田口谷優子(たぐちだにゆうこ) 会員限定記事
北海道新聞2025年1月17日 4:00
てんテン 木のうろにかくしていたおやつがなくなってる~。
えぇぞさん 変じゃな。ひょっとしてようかいの仕業かもしれんぞ。
てんテン ようかいってなあに?
えぇぞさん 不思議な力をもつ存在じゃ。雪女や天狗、河童とか聞いたことはないかな。
てんテン 聞いたことある。もしかして雪女が食べちゃったのかな? それとも、ほかにもようかいがいるの?
えぇぞさん ええと…。北海道のようかいや不思議な話に関する本を出している小樽市在住の作家、朝里樹さん(34)に聞いてみよう。
てんテン 北海道にもようかいはいるの?
朝里さん 言い伝えや記録がたくさん残っているよ。「北海道こわいこわい物語」(合田一道著)には、1892年(明治25年)に滝川市の空知川のほとりに雪女が出たと書かれている。天狗は、渡島管内福島町に飛んできて山で休んでいたと伝わっている。河童は新冠川や石狩川などにもいたと言われているんだ。
えぇぞさん ひょえ~。知らなかったぞ。
朝里さん 北海道ならではのスケールが大きいようかいもいる。アイヌ民族に伝わる怪鳥、フリー(地域で呼び名は異なる)は空を飛ぶだけで何日も太陽の光をさえぎったんだって。
てんテン え~、びっくり。
ピッチ ピチィ!
朝里さん フリーはある時、ラートシカムイという巨大なタコと川で争った。フリーが尾羽(イシ)を水中で左右に動かした(カリ)ことから、そこを石狩と呼んだという説もあるんだ。同じくアイヌ民族に伝わるクジラの怪物ショキナは「口を開けば上あごが天に届き、下あごは海底に届く」ほどだったとされる。然別湖や支笏湖、洞爺湖、摩周湖には大アメマスがいて、江戸時代の探検家松浦武四郎の「後方羊蹄日誌」などにも記されているんだ。
てんテン おもしろいね。もっとおしえテン。
朝里さん 北海道には、アイヌ民族が語りついだようかいと、本州から移り住んだ人が伝えたようかいがいる。アイヌ民族に伝わるようかいは、コロポックル(小さな人の姿をして、フキの下に暮らす)やヌイコロベ(有珠山を噴火させた悪魔)、人に化ける古熊などがある。
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