はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

オクラ豊作?

2011-09-05 22:23:54 | はがき随筆




 わずか3本しかないオクラだが、今年はよく実をつけてくれている。取るにはまだ早いかなあ……などと眺めていて、翌日行って見ると「こんなに大きくなったゃったわよ」とカミさんは両手に7~8本実を持って来てみせた。5㌢ほどだった実が一晩で10㌢くらいまで成長するのだ。「大きくても柔らかいから食べられそう。このネバネバが身体にいいのよ」。カミさんは、いま取ったばかりのオクラを、ざっと洗ってそのままで口に入れる。
 クロアゲハが舞った。「母もオクラがすきだったわねえ」。カミさんは神棚に供えた。
  西之表市 武田静瞭 2011/9/5 毎日新聞鹿児島版掲載

上高地

2011-09-05 20:56:17 | はがき随筆



 焼岳が大正池にくっきりと逆さに映っている。いつも雲がかかっていて、こんなにきれいに見えるのも珍しいという。すぐそこに見える焼岳に登ってみたい衝動にかられる。夏休みとて人が多い。梓川添いに歩く。久々に見る清流だ。飛騨山脈を縫って流れて来る川水に手を浸すと氷水のよう。素足で入った孫たちは耐えられずにすぐに上がってきた。歴史ある上高地帝国ホテルも見学した。
 かっぱ橋に立つと目前に穂高連峰が青々とそびえつつ、雲に上部は隠れて見えない。雪渓が白く光っている。来ましたよと夫の写真に見せてあげた。
  霧島市 秋峯いくよ 2011/9/4 毎日新聞鹿児島版掲載

満開の月下美人堪能

2011-09-05 20:20:08 | 岩国エッセイサロンより

写真はフォトライブラリより


2011年9月 5日 (月)

   岩国市   会 員    山本 一

 月下美人に7個のつぼみが付いた。妻と2人がかりで全体が見えるようにと移動させた時、1個もげて6個になった。

 ぐんぐん成長し、ある日つぼみがぐいと上を向く。2日後、夕方つぼみが開きかけて中のおしベがのぞける。「今夜だ」と確信する。

 午後8時ごろには三分、同11時ごろには八分の開花となり翌午前1時についに満開となった。庭のライトに照らされ、ぼんやりと白く闇に浮かび、幻想的だ。ひととき眺めながら妻と寝酒を飲む。

 翌朝7時に再度確認すると、既に下を向いてションボリ。一夜限りの何とも神秘的な花だ。

 一番感動したのは、6個のつぼみ全てが、夕方の開花から翌朝しおれるまで、一斉の挙動だったことである。どこでどう指令が出されるのだろうかと興味深い。

 月下美人を初めて見たのは、当時隣に住んでいた義母の家だ。夜中に起こされて、「何事か」とビツクリして駆け付けたことを思い出す。
 

 義母は昨年夏に他界した。生きていれば大喜びで「写真! 写真!」と言ったことだろう。満開の写真を仏前に供えた。

  (2011年9月5日 中国新聞「広場」掲載  岩國エッセイサロンより転載