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「カリスマ」過ぎて実写化が難しそうなキャラ 「適役が浮かばない」

2023-01-15 | アイヌ民族関連
マグミクス2023.01.14
近くにいたら、心わしづかみにされる?

作中で異常なカリスマぶりを発揮する鶴見中尉。額当ての下は端正な顔立ち!画像は『ゴールデンカムイ』DVD2巻(NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)
 2023年以降もさまざまなマンガの実写化が発表されていますが、ファンにとって気になるのはキャラの「ビジュアル」はもちろん、「性格」や「雰囲気」を再現できているのかという点です。なかでも、多くの作品に存在する「カリスマ」ポジションのキャラは、実写化のハードルが高くなります。
 ビジュアルは衣装やメイク、役作りのためのトレーニング、食事制限などである程度近づけることはできますが、そのキャラクターの持つ唯一無二のカリスマ性は、簡単に身につけられるものではありません。今回は、そんな「ビジュアル」以上に再現が難しいであろう、「カリスマ性」を持つマンガのキャラクターを紹介します。
 まずは実写映画化決定の発表からすでに半年以上が経ち、ファンの間でキャストが誰になるのか議論が起きているマンガ『ゴールデンカムイ』の敵キャラ・鶴見篤志郎中尉です。ネットでは「何度か変人の役を演じてるイケメン俳優ということで、堺雅人さんがいい」「ギャグもシリアスもできるから、安田顕さん希望」「カリスマ性を再現できそうなのは佐々木蔵之介さん」など、作中屈指の重要キャラを全力で演じられるキャストを望む声がありました。
 鶴見中尉は、日露戦争で欠損した頭蓋骨を補うために琺瑯(ほうろう)製の大きな額当てを身につけているというビジュアルも強烈ですが、部下や協力者から狂信的な支持を得る、そのカリスマ性も特筆すべき点です。ときに冷酷な行動もとりますが、日本のため、信念を持って独自で隠されたアイヌの金塊を探しています。
 もともと諜報活動を行なっていた鶴見中尉は、ターゲットにした人物を徹底的に調べ上げた上で理解者を演じる手口によって、相手を心酔させていました。鶴見中尉がかなり手の込んだ作戦で配下に置いた鯉登少尉は、中尉に心酔するあまり、一言褒められるだけで文字通り舞い上がるほどです。さらにすごいことに、鶴見中尉の手口を知っていながらも、彼に付き従い続けている部下もいます。
 それぞれクセの強い部下たちから、慕われ、恐れられる鶴見中尉のカリスマ性は、なかなか再現できないのではないでしょうか。また、映画でどこまで物語が進むかは不明ですが、若き日の鶴見中尉(当時は偽名使用)を再現する際に、別のキャストを当てるのか、同じ俳優が演じ分けるのかも難しい点です。
 その他、ハリウッドでの実写化が決定している『進撃の巨人』屈指の人気キャラ・リヴァイも圧倒的なカリスマ性を持っています。作中では「一人で一個旅団(約4000人程度)並みの戦力」を有しているとも言われるリヴァイは、絶望的と思われた巨人との戦いにおいて、カリスマ性を発揮して調査兵団を率いてきました。
 無愛想でときに冷酷さを見せながらも、死にかけた部下の血まみれの手を取って「巨人を絶滅させる」と誓うような、部下を思うリヴァイもまた、なかなか再現できないキャラでしょう。2015年に日本で実写化された際は、そのポジションは「シキシマ(演:長谷川博己)」という別のキャラに改変されていました。ハリウッド版で、ついにそのままリヴァイを演じられる俳優が現れることに、期待が集まっています。
 また、同じくハリウッドでの実写化プロジェクトが進んでいるマンガ『メイドインアビス』には、ボンドルドという「悪のカリスマ」が登場します。常人には理解できない異常性、狂気を見せ、ネット上でも「存在がコンプライアンスに引っかかる」とまで言われるキャラです。ただ、海外ファンの間では「絶対的な狂人」「あれだけのことをしておいて悪意がないのがマジでいいよね」と、好意的に見る声も多くあります。
 ボンドルドは「アビス(作中の主な舞台になる巨大な縦穴)」を探索するために、さまざまな偉業を成し遂げた一方で、子供たちを人体実験の材料にしたマッドサイエンティストです。そのビジュアルは仮面とパワードスーツを身につけており、作中では一瞬、左目だけが明らかになったのみ。ハリウッドで活躍する名優であれば、ボンドルドの狂気を演じられるかもしれませんが、ほぼ顔出しがないので「出演してくれるのか」という疑問も残ります。ただ、顔を出せないにしても、おいしい役なのは間違いないでしょう。
実写化予定のない作品のカリスマキャラの再現はさらに無理?
 まだ実写化されていない、予定もない作品のカリスマたちは、さらに難しそうなキャラが多いです。
「悪のカリスマ」といえば、『ジョジョの奇妙な冒険』のディオ・ブランドーも外せません。『ジョジョ』は日本が舞台の第4部だけ実写化されましたが、ディオが登場する1部や3部も、いつか「海外で実写化」ということもありえます。
 ディオはツェペリに吸血鬼として犠牲にした人数を問われると、「おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?」と返し、顔色ひとつ変えずに人で混雑している歩道に車を突っ込むよう命じるなど、まさに「生まれついての悪」を体現しています。彼のために躊躇なく死ねる部下も多いカリスマ性や、知的な美青年ぶりを出しつつ、いざ追い詰められたときのみっともなさも表現しないといけないので、なかなか難しい役です。
 その他、文明が滅んだ世界を舞台にしたマンガ『Dr.STONE』の獅子王司は、武力とカリスマ性をもって理想郷「司帝国」を築こうとしたカリスマでした。石化前の世界では「霊長類最強の高校生」と称されるほどの武力を持っている上に、意に沿わない者は躊躇なく殺す独善的な一面を持っているかと思いきや、人心掌握に長けていてリーダーシップを発揮するなど、帝国のトップに君臨するのも納得の実力を見せています。
 何よりも驚きなのが、そんなカリスマ性を持った司が、まだ高校生であることです。舞台『「Dr.STONE」THE STAGE ~SCIENCE WORLD~』では、宇野結也さんが司を演じ好評を博しましたが、映画やドラマ化された場合、完全な3次元でチート級の身体能力と、カリスマ性を若手俳優が再現できるのでしょうか。もしかすると、年齢の改変も起きるかもしれません。
 また、性別や年齢を問わず周囲から慕われているのも、カリスマキャラのポイントです。『チェンソーマン』の主要キャラ・マキマは主人公・デンジをはじめ、数々のデビルハンターから憧れの対象とされています。
 目的のためには手段を選ばず、「使えない公安(ウチ)の犬は安楽死させられるんだって」「キミの選択肢は二つ 悪魔として私に殺されるか、人として私に飼われるか」と、デンジに投げかける冷酷な一面も持ち合わせ、上層部に対しても物おじしません。さらに、美人でスタイル抜群でもあり、知的さとけだるげな雰囲気も持っています。『チェンソーマン』には、強烈なビジュアルのキャラが多数登場しますが、一番再現のハードルが高いのはマキマかもしれません。
 カリスマ性を持つさまざまなキャラクターを挙げてきましたが、いずれも知力や武力はもちろん、人心掌握術、圧倒的狂気など、周りのキャラやファンを惹きつける理由がありました。すでに実写化が発表されている作品のキャラは、誰が演じるか不明ですが、高いハードルを越えてその魅力を再現してほしいものです。
(田中泉)
https://magmix.jp/post/132448

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『アバター:WoW』リアルな海の生物にキャストも感動! キャメロン監督がこだわった水中撮影の裏側

2023-01-15 | 先住民族関連
クランクイン2023/1/14 10:00

映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』場面写真(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
 現在公開中のジェームズ・キャメロン監督による超大作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』より、キャスト陣が驚きやワクワクに満ちた撮影現場の様子を明かすコメントが到着した。
 本作は、全世界歴代興行収入第1位に輝き、それまでの映像界の常識を一変させた革命的超大作『アバター』(2009)の13年ぶりとなる続編。美しい海とそこに宿る生物たちの息吹、そして神秘の星パンドラの侵略を目論む人類と、先住民ナヴィとの激しい戦いと心を揺さぶる感動のドラマが、進化した映像美とともにエモーショナルに描かれる。
 この度、ジェイク・サリー役のサム・ワーシントンらキャスト陣が、キャメロン監督の《驚きとワクワクに満ちた撮影現場》を明かすコメントが到着。本作には、初めて『アバター』の世界に参加する若手俳優たちがいたが、彼らがリラックスして撮影に臨めるよう、撮影現場にはキャメロン監督の様々な気遣いが散りばめられていたという。
 前作に引き続き出演したサムは「若い俳優達との共演は素晴らしかった。彼らは、最初すごく緊張していたけど、監督の遊び心に溢れたセットに触れて慣れていった。例えば、映画に出てくる生物とか、クレイジーなスタントとかを目の当たりにしてね。アニメーションではないから、僕らが実際に演技するんだよ。水に飛び込む生物たちに乗ることは、テーマパークみたいな体験でとても楽しんでいたよ」と、驚きとワクワクに満ちた当時の撮影の様子を振り返った。
 そんなキャメロン監督は、“海”へと舞台を移す本作の撮影のために超巨大な水槽を用意し、キャスト陣にダイビングの訓練を受けさせるなど、徹底した水中撮影にこだわった。キャラクターを描くうえで、あくまでもキャスト陣の演技に重きを置いていたため、100%のCGにはしなかったという。
 その考えは、本編に登場する海の生物たちにも当てはまっていたようで、ジェイク一家の長男・ネテヤム役のジェームズ・フラッターズは「監督は、すばらしい現場を作ってくれた。現場ではキャストができるだけパンドラの世界の美しさや、生物を信じられるような方法がいくつもあった。僕のお気に入りは、劇中に出てくるトゥルクンなどの海の生物たちだよ。これらの生物には、テクノロジーの他に、本物のフリーダイバーも加わっている。人間のスキルとテクノロジーの見事な合体によって、あの神秘的な生物が実現したんだ」と、魅力溢れる生物たちを生み出す撮影現場の裏側を明かした。
 リアルを超えた美しい海の世界とともに、様々な海洋生物たちが描かれている本作。監督がこだわり抜いた、生物たちの細かな動きにも注目だ。
 映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は公開中。
https://www.crank-in.net/news/120761/1

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グアム訪問する玉城デニー知事へ「戦争回避のため連携し国連へ」ガマフヤーの具志堅さんら要請 沖縄

2023-01-15 | ウチナー・沖縄
琉球新報2023年1月14日 14:36

グアムへ訪問する玉城デニー知事に対する要請文を発表する(右から)沖縄戦戦没者遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表、琉球民族独立総合研究学会の親川志奈子共同代表と友知政樹共同代表=13日、県庁
 玉城デニー沖縄県知事が15日から在沖海兵隊4千人が移転する米領グアムなどを訪問することを受け、沖縄戦戦没者遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表と琉球民族独立総合研究学会は13日、グアムの先住民チャモロ人から意見を聞くよう県に要請した。いわゆる「台湾有事」が起きた際には広大な基地を有する沖縄もグアムも戦場になる可能性が高いとして、玉城知事に対して、グアム知事と連携して戦争回避のための国連要請を実施するよう求めた。
 13日に県庁記者クラブで記者会見した具志堅代表は「日米に『沖縄を戦場にしないでくれ』と言っても、まず聞き入られない。日米両政府に要請するよりも国連を通じた国際社会へ訴えるべきだ」と話した。玉城知事は15~19日の日程で、パラオ共和国とグアムを訪れる。(梅田正覚)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1646605.html

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アート=アクティビズム 「ドクメンタ15」にみる社会変革目指すアーティスト

2023-01-15 | 先住民族関連
グローブ+2023.01.14 公開日:2023.01.14
社会とともにあるアート 前編:ドクメンタ15
2022年、ヨーロッパで2つの大きな芸術祭が開催された。ドイツの都市カッセルで5年に1度行われる「ドクメンタ」とイタリアのヴェネツィアで2年に1度開かれる「ヴェネツィア・ビエンナーレ」だ。歴史あるこれらの芸術祭が重なる年(10年に1度。今回はパンデミックの影響でともに1年開催が遅れた)には多くの美術ファンや美術関係者が両方を見るために旅程を組む。久しぶりにこれらの展覧会を訪れた筆者にとっては生き返るような刺激に満ちた経験になったのだが、パンデミックの閉塞感を強いられてきた多くの来場者にとっても同様だったのではないだろうか。
さて、15回目となる「ドクメンタ15」(2022年6月18日~9月25日)と59回目の「ヴェネツィア・ビエンナーレ2022」(4月23日~11月17日)は全く雰囲気の異なる対照的な展覧会だったのだが、目指す方向には意外にも共通点があり、世界の現在と未来を示す道しるべとして大変興味深かった。アートは社会を映す鏡だ。そのことを強く感じる体験となった。
今回と次回の2回に分けてレポートする。
インドネシアのアート集団 脱「西洋中心」を宣言
「ドクメンタ15」のディレクターはインドネシア出身のアート・コレクティブ(集団)の「ルアンルパ」である。ヨーロッパの由緒あるドクメンタのディレクターとして初のアジア人かつ初のアーティスト集団である。
ルアンルパは2000年にジャカルタで結成され、急速に都市化の進むインドネシアの進行形の問題などを中心に、展覧会やリサーチ、ワークショップや出版など、ジャンルや手法を横断する活動を行ってきた。
彼らの思考が前面に示された「ドクメンタ15」のテーマは「ルンブン」。インドネシア語で「米蔵」を意味する。
それはインドネシアの田舎において将来に備えて米を貯めておく倉庫であり、地域が共有する財産として使われてきた。この精神に基づき、予算や知識、アイデアを公平に分かち合い、持続可能な環境と社会、経済を「コミュニティ」をベースに構築することがドクメンタの目標として掲げられた。(注1)
このルアンルパの宣言は、パンデミックが露わにした人々の経済格差や、気候変動に表れる環境問題など、資本主義経済の行き詰まりを感じる現代社会の問題意識と共鳴するものだ。
参加者の多くがグループとして活動するアーティスト・コレクティブであり、「個」として突出した能力を競い合うアートマーケットや通常の国際展のイメージを覆す内容だった。ドクメンタの公式ガイドブックに詳細に記されたルアンルパの制作方針やプロセスを読むと、その挑戦的とも取れる態度は明快である。
「知識や歴史や芸術に関する西洋的”中心性”をどう反中心的なものに解体できるか」「グローバルなアート界のモデルに合っていないが故に見えないものとされている、多様なアートの実践や作品が存在する」「単なる個人的表現の追求や単体として展示されるための作品、あるいは個人コレクターや権威的美術館に売る作品ではなく、それぞれの環境で異なる現実社会において機能する作品が存在する。それを読み取り、理解することが必要だ」。(注2)
ヨーロッパを代表する芸術祭のディレクターとして招かれながらも、西洋中心に形成されてきたアートの価値を脱構築しようとする宣言は堂々たるものである。
そしてルアンルパが他の多くのコレクティブと共有する反資本主義的態度は、行きすぎた資本主義によって搾取されてきた「グローバルサウス」からの声として響く。
さらに彼らの母国インドネシアの歴史を振り返れば、300年以上に渡ってオランダの植民地であり、第二次世界大戦中は日本軍に占領され、さらに冷戦以降は1998年まで30年続いたスハルト政権の反共政策の下、表現の自由が徹底的に弾圧された国であり、抑圧への抵抗が彼らの根底にあることは十分理解できる。
不健全な「食」への警鐘、抑圧への抵抗に連帯
出品された作品の数々にも、地域のコミュニティとの連帯が表現されていた。
バングラデシュの「ブリット・アーツ・トラスト」(Britto Arts Trust)は、2009年から多くのアーティストに呼びかけ、バングラデシュ国内の異なる民族が住む田舎を訪れて彼らの芸能とアートのコラボレーションを行ってきたが、今回映像インスタレーションの《再訪(Re-Visit)》(2021-2022)において、周縁地域を再度訪れ、伝統芸能や料理のレシピを記録し、現在地域が直面している環境破壊や土地の権利の問題を明るみにした。
「食」はブリットが今回特に着目したテーマで、磁器や金属、布で作った食べ物を陳列したバザール風の展示では、グローバル市場の要求に答えるために、地元の農業が旬やオーガニックとは程遠い不健全な食物作りを行っていることへの警鐘を鳴らした。
タイの「バーン・ノーク・コラボレイティブ・アーツ・アンド・カルチャー」(Baan Noorg Collaborative Arts and Culture)はカラフルなスケートボードのランプをもつ広場を作り、スケートを楽しむ子供たちで賑わっていた。
《牛乳を撹拌する; 物の儀式(Churning Milk; the Rituals of Things)》(2022)と題されたこの作品では、バーン・ノークの故郷であるノンポが1950年代の終わりに稲作中心の農業から酪農に政策転換した歴史を踏まえ、人と牛の伝説を交えた物語を展開させる。
さらに、ドイツとノンポの酪農家を結び、後継者の不在など現在の酪農が共通して抱える問題について議論を行っている。政治、伝説、進行形の社会問題をスケートボーダーのアクションが「撹拌」する作品だといえるだろう。
「コミナ・フィルム・ア・ロジャヴァ」(Komîna Fîlm a Rojava)は、シリア北部のクルド人を中心としたロジャヴァ自治区の映画製作者たちによって、地域の映画文化振興のために結成された。今回このコレクティブは自分たちによる作品の他、クルドの映画史を紹介する映像を選んで上映している。
最も心を奪われた作品はシェロ・ヘンデ(Şêro Hindê)監督による 《孤独な木々(The Lonely Trees)》(2017)だ。クルドの民族歌謡を歌う名人たちの圧倒的な歌声と、その伝統についての語りを、美しい草原の景色と共に紹介する内容だ。
音楽家のメフムード・ベラズィー(Mehmûd Berazî)による洗練された音響効果とともに、歌の世界に引き込まれる。
長い迫害の歴史に加え、現在もシリアのアサド政権による弾圧を受ける地域において、失われゆく少数民族の文化を映像に記録し、さらには映画学校を作って若い映画作家を育てる努力をするコレクティブの使命感に感動する。
インドネシアのコレクティブ「タリン・パディ」(Taring Padi)の展示会場の建物ハレンバード・オストの庭には、夥しい数のダンボール製の人形が地面に突き立てられていた。
これらは2021年から2022年にかけてタリン・パディがインドネシアやドイツ、オランダやオーストラリアの町を訪れ、子供から移民、農民に至るあらゆる層のコミュニティとのワークショップを通して作られたものだ。「差別をやめろ」「重婚反対」「移民を選んだわけではない」「平和と自由を」など、思い思いのメッセージが書かれている。
「インドネシアの影絵人形芝居(ワヤン・クリ)の伝統を社会正義を求めるアクティビストたちの活動と身近なエンターテイメントにまで解体した」と作品解説にあるように、市井の人々の切実な思いが伝わってくる。一方でカラフルかつ素人さと親しみやすさをもつ表現は、遠足で訪れていた小学生たちを楽しませていた。
さらに建物内には、巨大なバナー作品を中心にタリン・パディの作品の数々が展示されていた。油彩画や木版画、緻密なペン画やオブジェなど、その勢いに圧倒される。
「現代美術」とは異質な印象 「民衆と共に」の姿勢徹底
民衆の苦しみと為政者への批判をわかりやすく描いたタリン・パディの作品群は、いわゆる「現代美術」の印象とは異質である。表現の自由が奪われたスハルト政権崩壊直後の1998年に結成されたコレクティブの目標は、政治の腐敗や社会の不正に対して民衆と共に声をあげることなのである。(注3)
今回、メイン会場であるフリデリチアヌム美術館前の庭に展示されたタリン・パディの巨大なバナー作品《人民の正義(People’s Justice)》(2002)の中に、ユダヤ人への差別的な表現があったとして「反ユダヤ主義」だと断罪され、作品が覆い隠された後に撤去されたことが大きなニュースとなった。(注4)
タリン・パディはステートメントにおいて多くの人を傷つけたことを謝罪し撤去を決めたことを伝えながらも、「反ユダヤ主義」の意図は全くなかったことを強調し、改めて民族、人種、宗教、ジェンダーとセクシャリティを問わずあらゆる人々を尊重するグループであると述べる。さらに《人民の正義》はスハルトの軍事独裁によって暴力と検閲が横行した時代への批判であり、反共の名の下に1965年に50万人以上の人々が虐殺された歴史を暴くものであると説明する。(注5)
ハレンバード・オストの展示会場にも1965年の虐殺を詳細に記す作品があった。
長文の英語の説明文を写真に撮ろうとしたところ、熱心に読んでいる観客がいたので「ちょっと撮らせてください」と声をかけたことがきっかけで何気ない会話が始まった。彼はオランダ人だという。
日本の太平洋戦争中のインドネシア侵略の話をすると、彼はいかにオランダが長くインドネシアを植民地支配し、戦後も手放そうとしなかったかを批判した。こんな対話が見る人の間で生まれることがタリン・パディの作品の力ではないだろうか。
マスメディアを通して湧き上がった「反ユダヤ主義」の話題に反して、会場の雰囲気はリラックスしており、冷戦下で起きたインドネシアでの悲劇に関心をもってじっくりと展示を見る観客が多かった。

(画像7)タリン・パディの会場風景
その他にも、ロマ民族の作品を展示する「Roma MoMA」を企画したハンガリーの「オフ・ビエンナーレ・ブタペスト(OFF-Biennale Budapest)」(画像8)、絵画を通してオーストラリアにおける先住民の土地の権利を表明するアボリジナルのアーティスト、リチャード・ベル(Richard Bell)(画像9)、難民の置かれた厳しい現実を表現するデンマークの「トランポリン・ハウス(Trampoline House)」(画像10)、ニュージーランド先住民のLGBTQ+の人々のドラァグ・ショーの映像やポートレイト作品を通してエンパワメントを行う「ファフスワグ(FAFSWAG)」(画像11)、蚊帳で作った原子炉の形をしたオブジェ《元気炉(Genki-Ro)》(2022)(画像12)と共に東日本大震災を思い返す展示を行った「シネマ・キャラバン&栗林隆(Cinema Caravan and Takashi Kuribayashi)」など、少数民族、性的マイノリティ、移民やさまざまな困難を抱えた人々に寄り添い、問題を可視化して社会変革を目指す精神が、ドクメンタ全体を貫いていた。ここではアートは贅沢品や余暇のためのものではなく「アクティビズム(行動主義)」そのものである。これまでの芸術祭で見たことのないその徹底した姿勢とパワーに接し、その熱は今も筆者の心を動かしている。
注1) Docmenta Fifteen Handbook, p.12
注2) 同 pp. 17-19
注3)  タリン・パディを始めとするインドネシアのコレクティブについては廣田緑による『協働と共生のネットワーク:インドネシア現代美術の民族誌』(grambooks、2022年)に詳しい
注4) 『ARTnews JAPAN』「ドクメンタ15が反ユダヤ問題で批判を受けた展示作品を覆い隠す。止まらない“表現の自由”をめぐる騒動」2022年6月24日
注5) 「ドクメンタ15 ホームページ」Statement By Taring Padi On Dismantling “People’s Justice”
https://globe.asahi.com/article/14810982

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総額4兆円規模のインドネシア新首都計画、発表から3年経過も資金調達は難航中。今後の展望は?

2023-01-15 | 先住民族関連
AMP1/15(日) 6:02配信
2019年8月、インドネシアのジョコ大統領は同国の首都をジャカルタからカリマンタン島(ボルネオ島)に移すことを発表。新首都をヌサンタラ(Nusantara)と命名した。ヌサンタラの建設と移転は段階的に進められ、2045年の完成を予定している。しかし、総額340億ドル(約4兆円)ともいわれる首都移転計画は、発表から3年経った今も資金調達の目処が立たず、難航の様子を示している。
ジャカルタからカリマンタン島へ、インドネシアの首都が移転予定
ヌサンタラは、ジャカルタから北東に約2,000km離れたカリマンタン島東部に位置する。カリマンタン島はインドネシアで最も島嶼面積が大きく、日本の約1.9倍。島北部の一部はマレーシアとブルネイの領土であり、石油、天然ガス、石炭、金などの天然資源を有する熱帯雨林の島である。
しかし、なぜ首都を移転させなければならないのか。そこにはジャカルタの深刻な2つの問題が横たわる。
移転理由はジャカルタの人口密集と地盤沈下
1つ目は、人口過密による交通渋滞や大気汚染などの都市問題だ。ジャカルタの人口は約1,056万人(2020年、外務省調べ)、近郊の都市圏を含むと3,000万人を超える。ジャカルタの交通渋滞は“世界最悪”ともいわれ、深刻な都市問題として長年悩まされ続けている。
インドネシアの首都移転案は今に始まったことではなく、古くは1957年にスカルノ大統領(当時)が、首都をカリマンタン島中部のパランカラヤに移すことを提案した。これは実現しなかったが、ユドヨノ前大統領も首都移転案を再び持ち出し、現政権に引き継がれた。
2つ目は深刻な地盤沈下だ。現在、ジャカルタの約40%が海抜ゼロメートル以下にあり、土地は年々沈下を続けている。BBCによると、1970年以降4メートルも沈下しており、このままいけばジャカルタは2050年には水没するといわれている。
沈下の原因は地下水を汲み上げ過ぎていることである。水道網が行き渡らないジャカルタでは、住民の半数以上が地下水を利用している。大勢の人たちが飲料水や生活用水のため地下水を汲み上げることによって土地は年々沈下。海水が宅地に流れ込む事態が多発し、年中深刻な水害が起きている。政府は防波堤を作るなど対策を取っているが、まったく追いついていない。
最先端のテクノロジーを備えたスマートシティ計画
インドネシア政府はヌサンタラをビジネス、産業、教育のハブシティにすると宣言。同地をテクノロジー、石油・ガス、再生可能エネルギー、農業・エコツーリズムなど産業の中心地にして、480万人以上の雇用を生み出したい考えだ。
また、最先端のテクノロジーを備えたスマートシティ計画もある。たとえば、再生可能エネルギーをメインエネルギー源とし、公共交通や輸送には電気自動運転車を採用。歩行者や自転車にも配慮した、環境にやさしいグリーンシティを目指している。
ヌサンタラの建設は段階的に進められている。新首都建設プロジェクト「IKN」の公式サイトによると、開発フェーズは三段階に分けられ、2022~24年の第一フェーズには大統領官邸や州議会、50万人分の公務員用住宅の建設や、首都機能の一部移転を開始。第二フェーズ(2025~35年)、第三フェーズ(2035~45年)を経て、最終的には2045年の完成を予定している。
2045年は、インドネシアがオランダから独立して100周年の記念すべき年でもある。インドネシアは2045年までに先進国の仲間入りをすることを目標に設定。ジョコ大統領は新首都の発表を行った際、ヌサンタラは「国のアイデンティティであり、インドネシアの発展を象徴する存在」と述べている。ヌサンタラはインドネシアの新しい未来を象徴するアイコンとしての期待も背負っているようだ。
ソフトバンクGが出資取りやめ、難航する資金調達
しかし、実際の計画は難航している。新都市の建設や移転にかかる費用340億ドルの目処が立っていない。政府はその8割を海外投資で賄おうとしているが、いまだ大口の出資提供者が見つかっていない状態だ。
2020年1月、ソフトバンクグループの孫正義氏がジョコ大統領と会談し、新首都計画に出資することを表明。出資額は明言されていないが3~4兆円規模とも囁かれており、孫氏は首都移転の審議会メンバーにも選定されていた。しかし2022年3月、ソフトバンクは出資の見送りを発表。その理由は明らかにされていない。
事情に詳しい関係者によると、資金提供について、一部の投資家からの同意は得ているものの、拘束力を持つ契約は海外のどの団体とも結べていないとThe Straits Timesは報じている。
世界的な景気後退の波も拍車をかけている。ジャカルタのPT Bank Central AsiaチーフエコノミストのDavid Sumual氏は「世界経済の減速によって、多くの国が景気後退に直面している。今後数年間は、裕福な国でも自国の経済政策を優先するだろう」と推測している。
ビジネス戦略アドバイザリー企業Global Counselのインドネシア担当アナリストDedi Dinarto氏は、「プロジェクトはまだ初期段階にあるため、外国人投資家は慎重になっている」と述べる。そして、初期の開発事業は道路や橋建設などのインフラに集中していることから、「投資家はインフラ投資からどう利益を得るかの確信が持てていない」と指摘する。
森林伐採や先住民の土地剥奪の懸念
新首都は熱帯雨林を切り開いて建設される。地元住民からは反対の声も上がっており、森林伐採や先住民族からの土地剥奪リスクも叫ばれている。過去にカリマンタン島で、政府が住民の同意なしに、彼らが所有する土地をプランテーションや鉱業会社に渡してしまったという悪しき事例も残っている。
地元の市民グループAMAN(Aliansi Masyarakat Adat Nusantara)のレポートでは、ヌサンタラの建設によって21の先住民コミュニティと2万人以上の先住民が住む場所を失うと警告している。
しかし、新首都建設は予定通り進められている。ヌサンタラはジョコ大統領肝入りのプロジェクトであり、並々ならぬ情熱を傾けているという。だが前出のDinarto氏は、2014年から大統領を務めているジョコ大統領の任期があと18カ月に迫っていることが、「途中で頓挫しないか」という投資の不安要素にもなっているという。
インドネシアの大統領の任期は最大二期10年と憲法で定められているため、ジョコ氏の再選はありえない。しかしロイターによると、憲法改正や選挙延期による任期延長の機運が、有力議員の間で高まっているという。ジョコ大統領は「(現行の)憲法に従う」としながらも、三期目を認める法改正がされた場合の明言を避けている。
世紀の首都移転劇はどう転ぶのか。今後の動きを見守っていきたい。
文:矢羽野晶子 / 編集:岡徳之(Livit)
https://news.yahoo.co.jp/articles/c24655b987332a524abdc6f9e411ab5662b03655

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最旬「ラグジュアリーな南極ツアー」人生を変える冒険クルーズの魅力をプロが解説

2023-01-15 | 先住民族関連
婦人画報1/14(土) 19:00配信
移動が憚られたこの数年間、接触を避けた形での旅が推奨されてきました。この流れを引き継ぎつつ、旅のスタイルは新次元に突入しつつあります。そのひとつの傾向として、「人生を変える」ような、密度の濃い体験を求めるプランが少しずつ増えています。宇宙への旅をはじめ、未知なるエリアを目指す旅ほど心躍るものはありません。そのひとつが南極/北極へのツアー。多くの運航会社のツアーのなかでも「最もラグジュアリー」とされる「ポナン」の案内人・伊知地さんに、その魅力を聞きました。
取材・文=中島礼子 『婦人画報』2023年1月号より
冒険はいまラグジュアリーな旅になった 談=伊知地亮さん(「ポナン」日本・韓国支社長)
いじちりょう●これまで南極・北極合わせ200回以上のクルーズに乗船。2018年に「ポナン」社の日本駐在マネジャーに就任。2019年1月、日本人初のエクスペディションリーダーとなる。
■20年間、極地を訪ね続けてこのクルーズに行き着いた
2002年に初めて南極を訪れ、2009年には北極へ。それ以来、現在まで毎年のように極地へ向かうという伊知地さん。なぜ、こうした旅を続けるのでしょうか? 
「地球の両端にある手つかずの大自然に触れ、野生動物に出合えるのが大きい。案内人なしでは決して観光が許されない厳しさにも惹かれます」
そもそも一般客向けの極地クルーズが盛んになった契機は、1990年代のソ連崩壊。「北極海での領海覇権を主張するため多くの耐氷船を造っていたソ連が崩壊したため、その船をチャーターして南極をクルーズする会社が増えました。とはいえ、私が初めて南極に行った観測船は、2段ベッドでバスはなくトイレとシャワーは共同、料理は毎晩ボルシチと、過酷な旅でした。その後、快適な船上生活ができるクルーズも徐々に登場してきました」
ポナン・クルーズの最新客船「ル コマンダン シャルコー」は、極地クルーズのために造られた砕氷船。乗員300名以下、約3万トンの中型船です。
「極地ツアーにはこのサイズが最良です。これより小さいと海が荒れたら揺れがひどく、大きいと南極上陸の人数制限に引っ掛かり、なかなか氷上活動ができない。フランス船籍なので当国の厳しい建築基準法が適用され、バストイレが扉付きで独立しています。全客室バルコニー付きで、船上生活も快適です。毎食、焼きたてのパンとワイン、おいしいフレンチを楽しめます」
一方で、燃料に重油を使わず、排水を100%クリーン処理するといった配慮が認められ、各国の環境に関する賞を多く受賞。サステナビリティとラグジュアリーが共存する冒険スタイルを、この船で体験できます。
〈写真〉ガイドとともに下船し、氷上のツアーへ。まさに極地探検の旅。
ル コマンダン シャルコーの料理は、世界的シェフ、アラン・デュカス氏の監修。シェフ、パン職人、パティシエが船内の食事を提供。
2021年デビュー!「ル コマンダン シャルコー」が拓く旅
北極と南極のみならず北極点、ウェッデル海、ピョートル1世島などこれまで到達が困難だった極地への旅が可能に。ポナンのサステナブルツーリズムは、先住民族との出会い、野生動物の観察、自然保護区への訪問、犬ぞりなど。123室のキャビンを備え245名のゲストが乗船可。
〈写真〉ナチュラリストガイドとボートに乗り込み、海上ツアーを堪能。ザトウクジラ、ジェンツーペンギン、ウェッデルアザラシなどとの出合いも楽しみ。
【南極へ】南極半島と知られざるサンドウィッチ諸島を巡る旅
ウシュアイア(アルゼンチン)発
モンテビデオ(ウルグアイ)着 17泊18日 
実施日/2023年3月12日
大人1名クルーズ代金/22,350ユーロ~
【北極へ】北極点への冒険旅行
ロングイェールビーン(スピッツベルゲン島)発着 15泊16日 
実施日/2023年7月27日、8月11日、8月26日 
大人1名クルーズ代金/33,700ユーロ~
〈写真〉「レストラン・シラ」内観。船内にはレストランがもう1つあります。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7a9f7825e7aae5ac16d75daa6d2b6de9e2605a52

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クマ尽くしの110点 本や資料展示 札幌・道立文学館 /北海道

2023-01-15 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2023/1/15 地方版 有料記事 388文字
 クマにまつわる本や資料を特集した「熊のいる風景」展が14日、札幌市中央区の中島公園にある道立文学館で始まった。主にヒグマを題材にした小説、ノンフィクション、写真集や絵本など110点を常設展示室アーカイブコーナーに展示。人間とクマとのかかわり方を考えさせられる。3月19日まで。
 全て同館の所蔵で、熊を知りたい▽アイヌ…
この記事は有料記事です。 残り229文字(全文388文字)
https://mainichi.jp/articles/20230115/ddl/k01/040/043000c

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