「9」のつく日は空倶楽部の日。
新橋駅を後にした車両は、しばらく東京湾岸の埠頭に沿って走り、
やがてレインボーブリッジを経由してお台場へ渡る。
さらに有明や東京ビッグサイト、新市場など臨海副都心を巡り、終点の豊洲へと至る。
その間14.7キロメートル、乗車時間にして約30分。
ご存知、新交通システム「ゆりかもめ」だ。
海鳥にちなんだ愛称から察しがつくように
ほとんどの経路が海のそばを通っているのだが、
中でも、海にもっとも近い駅のひとつが「青海(あおみ)」だ。
駅の改札を出るとすぐ左手に
大規模レジャー施設パレットタウンの
大きな観覧車が見えてくる。
青海駅で下車する人のほとんどはパレットタウンが目的なので
ふつうはこの光景に目を奪われて、すぐにその方向へ歩き出してしまう。
けれども、もし青海へ出かけることがあるなら、
改札を出たところで一歩立ち止まり、
右に目を移してみることをおすすめする。
改札から続く駅コンコースのその先は外に向かって大きく開かれ
明るく解放された景色が目に飛び込んでくる。
さらに近づいてみると、
二つの埠頭の狭間に沿って沖合へと続く四角い海と
さらにその沖合から立ち上がる大きな空が
まるでパノラマのように出迎えてくれる。
その日も、海と空に吸い寄せられるように近づいたのだが、
思わず、「あっ!」と声を上げそうになった。
ふだんなら見過ごしてしまうような緑地一面が
咲きこぼれるばかりの紫陽花に覆われていて、
その光景に圧倒されたからだ。
Sony α7R3 FE2.8 16-35 GM (29㎜ ,f/4.0,1/640sec,ISO100)
いったい何株の紫陽花が咲いているのだろう!
そう思わずにはいられないほど壮観だったわけだが、
さらに見入っていると、紫陽花花壇のあちこちが時折大きく波打って揺れている。
ふとその光景が、たくさんの紫陽花たちが潮風を満面に受けながらざわざわと声を立て、
パノラマの景色を楽しんでいるようにも思えてきたのだった。
東京は梅雨らしい曇り空。
せめて音楽くらいはからりと夏らしく。
Bob Marley Jammin