はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

夫の入院

2011-09-17 23:05:26 | はがき随筆
 夫が救急車で病院へ運ばれた。軽い脳出血で会話は変わらず手術もせずにすんだ。マヒは消えたが左指、口の半分にしびれがのこり、主治医の先生の話では治るのに半年かかる人もいると。リハビリを受け、装具も杖もなしで歩けるようになり退院まで2カ月あまりかかった。
 手術入院は20代の盲腸だけの夫。以前「ご主人は元気そうね。あなたより長生きなさるよ」と言われ、私たちは健康を過信して油断とおごりがあったかもしれない。夫は来年70歳。これからは目配り気配りをしていこう。2人とも人生のたそがり時にいるのだから。
  いちき串木野市 奥吉志代子 2011/9/17 毎日新聞鹿児島版掲載

室内運動会

2011-09-17 22:56:52 | はがき随筆
 牛之浜老人クラブの第1回運動会が集落センターで実施された。総勢36人が紅白に分かれ鉢巻きを締めて皆張り切っている。小生、豆運びゲームに仲間5人と出場。竹箸で皿から皿へはさんで入れる競争で緊張とテクニックが伴うものでした。箸は斜めにしてはいけないというルールもあった。女性たちの尻での風船割りで爆笑は室内にとどろいた。92歳と88歳のおしどり夫婦も参加されて祝宴も盛り上がった。心身共に健康ほど素晴らしい宝物はない。この行事に参加出来たことに感謝します。参加賞などもらい亡妻の仏前に供えた充実の日でした。
  阿久根市 松永修行 2011/9/16 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆8月度入選

2011-09-17 22:32:35 | 受賞作品
 はがき随筆8月度入選作品がきまりました。
▽出水市明神町、清水昌子さん(58)の「合歓の花」(4日)
▽肝付町前田、吉井三男さん(69)の「名言」(11日)
▽鹿屋市串良町上小原、門倉キヨ子さん(75)の「成長見っけ!」(17日)

──の3点です。

 8月のせいか、敗戦の記憶や過去を回顧する文章がかなりありました。まだ8月15日は日本人にとって一つの区切りのようです。同じように3月11日が、私たちの心に与えた影響の大きさは、果たして消える時がくるのかどうか。
 清水昌子さんの「合歓の花」は、おれんじ鉄道の沿線の景色を堪能するなかでも、阿久根市の合歓の花に、幼児の晴れ着を連想し、その連想から大災害で亡くなった幼児たちに思いを馳せた文章です。合歓の花を鎮魂の花という美しい見立てです。
 吉井三男さんの「名言」は、病院で置き引きを注意する看護師の、生活に困っているというより、働く意欲がなく、間違った意志と知恵があるだけだという「名言」に感心したという文章です。どうしても、思いは福島での空き巣の横行に走ります。人間の救われなさが悲しくなります。
 門倉キヨ子さんの「成長見っけ!」は、ジュニアパイロットで帰省した孫娘に、家庭菜園の野菜の料理を食べさせると、敵もさるもの、節電節水のエコライフを熱心に語り、帰りは野菜類を持ち帰ってくれたという、微笑ましい内容です。
 以上の優秀作の外に3編を紹介します。
 姶良市加治木町錦江町、堀美代子さん(56)の「メタボ症候群」(7日)は、夫婦そろって検診に引っかかったので、食事を減量して、その節約額を震災地の募金にしている。効果が現れ、一石二鳥と喜んでいるという内容です。
 出水市下知識、塩田幸弘さん(63)の「泣いたトロンボーン」(10日)は、50年前集団就職の先輩たちをトロンボーンの演奏で見送った思い出です。現在の豊かさを実感するにつけても、関門海峡を越えるまで、すすり泣きが聞こえたという話を悲しく思い出すという内容です。
 同市上知識町、年神貞子さん(75)の「万華鏡」(14日)は、美しい文章です。こどもの時から万華鏡を作ってみたいという願望が、小学低学年のサンデイ・サイエンスに参加して、やっと実現した。昔の色紙の小片のと異なる、光の屈折で起こる多彩な模様を楽しみ、かつ、時の流れを感じたという内容です。
 (鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)

初秋

2011-09-17 22:26:41 | はがき随筆
 いつものように5時ごろ起きる。今日も新しい日に心が、はずむ。肌に触れる風が涼しい。 秋はもうそこまで来ているようだ。朝の散歩に出かける。野道を歩いていると土手に花が2輪咲いている。「あっ」と驚き足を止めてしばらく眺めていると、草むらに鈴を振るような虫の声。庭の隅を見ると、彼岸花が咲いている。梢をにぎやかにしていた蝉の声も消えて静かになり、秋の七草が野道を飾る日も近い。もう少し気温が下がって青空が広がると初秋のたたずまいだ。この大自然の中に生かされて、感謝し、前向きに生きてゆきたい。
  出水市 橋口礼子 2011/9/15 毎日新聞鹿児島版掲載

水神に詫びる

2011-09-17 22:20:48 | はがき随筆
 2の時、祖母の家の坂下に池があり、涼しい木陰で一人、洗濯をしていた。当時は水道、洗濯機なしの時代。その時、同じ年ごろの少年5人が近くの路地から笑顔で私に近づき野次や冗談をとばした。怖さ知らずでもくもくと洗濯。すると一人の男子が「コラッおまえたち余り変な事を言うなよ」と注意。ある男子は「やがて嫁にもらうかも」と思いやる。話題は途切れガヤガヤと話しながら遠方へ去った。後ろ姿は忘れない。
 夫は笑って諭す。「汚水を気にせず川上で洗って悪いね」。今でも深く反省する。水神様と池底のカッパ様に詫びる。
  肝付町 鳥取部京子 2011/9/14 毎日新聞鹿児島版掲載

冬瓜

2011-09-17 22:02:42 | はがき随筆
 植えもしない冬瓜のつるが、伸びも伸びたり、枝分かれして辺りの樹々に抱きついて夏を謳歌している。よくよく見るとうれしいかな、夏の名残を思わせる冬瓜2個がぶら下がっている。蜂さんのおかげの一個と、私の人工授精の作品である。朝夕の私の目をいやがるふうもなく、ぷっくり、ぷっくらと日々太ってくれる。
 雌花を見てから10日余りの輝く冬瓜、9月の終わりには食卓に上ってくれそうだ。
 光る産毛がいとおしくもある。朝な夕な見飽きることなく、冬瓜の迷惑をかえりみず、きょうもしげしげと眺めている。
  霧島市 口町円子 2011/9/13 毎日新聞鹿児島版掲載

夏休みの思い出

2011-09-17 21:55:39 | はがき随筆
 夏休みも残り少なくなった日のラジオ体操帰り、「1番楽しかったことは何?」と小2の息子に聞いてみた。
 「さかな釣り」と即答。桜島の海釣り公園に2人で出かけ、雷雨に見舞われながら、釣果はキビナゴ大のイワシ3匹や、イシウチなどの雑魚だけだったのに。
 思えば「お母さんに見せる」と言い張り、イワシは3枚におろし、6片を酢ミソでおいしいと食べていた。
 新幹線や観光地より楽しいと感じて良い思い出として残ると同時に、大切なことを私に教えてくれる大きな釣果となった。
  垂水市 川畑千歳 2011/9/11 毎日新聞鹿児島版掲載