先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

<政官ウオッチ>政務官任命 多様性尊重に疑問符

2023-01-13 | アイヌ民族関連
会員限定記事
北海道新聞2023年1月12日 05:00
 「なぜ問題があると分かっていた人を総務政務官にしたのか」。昨年末に事実上更迭された杉田水脈前総務政務官を巡り、自民党議員や関係者の多くからこうした声を聞いた。杉田氏はアイヌ民族や性的少数者らについて、ブログなどで侮蔑的に表現していた。
 岸田文雄首相はこの疑問に対し、記者団に「総務政務官は行政の管理や統計等に関する行政を行う職務であり、これを果たす能力があるかどうかで人事を行った」と説明した。首をひねらざるを得ない。
・・・
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/786106

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アイヌ関連329点町文化財に

2023-01-13 | アイヌ民族関連
読売新聞2023/01/13 05:00
「カムイノミ」つながる遺物も

町文化財に指定された土器などの出土品(厚真町で)
 厚真町は、ダム建設で見つかったアイヌ文化関連の出土品329点を町文化財に指定した。11世紀~16世紀末頃の品で、現在のアイヌ民族の伝統儀式「カムイノミ」につながる遺物や、北方や本州との交易品も含まれる。
 厚真川河口から約32キロ上流の厚幌ダム周辺の3遺跡で2004~16年に行われた調査で見つかり、その後に専門家による学術評価が進められてきた。
 約1000年前の儀礼場跡とみられるたき火跡の周囲からは、擦文土器や朝鮮半島産の銅 椀
わん
の一部、きび団子などが出土した。すべて火にくべられており、焦げたり炭化したりしていた。現在のアイヌ民族が供物などを火の神にささげて祈るカムイノミの原型と考えられるという。
 墓からは、京都で製造された銅鏡、金メッキの飾り金具のついた鎌倉時代の腰刀、北方民族の鉄製の装飾品などが出土。アイヌ民族のタマサイ(首飾り)の材料とみられるロシア産のガラス玉などの交易品もある。文化財指定は昨年11月25日付。
◇北海道大の蓑島栄紀准教授(アイヌ史・北東アジア史)の話
 「今日のカムイノミにつながるような儀式が11世紀頃の擦文時代にすでに行われていたことが分かり、アイヌ民族の古代から中世にかけての空白の時代を埋める貴重な史料が含まれる。さらに、北方や本州との交流の痕跡が見られ、交易品を加工して独自の文化に取り入れていることも注目される」
https://www.yomiuri.co.jp/local/hokkaido/news/20230112-OYTNT50264/

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スポーツ×アイヌ文化のイベント 15日、白老 ウテカンパ

2023-01-13 | アイヌ民族関連
苫小牧民報2023/1/12配信
 白老町社台のNPO法人ウテカンパ(田村直美代表)は15日午前11時から、町中央公民館で巨大エア遊具のスポーツ体験「チャレフェス」とアイヌ文化などに触れる「シノッ・チャレ」を初めて開く。参加無料。  チャレフェスでは、直径4メートルの…
この続き:457文字
ここから先の閲覧は有料です。
https://www.tomamin.co.jp/article/news/area2/97194/

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変顔いっぱい! 『ゴールデンカムイ』アシㇼパさんのねんどろいどが再販決定

2023-01-13 | アイヌ民族関連
電撃オンライン2023年01月12日(木) 18:00
グッドスマイルカンパニーから、『ゴールデンカムイ』より『ねんどろいど アシㇼパ』の再販が決定しました。再販予定時期は2023年7月です。

ヒンナヒンナ
 TVアニメ『ゴールデンカムイ』より北の大地で杉元が出会った、アイヌの少女「アシㇼパ」がねんどろいどになって再登場です!
 表情パーツには食事中に目を輝かせる「感動顔」や、熱いものを食べているときの「ハフハフ顔」、カレーを目の前にした際のシュールな「オソマ…顔」のほか、オソマ入れなきゃいいけど…と杉元を見る「にやり顔」と、クールな雰囲気の「真剣顔」の豪華5種類をご用意しました。
 さらにオプションパーツには「お椀」「お箸」「カワウソの頭の丸ごと煮」パーツが付属しますので、さまざまなシチュエーションが再現可能です。表情豊かなアシㇼパさんを是非お手元でお楽しみください。
※ヒンナはアイヌ語で感謝を表す言葉です。
ねんどろいど アシㇼパ
作品名
ゴールデンカムイ
メーカー
グッドスマイルカンパニー 
カテゴリー
ねんどろいど 
価格
6,800円 (税込) 
発売時期
2023/7
仕様
プラスチック製 塗装済み可動フィギュア・ノンスケール・専用台座付属・全高:約100mm
原型制作
七兵衛(松田モデル)
制作協力
ねんどろん
再販
【販売:2018年9月】【再販:2023年7月】
https://dengekionline.com/articles/167633/

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新年に思う2023「北の屋台『ポンチセ』店主 豊川純子さん」

2023-01-13 | アイヌ民族関連
十勝毎日新聞2023/01/12 11:37
「ポンチセ」店主 豊川純子さん(46)
アイヌの歌や踊りも
 帯広市内の「北の屋台」に店を構えて6年目。「コロナ禍でお客さんが来られない時期もあったが、屋台のイベントも復活し、多くの人が戻ってきてくれた」と笑顔を見せる。
 帯広市出身。高校卒業後、オーストラリアへ語学留学。帰国後は会社員や自営業などでさまざまな職業を経験した。「屋台の温かい雰囲気」に引かれ、40歳のと...
●この記事は会員限定です。勝毎電子版に登録すると続きをお読みいただけます。
https://kachimai.jp/article/index.php?no=578568

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東胆振地域「日帰りバスツアー」の発売について

2023-01-13 | アイヌ民族関連
北海道公式観光サイト2023.01.12
令和4年度北海道観光振興機構「広域観光周遊促進事業」(地域連携事業)の一つ、「東胆振地域アフターコロナ誘客コンテンツ造成及び既存コンテンツ流通環境改善事業」(東胆振地域ブランド創造協議会:事務局苫小牧市)では、日帰りバスツアーの発売を開始しました。 
本事業では観光庁の補助金を活用し、「通過型観光地」となっている本地域の現状を改善するため、ウポポイの後に滞在を促す教育旅行型の新たなコンテンツの造成や既存のコンテンツを磨き上げることを目的に、これまで計4回のモニターツアーを実施し、参加者と事業者の意見交換やアンケート調査を行いました。
この度、これまでの取組を踏まえて、2月設定日の「日帰りバスツアー」2コースの発売を開始しましたので、お知らせします。
この機会に、東胆振地域の魅力をご堪能いただきたく、多数のご参加をお待ちしております。
① 「ウポポイ(民族共生象徴空間)見学と白老牛ランチ」
 ・出発日:令和5年2月11日(土)
 ・旅行代金(お一人様):大人 8,800 円 子供 7,800 円
 *ウポポイは 2時間半滞在!
 *国立アイヌ民族博物館見学と体験交流ホールの伝統芸能鑑賞をお楽しみください。
 *ブランド牛「白老牛」のご昼食付!
② 「宇宙ステーション『ミール』見学とグランドホテルニュー王子ランチバイキング」
 ・出発日:令和5年2月26日(日)
 ・旅行代金(お一人様):大人 7,500 円 子供 6,800 円
 *苫小牧市科学センターでは、学芸員がご説明いたします。
 *昼食は約40品のランチバイキング!
 *2019年オープンの道の駅でD51鉄道見学とお買い物をお楽しみください。
■「日帰りバスツアー」掲載ページ
 https://search.mwt.co.jp/mdom/?area=01&deptArea=01
【お問い合わせ先】
 名鉄観光サービス株式会社札幌支店
 電話 :011-241-4986 (9:30~17:00/土日祝休業)
 担当者:橋爪 建樹・中川 純一郎
詳細は下記ニュースリリース及びパンフレットをご覧ください。
関連資料
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ファイル>
ファイル
https://www.visit-hokkaido.jp/press/detail_116.html

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ペルーで抗議デモ激化、18人死亡

2023-01-13 | 先住民族関連
東亜日報January. 12, 2023 08:44,   

昨年12月7日のペドロ・カスティジョ前ペルー大統領の弾劾で触発された抗議デモが激しさを増している。デモ隊と警察の衝突で、9日(現地時間)に18人が死亡する最悪の流血事態が発生した。10日には警察官の焼死体が発見された。検察は集団虐殺などの容疑でディナ・ボルアルテ大統領を含む閣僚に対する捜査に着手した。
AFP通信などによると、9日、南部プーノ州のフリアカ空港付近では、空港に進入しようとするデモ隊約9千人とそれを阻止しようとする警察官が衝突し、10代1人を含め17人が死亡した。他の地域でも1人が死亡し、一日で死者が18人にのぼった。10日には、フリアカ付近で車の中で焼死した警察官が発見された。
有名観光地のチチカカ湖のほとりの町プーノには、先住民族アイマラ族が主に居住している。彼らは、初の農民出身大統領であるカスティジョ氏の核心支持層であり、弾劾に強く反発している。
デモ隊はボルアルテ氏の辞任、議会の解散、カスティジョ氏の釈放などを求めている。これに議会は、大統領選挙と総選挙を予定よりも2年繰り上げて2024年4月に実施する改憲案を可決したが、デモは収まっていない。デモが起こってから10日現在までに少なくとも46人が死亡した。
流血事態が激化すると、ベナビデス検事総長は10日、ボルアルテ氏、オタロラ首相、ロハス内相、チャベス国防相に対する予備捜査を命じた。彼らに集団虐殺、殺人などの容疑もかけた。
カスティジョ氏は21年7月に政権に就いた。新型コロナウイルスの感染拡大、慢性的な経済難で苦戦していた中、無理に議会解散を図り、汚職と無能を理由に議会で弾劾が決議された。
イ・チェワン記者 chaewani@donga.com
https://www.donga.com/jp/article/all/20230112/3888055/1

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Webサーバー「Apache」にアメリカ先住民から名称変更の要請

2023-01-13 | 先住民族関連
GIGAZINE(ギガジン)2023年1月12日 13時0分

オープンソースのWebサーバーソフトウェアとして知られる「Apache」を運営するApache Software Foundation(ASF)に、北アメリカ先住6部族の1つであるアパッチ族を念頭に「アメリカ先住民への敬意と独自の行動規範を守るため」として名称変更の要請が出されていることがわかりました。
Apache® Appropriation
https://blog.nativesintech.org/apache-appropriation/
Native Americans ask Apache foundation to change name • The Register
https://www.theregister.com/2023/01/11/native_american_apache_software_foundation/
「Apache」の名称変更を求める声明を発表したのは、アメリカ先住民に力を与えるオープンソーステクノロジー構築を目指しているというNPO「Natives in Tech」です。
この「Apache」という名称について、ASF設立メンバーのブライアン・ベーレンドルフ氏は「Apacheという名前にしたのは文化的流用などではなく、当時ローンチされたWebテクノロジーは『サイバー○○』や『スパイダー○○』といった名称ばかりで、もう少し興味深くてロマンティックな名称が欲しかったからです。ちょうどジェロニモとアパッチという部族の最期についてのドキュメンタリーを見たところで、彼らが西部、つまりアメリカ合衆国による侵略を受けて領土を手放した最後の部族だったという話で、私にとっては、我々がWebサーバープロジェクトで行っていることをロマンティックに表現しているように思えたのです」と語っています。
"Trillions and Trillions Served" documentary feature on The Apache Software Foundation - YouTube
Natives in Techは、この「ロマンティックな表現」が「無知であると同時に不快なもの」と指摘し、ASFに対して「選んだ言葉に深く注意」し、名称を変更するように求めています。
ニュースサイト・The Registerによると、ベーレンドルフ氏はコメントを出さなかったとのこと。一方、広報担当者は「我々は先住民の方々からの懸念に耳を傾けています。ボランティアで運営されているNPOとして、メンバーや理事会で対処のための代替方法を検討していますが、現時点で共有する情報はありません」と述べました。
なお、先住民にかかわる名称の変更の案件はスポーツ関連では複数発生しており、直近の有名な事例としては、映画「メジャーリーグ」の舞台にもなったクリーブランド・インディアンスが2022年のシーズンから「クリーブランド・ガーディアンズ」に名称を改めています。
Official Cleveland Guardians Website | MLB.com
https://www.mlb.com/guardians
https://news.livedoor.com/article/detail/23522156/

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ゾンビ感染を世界に広げたのは誰か?謎の“ゾンビパウダー”から功労者・アメリカの国民性までもを駆使して解説!

2023-01-13 | 先住民族関連
ムービーコレクション2023.01.12
【第1回】「あれ何なの?」ホラー映画に登場する単語やモノを解説~ゾンビ編~
【ホラー&オカルト映画のキーワード解説】本コラムでは、ホラー映画やオカルト的要素が含まれる作品、猟奇殺人モノなどで頻出する単語やガジェットを解説していく。
映画に登場する装置がどんな歴史を持っているかや、どのような使われ方をしていたのかを理解しておけば、より一層味わいが深まるというものだ。と断言したが、別に知らなくてもいい知識である。第1回は「ゾンビ」を簡単に解説していきたい。第1回とタイプしたが果たして2回目はあるのか…??
現在のゾンビは後世に作られたイメージ
今でこそ、のろのろ動く奴や高速で走ってくる奴、知能を持った奴から人を噛まないベジタリアンなど、ゾンビはかなり多様化している。だがこれは全て後世に作られたイメージである。
ゾンビとは、もともとアフリカで行われていた「ヴォドン」というアフリカの精霊信仰から生まれたと言われている。ヴォドンには「Nzambi (ンザンビ)」という「不思議な力を持つもの」を指す言葉が存在した。
1600年代よりはじまった奴隷貿易により、多くのアフリカの民がカリブ海地域に送られた。カリブ海地域では先住民族の数が少なかったため、プランテーションの労働力として黒人奴隷を移入させたのだが、そのなかにはもちろん、ヴォドン信仰を持つ者も存在しただろう。
そして彼等の信仰と現地のカトリックや様々な土着宗教と混合して、ブードゥー教が誕生することとなる。その成立過程で、「ンザンビ」も「ゾンビ」へ転じたといった説がある。また意味合いも「不思議な力を持つもの」から「人智を超えたもの、あるいは物の怪の類」として変化している。
つまり、最初期のゾンビはあくまで概念であって、墓場から蘇って人を食ったり、未知のウィルスによるパンデミックを起こしたりはしない。
死者蘇生の儀式とゾンビパウダー
では、現在のゾンビ映画に登場するような死者(最近は生者か死者か曖昧な奴もいるが)のイメージはどこから来ているかというと、これはヴードゥー教で行われた死者蘇生の儀式と、ゾンビパウダーに由来するのではと考えられる。
死者蘇生の儀式は、依頼を請けたヴードゥーの司祭が墓から死体を掘り起こすことから始まる。司祭が何度も死体の名前を呼び続けると、そのうち死体が起き上がるらしい。蘇生が完了したら、元死者の両手を縛って農園に売り飛ばして儀式は完了する。
元死者の魂はすでに現世にはなく、というか封印されてしまっているらしいので思考ができず、永遠に奴隷として働かされる。
しかし、残された家族サイドはたまったものではない。死者蘇生を防ぐべく、埋葬後に墓を見張ったり、蘇生されても動けないように死体を切り刻んだりと「むしろ蘇らせるよりアレなんじゃないですか」と言いたくなるほどの策を弄していたそうだ。
次にゾンビパウダーだが、こちらはオカルト好き、あるいは久保帯人先生がお好きな方には馴染みのある言葉だろう。テトロドトキシン(※)が含まれた薬を生きている人間の傷口から浸透させて仮死状態に陥らせると、前頭葉が破壊される。
※フグの猛毒
前頭葉は思考や感情のコントロール、コミュニケーションなどを司る部位なので、ここが損傷すると意思のない人間ができあがる。感情もないので文句も言わず、ただ命令に従う奴隷として、死者蘇生後の人と同じくプランテーションで使役されていたそうだ。
また、社会やコミュニティのルールを守った者に与えられる罰としての「ゾンビ」もあるのではないかと言われている。決まり事を破った者は村八分にされ、社会的な死をもってゾンビとなる。これは2023年の現在でも世界中で行われているので、ある意味で上記2手法よりも遥かにホラーかつリアルではないか。
話を戻して、死者蘇生やゾンビパウダーによるゾンビの生成は、映画に登場する(原初に近い)ゾンビに比較的近いといえるだろう。
ゾンビの感染を世界に広げたのは誰か
いくらハイチで死者蘇生の儀式が行われようと、ゾンビパウダーを傷口に塗りたくろうと、それだけではゾンビ映画は作られないし、これほどまでに世界共通のゾンビイメージを作り出すことはできない。では、誰がゾンビを世界に広げたのか。米国である。
米国は1915年にハイチを占領した後、映画や芝居などでゾンビを茶化してブードゥーのイメージダウンを画策した。印象操作に成功したかどうかはさておき、一連の作品群により、1920年代には米国内でちょっとしたゾンビブームが発生した。
占領した、あるいは勝利した相手の文化や風習を茶化して陳腐化させるのは、米国のいつもの手口である。ナチス・ドイツでもそうだしアメリカ先住民族でも見られる。日本だって『ダイ・ハード』でナカトミビルが爆破され……るのは少々違う気もするが、とにかく米国は、一度殺した相手が起き上がってくるのが怖いので、常に殺し続けないと不安で仕方ないといった病理を抱えている。いっぽう、時代によって「やっぱオレたち悪かったよな」と反省するターンもあるので、言わば大長編ドラえもんにおける剛田武のようなメンタルで駆動している。
この、死んだと思った相手が実は生きていて(あるいは、蘇ってきて)自身に襲いかかってくるというのは、映画などのエンタメ作品においては米国と非常に親和性が高い、というのも流行の一助になっているだろう。
現代におけるゾンビ映画はどのような経緯を辿っていたのか
米国のゾンビブームとそう遠くない1931年には、『フランケンシュタイン』が大ヒットした。そこで二匹目の泥鰌を狙うべく、ヴィクター・ハルペリン、エドワード・ハルペリンの両名により、元祖ゾンビ映画と呼ばれている『ホワイト・ゾンビ(恐怖城)』が公開されることとなる。
原作は米国の探検家、ウィリアム・シーブルックの『The Magic Island』だが、ウィリアムは著するにあたってハイチへ渡り、ヴードゥー教を調査・取材している。映画に登場するゾンビは死人が蘇ったものではなく、仮死状態にされている。これは原初のゾンビに近い造形だと言えるだろう。
では、現在のように人に噛みつき、噛み傷から感染するゾンビはいつから登場したのだろうか。簡単に流れを解説してしまうと、『プラン9・フロム・アウタースペース』や『地球最後の男』といった後世のゾンビ映画に影響を与える作品群を経て、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の登場により現在のゾンビ像が確立する。
ちなみに、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』ではゾンビとは呼ばれておらず、正確には次作から「ゾンビ」という言葉が登場する。だが、ゾンビの基本ルールが制定されたのは確かだろう。
いわゆる「ロメロゾンビ」から幾星霜、現在ではロメオも苦笑いする高速で走るゾンビや防御力の高いゾンビなども登場し、『ワールド・ウォー Z 』や『新感染 ファイナル・エクスプレス』といった、とにかく数で押し、面制圧してくるような作品も多々ある。
『ウォーム・ボディーズ』のような恋愛モノもあるし、『高慢と偏見とゾンビ』みたいな原作モノ(でいいのかそれ)だって存在する。『ショーン・オブ・ザ・デッド』、『ゾンビランド』などに代表されるエンタメ性の高い作品もある。
とにかく、今やゾンビは原義を離れて日本の中華料理屋、カリフォルニアの寿司屋のようにて独自の進化を遂げ、制作され続けるゾンビ映画はまるで九龍城砦のように堆く異形なキメラを形成している。良い悪いとかそういう問題ではない。ゾンビ映画の行き着く先がどのような表現になるのかは非常に楽しみなのだが、おそらく私が生きているうちには目撃できないので、墓に入ったら誰か蘇らせてください。(text:加藤広大/ライター)
https://www.moviecollection.jp/news/180121/

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人権の国際的リーダーシップのあらたなモデル 100カ国の人権状況をまとめたヒューマン・ライツ・ウォッチの『人権年鑑2023』

2023-01-13 | 先住民族関連
ヒューマン・ライツ・ウォッチ2023年 01月 12日 12:00AM

(ロンドン)― ヒューマン・ライツ・ウォッチは、活動対象としている100か国近くの2022年の人権状況をまとめた『人権年鑑2023』(ワールド・レポート)を本日発表した。代表代行のティラナ・ハッサンは「ウクライナから中国やアフガニスタンまで、2022年に続々と起きた人権危機によって夥しい人が苦しんだ。一方で、世界各国が、人権のための指導力を発揮する新たな機会も開かれた」と述べた。
暴力的な指導者たちが、国際的な人権システムを破壊するための動きを強めている。そんな中で国際人権システムを保護し強化するためには、世界各地で力関係が変化している今、現在の政治的な関係性を超えた、すべての政府のコミットメントが必要である。
「この1年間で、すべての政府が世界中の人権を守る責任を負うことが示された」と前出のハッサンは述べた。「力関係の変化を背景に、新たな連合や新たな指導者の声が現れ、各国政府が人権のために立ち上がる余地はむしろ広がったといえる。」
ロシアのプーチン大統領のウクライナに対する全面侵攻は、民間のインフラが標的にされて数千人の民間人が死亡し、世界の注目のもとで人権システムが全力で対応するきっかけになった。国連人権理事会は人権侵害の調査を始め、ロシア国内の人権状況を監視する専門家を任命した。国際刑事裁判所は、過去最多の加盟国からの付託を受けて捜査を開始した。EU、米国、英国、カナダその他の政府も、ロシア政府と関係を持つ個人や企業その他の組織に対して前例のない国際制裁を科した。
ウクライナに対してかつてない団結した支援を行っている各国政府は、ウクライナ東部での戦争が始まった2014年に、あるいはシリアでの人権侵害について2015年に、またはそれよりも前の過去10年間でのロシアでの人権状況の悪化について、プーチンの責任を追及していたら状況がどうなっていただろうかと問うべきである。
ウクライナで示されているような国際的な行動はエチオピアで必要とされている。同国の紛争ではすべての紛争当事者による2年にわたる残虐行為にもかかわらず、ウクライナに比べてほんのわずかな注目しか得ておらず、その結果、世界最悪レベルの人権危機が助長されている、とハッサンは述べた。
国連安保理は国際平和と安全を維持する責任を有するが、アフリカの加盟国やロシアと中国に阻止されて、エチオピア問題を正式な議題にできていない。アフリカ連合(AU)が主導した平和プロセスによって休戦合意に至ったばかりであるが、同合意は脆弱だ。休戦合意を持続させるためには、合意を支持したアフリカ連合、国連、米国などの国々は、暴力と不処罰の致死的な悪循環を断つために、紛争で重大な犯罪を犯した者の責任追及を求め、圧力をかけ続けるべきである。被害者にとって、法による裁きと補償を得ることは極めて重要であるのに、その見込みは今のところ不透明だ。
新疆ウイグル自治区では、100万人ものウイグルその他のテュルク系ムスリムの大量拘束、拷問、強制労働について、中国政府が責任を取らない状態が続いている。新疆での人権侵害が人道に対する罪に相当する可能性があると結論づけた国連人権高等弁務官事務所の報告書が発表されたが、国連人権理事会は、この報告書の討議を求める決議案を、2票差で採択できなかった。
国連人権理事会での否決は僅差であり、中国政府の責任追及に関する各国政府の支持は強まっているといえる。責任追及などないという中国政府の予測に抗する、地域を超えた協力や新たな連携体制の可能性を示唆するものだ。
オーストラリア、日本、カナダ、英国、EU、米国など、中国政府との関係性を再検討する各国政府は、インドとの貿易や安全保障関係を強化しようとしている。しかしナレンドラ・モディ首相率いるヒンドゥー・ナショナリズム政党であるインド人民党は、中国による国家人権弾圧を可能にした類の人権侵害の多くを真似てきた。人権を尊重するようモディ首相に圧力をかけずにインド政府との関係を深めることは、インドでますます危険にさらされる市民社会スペースを守るための貴重な影響力を、無駄にすることになる。
「強権的指導者らは、安定のためには暴力的戦術も必要だという錯覚に頼っている。しかし、人びとがこれまで世界各地で勇気をもって抗議の声をあげてきたとおり、弾圧は安定への近道ではない」と前出のハッサンは述べた。「たとえば中国政府の厳格な『ゼロコロナ』政策下のロックダウンに対して中国各地の都市で起きた抗議行動。人権に対する人びとの望みを、中国政府が抑えようとしても消せなかったことを示している。」
人権尊重を掲げる各国政府は、スーダンやミャンマーなどの国々で、暴力的な政府に抵抗している抗議運動や市民社会団体に政治的注目と力を貸す機会を有するとともに、その責任も負っている。スーダンでは、スーダンの軍事政権に関与している米国、国連、EU、地域内関係国の関係者は、市民の抗議の声及び被害者団体の法の正義に対する要求及び指揮官らの不処罰を止めることを優先するべきである。また東南アジア諸国連合(ASEAN)は、ミャンマー国軍の外貨収入を断つ国際的な取り組みと提携し、ミャンマー軍事政権への圧力を強めるべきである。
国際社会はまた、気候変動という存亡の危機を、人権面から捉えるべきである。パキスタンからナイジェリアやオーストラリアまで、世界の至る所で人間の活動が原因となった壊滅的な洪水や大規模な山火事、旱魃が休みなく繰り返されている。これらの災害は不作為の代償をはっきり示しており、もっとも弱い立場にいる人びとが最大の代償を払っている。化石燃料や伐採などの産業は、ビジネスモデル自体が基本的権利の保護と相容れない。政府関係者は、そうした産業を規制する法的・道徳的義務を負う。
「最前線にいるコミュニティや環境保護活動家を支援することは、環境を悪化させる企業や政府の活動に抵抗し、気候危機に対処するのに必須の重要な生態系を保護するために、最強の手段の一つである」とハッサンは述べた。「ブラジルでは、ルラ大統領がアマゾンの森林伐採をゼロに減らし、先住民の権利を守ると約束した。大統領が気候や人権の約束を守ることができるかどうか、ブラジルと世界にとって決定的に重要だ。」
世界各地で起きている人権危機の深刻さ、規模、そして頻度は、新たな枠組みと新たな行動モデルが緊急に必要であることを示す。現代の世界にとっての最大の課題や脅威の中心に人権を置くことは、起きている危機の根本的な原因を明らかにするとともに、対処方法を導く手助けとなる。すべての政府には人権を守り、そのために立ち上がる義務がある。
「各国政府が協力すると何が可能か、ウクライナについて世界が動いたことで示された」とハッサンは述べた。「すべての国の政府の課題は、世界中の人権の保護と促進のためには何が必要か、同様の連帯精神を発揮して考え直すことである。」
https://www.hrw.org/ja/news/2023/01/12/new-model-global-leadership-human-rights

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非暴力のほうが革命は成功する! エリカ・チェノウェスさん(ハーバード大教授)

2023-01-13 | 先住民族関連
じんぶん堂2023.01.12

3.5%が動けば社会は変わる! エリカ・チェノウェス著『市民的抵抗 非暴力が社会を変える』(白水社刊)は、世界のすべての革命から「非暴力」の優位を分析。 世界中で話題をさらったハーバード大教授による現代革命論。社会を変革するための新たな方法論の本邦初訳。
 ブラック・ライヴズ・マター、#MeToo、気候変動運動、LGBTQ+の人びとの権利運動……世界中で「革命的非暴力運動」が起きています。それらのムーヴメントの特色について、ハーバード大学教授のエリカ・チェノウェスさんは、みずから提唱した「3.5パーセント・ルール」をもとに、実証的に解説します。同氏による著書『市民的抵抗 非暴力が社会を変える』から一部紹介。[前篇・後篇のうちの前篇]
【著者動画:Erica Chenoweth - Civil Resistance and How and Why it Works | Snack Break with Aroop】
https://www.youtube.com/watch?v=dU0rP6mMeao
 多くの事例はニュースの見出しにはならないが、過去10年間──2010年から2020年の間──は記録に残る歴史上のいかなる10年間よりも多く、世界中で革命的非暴力蜂起が発生した。実際、21世紀の最初の20年間で起こった非暴力抵抗キャンペーンの数は、20世紀〔の100年間〕に起こった数よりも多かった。アルメニアからスーダンまで、ベラルーシからインドまで、チリから香港まで、タイからブルキナファソまで、大規模な運動が、世界中で何十もの国の政治状況を根本から変えてきた。
 アメリカもこの潮流の中にある。過去10年間、アメリカでは大衆動員が劇的に増加した。ウォール街を占拠せよ運動からユナイテッド・ウィー・ドリームまで、ブラック・ライヴズ・マターからスタンディング・ロックまで、ウィメンズ・マーチから家族は一緒運動まで、#MeToo から結果を守れ運動まで、ブレオナ・テイラーのための正義からジョイ・トゥー・ザ・ポールズまで、民衆の力は、過去10年間のアメリカ政治に前例のないほど影響を及ぼしてきた。
 この間──わたしの研究関心によるところもあるが、ほとんどは見過ごせない道徳的危機のため──わたしはよそよそしい市民的抵抗の懐疑者から非暴力運動の力を与えられた参加者に変化した。今日、自分自身の民主主義のため、そして世界中の人権擁護者と連帯しながら、より一層の緊迫感を持って抵抗の歴史や実践を研究している。とくに、最近の運動が抑え込まれるのをみて、世界中で抑圧された人びとが率いた歴史的キャンペーンや、アメリカにおいて現在進行形で正義を訴えるキャンペーンを率いる黒人、先住民やクィアといった人びとが得た教訓を集中的に研究するようになった。反人種主義運動、気候変動運動、LGBTQ+の人びとの権利運動、そしてアメリカの民主主義運動の参加者兼同盟者として、熟練した活動家や組織者から多くの教訓を学んできた。その結果、民衆の力によるキャンペーンが発展し、展開し、そして断固として変革をもたらす方法についての理解が大きく進んだ。こうした教訓は、ひらめきをもたらすこともあれば、注意を促すこともある。よって、本書も、重要性を訴えていると読めるところもあれば、警告していると読めるところもある。
 とくに、現れつつあるいくつかのパターンが、社会的、政治的、経済的な正義の獲得に力を注ぐ人びとの悩みの種になっている。第一に、権威主義の興隆が地球規模の波となって押し寄せている。インド、ポーランド、ハンガリー、トルコ、ブラジル、タイ、フィリピンやアメリカといった国々で、過去10年間にわたり、独裁政治への揺り戻しが起こっている。こうした国々、そしてその他多くの国々で、野心的な煽動政治家たちが、周縁化された人びとのための公民権保護を巻き戻したり、取り除いてしまったり、司法の独立を侵害したり、政敵を投獄すると脅したり、ジャーナリストを脅したり、圧迫したり、選挙や投票の過程で大胆に攻撃したり、あるいは国内の敵対相手を武装自警団が攻撃していることに目をつぶったりしてきた。まさにこの権威主義への地滑りが、世界中でこれだけ多くの大衆運動を目覚めさせ、民主主義と基本的権利を守るために人びとを立ち上がらせたのだ。
 デジタル権威主義の出現それ自体が、とくに悩みの種になっている。デジタル時代によって、社会的つながりに似たようなものがつくられたが、独裁政治家たちには、政敵と思われる人物たちを監視、コントロール、分裂させる力も与えてしまった。中国、イラン、ロシア、サウジアラビアは、デジタル・ツールを使って敵を黙らせたり、プロパガンダや偽情報を広めたり、敵の勢力の中での分裂や分断を引き起こしてきた。比較的小さな国であるトーゴやバーレーンでも同様に、政権はデジタル監視に依拠しながら市民社会の活動を制限している。
 大衆運動の最近のトレンドも悩みの種となっている部分がある。非暴力抵抗は、変化を生み出すための代表的な戦略としていまや世界中どこにでもあるものだが、データによると、過去数十年と比較して、政府は革命的非暴力運動をより頻繁に打ち負かしている。
 運動のデータが示すのは次のようなことである。運動の効果の明白な低下は、これらの運動が、デジタル時代に発展し、展開してきた方法の変化にも関連している可能性がある。以下のとおり、特筆すべき4つの重要な変化がある。
現代の運動の規模は、歴史上あった過去の運動と比較すると小さくなっている。
現代の運動は、他の非暴力行動の方法よりもデモに頼るようになっている。他の非暴力の方法とは、大衆による非協力、たとえば労働停止、退場、波状スト、ボイコット、ゼネストなどである。抵抗を象徴的に示すことは、必ずしも敵の力の源泉を弱めることにはつながらない。
現代の運動は「リーダー不在の抵抗」を目指すところがあり、調整と戦略の支えとなる責任あるリーダーシップ構造を構築してない。
現代の運動はますます規律の低い非暴力行動になりつつある。これが重要である理由は、周縁暴力が、運動の支持基盤や同盟を拡大したり、変革を起こす力を構築するよりはむしろ、支持者を遠ざけ、社会を分極化し、国家による厳しい抑圧を増加させてしまうためである。
 もっといえば、市民的抵抗がうまくいくのか、どうすればうまくいくのかについて、悲観的な迷信があり、市民的抵抗が持つさまざまな魅力や効果を損なっている可能性もある。迷信には以下のような考えが含まれている。
非暴力行動は弱い、受け身の行動である。
もっとも速く解放に至るのにもっとも頼りになるのは暴力だ。
非暴力抵抗は行き過ぎた不正義に対しては無理があり効果もない。
非暴力抵抗は純粋に社会的、政治的、経済的変化を生み出すことはできない。
人びとが非暴力抵抗を用いる──そしてほかの人にそれを勧める──のは、そうした人びとが権力に容易にアクセスできる場合であり、脇に追いやられたコミュニティはこうした抵抗の方法を用いることができない。
運動が勝利するのは、用いられる闘争の技術が何かにかかわらず、その目的が正しい場合である。
 このような非暴力に対する迷信や批判にもかかわらず、市民的抵抗というアイデアの時代が、再び訪れた。本書は、市民的抵抗を観察する者、同僚、学生、活動家、友人、ジャーナリストや一般の人びとが、わたしが研究する間に、市民的抵抗について尋ねてくれた問いに直接答えるものである。非暴力抵抗の経験的記録に関する迷信や誤った理解をさらに正していく一助となるよう、そして市民的抵抗の潜在的な力を明らかにするために、利用可能なもっとも説得力のある根拠を総動員しつつ、本書で説明するつもりだ。
(エリカ・チェノウェス『市民的抵抗 非暴力が社会を変える』所収「まえがき」より)
[後篇は「3.5パーセント・ルール」について]
エリカ・チェノウェス(Erica Chenoweth)
2007年、米国コロラド大学で国際関係学の博士号を取得。現在、ハーバード・ケネディ・スクール教授。政治的暴力やテロリズムを研究してきたが、非暴力で政治・社会を変えることを目指す市民的抵抗に注目し、マリア・ステファンとの共著『なぜ市民的抵抗はうまくいく』(未邦訳)を筆頭に、多くの学術論文と学術書を精力的に執筆している。
小林綾子(こばやし・あやこ)
一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。現在、上智大学総合グローバル学部総合グローバル学科特任助教。在スーダン日本大使館専門調査員、米ハーバード・ケネディ・スクール研究員などを経て現職。専門は、国際政治学、紛争・平和研究、国際機構論、グローバル・ガバナンス。主な業績に、「アフリカの内戦における人道アクセス問題と反乱軍」『国際政治』第一八六号、『国際関係学』(共著、有信堂高文社)、「国連平和活動とローカルな平和」『国連研究』第二二号他。
https://book.asahi.com/jinbun/article/14812757

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脱炭素はどこへ?「血まみれの石炭」に手を染める欧州

2023-01-13 | 先住民族関連
ウェッジ1/12(木) 6:01配信
 高騰している電気・都市ガス料金は2023年に下がるのだろうか。欧州では天然ガス価格がピーク時からは下落したが、エネルギー危機前との比較では高騰したままで、料金もまだ元には戻らない。
 日本の電気料金には、発電の30%以上を担う石炭の価格が大きな影響を与えるが、昨年史上最高値を更新した価格はほとんど下がっていない。
 脱ロシア産化石燃料を進める欧州諸国が世界中で石炭を買い漁っているためだ。「血まみれ」と呼ばれる石炭にまで手を出している。石炭価格が下落する可能性は薄く、日本の電気料金が今年下がる可能性も小さい。
欧州は脱炭素よりも石炭を手当
 欧州では暖冬により暖房と給湯を担う天然ガス消費量が抑制され、天然ガス価格が下落した。と言っても、欧州の昨年12月の月間平均の天然ガス価格は、エネルギー危機発生前の20年年末との比較では、6倍だ。価格は年末にさらに下落したが、今年初めの時点でも依然として3倍の水準にある。
 昨年8月末、ロシアがノルドストリーム1・パイプラインからの供給停止を脅かした時には、価格が20年末のレベルから十数倍にも高騰したので、それからすれば落ち着いたが、依然電気、都市ガス料金はロシア侵略前との比較では高値に張り付いている。
 暖冬のおかげで天然ガス消費量を節約することができ、今年の供給は安心かと言えば、そうでもない。21年欧州連合(EU)の天然ガス輸入量の4割以上を占めていたロシアのシェアは、22年約2割まで落ちた(図-1)。特に昨年後半に供給量は大きく落ち込み、シェアは10%を割り込んでいる(図-2)。
 このロシアの供給状況が続けば、春から夏にかけ行う冬季に備えた在庫の積み増しが難しくなり、液化天然ガス(LNG)の大きな供給増を期待できない今年の冬には天然ガスが不足する可能性がある。
 天然ガスはEUの一次エネルギー供給の23%を占め、電力供給の20%を占めている。天然ガスを節約するため多くの欧州諸国が取り組んだのは、休止していた石炭火力の再開と稼働中の設備の利用増だった。英国、ドイツ、フランスなど10カ国以上が石炭の消費を増やした。
 生活の危機、産業の危機となれば、脱炭素・脱石炭もどっかに行ってしまったのだが、欧州諸国は途上国には依然として脱石炭を促している。中には価格が高騰した化石燃料が買えずに停電した国もあるが、価格を上げたのは欧州だ。
化石燃料依存と高値は続く
 ロシアのウクライナ侵略はエネルギーの世界を大きく変えた。多くの国は1973年の第一次オイルショック以降進めてきたエネルギー安全保障政策の見直しを迫られた。50年前、主要国はエネルギーの大半を石油に依存していたが、突然の値上げと輸出制限の経験から脱石油を進め、天然ガス、石炭、原子力へ多様化を進めた。
 日本も例外ではなく、73年当時、一次エネルギーと発電源の8割近くを依存していた石油から、LNG、石炭、原子力に分散を進めた。東日本大震災後、原子力の発電に占める比率は低下したが、それでも今発電に占める石油火力の比率は10%以下。LNGと石炭火力が発電量の3分の2を占める。
 世界の多くの国も、天然ガスと石炭への多様化を図った。化石燃料の世界貿易に占める石油のシェアは低下し、石炭と天然ガスがシェアを大きく増やした(図-3)。しかし、その結果ロシアへの依存が深まった。50年前の産油国に代わり登場したのは、世界一の化石燃料輸出国ロシアだった。
 今、世界の国は「分散」から「自給率向上」へ安全保障政策の再構築を迫られている。自給率の切り札は、再生可能エネルギー(再エネ)と原子力だ。だが、時間が掛かる。
 再エネ導入には送電線の整備も必要になり、さらなる時間と費用が掛かる。原発の建て替え、新設も時間が必要だ。
 その上に、強権国家、中国への原材料の依存を低減させる必要があるのだから、時間はもっと必要になる。少なくとも数年、あるいはそれ以上の期間、化石燃料に依存せざるを得ない。待ち受けるのは、高エネルギー価格の時代だ。電気料金と都市ガス料金は当面高値のまま推移することになるだろう。 
誰が化石燃料価格を上げたのか
 石炭火力の利用増を図っているドイツの化石燃料による発電量の推移は、図-4の通りだ。石炭の利用増を進めている欧州の22年の石炭・褐炭消費量は、6億8500万トン。20年5億8500万トン、21年6億4900万トンから2年連続の増加だ。
 増加する数量を輸入する必要があるが、EUでは昨年8月10日からロシア産石炭の輸入は禁止になった。22年前半のロシアからEUへの輸入数量は、前年同期とほぼ同じだったが、後半の数量は大きく落ち込み(図-5)、21年5200万トンの輸入数量は、22年約2000万トン減少したと推測される。
 ロシアの落ち込みと増加する需要量を埋めたのは、コロンビア、米国、南アフリカ、豪州などからの石炭だったが、生産増があったわけではない。どうしてEU向けに供給できたかと言えば、インド、中国、パキスタンなどへの出荷が減少したからだ。価格が高騰した石炭を買えなくなったので停電した国も出てきた。
 化石燃料価格の大きな高騰(図-6)を引き起こした大きな原因の一つは、先進国政府、企業、機関投資家、金融機関が一丸となって進めた脱炭素、なかでも脱石炭だった。ロシア以外の供給国への需要が増えても、価格が高騰しても、増産が行われないのは、炭鉱と関連インフラに投融資が行われていないからだ。
 脱石炭を進めた先進国が高騰したエネルギーの購入を迫られるのは、自業自得に見える。先進国企業の中には安いエネルギーを求め、エネルギー大国米国へ移転する企業も出てくるだろう。
 エネルギー問題が産業の空洞化を招く。それも自業自得だ。しかし、先進国の脱石炭政策は、途上国を大きく傷つけている。
へとへとになった途上国
 高騰したエネルギー価格によりコロナ対策で傷ついた途上国の財政状況はさらに悪化している。電気料金の高騰は生活にも大きな影響を与える。加えて、高くなったLNG、石炭を購入できないため途上国で停電が発生している。
 脱炭素を進める先進国が途上国での化石燃料と関連インフラへの投資を行わないので、老朽化する石炭火力発電設備、輸送の鉄道網の補修の資金もない途上国ではさらに停電が広がる。
 石炭生産国南アフリカでは、老朽化した石炭火力の故障が続き、停電が頻発している。昨年10月には、5つの石炭火力発電所が同時に故障する事故さえあった。
 世界銀行から援助はあるが、石炭火力を再エネに転換する資金援助だ。南アフリカ政府とEU米英独仏政府との間で85億ドル(1.1兆円)の投融資計画が合意されているが、脱炭素のための資金だ。誰も今の石炭火力と停電問題を助ける気持ちはないようだ。
 先進国による脱炭素の影響を途上国が受けるのも、先進国が化石燃料を買い漁り途上国が停電に追い込まれるのも理不尽だ。脱炭素を進める欧州諸国、特に、石炭と天然ガスを買い漁り、さらに人権問題で非難していた国からも化石燃料を買うドイツに対し欧州各国は眉をひそめる。それにより、途上国はますます化石燃料を購入できなくなる。
「血まみれの石炭」を買う欧州
 昨年のサッカーワールドカップ開催国カタールは、欧州諸国から人権問題を非難されていた。スタジアム建設に従事した外国人労働者が劣悪な作業関係で多数亡くなったことと、賃金が支払われなかったケースがあったとされたことがその原因だった。
 ロシアの侵略開始直後、ドイツのハーベック経済・気候保護相はカタールに飛び、LNG出荷を要請した。カタールのエネルギー相は、「石油、天然ガスを掘る企業は悪魔のようだと非難していた国が、いまはもっと掘れだ」と皮肉たっぷりにインタビューに答えている。
 9月のドイツ・ショルツ首相のカタール訪問後、11月に26年開始の15カ年長期契約が発表された。世論調査を見る限りドイツ国民の多数はカタールからのLNG購入を問題なしとしている。
 欧州は石炭の購入でも同じようなことを行っている。コロンビアの炭鉱は先住民族を圧迫している上、環境問題を発生させていると、欧州諸国は非難している。「血まみれの石炭」との報道もあった。
 アイルランド最大のエネルギー企業ESBは、16年に今後コロンビア炭を購入しないと発表した。ロシアのウクライナ侵略後ESBはコロンビアから石炭購入を再開したと、コロンビアのエネルギー相が発言し、ESBは釈明に追われた。
 ドイツもコロンビア炭購入量の削減を図り、16年の購入量789万トンから21年は177万トンまで落ち込んでいた。ドイツ・ショルツ首相は、EUが8月10日からのロシア炭輸入禁止を発表する2日前の4月6日、当時のイバン・ドゥケ・コロンビア大統領に「個人的に」電話し、コロンビア炭の出荷増を要請したと報道された。
 この電話は功を奏し、22年ドイツのコロンビア炭の購入量は前年同期比約4倍になった(図-7)。10月までの輸入量は452万トン。もっとも、購入価格も21年1月の60ユーロから、22年10月には340ユーロに上昇している。
 人権侵害があろうとも環境汚染問題があろうともものともしない、なりふり構わない欧州諸国の姿は、エネルギーは国の生命線であり最重要課題であることを示しているようだが、二枚舌と非難されても仕方がない。
米国も人権よりガソリン
 エネルギー調達と人権問題を引き替えたのは米国も同じだ。米国は19年にベネズエラに対する経済制裁を発動し、原油の輸入を制限した。しかし、ベネズエラからの原油、重質油がないと米国メキシコ湾岸の製油所は操業ができない。ベネズエラから重質油が輸入できなくなった製油所は、ロシアからの重質油の輸入に切り替えた。
 米国メキシコ湾岸の精油所は、ベネズエラ、サウジアラビアなどからの重質油を利用する設計になっている。国内のシェールオイルは軽質油なので使用すると製油所の効率が大きく落ち込んでしまう。シェールオイルを輸出に回し、重質油を輸入しガソリンなどを精製しているのだ。
 ロシアのウクライナ侵略後の昨年3月に、米国はロシア産化石燃料の禁輸を決めたが、その直後からベネズエラに石油権益を持つ石油メジャー・シェブロンを使い、製油所に必要なベネズエラ産原油の輸入を再開するとの観測が流れた。
 昨年11月下旬、米国はベネズエラに対する経済制裁を緩和し、シェブロンの原油輸入を認めると発表した。南米の政治状況の変化が、制裁緩和の理由とも報道されているが、本当は必要な重質油を輸入するためだろう。米国も、やはり人権問題よりガソリンが重要なのだ。
欧州の轍を踏んではいけない

WEDGE Online(ウェッジ・オンライン)
 日本も欧州諸国に歩調を合わせ、30年温室効果ガス46%削減、50年脱炭素に向け突き進んでいる。機関投資家、金融機関も欧州を見習い脱炭素・脱石炭に一直線だ。
 途上国を苦しめるエネルギー不足、価格上昇の状況を作り出した最大の戦犯は、世界の化石燃料の需要と供給リスクを考えずに、脱炭素、脱石炭を進めた先進国政府、機関投資家、金融機関ではないか。
 EUとの比較では石炭火力への依存度が高く、発電の7割以上を火力に依存している日本が同じように脱炭素進め、エネルギー価格を引き上げる炭素価格まで欧州に倣って導入することを検討している。
 立ち止まり、欧州と途上国の状況を良く見る時期だ。なにが、ここまで石炭価格を上昇させたのか。炭鉱経営から撤退したエネルギー企業、商社に加え、脱炭素の旗振りをしている金融機関、機関投資家もエネルギー価格上昇、途上国での停電を引き起こした責任は誰にあるのか考えるべき時だ。
 化石燃料依存度が高い日本は、エネルギー価格の上昇を防ぐために十分な供給を得る状況をいつも作り出すべきだ。身勝手な欧州の脱炭素政策から学ぶべきことは多い。
編集部からのお知らせ:本連載でも鋭く日本のエネルギー政策に切り込んでいる山本隆三氏が著書で、ロシアのウクライナ侵攻に関わるエネルギー問題など、わかりやすく解説しています。詳細はこちら。 『Wedge』2021年11月号で「脱炭素って安易に語るな」を特集しております。
 地球温暖化に異常気象……。気候変動対策が必要なことは論を俟たない。だが、「脱炭素」という誰からも異論の出にくい美しい理念に振り回され、実現に向けた課題やリスクから目を背けてはいないか。世界が急速に「脱炭素」に舵を切る今、資源小国・日本が持つべき視点ととるべき道を提言する。
 特集はWedge Online Premiumにてご購入することができます。
山本隆三
https://news.yahoo.co.jp/articles/9a1663196066d4455bc8a9c15846ad14e803d4c3?page=1

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