東京新聞 2024年11月25日 06時00分 会員限定記事
撮る。そのことに真摯(しんし)に謙虚に徹底的に向き合い続けてきた写真家だ。宇井眞紀子さん(64)=東京都東村山市=のことだ。アイヌ民族を被写体にシャッターを切り続けてきた。アイヌ民族との縁をつなぎながら撮影を続けるプロジェクトは今年で15年。レンズ越しのその先にある世界とは。(木原育子)
◆「カメラを向けることは簡単ではない」
「かつてはアイヌ民族が標本的に撮影されたことがあった。今も興味関心の的として撮られることに抵抗を持つアイヌ民族は多い」。宇井さんはそう語る。
アイヌ民族のそれぞれの表情を捉えた作品について説明する宇井さん=東京・丸の内の日本外国特派員協会で
初めて会ったその日にレンズを向けることはせず、関係性の中でシャッターを切る宇井さんの写真は、まるでその場にいるような臨場感。「私はアイヌ民族の文化や言語を奪った側の和人。カメラを向けることは簡単ではない」と話す。
宇井さんがアイヌ民族の撮影を始めたのは1992年。サケ捕獲のための舟下ろし儀式などアイヌ文化が伝承される重要な地、北海道平取町の二風谷地区にダムの建設計画が浮上していたことがきっかけだ。
◆「アイヌ民族の世界観と精神性」に惹きつけられ
北海道に月に1度...
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