「9」のつく日は空倶楽部の日。
空倶楽部、6月のお題は「カーブミラーと空」
難題で毎回悩むのだが、
今回は、越前海岸をドライブ中に見つけたカーブミラーをそのまんま。
Sony α99 Vario-Sonnar 24-70㎜/f2.8 (f/2.8,1/1000sec,ISO500)
すこし陽がかげり始めた空と、その色を穏やかに映す海。
シンプルな背景だったせいか、
ふだんなら見落としてしまいそうなカーブミラーが
ひときわ存在を主張しているように見えた。
そして、折しも駆け抜けるバイクに向かって
「ご安全に!」と、語りかけているようにも思えたのだった。
さて、この疾走するバイク。意識して撮ったのではない。
カーブミラーに集中しているときに、突然、視界の中に入りこんできたのだが、
その走り去る姿を目で追いながら、ふと、俵万智さんのこんな短歌を思い出していた。
この曲と決めて海岸沿いの道とばす君なり「ホテルカリフォルニア」
俵万智さんが助手席で眺めた景色はどうだったのだろう。
そんなことを思いながら、短歌の情景にこの風景が重なったのだが、
それは、ずっと昔、記憶の中にある、なつかしい情景にもつながっていたのだ。
社会に出たての頃のこと。
休日となると、姉のお下がりのカローラ・ハードトップでよくドライブに出かけた。
目的などなく、免許取り立て、ただ車を走らせることが楽しかった。
そして、週末を待ちわびながら、「今度はあそこまで走ってみよう」と、その風景を思い浮かべつつ、
聴きたい曲をカセットテープに編集したものだった。
もともとアメリカのロック音楽が好きで、
とりわけ当時は、ウェスト・コーストの土臭くおおらかな楽曲を好んで聴いていた。
CSN&Yやジャクソン・ブラウン、そしてイーグルスなどからの選曲がほとんどだったが、
海辺の道、しかも陽がかげり始めたときには、「これだ!」と
決めていた曲の一つが「ホテル・カリフォルニア」だった。
Eagles -- Hotel California Live
カントリー色の強いバンドとしてスタートした彼らが
次第にロック色を強め、揺るぎない人気と商業的成功を結実させたのが
「ホテル・カリフォルニア」が収録された同名のアルバムだった。
この映像は1977年のライブの模様だが、
曲作りのうまさとドン・ヘンリーの渋いボーカル。
メンバーそれぞれの個性が醸しだすハーモニー、
さらにジョー・ウオルシュとドン・フェルダーのスリリングなギターのかけ合い...など、
余すことなくイーグルスの魅力を伝えている。
ホテル・カリフォルニア。
40年以上経った今でも、自分にとってのエヴァー・グリーンである。
ホテル・カリフォルニア
暗く荒涼としたハイウェイを行く男
頭は重く、もうろうとする意識の中で、
一夜の宿が欲しかった。
すると、遠い暗がりの中にちらつく灯りが見える。
ドアの前には「彼女」が立ち、
そして、来客を告げるベルを鳴らした。
男は思った。ここは天国だろうか、それとも地獄だろうか、と。
彼女はキャンドルをかざして案内してくれたが、
その時、回廊からあの「声」が聞こえてきたのだった。
「ようこそホテルカリフォルニアへ」
「ここはとてもすばらしいところ、いつでもたくさんの部屋が用意されている」
蒸せかえるようなホテルの中庭。
彼女のまわりには「友達」と呼ばれるたくさんの男たちがいて、
そして彼らは踊り狂う。
あるものは何かを思い出そうとするかのように、
そして、あるものは何かを忘れさろうと。
「酒を持ってきてくれ」 男はボーイ長に頼んだ。
しかし、彼の答えは「ここでは1969年以来、酒は出していません」と素っ気ない。
すると遠くから、またあの声が聞こえてくるのだった。
「ようこそ、ホテル・カリフォルニアへ。ここはなんてすばらしい場所!」
「驚くことにアリバイまで作ってくれる。」
男は次第にこのホテルの狂気に気づき始める。
そして、彼女は告げる。
「ここは自らの分身によって捕らわれた世界」なのだと。
男は逃げ出そうするが、
すぐに夜警が駆けつけて、捕らえられ、そして男に言い放つ。
「落ちつけ! 我々は連れ戻すためにいる。
望むならいつでもチェックアウトするがいい。
しかし、決してここを立ち去ることはできない。」
それが、男が最後に覚えていることだった。