はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

フラフープ

2010-11-10 15:01:48 | はがき随筆
 隣の庭で、小学3年生の孫娘がフラフープで遊んでいる。
 フープを首から腰へと回し、大きく回転させる技に「上手だね」と褒めたら「やってみて」と誘う。「ジイは昔、3分間は回せたよ」などと自慢して腰を振るが、フープは螺旋状にむなしく降りていく。「やっぱり年だ」と笑う孫に「60年していないからだよ。練習してうまくなってみせるから……」と負け惜しみを言う私。
 「お手本見せるね」。孫娘は黄色いフープを回しながら「天国のパパは見てるかなあ」とつぶやく。ジーンときた私は秋風が吹く青空を仰いだ。
  出水市 清田文雄 2010/11/9 毎日新聞鹿児島版掲載

バトンタッチ

2010-11-10 14:47:03 | 女の気持ち/男の気持ち
 定年ばんざーい! 仕事仕事の毎日から開放された私はカリスマ主婦を目指すと宣言した。お正月、節分、雛祭り、七夕、夏祭り、お盆など、年中行事にこだわりたい。家族や友人と思いっきり行事を楽しみたいのだ。
 女系家族である我が家。祖母や母から私にいつの間にか伝承されてきた我が家流がある。昨年の夏に逝った母が大切にしてきた行事だから粛々と続けていきたい。そこで母の法事はホテルでの会食をやめ、倉庫から掘り出した古い漆器類を使い、自宅での精進料理でもてなした。「おばあちゃんやお母さんがきっと喜んでいるわよ」という叔母たちの言葉がうれしかった。
 結婚して40年。気がつくと母がしていたようにしている自分がいる。
 息子のお嫁さんは外国育ちの帰国子女。我が家の行事、家事をどう受け止めているのだろう。このお嫁さん、私のすることが気になるらしく、帰省のたびにしつらえや日本料理に関心を示してくる。いじらしいと思うが、無理してほしくない。強制はしたくないのだ。今の時代、自由でいい。若い核家族世代がどんなアレンジをするかも楽しみだ。
 「あなたのスープ、最高ね。あれは自慢できる味よ」とほめる。彼女、料理が上手なのだ。イタリア料理は抜群に美味だ。
 「女2人、料理好きでよかったね」と乾杯する。行事を通して心躍る時を過ごせたらそれでいい。
  大分市 宇藤真由美 2010/11/6 毎日新聞の気持ち欄掲載

朝晴れ

2010-11-10 14:26:58 | はがき随筆
 <気づいたら即行動>がいつか妻との約束事になっている。
 今日も妻より早く起きて、妙に多い洗濯物を見てしまう。洗濯機にセットして台所へ行く。お湯を沸かし朝食の準備を終わり庭へ出る。落葉を掃き終わると、もう洗濯機が呼んでいる。
 シャツ類を竿に干す。次はいつものやつだ。パンツ類を数枚、四角い物干しハンガーの中央にほす。上下がわからん妻のパンツの配置を考え、タオルを横長にしてパンツらを取り囲む。「うん、よし!」。立体作品自称<ローマの休日>完成だ。
 見上げると<ローマの休日>は、朝日に輝いていた。
  出水市 中島征士 2010/11/10 毎日新聞鹿児島版掲載