シャガールと言えば、恋人たちが空中に浮かぶ絵だ。女の手には花束。男は身をねじり、くちづけを迫る。まるで若い子たちの心模様そのまま。キスすれば、心は舞い上がる。それでいて身もだえするほど切ない。正直な絵。手元の画集は「シャガール 幻想の交響詩」と表題を付けている。
その画集を買って初めてシャガールの「戦争」を知った。その油彩画は1964年から66年にかけて描いた大作。横2㍍31㌢。縦は1㍍63㌢だから、華奢な女性の背丈を超す。
取り巻く赤黒い炎。逃げ惑う人たち。荷車は満員。左下に泣く女。それを背後から支えようとする男。右上に十字架に張り付けられたキリスト。その足に、すがる人。
画集巻末の図版解説によれば、中央に描いた白い巨大なロバは平和のイメージ。戦禍から逃れる人々に「救済の王国」を提供しようとしているという。
シャガールは1887年、帝政ロシア生まれのユダヤ人。革命後のソ連時代を経て、フランス国籍を取得。第2次大戦中に、米国に亡命するなど、自身も戦禍に追われた人だった。
◇
「戦争」は焦げ茶色と赤黒い色調。自分の部屋に飾りたいとは思えない絵だ。大き過ぎるし。それにくらべて今、鹿児島市の長島美術館で開催中の版画展「ダフニスとクロエ」は色彩の魔術師シャガールらしい。捨て子の少年少女の愛を描いたカラーリトグラフ42点。例によって空を飛ぶ人。リンゴを少女に恥じらいつつ渡す男の子。淡く柔らかなタッチだ。
詩人、谷川俊太郎は、こう表現した。
「シャガールを見つめていると、あのひととの日々がよみがえる」(詩集「シャガールと木の葉」から)
版画展は、来月28日まで。行くなら独りではなく、大切な人と、ぜひ。
毎日新聞鹿児島支局長・馬原浩
◇ ◆
補注。シャガールの絵は、検索サイトで「シャガール」「作品」などと入れて検索すると、いくつか見ることが可能です。ただし、作品「戦争」は、筆者・馬原は、探し出すことが出来ませんでした。根気が続かず……。絵は、展覧会で見るべきものですね。絵の大きさが分かります。画集で眺めるもの良いですが、大きさを思い描くのに苦労します。
その画集を買って初めてシャガールの「戦争」を知った。その油彩画は1964年から66年にかけて描いた大作。横2㍍31㌢。縦は1㍍63㌢だから、華奢な女性の背丈を超す。
取り巻く赤黒い炎。逃げ惑う人たち。荷車は満員。左下に泣く女。それを背後から支えようとする男。右上に十字架に張り付けられたキリスト。その足に、すがる人。
画集巻末の図版解説によれば、中央に描いた白い巨大なロバは平和のイメージ。戦禍から逃れる人々に「救済の王国」を提供しようとしているという。
シャガールは1887年、帝政ロシア生まれのユダヤ人。革命後のソ連時代を経て、フランス国籍を取得。第2次大戦中に、米国に亡命するなど、自身も戦禍に追われた人だった。
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「戦争」は焦げ茶色と赤黒い色調。自分の部屋に飾りたいとは思えない絵だ。大き過ぎるし。それにくらべて今、鹿児島市の長島美術館で開催中の版画展「ダフニスとクロエ」は色彩の魔術師シャガールらしい。捨て子の少年少女の愛を描いたカラーリトグラフ42点。例によって空を飛ぶ人。リンゴを少女に恥じらいつつ渡す男の子。淡く柔らかなタッチだ。
詩人、谷川俊太郎は、こう表現した。
「シャガールを見つめていると、あのひととの日々がよみがえる」(詩集「シャガールと木の葉」から)
版画展は、来月28日まで。行くなら独りではなく、大切な人と、ぜひ。
毎日新聞鹿児島支局長・馬原浩
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補注。シャガールの絵は、検索サイトで「シャガール」「作品」などと入れて検索すると、いくつか見ることが可能です。ただし、作品「戦争」は、筆者・馬原は、探し出すことが出来ませんでした。根気が続かず……。絵は、展覧会で見るべきものですね。絵の大きさが分かります。画集で眺めるもの良いですが、大きさを思い描くのに苦労します。