はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

つわぶきの花

2010-11-21 23:01:34 | はがき随筆


 石蕗の花が咲く季節。寂しくなった庭先にも今あちこちに咲いている。花のない季節に咲く黄色く、ひっそりとした花。この花が咲くと、晩秋という感じを誘われ、何となく心も寂しくなる。
 夜明けが遅く、日暮れが早くなる季節。文字通り晩秋を代表する花である。仕事を終え、風呂に入るころは、外は真っ暗でもう虫の声も聞こえない。
 老いて独りの暮らしにとって一番寂しい時でもある。石蕗はやはり野に咲く方がいい。枯れ芝や山がけに見る石蕗は風情があり、雨にぬれると、いっそう趣があるように思える。
  志布志市 小村豊一郎 2010/11/21 毎日新聞鹿児島版掲載