はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

うりふたつ

2010-10-24 19:40:48 | アカショウビンのつぶやき
 義母の13回忌法要のため、久しぶりに夫の兄、姉、弟、妹たちが勢揃いした。
男4人女4人の8人兄弟の中で、一番若いのが63歳で亡くなった夫。
兄弟のなかで一番元気だった夫の姿がないのが本当に残念だった。

 87歳の兄を筆頭に末っ子の妹も古希間近か…。それぞれ身体機能も下り坂となり、甥っ子姪っ子たちに期待が集中する。

 それぞれ埼玉、東京、千葉、シンガポールと離れ住む弟や妹、全員集合は次第に難しくなり、これが最後かもしれないねぇ、としんみりした雰囲気になる…。

 みんなの笑顔を残しておこうとカメラを向け、ファインダーで見る妹の姿にビックリした。94歳で天寿を全うした義母に驚くほど似ている。
親子だから驚くこともないのだが、普段は気がつかない表情や仕草までそっくりなのだ。 
 父親似ではないと思っていた弟まで還暦すぎると義父に似てきたなあ…。

 両親を愛し、最期までよく世話をした夫は、若いころから父親似。
「兄貴は今も喧嘩しながら、お母ちゃんの世話してるんだろうなぁ」とつぶやく弟。

 楽しい宴は瞬く間に過ぎてしまった。    by アカショウビン

2010-10-24 19:34:48 | はがき随筆
 碁敵の玄関を開けたらビックリ。靴の片方は沖縄。もう片方は北海道といった案配。中には裏返しの靴もある。孫たちが来ていると聞いたが、いやはやすさまじいエネルギーである。
 一局打って碁敵の肩越しに目をやる。別棟に住む年長さんの園児が、靴を整頓し始めた。台風一過のような玄関が、あっ言う間に絶景と化した。
 荒れた玄関を平気でまたぎ、碁を打っている私は顔が真っ赤になった。罪滅ぼしにその児に千円札を握らせた。「紙のお金をもらったの初めて。うれしいなぁ」八重歯がのぞく、彼の笑顔がまぶしい。
  出水市 道田道範 2010/10/24 毎日新聞鹿児島版掲載

しらがつぶり

2010-10-24 19:27:49 | はがき随筆
 清水の舞台から飛び降りる覚悟? で白髪染めをやめた。
 喜寿も過ぎ、いつやめようかと迷っていたが、美容師さんのひと言で吹っ切れた。
 「きっとお似合いですよ」
 その言葉通りになったのかは疑問だが、ある人に「エリザベス女王だね」と言われた時は、お世辞と分かっていても悪い気はしなかった。
 久しぶりに会う友人の反応を見るのも面白い。一瞬ハッとした表情で「似合うよ」「もう染めないの…」などさまざま。
 素敵な白髪頭(しらがつぶり)をイメージしているのだが、油断すると「怖い山姥(ヤマンバ)」になっちゃうかも……。
  鹿屋市 西尾フミ子 2010/10/23 毎日新聞鹿児島版掲載

アケビ

2010-10-24 19:13:45 | はがき随筆



 先日空港近くのゴルフ場に、気の合う仲間と出かけた。あの夏の暑さは、どこへやら風も心地よく、すっかり秋の気配。あちこちにカキやクリも色づいていた。天下太平、よかよか。すると近くの林の中から、カラスが1羽アケビをくわえて着地。色づいてはいるが、開いていないアケビをどう食おうかとついばんでいる。しめた。私はゴルフほったらかしで、こっそり近づきおどかした。不意をつかれた彼は、あわてて飛び去る。奇襲作戦は大成功。食べ頃のアケビをまんまと横取り。カラスの上前をはね、悪気はしたが、久しぶりに山の幸を味わった。
  指宿市 有村好一 2010/10/22 毎日新聞鹿児島版掲載

お前に恋?!

2010-10-24 19:04:39 | はがき随筆
 目のレーザー手術をすることになった。説明では費用は意外と安くホッとする。帰宅後、説明書を見直す。なんと70歳代の1割負担での計算ではないか!
 「ほれ、見てごらん。ひげはそり残しがあり、背中は曲がってるから、実際の年齢以上に見られるのよ」と妻に一喝。
 改めて鏡に見入る。妻の言う通りだ。その夜、テレビを見ながら「こいつとオレ、どっちが若い?」。すべて軍配は向こう様だ。別に若く見られる必要はないが、せめて年相応で見られたい。しゃんとし、少々おシャレに気を使うようになるには「恋」をすることなんだがなぁ。
  肝付町 吉井三男 2010/10/21 毎日新聞鹿児島版掲載

息子の進学

2010-10-24 18:57:30 | はがき随筆
 千葉県柏市に住む息子から長年勤務していた会計事務所を9月いっぱいで退職し、京都の宗門大学R大の大学院に入学することに決めたとの報告である。それも数年前から密かに計画していたと聞いて驚いた。
 経済学部を出た彼は、寺のあとを継ぐために、私の元気な時に仏教学を勉強しておきたいとのことである。あと継ぎのことを息子に言うのを躊躇していたが、本人が考えていてくれたのかと気付かされ感涙した。
 入学生を代表して宣誓を指名されたとか。親に代わって姉と妹が式にも参加し、夜は3兄弟で祝宴を挙げてもらった。
  志布志市 一木法明 2010/10/20 毎日新聞鹿児島版掲載