SPUR.JP2023.01.13
年の瀬だろうと、流行ウォッチャーに休みはなし。世の中の流れに乗り遅れることのないよう、しっかり聞き耳を立てていきたいところ。鳶目兎耳美と一緒に各業界のインサイダーに取材を敢行。2023年はいったいどんなトピックスが急上昇する……!? 寄せられた注目すべき人、物、事を一挙大放出!
1 メローでグルーヴィーな音楽を奏でるシンガーに熱視線を送って!
事情通から注目アーティストとして名前が挙がってきたのは、全員女性歌手。イギリス、日本、マレーシア、と拠点はバラバラなのに、共通して心地よいグルーヴ感のある曲調、というのも不思議! 激動の時代だからこそ、コージーな音楽が求められる傾向に!?
Lunadira
「東アジアと東南アジアの結節点になっているマレーシアは今後注目のエリア。Lunadiraをはじめクアラルンプールのレコードレーベル兼マネジメント会社TONGTONG Asiaに所属するアーティストの活動が広がっています」(もてスリム/編集者)。2014年から音楽活動をスタート。ベルベットのような歌声と感傷的なメロディで聴く人を魅了する。マレーシアの大型フェスにも登場するなど、ライブ活動も精力的。
Dove
2018年に1st EPを発表し、日本を拠点に活動。「’22年5月にSPREADで開催されたリリースパーティで聴き、力強くも透き通った声で空間を包み込むパフォーマンスに魅了されました」(Yoshiko Kurata/アーティストコーディネーター)。’22年3月にはベルリンのレーベルYegorkaから愛の短編小説がテーマとなっている3rd EP『Atarashi Karada』をリリース。今後、国内外で活躍の場が広がりそう!
Miso Extra
「Gorillazや88risingらが注目のアーティストとして名前を挙げ、 ThundercatのUK公演にも帯同。イギリス人の父と日本人の母を持ち、楽曲でも英語と日本語を織り交ぜています」(Yoshiko Kurata/アーティストコーディネーター)。ラップを加えたどこかフューチャリスティックな楽曲は一度聴いたら忘れられない。現在はイギリスを拠点に活動しており、2023年1月には新曲を発表予定!
2 勢いを増すアジアンアーティスト
「韓国の若手アーティストのなかでも、どこか歪な雰囲気の彫刻作品をつくるアーティストが活発に活動しているのが気になる」(もてスリム/編集者)。個性際立つ日本人アーティストも続々登場し、アジアのアート界が2023年さらに盛り上がりを見せるかも⁉
Goyoson
観客のアイデンティティと経験によって見え方が変わる彫刻とインスタレーションを制作。詩やパフォーマンスを作品に取り入れたり、水面を立体的に表現したり、新しい表現方法を果敢に取り入れている。ソウル市立北ソウル美術館で行われた展示『Lover』(2022)では人型の立体にタトゥーを施すなど斬新な試みも! 彫刻の可能性を広げる作品は、見る人の感性を刺激してやまない。
Takuro Tamayama
2015年に東京藝術大学大学院を修了。照明による色彩空間に、日用品や家具などのオブジェクトを設置するインスタレーションを発表してきた。「すでに国立新美術館や、3月まで開催している森美術館の展示に参加するなど精力的に活動。2023年はより大きな場所で作品を見たい!」(Yoshiko Kurata/アーティストコーディネーター)。幻想的な世界への没入体験は忘れられない記憶に。
Yoo Ji O
立体作品やインスタレーションでメディアアートを制作。テーマは「物体と周囲との関係」だ。空気や照明、湿度といった環境的要因からエッセンスを抽出し、造形に反映する実験を行なっている。異なる性質や物理法則を持つ彫刻が空間を侵し、あるいは制御することで存在が可視化される様を表現。作品にはアクリルや樹脂のほか、チェーンやスピーカーなどさまざまな素材が使用されている。
IRIS SAKAI
2020年から油絵を描き始めた気鋭アーティスト。人間の表層の奥に隠された欲望や二面性、さまざまな感情を絵に表現している。「マイペースなタイプかと思いきや、めっちゃ考えてる。今後の彼のすべてが楽しみです」(オカモトレイジ〈OKAMOTO’S〉/ミュージシャン)。現在Jun Inagawa、Obabitaと結成したエレクトロニックバンドFrog 3としても活動中。
3 "Web3"と"DAO"が世界の仕組みを変える!?
現在一般的に利用されているインターネットはWeb2。その先のWeb3を構成するのにDecentralized Autonomous Organizationの略で自律分散型組織の意味を持つDAOが必要不可欠になるという。「DAOがサイエンスや金融、環境問題の領域で広がっているのが面白い。ファッションをはじめ今後どんな取り組みが生まれるのか気になる」(もてスリム/編集者)。いったいどんな仕組みで生活にいかなる影響を与えるのか、専門家に聞いた。
教えてくれた人
亀井聡彦さん
2021年に日本初のWeb3インキュベータ「Fracton Ventures」を共同創業。著書に『Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」』(かんき出版)がある。
Q1 Web3とはどんな世界?
「Web2では企業を信頼して個人情報を渡しています。その結果、プライバシーやセキュリティの問題が多く発生していますよね。しかしWeb3では取引を鎖のようにつなげて記録していくブロックチェーン技術によって、特定の管理者を介することなくさまざまな情報を共有できるようになります。つまり世に出す情報をユーザー自身が主体的に管理しながら、サービスを利用できるんです」
Q2 DAOって何?
「DAOはブロックチェーン上で成り立つ協調組織。定義はまだ曖昧ですが以下の要素が必要といわれています。目的を持ったコミュニティに世界中から誰でも参加できる。その共同体の資産や履歴がブロックチェーン上で管理されている。プログラム可能なコードに信頼がおける。すると過去の操作ログがすべて記録され、全ユーザーが閲覧できる状態になるため不正や改ざんがほぼ不可能になります。現在一番美しいDAOと評されるのはビットコイン。特定の企業や個人が運営せずに、利用者で分散的にシステムを協調管理し、誕生から13年間一度も止まったことはありません」
Q3 現在DAOで何ができる?
「ビットコインは、基本的に暗号資産の交換しかできません。そこから発展したブロックチェーンのイーサリアムでは、さまざまなアプリケーションで投資や支払い、ゲームなどができるように。今後ブロックチェーン上の履歴を見て個人を信頼できるようになれば、現在のフリマサービスを介さなくても直接取引できますし、仕事も企業の看板ではなく個人が何をしてきたかで評価されるようになると思います。才能のある人はすぐに世に出られますね」
Q4 Web3で未来はどうなる?
「会社は株主との関係上成長が求められます。でもWeb3によって現在企業が担っているサービスをDAOという持続可能なシステムに移行できれば利益を追求する必要がなくなる。NPOなどが負担しているビジネスにならない社会課題に世の中全体としてリソースをシフトすることも可能です。Web3のスタートアップが目指すゴールはサービスを分散させて公共性の高い状態にすること。いろんな情報やシステムが公共財になり、資本主義から一歩脱却できる日も近いかもしれません」
4 2023年はシャラメ祭り
2023年続々と封切りされるティモシー ・シャラメの主演映画作品。「『ボーンズ アンド オール』はティモシーとテイラー・ラッセルがクロエ・セヴィニーと共演するのが楽しみ。ホラー映画は苦手なのですが、それでも観たいと思うストーリーとキャストに注目です」(Yoshiko Kurata/アーティストコーディネーター)。『チャーリーとチョコレート工場』の前日譚を描いた『Wonka』は全米で3月17日に、SF超大作の続編『Dune: Part Two』は全米で11月に公開予定。どれも日本公開が待ちきれない!
5 マネタイズサービスの拡張が止まらない!
インターネットの進化とともに、お金の稼ぎ方も多様化。アプリやサービスをうまく使えば、自分の得意なことを生かしながら収益を得ることも可能に。
Swaypay
(右)「アメリカでは、購入品をTikTokに投稿すると誰でもキャッシュバックを得られるサービスが!」(最所あさみ/リテール・フューチャリスト)。Swaypayに登録されているブランドの商品をアップすれば、いいねやコメント数に応じて5%以上が払い戻される仕組み。100万再生を超えたり、ブランドからライセンス希望があれば100%以上の金額になることも。フォロワー数は関係なく利用者のクリエイティビティを活用した新たな取り組みとなっている。
ハンマーキット
(左)クリエイターの商品や作品を競売方式で販売するサービスで、感覚としては"オークション形式のECサイト"。複数の同一商品を一気に出品でき、たとえば100冊の写真集に200人から入札があれば、高い値段をつけた上位100人が落札できる。出品するのは作品でも権利でもOK。「みんな、ユニークなものをガンガン作ってここで売ってほしいです」(オカモトレイジ〈OKAMOTO’S〉/ミュージシャン)
6 ブレイク前夜の俳優、キーワードは透明感
役によって表情が変わる、フレッシュな俳優に注目が集中! 今後いっそう活躍すること間違いなしの3名は、今からチェックしておきたい。
南 琴奈
Mr.Childrenやofficial髭男dismのMV出演で話題に。「抜群の透明感と華やかなビジュアルで、映像でも雑誌でも活躍の場を拡大中。期待の16歳の今後が楽しみです」(編集R)。2023年1月12日に配信される、是枝裕和監督初の Netflix シリーズ「舞妓さんちのまかないさん」への出演が決まっている。
祷(いのり) キララ
「主演映画『Dressing UP』(’12)を観て以来注目しています。十代の頃の栗山千明さんや小松菜奈さんを彷彿とさせるミステリアスさが素敵」(金山木子/ Esmeralda Serviced Department ディレクター)。出演した映画『やまぶき』(’22)は第75回カンヌ国際映画祭のACID部門へ正式出品された。
伊東 蒼
6歳のときに俳優デビュー。17歳の現在、すでに芸歴11年目を迎えている。2022年は3本の出演映画が公開され、第32回映画祭TAMA CINEMA FORUMの第14回TAMA映画賞 最優秀新進女優賞を受賞。「映画『さがす』(’22)では、当時16歳とは思えない演技力に脱帽! 今後の作品も楽しみです』(編集U)
7 モデルはアイデンティティで選ばれる時代が到来!
多様性に富んだ体型や人種、そしてデザイナーの友人や家族などコミュニティをエンパワメントするキャスティングが主流だった最近のモデル事情。今後はより個性が重視される傾向に。 「プラダはセクシュアルマイノリティであることを公言していたり、アクティビストとして活動しているモデルを数多く起用。しかも大半が新人! かつてモデルはルックスで選ばれてきましたが、今後はよりアイデンティティや個人の活動が物言う時代になりそう」(板垣千春/ライター)。
(右から)
Quannah Chasinghorse
北米の先住民のルーツを持ち、あごには伝統的なタトゥーを入れている。UGGの2022 FALLキャンペーンにモデルとして登場した。
Samu Happonen
ミュウミュウのほか、プラダやリック オウエンスのランウェイに登場。フィンランド出身で、ドラァグクイーンの一面も持つ。
Alin Szewczyk
プラダの2023SSコレクションでクロージングモデルを担当。地元ポーランドではノンバイナリーの俳優としても活動している。
8 eスポーツの祭典DreamHackが日本へ!
「DreamHackがついに幕張メッセにやってくる!」(編集M)。始まりは1994年にスウェーデンで行われた40人ほどのPCパーティ。その後eスポーツファンから支持されるエンターテインメント・フェスへと進化し、2023年5月13日、14日に日本で初開催されることに。ゲームや最新プロダクトを堪能でき、人気アーティストによるライブ・パフォーマンスやトークショーも楽しめる。複合型ビッグイベントの続報を今から楽しみに待ちたい!
9 ロンドンを席巻するエコな電動カーゴバイク
日本でも一般化したシェアサービス。ロンドンでは、電動キックボードや自転車に加えカーゴバイクが人気! 「私と息子がかごに乗り夫がこぐ、というスタイルでわが家もよくOurBikeを利用。ちょっと遠くの公園までお出かけしたりしています!」(クラーク志織さん/イラストレーター)。何といっても子どもの送迎や大型荷物の運搬に使えるのが魅力的。1時間あたり平均3ポンドと料金も良心的だ。日本にはまだない持続可能、かつ楽しい移動手段がうらやましい限り!
10 独自の視点で"人間"を紡ぐ新人作家に注目
共感を呼ぶ韓国文学ブームの流れからか、そっと心に触れる作風の小説や詩が読まれている。賞を獲得した二人の作品はぜひとも手に取ってみてほしい。
髙原あふち
’22年第25回日本自費出版文化賞を受賞した短編集『ハーヴェスト』は、表題作を含む全9編を収録。「身近な懐かしさを感じる作風に惹かれます」(金山木子/Esmeralda Serviced De
partment ディレクター)。家族や介護など、誰もがどこか共感できるキーワードを取り入れた物語が穏やかな文章で描かれている。
蜆(しじみ)シモーヌ
2020年に本格的に詩作を始め、’21年に第59回現代詩手帖賞を受賞。同年『なんかでてるとてもでてる』(思潮社)を刊行した。「雑誌に投稿されていた頃から独自の言語感覚が確立されていて気になっています」(編集H)。ひらがなを多用しリズミカルに言葉を並べながら、人間という存在を掘り下げていく衝撃作。
11 いざ、イスタンブールへ! ガラタポートが大規模開発中
「2023年2月14日に開業するザ・ペニンシュライスタンブールのスケールが圧倒的!」(編集G)。ロケーションは、カラキョイ地区にあるガラタポートのウォーターフロント。ボスポラス海峡に臨む4棟で構成され、そのうち3棟は1900年代初頭の歴史的建造物を改装したもの。さらに同じ時代に建てられた郵便局を活用したショッピングセンター「ポストオフィス・ファッション・ギャレリア」は’22年すでに開業。’23年にはイスタンブール現代美術館がリニューアルオープン予定となっている。1.2kmの海岸線に食、芸術、ファッションの施設が集結。トルコの過去と現在が融合するこのニューエリアは、ネクストデスティネーションとして見逃せない!
12 10代の女子ゴルフ選手は期待の新星だらけ!
若年層の間でトレンドスポーツとして盛り上がっているゴルフ。人気と比例するように若手選手の活躍が目覚ましい! 「日本人で37年ぶりに全米女子アマチュアゴルフ選手権で優勝した馬場咲希選手は、身長175㎝の17歳。鍛えられたのびやかな手足は絶対にモードなスポーツウェアが似合う! ファッションページにもぜひ登場してほしいです」(板垣千春/ライター)。さらに川﨑春花選手は日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯を最年少で制し、尾関彩美悠選手は住友生命Vitalityレディス 東海クラシックで優勝。彼女たちの活躍から目が離せない!
13 上陸が待ち遠しい、社会派コスメブランド
ソーシャルフレンドリーであることが当然になったファッションの世界。その流れはもちろんビューティ業界にも。インサイダーがチェックしているのは、人にも環境にもやさしいブランド。
Westman Atelier
「ひとつのアイテムでメイクアップとスキンケアを兼ねるなど、多機能の製品が増えている傾向にあります」(AYANA/ビューティライター)。「NYではモーニングルーティンをシンプルにする、マルチタスクなコスメティクスが人気。なかでもメイクアップアーティストのグッチ・ウェストマンが手がけるWestman Atelierが人気」(Maki Saijo/エディター)。植物由来の成分と先進技術を融合させた独自のアイテムを提案。すべてクルエルティフリーで環境に配慮しながら生産されている。新作のVital Skincare Complexion Drops(写真左)は、カバー力とケアの機能を備えたスキンティント。肌に潤いを与えながら均一のなめらかな質感に整えてくれる。
Kohl Kreatives
「ハンディキャップのある人やトランスジェンダーなど、すべての人のための多様な製品を手がけるブランド。新商品のQuickie Stickiesは、誰でも簡単にユニークなメイクアップができると話題」(ジェラルディン・ワーリー/ファッションフューチャリスト)。好きなところに貼って、アイシャドウをのせればアーティスティックなデザインを楽しめる。視覚障がい者の識別をサポートする転がらないキューブ型ハンドルのブラシなども提案している。
14 ソーバキュリアスが市民権を獲得!"飲まない"選択肢が増加
世界各国で進む脱アルコール! 「近年、お酒をあえて飲まないライフスタイル"ソーバキュリアス"が一般的に。2023年はノンアルコールの商品やモクテルバーがさらに増えそう」(鈴木達之/Archive Store ストアマネージャー)。「NYでは日々ノンアルコールのブランドや種類が増加。’23年はより定着するのでは!」(Maki Saijo/エディター)
オーシャニアクルーズ
美食を楽しめる客船、オーシャニアクルーズから2023年5月20日に乗客1,200名クラスの「ビスタ」がデビュー。さまざまなレストランが用意される中、ヘルシーな料理を提供する「アクアマールキッチン」では世界的メーカーであるライア社のノンアルコールスピリッツを多数用意。低アルコールやモクテルのメニューを豊富に用意し客をもてなす。
15 新しい旅の形。EGOE nestで自家用車をキャンピングカーに
「欧米ではタイニーハウスやバンライフが大流行。私は一般車をキャンピングカーに変身させることができるEGOE nestに夢中です」(ジェラルディン・ワーリー/ファッションフューチャリスト)。トランクに設置できるNestboxは調理器具、水道、冷蔵庫、マットレスなどで構成。さらにRooftop tentsがあれば、なんと簡単に車の屋根にテントを張ることが可能なのだそう。ほかにも自分に必要なアイテムを組み合わせながら、愛車を自由にアウトドア仕様にカスタムできる。これさえあれば、海や山、川など自然を身近に感じたいと思ったときに旅に出ることも夢じゃない。
https://spur.hpplus.jp/lifestyle/topics/2023-01-13-Lg_cEw/page12/