしまったが、1月の満月を見ながら、オオカミたちに思いを馳せてみるのも悪くないかもしれない。
満月の見方
満月の最大:1月7日(土)午前8時08分鑑賞に適した日時:1月6日の日没後、1月7日の日没後
 今回の満月の最大は1月7日(土)午前8時08分となる。太陽はすでに昇ってしまっているので、前日の6日の日没後か、7日の日没後ならよく見えるだろう。
 月は東の空から昇り、西の空へと沈んでいく。日没直後なら東か北東、日の出前なら北西か西の空に注目だ。
 月の出入り時間は地域によって若干異なるので以下のサイトで地名と日時を選択して「計算」を押すと確認することができる。
月の近くで赤く輝く火星にも注目 先月地球に最接近を果たした火星は、1月上旬、日の入りから1時間ほどたち空が暗くなった頃、東の空から赤く輝いて見える。
 さらに火星の近くにはオレンジ色をしたおうし座の1等星アルデバランも見えてくる。赤っぽい2つの星が双子のように近くで輝いているのを見つけることができたら、何かいいことありそうだ。
 他にも、宵の空には金星、土星、木星が見え、それぞれに月が近づく様子を観察することができる。
 1月22日から23日にかけては日の入り後の西の低空で、金星と土星が接近する様子が観察できるし、下旬には、夜明け前の空で30日に西方最大離角となる水星が見つけやすくなる。
 地球ではいろんなことが起きていて、中には悲しすぎて心穏やかじゃないこともあるけれど、空を見上げれば、いつもと変わらない星々が我々をいつもと同じように照らしていてくれる。
 その事実を胸に、来月必ずやってくる満月まで、星のシャワーで英気をもらおう。
https://www.excite.co.jp/news/article/Karapaia_52319067/

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2023年を迎えて—国立天文台長 常田佐久

2023-01-07 | 先住民族関連
x国立天文台2023年1月 6日

あけましておめでとうございます。
2022年は、前年に引き続き、新型コロナウイルス感染症による影響の大きな年でしたが、「Withコロナ」の動きの中で、在宅勤務と職場での勤務を組み合わせ、研究会などの対面およびハイブリッド開催も増え、来台者も増加しました。また、水際対策緩和後は待ちかねたように、外国からの来訪者および視察が一気に増え、国立天文台への関心の高さがうかがえました。
天文学の世界におけるニュースとしては、米国航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)等が2021年に打ち上げたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が科学観測を開始したことが挙げられます。さっそく135億年前に存在した銀河候補天体を発見するなど、JWSTからは驚くべきペースで成果が届いています。JWSTで実施予定の観測には、国立天文台が運用するすばる望遠鏡やアルマ望遠鏡の成果を下敷きにしたものがいくつも含まれており、これらをリードする若手研究者が羽ばたきつつあります。
2022年5月には、世界8カ所の望遠鏡をつないでブラックホールの影の撮影を目指す国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」から、天の川銀河の中心にある超巨大ブラックホール「いて座A*(エースター)」の画像の発表がありました。この観測では、アルマ望遠鏡が重要な役割を果たしました。また、若手を含む日本の研究者が、今までない高い周波数で世界のアンテナ群をつなぐこの事業に参加・貢献をしたパイオニア精神を、高く評価したいと思います。
再び月に人類を送り込むアルテミス計画の最初のミッションが行われたことも、2022年のハイライトと言えるでしょう。我国を含む国際協力で進められる月面基地開発の先には、月からの天文学観測という未来が現実に広がっています。もはや天文学は一国だけで推進できる学問ではありません。この不安定な時代にこそ、国際協力をさらに前進させることで、多くの宇宙の謎が明らかになっていくことを期待しています。
これには、観測環境の保護も欠かせません。2022年10月には、東京都で初めての開催となる第34回「星空の街・あおぞらの街」全国大会が、東京都三鷹市で開催されました。この大会は、大気環境の保全に対する意識を高めること、郷土の環境を活かした地域おこしの推進に役立てることを目的に、毎年各地で開催されているものです。三鷹市とは「天文台のあるまち」として協力関係を深めており、国立天文台長としてご挨拶をすると共に、三鷹キャンパスで開催されている定例の天体観望会の報告が行いました。また大会にご臨席をいただきました高円宮妃殿下は、三鷹市星と森と絵本の家をご視察になったほか、50センチ公開望遠鏡に取り付けた高感度カメラで天体の観賞を楽しまれ、シャルル・メシエによる彗星(すいせい)探索についてご質問されるなど、天文への高いご関心を示されました。
観測開始から24年を迎えたすばる望遠鏡は、2022年4月から「すばる2」として新たな段階に入りました。世界に冠たる広視野観測能力をさらに高め、ダークエネルギー、宇宙の構造形成、マルチメッセンジャー天文学、太陽系外惑星の探索を4本の研究の柱として追求し、宇宙の進化に関する人類共通の根源的な謎に迫ります。「すばる2」で重要な役割を果たす新しい観測装置の一つが、超広視野多天体分光器(PFS)であり、2022年9月に行われた試験観測で初めてスペクトルを取得することに成功するなど、着実に開発が進んでいます。また、超広視野主焦点カメラ(HSC)の戦略枠プログラムの観測からも、続々と成果が出てきています。すばる2が引き続き世界の天文学をけん引していくことを期待します。
アルマ望遠鏡も、成果を挙げ続けています。2014年にアルマ望遠鏡によって取得された、若い星「おうし座HL」の周囲の原始惑星系円盤の画像は、分野の研究者に大きな衝撃を与えました。2022年にはこの論文の引用数が1000を超え、惑星形成に関する私たちの理解を前進させる大きなブレークスルーをもたらしたことを改めて認識する機会となりました。
こうした素晴らしい成果を生み出してきたアルマ望遠鏡の解像度と感度を、さらに高め受信周波数帯域を拡大する「アルマ2」計画が、いよいよ2023年からスタートします。先端技術センターで進めてきた広帯域受信機の開発から、チリ現地での望遠鏡運用、東アジア地区でのユーザー支援に至る“end-to-end”の取り組みにより、日本と世界の天文学の進展をしっかりと支える所存です。
科学研究部は、これらの望遠鏡群を用いて、多波長観測と理論研究を有機的に結び付け多様な研究成果を挙げました。2022年は理論・シミュレーションとの連携が本格化する年でしたが、2023年はこれらの研究が発展してさらに大きな成果が挙げられると期待しています。
TMT計画は、2019年にハワイ現地における反対運動により工事が中断しましたが、TMT国際天文台(TIO)のプロジェクトマネージャがハワイ島ヒロに移り、臼田TMTプロジェクト長をはじめ国立天文台職員と共に、TMTに批判的な地元の方々を含む300人を超える方々との直接対話に取り組んでいます。地元住民のニーズに沿った学校での学習支援等にも取り組み、先住民を含めて地元の方々との信頼関係の醸成に務めています。
またハワイ州では、先住民も参加する新たなマウナケア管理組織が設立され、TMT問題をより大きなマウナケアの管理と先住民文化との融和の問題に昇華して扱うハワイ州政府による新しい方向性が確立しつつあります。
TMTを含む米国超大型望遠鏡(US-ELT)プログラムへの米国連邦予算投入に向けたプロセスも順調に進んでおり、2022年7月には米国国立科学財団(NSF)による建設サイトでの環境影響評価および国家歴史遺産保存法106条のプロセスが開始され、8月にはハワイ島で公聴会が成功裏に開催されました。
また、建設プロジェクトの長期予算をNSFが確保するために重要な基本設計審査(PDR)が、同年11月から開始され、1回目の審査会で、TMTは最終設計段階に進むのに十分な段階にあるという高い評価を得ました。この結果は、ハワイやカリフォルニア、三鷹の国立天文台職員による多大な貢献に加え、国内メーカーの非常に高い技術力が重要な要因となっています。
TIOのガバナンスの改善にも取り組んでいます。TIO評議員会副議長に私が着任し、評議員会における重要案件の議論をリードしている他、TIO科学諮問委員長に東北大学の秋山正幸教授が着任しました。また、臼田TMTプロジェクト長をはじめとする国立天文台職員とTIOマネジメントとの緊密な連携により、TIOの運営にも日本がリーダーシップを発揮しています。
総じて、2022年は計画の見通しが明確になってきた年でした。2023年は、着実に計画を進め、現地での工事再開と日本での望遠鏡の本格的な製造につなげていく大事な年となります。
打ち上げから16年を経た太陽観測衛星「ひので」は、極大期に向かって活動度を高めている太陽の観測を続けています。また、ひのでが挑んできた高温の太陽コロナや太陽フレアの謎をさらに追及していくのが、次期太陽観測衛星SOLAR-Cです。JAXAでは、2022年にミッション定義審査・プロジェクト準備審査を完了し、SOLAR-Cプリプロジェクトチームが発足しました。2020年代後半の打ち上げを目指して、国立天文台はその主要な観測装置の開発に向けた歩みを着実に進めていくことになります。
同じく飛翔体を使った研究として、赤外線による超高精度位置天文観測で、天の川銀河の構造と歴史を明らかにすると共に太陽系外惑星の探索を行うJASMINEプロジェクトが活動を続けています。国立天文台天文シミュレーションプロジェクトが運用する天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイII」を使って、天の川銀河に含まれる恒星とガスの進化を追いかけることで、天の川銀河における星形成活動の変化や構造進化を描き出し、JASMINEで観測されうる特徴を明らかにすることも行われました。JASMINEが挑む多様な天文学的課題に対し、着実な準備が進んでいます。
このようにJAXAの科学ミッションの主要部分を担当し力をつけることで、2030年代には若い人たちが、NASAやESAの次世代天文学ミッションに主要パートナーとして、加わっていくことを期待しています。
さらに、新機軸ともいえる試みも、成果を挙げています。国立天文台から情報・システム研究機構 統計数理研究所に出向している2名の若手研究者は、すばる望遠鏡HSCで撮影された膨大な数の銀河や、ESAのGaia(ガイア)が取得した膨大な数の星のデータをもとに、AIの一つである深層学習や先進的な統計解析の手法を駆使して、宇宙と天の川銀河の歴史を解き明かす研究に挑んでいます。AIの研究や応用が科学以外にも大きく広がっている現代において、観測装置やスーパーコンピュータが生み出すビッグデータを解釈するうえで、AIや統計解析は欠かせない手法になりつつあります。AIの応用で、現代天文学にも大きな可能性が開けることを期待しています。
2022年に40周年を迎えた野辺山宇宙電波観測所は、2022年度から観測時間の有料化という新しい運用が始まりました。特に、新旗艦装置の7ビーム3帯域両偏波受信機の開発は順調に進み、この秋に最初の電波地図作成に成功しました。今後の成果が期待されます。
水沢VLBI観測所では岩手日報社の支援を受け、天文学分野の解説記事などを執筆しつつ、観測所で研究を進める研究者が着任しました。春にはクラウドファンディングを実施し、その支援をもとに研究者を雇用することを決めました。水沢では、このような多様な財源を活用して研究力の強化を図っています。また、日韓VLBI観測網の観測データをもとに、楕円銀河M87の超巨大ブラックホールから噴出するジェットの速度分布を説明する新しいシナリオを提唱するなどの科学成果も挙げています。
ハワイ観測所岡山分室が共同利用を担当する「せいめい望遠鏡」では第2の装置として多色高速カメラが稼働を始め、高速移動・回転する地球接近小惑星を発見の数時間後から観測してそれらの起源にせまるなど、他施設ではできない研究が花開きつつあります。本年は太陽系外惑星探査用の高分散分光器の稼働開始を予定しています。1960年に稼働を開始した188cm反射望遠鏡は、昨年9月にドームスリットの故障が発生し現在運用停止となっていますが、継続的な観測による太陽系外惑星の発見等、現在でも研究の第一線で利用され続けているうえ、地元浅口市による観望会の継続的開催など地域にも貢献する重要な望遠鏡であり、できる限り早急に、復旧への道筋を開きたいと考えています。
石垣島天文台も、口径105センチメートルの「むりかぶし望遠鏡」による観測研究と共に、地域と連携した教育普及活動が展開されるユニークな施設です。2022年度からサービスの充実と安全安心の向上を目的として、施設公開の有料化を始めています。望遠鏡の運用は6月の落雷被害により停止していますが、復旧作業が進められています。今後の光・赤外線天文学大学間連携(OISTER)での一層の活躍や、光害軽減対策に向けた、米国SpaceX社のStarlink衛星に関する研究に期待しています。
先端技術センターでは、アルマ超電導ミキサ開発のスピンオフとして、量子計算機用超低消費電力増幅器が、科学技術振興機構(JST)のムーンショット型研究開発事業の概念実証実験を経て、本格化しています。また、金属3Dプリンタを使って、台湾の中央研究院天文及天文物理研究所が中心となって開発してきたアルマバンド1受信機に使用するコルゲートホーンの量産に成功しました。大型観測施設での、初めての金属3Dプリンタで製作した部品の採用と思います。3Dプリンタは、今までの機械加工では実現できない斬新な観測装置をもたらす可能性があり、大いに期待しています。
東京大学宇宙線研究所、国立天文台、高エネルギー加速器研究機構の3機関連携のもとで推進している大型低温重力波望遠鏡KAGRAは、2023年に開始予定の第4期重力波国際共同観測(O4)へ向けて調整を進めています。すでにファブリペローマイケルソン干渉計での運転に成功し、低周波では前回の観測感度を上回っています。O4での重力波初観測に期待が膨らみます。また、TAMA300で実施している、周波数依存スクィージングや高性能サファイア鏡開発も順調に進んでおり、さらにはヨーロッパの第3世代重力波望遠鏡計画「Einstein Telescope」への協力をはじめ、国立天文台はこれからも重力波天文学の発展に貢献していきたいと考えています。
月やその他の衛星、小惑星などの固体天体を研究対象とするRISE月惑星探査プロジェクトが参加している、ESAの木星氷衛星探査機JUICEの打ち上げが、いよいよ今年に迫ってきました。木星の衛星ガニメデの地形を測り、精密な立体地図を作るガニメデレーザー高度計の観測データから、ガニメデの素顔と経歴が明らかになることを楽しみにしています。
昨年は国際協調や国際協力の重要性を改めて感じた一年でしたが、天文情報センターに設置された国際天文学連合 国際普及室(IAU OAO)も10周年を迎え、スタッフを2名から3名へと増員し、世界各国を巻き込んで、“Astronomy for all”をスローガンに、天文学の普及と国際連携を日本発信で進めています。このほか、国際連携室では、来訪する外国人に有用な情報をまとめたウェブサイトの充実に努めるほか、東アジア天文台(EAO)については代表者を関口台長特別補佐に交代し、今後も東アジアの各地域と協力していきます。
先進的な研究だけでなく、国立天文台が所蔵する歴史的資料も高い評価を受けました。江戸時代の幕府天文方と天文観測装置開発者の間で交わされた書状などをまとめた『星学手簡(せいがくしゅかん)』が、国の重要文化財に指定されることになりました。江戸時代後期の天体観測や暦の研究の実情を伝える資料としての価値が認められたものです。
このように、長い年月を経た後に価値が認められる事例は数多く存在します。現代の天文学観測で生み出される膨大なデータは、国立天文台では天文データセンターが中心になって保管・活用を行っています。データ量は増大の一途であり、また単に保管するだけでなく使いやすい形で公開することには、大変な苦労が伴います。様々な工夫によってその対応に当たっている皆さんに敬意を表すると共に、はるか未来も含めた人類の資産としての天文データの価値を改めて認識しています。
さて、2022年度は、新しい執行部が発足しました。齋藤副台長、鵜澤技術主幹に加えて、ハワイ滞在の経験を持った吉田副台長、大学に長くいた本原研究連携主幹など新しい風が入り、事務部の方々とともに、新たな気持ちで活動しています。12月には、「NAOJ Future Planning Symposium 2022(2022年度 国立天文台の将来シンポジウム)」が盛況のうちに開催され、具体的な将来計画の紹介や、日本の天文学コミュニティの総意を持って次の計画を策定するためにはどのような方法を取るべきかといった議論が、活発に行われました。世界的な情勢不安もあって将来を見通すことが簡単ではない現在ですが、職員の皆さん、コミュニティの皆さんと共に、天文学の発展を通じて社会に貢献できるよう今年も力を尽くしたいと思います。
2023年1月5日
国立天文台長 常田佐久
https://www.nao.ac.jp/news/topics/2023/20230106-new-years-message.html

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「北海道の自然」写真集に 弟子屈の水越武さん、「オオカミが見た」180枚収録 /北海道

2023-01-07 | アイヌ民族関連
≈毎日新聞 2023/1/6 地方版 有料記事 837文字

写真集を手にする水越武さん=札幌市中央区で2022年11月23日、安味伸一撮影
 冠雪した日高山脈、可憐(かれん)な高山チョウ、流氷迫る月夜の浜で群れるエゾシカ――。弟子屈町在住の写真家、水越武さん(84)が写真集「アイヌモシリ オオカミが見た北海道」(北海道新聞社)を出版した。山岳や湿原、野生生物などのテーマごとに北海道特有の自然の特徴が分かる。全文英語訳付きで、世界に発信する。
 題名のアイヌモシリはアイヌ語で「人間の大地」を意味する。約120年前に絶滅したエゾオオカミが大地を駆けていたころの自然が保たれている光景を念頭に撮影した写真を軸に、180枚を収録。水越さんは「生態系と生物多様性の二つの視点から北海道の全体像をきちんとまとめ、特徴を国際的な視野でしっかりとらえたかった」と話す。
この記事は有料記事です。 残り529文字(全文837文字)
https://mainichi.jp/articles/20230106/ddl/k01/040/022000c

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